海戦かいせんゲーム

海戦かいせんゲーム（かいせんゲーム）はテーブルゲームの一ひとつ。バトルシップ、戦艦せんかんゲーム、軍艦ぐんかんゲームなどとも呼よばれる。

ゲームに必要ひつような道具どうぐは紙かみと筆記具ひっきぐのみ。3人にん以上いじょうでプレイすることもできなくはないが、ゲームが非常ひじょうに複雑ふくざつになるのでプレイヤーは基本きほん的てきに二人ふたり。古典こてん的てきなテーブルゲームの一ひとつで正式せいしき名称めいしょうや考案こうあん者しゃは定さだかではなく、人ひとづてに伝つたわるにつれあちこちでルールに改変かいへんが加くわえられ、幾いくつもバリエーションが存在そんざいするようである。魚雷ぎょらい戦せんゲームとは別物べつものである。

基本きほん的てきなルール

海戦かいせん図ずと配置はいちの一いち例れい(W::=戦艦せんかん、D::=駆逐くちく艦かん、S::=潜水せんすい艦かん)

	A	B	C	D	E
1
2		S			W
3
4
5		D

両りょうプレイヤーは自分じぶんの紙かみに5×5のマス目めを書かく。消けしゴムで消きえにくいボールペンやサインペンで書かくと便利べんりである。そのマス目めの隣となりに将棋しょうぎ盤ばんやチェス盤ばんのような行くだり・列れつ番号ばんごうをつける。このマス目めを「海戦かいせん図ず」に見みたててプレイする。

ゲームの開始かいし前まえにそれぞれのプレイヤーは戦艦せんかん（Warship、Battle ship）、駆逐くちく艦かん（Destroyer）、（巡洋艦じゅんようかん（Cruiser）の場合ばあいもある)、潜水せんすい艦かん（Submarine）の三さん種類しゅるい各かく一いち隻せきの軍艦ぐんかんを配置はいちする。自分じぶんの紙かみの任意にんいのマス目めにそれぞれの艦かんを示しめす記号きごうをつける。どんな記号きごうでもよいが、簡単かんたんに書かけるよう各かく艦かんの種別しゅべつ名めいの頭文字かしらもじをアルファベットで書かくのが便利べんり。消けして書かき直なおせるように、鉛筆えんぴつやシャープペンシルで記入きにゅうすること。自分じぶんの海戦かいせん図ずはゲーム中ちゅうは相手あいてから隠かくし、艦かんの配置はいちを相手あいてに知しられてはならない。同おなじマスに複数ふくすうの自分じぶんの艦かんを配置はいちすることはできないが、相手あいてプレイヤーの艦かんと位置いちが重かさなっても構かまわない。

配置はいちが完了かんりょうしたらじゃんけんなどで順番じゅんばんを決きめ、交互こうごに行動こうどうを選択せんたくする。自分じぶんの番ばんがまわってきたプレイヤーは、魚雷ぎょらいによる攻撃こうげきか艦かんの移動いどうのどちらかを選えらぶ。

攻撃こうげき可能かのうな範囲はんいの例れい(赤色あかいろが攻撃こうげき可能かのうな範囲はんい) A B C D E 1         2   D W   3         4     5   S

移動いどう可能かのうな範囲はんいの例れい(青色あおいろが戦艦せんかん(W)が移動いどう可能かのうな範囲はんい) A B C D E 1   2   D W     3   4   5   S

