春はるの目覚めざめ作戦さくせん

春はるの目覚めざめ作戦さくせん
ハンガリーにおいて撤退てったいするドイツ軍ぐん部隊ぶたい
戦争せんそう：第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん（独どくソ戦せん）
年月日ねんがっぴ：1945年ねん3月6日にち - 3月15日にち
場所ばしょ：ハンガリー バラトン湖こ
結果けっか：ソ連それん軍ぐんの勝利しょうり
交戦こうせん勢力せいりょく
ドイツ国こく ハンガリー王国おうこく	ソビエト連邦れんぽう ブルガリア王国おうこく パルチザン
指導しどう者しゃ・指揮しき官かん
オットー・ヴェーラー ヘルマン・バルク マクシミリアン・デ・アンゲリス ヨーゼフ・ディートリヒ オットー・デスロホ マクシミリアン・フォン・ヴァイクス アレクサンダー・レーア ヘスレーニ・ヨージェフ	ロディオン・マリノフスキー フョードル・トルブーヒン ニカノール・ザフヴァターエフ セルゲイ・トロフィメンコ ウラジーミル・スジェーツ ヴラディミル・ストイチェフ コスタ・ナジ
戦力せんりょく
140,000	455,000
損害そんがい
戦死せんし14,818 SS第だい6装甲そうこう軍ぐんの壊滅かいめつ	戦死せんし・戦傷せんしょう32,899
独どくソ戦せん バルバロッサ作戦さくせん ミンスク ウーマニ スモレンスクI キエフ I オデッサ 黒海こっかい レニングラード ハリコフ I クリミア I モスクワ ロストフ デミャンスク ハリコフ II ブラウ作戦さくせん スターリングラード フーベルトゥス作戦さくせん ウラヌス作戦さくせん 冬ふゆの嵐あらし作戦さくせん ルジェフ II イスクラ作戦さくせん ハリコフ III クルスク プロホロフカ スモレンスク II ドニエプル川がわ ナルヴァ コルスン カメネツ＝ポドリスキー バグラチオン作戦さくせん クールラント クリミア II ワルシャワ蜂起ほうき リヴォフ＝サンドミール バルト海ばるとかい ヤッシー・キシナウ ヴィスワ・オーデル ブダペスト オーバーシュレージエン 東ひがしプロイセン ケーニヒスベルク 春はるの目覚めざめ作戦さくせん ウィーン ベルリン プラハ

春はるの目覚めざめ作戦さくせん（はるのめざめさくせん、独どく：Unternehmen Frühlingserwachen）は、1945年ねん3月6日にちから3月15日にちにかけてハンガリー西部せいぶのバラトン湖こ周辺しゅうへんで展開てんかいされた、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんにおけるドイツ軍ぐんの攻勢こうせい。バラトン湖この戦たたかい（Plattenseeoffensive）とも呼よばれる。交戦こうせん相手あいてであるソ連それんからはバラトン防衛ぼうえい作戦さくせん（露ろ：Балатонская оборонительная операция）と呼称こしょうされている。

作戦さくせんの背景はいけいと目的もくてき

中央ちゅうおうヨーロッパにおけるソ連それん赤軍せきぐんは、1945年ねん1月がつから攻勢こうせいを開始かいし、2月がつ14日にちに首都しゅとブダペストを占領せんりょうした。ヒトラーは戦争せんそう継続けいぞくのためには、石油せきゆの安定あんてい供給きょうきゅうが絶対ぜったい不可欠ふかけつという考かんがえからハンガリーの油田ゆでんを重要じゅうよう視ししていたため、ハンガリー戦線せんせんでの主導しゅどう権けんを取とり返かえし、油田ゆでんの確保かくほとブダペスト奪還だっかんを企図きとした。

1月がつから展開てんかいされたヴィスワ川がわからオーデル川がわへの赤軍せきぐん進撃しんげきにより、すでに赤軍せきぐん前線ぜんせんから首都しゅとベルリンまで100キロ以内いないに迫せまり、ベルリン総そう攻撃こうげきは間近まぢかと見みられていた。このため、ハインツ・グデーリアン上級じょうきゅう大将たいしょうを始はじめとする陸軍りくぐん参謀さんぼう本部ほんぶは、ベルリン正面しょうめんの防衛ぼうえいを最さい優先ゆうせんすべきと考かんがえていた。また、ハンガリーは副次的ふくじてき戦線せんせんであり、戦局せんきょくの大勢おおぜいには影響えいきょうしない上じょう、ドイツ軍ぐんにはすでに攻勢こうせいに出でるだけの余力よりょくはないと判断はんだんしていたため、かねてからベルリン正面しょうめんの防衛ぼうえいに物資ぶっしや兵員へいいんを優先ゆうせんして送おくるよう求もとめていたが、ヒトラーはこれらの意見いけんを却下きゃっかし、春はるの目覚めざめ作戦さくせん開始かいしを決きめた。

