木工もっこう寮りょう

木工もっこう寮りょう（もくりょう）は、律令制りつりょうせいにおいて宮みや内省ないせいに属ぞくする機関きかん。和名わみょうはコダクミノツカサ（古こ多久たく美乃よしの豆まめ加佐かさ）。主おもに造営ぞうえい、および材木ざいもく採集さいしゅうを掌てのひらり各かく職工しょっこうを支配しはいする役所やくしょである。

職掌しょくしょう

古代こだいのヤマト王権おうけん（大和やまと朝廷ちょうてい）の造営ぞうえい事業じぎょうは猪いのしし名めい部ぶなどの特定とくてい氏族しぞくが関かかわってきたと考かんがえられているが、仏教ぶっきょう伝来でんらいとともに寺院じいん建築けんちくなどの高度こうどな技術ぎじゅつが必要ひつようになると古ふるくからの部民ぶみん制せいでは対応たいおうできなくなり、百済くだらや中国ちゅうごく大陸たいりくからの渡来とらい系けい建築けんちく技術ぎじゅつ者しゃが登用とうようされるなどの変化へんかが見みられ流動的りゅうどうてきな要素ようそを見みせた。木工もっこう寮りょうは天皇てんのうのために必要ひつような建築けんちく土木どぼくや木器こうずき製作せいさくだけではなく、こうした事業じぎょうに必要ひつようとなる（伴とも部ぶである工こう部ぶの出身しゅっしん母体ぼたいとなる）木工もっこうの監督かんとく機関きかんとしての性格せいかくを有ゆうしていたとみられている^[1]。

木工もっこう寮りょうは宮廷きゅうていの建築けんちく・土木どぼく・修理しゅうりを一いち手てにひきうけた。具体ぐたい的てきには宮殿きゅうでんの建築けんちく・修理しゅうり、京きょう内ないの公共こうきょう施設しせつの修理しゅうり、木器こうずきなどの木製品もくせいひんの製作せいさくなどである。また、こうした事業じぎょうに必要ひつような労働ろうどう力りょくと資財しざいの調達ちょうたつ、予算よさんの立案りつあん^[2]なども木工もっこう寮りょうの業務ぎょうむであった。

そのため非常ひじょうに多忙たぼうであり多おおくの工員こういん・力ちから役者やくしゃが付属ふぞくした。それでも業務ぎょうむが繁雑はんざつで滞とどこおりをみせたため、弘ひろし仁ひとし9年ねん（818年ねん）には宮殿きゅうでん関係かんけいの業務ぎょうむを新設しんせつの修理しゅうり職しょくへ、同どう時期じきに京きょう内ないの土木どぼく工事こうじを新設しんせつの修理しゅうり坊ぼう城じょう使しにそれぞれ移譲いじょうした。その後ごもたびたび業務ぎょうむの改廃かいはいを繰くり返かえした。

なお、新あらたに京きょうを造営ぞうえいする際さいは、京きょうの造成ぞうせいを造みやつこ京司きょうじが、宮殿きゅうでんの造営ぞうえいを造みやつこ宮みや職しょく（造みやつこ宮みや省しょう）が、寺院じいんの建築けんちくは各かく造みやつこ寺てら司しと、令れい外そと官かん司しがそれぞれ管轄かんかつしており、諸しょ官庁かんちょうの庁舎ちょうしゃなどは木工もっこう寮りょうの指揮しきで建設けんせつされた。このうち造みやつこ宮みや省しょう・造みやつこ東大寺とうだいじ司しは奈良なら時代じだいを通つうじておかれていた。他たの現業げんぎょう官かん司しとちがい、工事こうじの主任しゅにんである伴とも部ぶの工こう部ぶは世襲せしゅうではなく能力のうりょくに応おうじて登用とうようされ、また主おもに飛騨ひだ国こくから徴発ちょうはつされる匠たくみ丁ひのと（飛騨ひだ工こう）が付属ふぞくしていた。大同だいどう3年ねん（808年ねん）に鍛冶かじ司つかさを併合へいごうし付属ふぞくしていた鍛冶たんや戸どを木工もっこう寮りょうへ移管いかんしたが消滅しょうめつした。

職員しょくいん

頭あたま（従したがえ五ご位い上じょう）
助すけ（正せい六ろく位い下か）
大だい允まこと（正せい七なな位い下か）　少しょう允まこと（従したがえ七なな位い上じょう）
大だい属ぞく（従したがえ八はち位い上じょう）　少しょう属ぞく（従したがえ八はち位い下か）

算さん師し　新設しんせつ・工事こうじに必要ひつような計算けいさんを行おこなう
工こう部ぶ　工事こうじを主任しゅにんする伴とも部ぶ

大工だいく　新設しんせつ・工事こうじの指揮しき
少しょう工こう　新設しんせつ・工事こうじの指揮しき
長上ちょうじょう工こう　新設しんせつ
番ばん上じょう工こう　新設しんせつ
飛騨ひだ工こう

史生ふみお　新設しんせつ
寮りょう掌てのひら　新設しんせつ
使つかい部ぶ　
直ちょく丁ひのと　
駆使くし丁ひのと　多大ただいな人員じんいんを必要ひつようとするため諸しょ官庁かんちょうに配分はいぶんした残のこりを全すべて配属はいぞくさせた

任官にんかん者しゃ一覧いちらん

木工もっこう頭あたま

氏名しめい	在任ざいにん期間きかん	備考びこう
源みなもと直ただし	貞さだ観かん9年ねん2月がつ11日にち（867年ねん 3月がつ20日はつか） - ?	正せい五ご位い下かのち参議さんぎ

武家ぶけ官位かんいとしての木工もっこう頭あたま

脚注きゃくちゅう

^ 十川そがわ、2013年ねん
^ 唐とうの律令りつりょう制度せいどでは造営ぞうえいに必要ひつような予算よさんの立案りつあんは度ど支ささえが担当たんとうしていたが、日本にっぽんで度ど支ささえに相当そうとうする主計しゅけい寮りょうは木工もっこう寮りょうが立案りつあんした予算よさん案あんを受うけ取とった太政官だじょうかんの指示しじを受うけて案あんの審議しんぎを行おこなうに留とどまった（十川そがわ、2013年ねん、P141-147）。

参考さんこう文献ぶんけん

十川そがわ陽一よういち「八はち世紀せいきの木工もっこう寮りょうと木工もっこう支配しはい」（初出しょしゅつ:『日本にっぽん歴史れきし』714号ごう（2007年ねん）/所収しょしゅう:十川そがわ『日本にっぽん古代こだいの国家こっかと造営ぞうえい事業じぎょう』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん、2013年ねん） ISBN 978-4-642-04602-2）