攻撃こうげきを選えらんだ場合ばあい、任意にんいのマス目めを一ひとつ指定していし攻撃こうげきすることを相手あいてに伝つたえる。相手あいてプレイヤーは自分じぶんの海戦かいせん図ずで指定していしたマスを調しらべ、そこに自分じぶんの艦かんがある場合ばあいは、攻撃こうげきが命中めいちゅうしたとして攻撃こうげきしたプレイヤーに伝つたえる。攻撃こうげきは1マスまでしか届とどかないので、攻撃こうげき側がわプレイヤーは自分じぶんの艦かんが隣接りんせつしているマスしか攻撃こうげきできない(斜ななめに接せっしているマスも攻撃こうげきが届とどく)。攻撃こうげきがあったマスに自分じぶんの艦かんが隣接りんせつしている場合ばあい(斜ななめに隣接りんせつしているマスも含ふくむ)、「水みずしぶき」もしくは「水煙すいえん」「波なみ高たかし」などと言いい(近ちかくに攻撃こうげきされたので水みずしぶきが上あがるのが見みえた、ということらしい)、隣接りんせつマスに攻撃こうげきされたことを艦かんの種類しゅるいとともに申告しんこくする。これは敵艦てきかんの発見はっけんを補助ほじょするためのルールである。攻撃こうげきが命中めいちゅうした場合ばあいは、忘わすれないようにお互たがいに記録きろくしておく。

移動いどうを選えらんだ場合ばあい、移動いどうする艦かんの名前なまえと移動いどう方向ほうこう、移動いどう距離きょりを相手あいてに伝つたえる。一度いちどに何なにマスでも移動いどうできるが、東西とうざい南北なんぼくいずれかの方向ほうこうにしか移動いどうできず、複数ふくすうの艦かんを一いち度どに移動いどうすることはできない。移動いどうしたら自分じぶんの海戦かいせん図ずの艦かんの位置いちも書かき換かえる。

艦かんにはそれぞれ耐久たいきゅう力りょくが設定せっていされており、戦艦せんかんが3、駆逐くちく艦かんが2、潜水せんすい艦かんが1である。攻撃こうげきを受うけると耐久たいきゅう力りょくが1減少げんしょうし、耐久たいきゅう力りょくが0になった艦かんは沈没ちんぼつする。相手あいての艦かんを全すべて撃沈げきちんしたプレイヤーが勝かちである。

このゲームでは水みずしぶきの申告しんこくを忘わすれたり戦艦せんかんの移動いどう先さきを間違まちがえたりすることがあるが、申告しんこくや配置はいちを間違まちがえるとゲームの続行ぞっこうが不可能ふかのうなので、万まん一いち途中とちゅうで間違まちがいに気付きづいた場合ばあいは正直しょうじきに相手あいてに伝つたえてゲームをはじめからやり直なおすこと。嘘うその申告しんこくやこっそり軍艦ぐんかんを移動いどうさせるなどの反則はんそくはもってのほかである。嘘うそを申告しんこくするとゲーム内容ないように矛盾むじゅんが生しょうじ、いずれ発覚はっかくする。

特別とくべつなルール

ゲームをより面白おもしろくするため、幾いくつかローカルルールが考案こうあんされている。好このみに応おうじて導入どうにゅうしてよいが、あらかじめ相手あいてとルールをよく確認かくにんしておくこと。