作戦さくせんは、ハンガリー南部なんぶを担当たんとうするトルブーヒン大将たいしょうのソ連それん第だい3ウクライナ方面ほうめん軍ぐんをバラトン湖こを挟はさんだ南北なんぼくから挟撃きょうげき、分断ぶんだんすることでハンガリー西部せいぶにおける赤軍せきぐんの軍事ぐんじ的てき脅威きょういを完全かんぜんに排除はいじょすることを目指めざした。南方なんぽう軍ぐん集団しゅうだんのディートリヒの第だい6SS装甲そうこう軍ぐんとヘルマン・バルク大将たいしょう率ひきいる第だい6軍ぐんの第だい3装甲そうこう軍団ぐんだんが主しゅ攻おさむとして、共同きょうどうでバラトン湖北こほく側がわから出撃しゅつげきして第だい3ウクライナ方面ほうめん軍ぐんを攻撃こうげき、ブダペストを奪還だっかんするとともにドナウ川がわに進出しんしゅつする。また、助じょ攻おさむとしてバラトン湖こ南岸なんがんに配置はいちした同どう集団しゅうだんの第だい2装甲そうこう軍ぐんはバラトン湖南こなみ側がわに展開てんかいする同どう方面ほうめん軍ぐんの攻撃こうげきにあたり、油田ゆでん地帯ちたいを確保かくほしてドナウ川がわに進出しんしゅつする。南みなみにあるパラド川がわのハンガリーとユーゴスラヴィアの国境こっきょうからはE軍ぐん集団しゅうだんの2個こ軍団ぐんだんが北進ほくしんして、同おなじく同どう方面ほうめん軍ぐんの攻撃こうげきにあたる。最終さいしゅう的てきには、ドイツ側がわの3つの軍ぐんは合流ごうりゅうしドナウ川がわ西岸せいがんから赤軍せきぐんを掃討そうとうする構想こうそうだった。

しかし赤軍せきぐんは事前じぜんにこうした攻勢こうせいの可能かのう性せいを察知さっちし、ウィーンへの攻勢こうせいを準備じゅんびしつつ、攻勢こうせいが予想よそうされる地点ちてんにクルスク戦せんと同おなじく「パックフロント」と呼よばれる防御ぼうぎょ陣地じんちを構築こうちくしていた。

経過けいか

春はるの目覚めざめ作戦さくせんにおけるドイツ軍ぐんの攻勢こうせい。SS第だい6装甲そうこう軍ぐんがバラトン湖ことヴェレンツェ湖この間あいだから、第だい2装甲そうこう軍ぐんがバラトン湖みずうみ南部なんぶから、E軍ぐん集団しゅうだんの2個こ軍団ぐんだんがパラド川がわのハンガリーとユーゴスラヴィアの国境こっきょうからそれぞれ進撃しんげきを開始かいしした。

武装ぶそう親衛隊しんえいたいのSS第だい6装甲そうこう軍ぐんの第だい1SS装甲そうこう軍団ぐんだん・第だい2SS装甲そうこう軍団ぐんだん・第だい1SS騎兵きへい軍団ぐんだんと第だい6軍ぐんの第だい3装甲そうこう軍団ぐんだんは、3月6日にちから、バラトン湖ことヴェレンツェ湖この間あいだから攻勢こうせいを開始かいしした。この攻勢こうせいは、左翼さよくが北東ほくとうと東ひがしに向むけて進撃しんげきして、ブダペストとドナウ川がわへの到達とうたつを目指めざし、右翼うよくは南東なんとうに向むけて進撃しんげきして、ザルビッツ運河うんが沿ぞいを通とおってドナウ川がわへの到達とうたつを目指めざした。第だい2装甲そうこう軍ぐんはバラトン湖みずうみ南岸なんがんから東ひがしに向むけて攻勢こうせいを開始かいし、ユーゴスラヴィアからはE軍ぐん集団しゅうだんの2個こ軍団ぐんだんが北きたに向むけて攻勢こうせいを開始かいしした。

赤軍せきぐんの堅固けんごな対戦たいせん車しゃ陣地じんちや砲撃ほうげきによる激はげしい抵抗ていこうに遭あいながらも、SS第だい6装甲そうこう軍ぐんは侵攻しんこうを続つづけたが、戦闘せんとう地域ちいきがザルビッツ運河うんがとシオ運河うんががドナウ川がわに向むかって流ながれる湿地しっち帯たいだったため、雪解ゆきどけと降雨こううにより泥濘でいねい化かし、自動車じどうしゃ道路どうろ以外いがいの戦車せんしゃによる進撃しんげきは難むずかしく、赤軍せきぐんの激はげしい抵抗ていこうなどの悪条件あくじょうけんなども重かさなり、進撃しんげきはなかなか進すすまず、15日にちには第だい2SS装甲そうこう軍団ぐんだんが作戦さくせん前まえの戦線せんせんから20kmの地点ちてんのザルビッツ運河うんがとシオ運河うんがが合流ごうりゅうするシモントルニャ付近ふきんに達たっしたが、ここが最大さいだい進出しんしゅつ点てんとなった。また、第だい2装甲そうこう軍ぐんとE軍ぐん集団しゅうだんの2個こ軍団ぐんだんの侵攻しんこうは赤軍せきぐんの抵抗ていこうによりほとんど前進ぜんしんできず、作戦さくせん開始かいしから9日にち後ごの15日にちで完全かんぜんに停止ていしした。

ソ連それん軍ぐんの反攻はんこう

赤軍せきぐんの反抗はんこう

ドイツ軍ぐんの攻勢こうせいに耐たえていた赤軍せきぐんは、翌よく16日にち、ブダペスト西部せいぶからウィーン攻勢こうせいを始はじめると、主力しゅりょくを温存おんぞんしていた第だい3ウクライナ方面ほうめん軍ぐんは反攻はんこうに出でた。すでに天候てんこうは回復かいふくして、ドイツ軍ぐんを悩なやませていた泥濘でいねいは無なくなっており、最初さいしょに同どう方面ほうめん軍ぐんの第だい4・第だい9親衛しんえい軍ぐんがヴェレンツェ湖みずうみの北きたにあるブダペスト方面ほうめんから進撃しんげきを開始かいし、その後ご、他たの赤軍せきぐん部隊ぶたいも進撃しんげきを開始かいししたため、ドイツ軍ぐんの戦線せんせんに大穴おおあなが開ひらいてしまい、背後はいごを衝つかれて逆ぎゃくに包囲ほういされる危機ききに直面ちょくめんした。しかしヒトラーは包囲ほういされる危機ききに直面ちょくめんしてもドナウ川がわに進撃しんげきせよとの命令めいれいを下くだし、21日にちにはSS第だい6装甲そうこう軍ぐんの攻勢こうせい地点ちてんの近ちかくにあるセーケシュフェヘールヴァールの死守ししゅを命令めいれいした。しかしSS第だい6装甲そうこう軍ぐんはその命令めいれいを無視むしし、逆ぎゃくに赤軍せきぐんの包囲ほういを避さけるため、西にしに向むけて退却たいきゃくを始はじめ、10日とおかで100km以上いじょう押おし戻もどされてしまい、バラトン湖こから撤退てったいどころかオーストリアに向むけて敗走はいそうして、作戦さくせんは完全かんぜんに失敗しっぱいに終おわった。結果けっか的てきには、戦略せんりゃく的てきに重要じゅうようでない戦線せんせんで、貴重きちょうな戦力せんりょくをいたずらに消耗しょうもうしてしまい、ドイツの敗戦はいせんを早はやめる形かたちになってしまった。

参考さんこう文献ぶんけん

• Wolfgang Paul『最終さいしゅう戦せん 1945年ねんドイツ』松谷まつや健二けんじ 訳わけ、フジ出版しゅっぱん社しゃ、1979年ねん
• M. スヴィーリン，M. コロミーエツ，O. バラノーフ，D. ニェドゴノーフ『写真しゃしん集しゅう バラトン湖この戦たたかい ドイツ軍ぐん最後さいごの戦車せんしゃ戦せん1945年ねん1月がつ~3月がつ』小松こまつ徳いさお仁じん 訳やく、大だい日本にっぽん絵画かいが、2000年ねん、ISBN 4-499-22719-4
• 第だい2次じ大戦たいせん 欧州おうしゅう戦史せんしシリーズ『ベルリン攻防こうぼう戦せん』学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ、1999年ねん、ISBN 4-05-602060-4