• 艦かんの数かずの増減ぞうげん - 駆逐くちく艦かんは2隻せき、潜水せんすい艦かんは3隻せきなどと軍艦ぐんかんの数かずを増ふやす。
• 魚雷ぎょらい数すうの制限せいげん - 魚雷ぎょらいの数かずを予あらかじめ決きめておき、魚雷ぎょらいが尽つきると攻撃こうげき出来できなくなる。
• 一いち度どに複数ふくすうの魚雷ぎょらいを発射はっしゃ可能かのう - 1ターンに3発はつまでの魚雷ぎょらいを発射はっしゃできる。敵てき艦かんのいる可能かのう性せいが高たかいマスに多おおくの魚雷ぎょらいで攻撃こうげきすることで、耐久たいきゅう力りょくの高たかい艦かんも早はやく撃沈げきちんさせることができる。上記じょうきの魚雷ぎょらい数すうの制限せいげんとともに適用てきようしないとあまり意味いみがない。
• 友軍ゆうぐんの艦かんへの攻撃こうげき可能かのう - 友軍ゆうぐんと敵てき軍ぐんの艦かんが重かさなって位置いちしている場合ばあいがある。その場合ばあいに友軍ゆうぐんの艦かんごと攻撃こうげきできるものとする。相手あいての撹乱かくらんにも使つかえる。
• 申告しんこくの省略しょうりゃく - 水みずしぶきや攻撃こうげきを受うけた艦かんの種類しゅるいを申告しんこくしない。ゲーム内容ないようがより隠蔽いんぺいされ、相手あいての艦かんの位置いちの特定とくていが難むずかしくなる。
• 連続れんぞくした移動いどうの制限せいげん - 移動いどうを繰くり返かえすと艦かんの位置いちの特定とくていが難むずかしくなったり、逃にげ回まわったりしてゲームの終結しゅうけつが困難こんなんになるので、3回かいに一いち度どは攻撃こうげきするものなどとする。
• 攻撃こうげき能力のうりょくや航行こうこう能力のうりょくの制限せいげん - 戦艦せんかんは3マス、駆逐くちく艦かんは2マス、潜水せんすい艦かんは1マスなどと、1ターンあたりの移動いどう距離きょりを制限せいげんする。攻撃こうげき回数かいすうも変かえることで、艦かんの能力のうりょくを差別さべつ化かする。
• 勝敗しょうはい条件じょうけんの変更へんこう - 戦艦せんかんと駆逐くちく艦かんの沈没ちんぼつで勝敗しょうはいが決定けっていし、潜水せんすい艦かんの沈没ちんぼつは影響えいきょうを与あたえない、などとする。

他ほかにも軍艦ぐんかんや耐たい久力くりき、マスの数かずを増減ぞうげんしたり、プレイヤーの数かずを増ふやすこともできる。ただしプレイヤーの数かずを増ふやすと、ゲームの進行しんこうが遅おそくなったり、敵艦てきかんの位置いちの特定とくていが大変たいへんに難むずかしくなるので、止とめておいたほうがよい。

戦略せんりゃく

これは運うんと勘かんだけが勝敗しょうはいを分わけるような単純たんじゅんなゲームではない。相手あいての位置いちを論理ろんり的てきに割わり出だすことや、相手あいての作戦さくせんを読よむことが重要じゅうようである。

ゲームに慣なれたプレイヤーは複数ふくすうの海戦かいせん図ずを用意よういする。自軍じぐんの軍艦ぐんかんの位置いちの記録きろくのほか、相手あいての軍艦ぐんかんの位置いちを特定とくていするために別べつの海戦かいせん図ずを用意よういし、そこに相手あいてがいる可能かのう性せいや可能かのう性せいがなくなったマスを記録きろくする。

赤あかのマスを攻撃こうげきしどちらも「水みずしぶき」の場合ばあい」、緑みどりのマスに敵艦てきかんがいる

	A	B	C	D	E
1
2
3
4
5

×のマスには敵てき駆逐くちく艦かんはいない

	A	B	C	D	E
1	× × × × × × × × × ×
2
3
4
5

例たとえば、相手あいてプレイヤーが「駆逐くちく艦かんが北きたに2マス移動いどう」と言いったとする。その場合ばあい、南みなみから2列れつにはいるはずがないので、その2列れつに含ふくまれるマスはバツ印しるしなどで記録きろくしておく。攻撃こうげきする場合ばあいはバツ印しるしがないマスを攻撃こうげきしたほうが命中めいちゅうする可能かのう性せいは高たかい。逆ぎゃくに言いえば、むやみな移動いどうは敵てきに発見はっけんされる危険きけんを増ふやすことになるともいえる。

「水みずしぶき」も敵艦てきかんの発見はっけんの手てがかりになる。例たとえば、敵艦てきかんが残のこり1隻せきで、C1とA3に攻撃こうげきし、どちらも「水みずしぶき」であった場合ばあい、両方りょうほうの攻撃こうげきに共通きょうつうするマスB2に敵艦てきかんがいることが確定かくていする。

攻撃こうげき先さきもランダムに選えらぶのでは効果こうかが薄うすい。四隅よすみのマスを攻撃こうげきしても隣接りんせつしているマスが3つしかないので、「水みずしぶき」になる可能かのう性せいは低ひくくなる。また、四隅よすみは攻撃こうげきできる範囲はんいも狭せまくなるため、攻撃こうげきをした艦かんの場所ばしょを相手あいてに特定とくていされやすくなる。ただし、その裏うらをかいて相手あいてが艦かんを隅すみに配置はいちしている可能かのう性せいもあり、こうした心理しんり戦せんもこのゲームの面白おもしろさの一ひとつである。

レーダー作戦さくせんゲーム

海戦かいせんゲームの変種へんしゅとして、レーダー作戦さくせんゲームがある。アメリカからの輸入ゆにゅうゲーム（英えい: Battleship）として、タカラから発売はつばいされていた。海戦かいせんゲームとの違ちがいは、以下いかの通とおり。

1. マス目めの設定せっていは縦横じゅうおう10マス。
2. 軍艦ぐんかんに耐久たいきゅう力りょくは設定せっていされない。その代かわりに大おおきさが設定せっていされ、空母くうぼ（5マス）、戦艦せんかん（4マス）、巡洋艦じゅんようかん（3マス）、潜水せんすい艦かん（3マス）、駆逐くちく艦かん（2マス）となっている。軍艦ぐんかんのマス目め全部ぜんぶに攻撃こうげきを受うけると沈没ちんぼつとなる。
3. 軍艦ぐんかんは移動いどうできない。
4. 軍艦ぐんかんの隣接りんせつマスに攻撃こうげきを受うけた場合ばあい、「水みずしぶき」などの申告しんこくをしなくてよい。
5. 各かく戦艦せんかんにコストや回数かいすう制限せいげん付つきで特殊とくしゅな攻撃こうげきがある。（索敵さくてき・絨毯じゅうたん爆撃ばくげき・連続れんぞく攻撃こうげき等とう）

海戦かいせんゲームと比くらべて、戦略せんりゃく性せいの面めんでは単純たんじゅん化かされているが、軍艦ぐんかんの向むき、並ならびなど配置はいちの仕方しかたがより重要じゅうようになる。

現在げんざいでは（特とくに海外かいがいにおいて）「戦艦せんかんゲーム」「海戦かいせんゲーム」といえばこちらをさす。英語えいご版ばんWikipediaにおいてはこちらの解説かいせつがされている。

ヒット時じには連続れんぞくで行動こうどうできる場合ばあいもある。また、同種どうしゅのユニットを複数ふくすう使用しようしたり、航空機こうくうきや魚雷ぎょらい艇ていなどの1マスユニットを使用しようする場合ばあいもある。

映画えいが『バトルシップ』はこのゲームをモチーフにして制作せいさくされた。

コンピュータゲーム

○これらは盤ばんの規模きぼや細部さいぶに違ちがいはあるが「レーダー作戦さくせんゲーム」のルールに準拠じゅんきょしている。

• 海戦かいせんゲームNAVY BLUE（ユース、1989年ねん、ゲームボーイ）
• NAVY BLUE 90（ユース、1990年ねん、ゲームボーイ）
• レーダーミッション（任天堂にんてんどう、1990年ねん、ゲームボーイ）
• ネイビーブルー（アイマックス、1992年ねん、ファミリーコンピュータ）
• NAVY BLUE 98（ユース、1998年ねん、ゲームボーイ）
• Fleet Battle（smuttlewerk interactive、2014年ねん、iOS、Android)

○以下いかは、戦艦せんかんゲームのローカルルールである。

• 戦艦せんかん波なみ高たかし（テラソフト企画きかく、1995年ねん、FMTOWNSフリーソフト）
• 戦艦せんかん波なみ高たかし（テラソフト企画きかく、2011年ねん、iPhoneフリーソフト)

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