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同士討どうしう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

同士討どうしう(どうしうち)、御方おかた[1](みかたうち、味方みかたち)、同士どうしせん[2](どしいくさ)、友軍ゆうぐんしょうげき(ゆうぐんそうげき)、友軍ゆうぐんによるあやま誤爆ごばく[3] は、武力ぶりょくゆうした集団しゅうだんなどが、友軍ゆうぐんおよび同盟どうめい関係かんけいにあるへいたいして、あやまって攻撃こうげきをしかけ、損害そんがいあたえる状況じょうきょうす(実戦じっせんのみならず、訓練くんれんちゅうでもこりうる)。だいいち世界せかい大戦たいせんごろたんにフレンドリーとばれていた。べいぐん使用しようされるフレンドリーファイアは、1947ねんにアメリカ陸軍りくぐん所属しょぞく戦史せんし S.L.A. Marshallによってはじめて使用しようされた[4]。NATOで使用しようされるblue on blueは、軍事ぐんじ演習えんしゅうでの自軍じぐんいろあお)からている。

個人こじん同士どうし一対一いちたいいち)における相打あいうとはことなる(相打あいうちはてきたいしてももちいられるかたり)。意図いとして同士討どうしうちをおこなった場合ばあいは、これを「裏切うらぎ行為こういという(精神せいしん錯乱さくらんはケースにより解釈かいしゃくことなる)。ふるくから同士討どうしうちをおこなってしまった場合ばあい責任せきにんかた現代げんだいでいう軍法ぐんぽう軍規ぐんき)がさだめられており、『吾妻あづまきょう』の12世紀せいきすえ記述きじゅつとして、鮫島さめしま宗家そうけ御方おかたちをしたため、右手みぎての「指切ゆびきり[5]しょされたことがせられている。

戦闘せんとう重要じゅうよう要素ようそ奇襲きしゅうであることは現代げんだいでもわっておらず、悠長ゆうちょう確認かくにんするひまがないため、技術ぎじゅつ発達はったつした現在げんざいでも完全かんぜんになくすことはかなり困難こんなんである(とく緊張きんちょう状態じょうたいであるときにこりやすい)。

きんせんにおける同士討どうしう

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闇夜やみよにおける奇襲きしゅうどき濃霧のうむ[6] など周囲しゅうい視認しにんしがたい状況じょうきょう同士討どうしうちはこりやすく、そのため、混戦こんせん想定そうていし、まえもって合言葉あいことばさだめて対処たいしょする場合ばあいがある[7]合言葉あいことばは、こえ重要じゅうようとなる状況じょうきょうでの接近せっきん戦闘せんとう想定そうていしたもので、周囲しゅうい目視もくしできる状況じょうきょうでは、家紋かもん紋章もんしょう現代げんだいでは、国旗こっき軍旗ぐんき所属しょぞく部隊ぶたいのマークなどで、友軍ゆうぐんかどうかを識別しきべつし、同士討どうしうちをふせごうとする。

また、戦場せんじょうではなく、格闘技かくとうぎのタッグせんでもこる。れいとして、プロレスタッグマッチ形式けいしき試合しあい・レスリングじょうにおいての同士討どうしうちである。この場合ばあいは、相手方あいてがた朦朧もうろうとした状態じょうたいさえまれていると油断ゆだんして、突進とっしんしてから攻撃こうげき仕掛しかけ、直後ちょくごけられ、味方みかた攻撃こうげきするというもので、ほかにも、リングのりょうはしからはさみこんで、中央ちゅうおうにいる相手あいてかって同時どうじ攻撃こうげき仕掛しかけ、けられて同士討どうしうちする場合ばあいもある(プロレスでは演技えんぎ同士討どうしうちをさそう)。

包囲ほういせんにおける同士討どうしう

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慶長けいちょうやくさい秀吉ひでよしくなったことで撤退てったいせんはいった日本にっぽんぐんとそれを追撃ついげきするあきらぐん、それをふせ小西こにし行長ゆきながいきおいふねを、あきら軍船ぐんせん結果けっかとしてかこんださい鄧子りゅう水軍すいぐんふくそうへい)のふね帆柱ほばしらあかり後陣ごじんせん石火矢いしびや命中めいちゅうさせてってしまったことが『土佐とさ物語ものがたりまきだいじゅうはち太閤たいこう薨去こうきょ 日本にっぽんぜい帰朝きちょうこと」に記述きじゅつされている。この同士討どうしうちが原因げんいん小西こにしぜいまれて、鄧子りゅうられたとしるす。

援護えんごしゃにおける同士討どうしう

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援護えんご射撃しゃげき砲撃ほうげき援護えんご空爆くうばくでもあやまった情報じょうほうでは同士討どうしうちするケースはある(れいとして、硫黄いおうとうたたかベトナム戦争せんそうアフガニスタン紛争ふんそうなど)。

戦時せんじにおけるしん兵器へいき登場とうじょう

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航続こうぞく距離きょりなが戦闘せんとうなどでは、戦時せんじちゅう新型しんがた登場とうじょうすると、てきぐん新型しんがた誤認ごにんされるケースがだい世界せかい大戦たいせんなかにはあった(れい一式いっしき戦闘せんとうさんしき戦闘せんとう)。 またP-47 (航空機こうくうき)当時とうじのアメリカ陸軍りくぐんでは唯一ゆいいつ空冷くうれいエンジンを搭載とうさいしており、ほかの空冷くうれいエンジン搭載とうさいはほぼドイツのフォッケウルフ Fw190だけだったヨーロッパ戦線せんせんにおいて、同機どうき間違まちがわれ味方みかた対空たいくう砲火ほうかあやまされることもあったという。空中くうちゅうせんよこからるなら容易ようい区別くべつできるが、真下ましたからるとそれほど「ふとい」という印象いんしょうがなかったためである。

情報じょうほう伝達でんたつおそさ・信用しんようにおける同士討どうしう

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厳密げんみつには、戦時せんじにおいてきょ同盟どうめいんだ場合ばあいまれ局地きょくち情報じょうほうおくれ、てき誤認ごにんされるケース(はしうえ友軍ゆうぐんがいるにもかかわらず、情報じょうほうとどかず、爆破ばくはされるなどもれいいち)。また、戦後せんご同盟どうめい関係かんけい構築こうちくしたにもかかわらず、局地きょくち残存ざんそんへい残党ざんとう)がそれをしんじず、抵抗ていこうした場合ばあいれいとして、きゅう日本にっぽんぐん一部いちぶ兵士へいし残留ざんりゅう日本にっぽんへい)が南方なんぽう諸島しょとうにおいて、べいぐん妨害ぼうがい活動かつどう破壊はかい活動かつどう食料しょくりょううばうなど)をしたことなど。いちへいてきであると一方いっぽうてき認知にんちしていても、実質じっしつじょう国家こっかあいだでは戦後せんご同盟どうめいにあるため、同士討どうしうちといえるが、戦後せんごでも射殺しゃさつされた場合ばあい戦死せんしあつかいとなる(れいとして、小野田おのだひろしろう所属しょぞくした部隊ぶたいいん)。

精神せいしん錯乱さくらんにおける同士討どうしう

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過酷かこく戦場せんじょうにおいて、精神せいしん錯乱さくらん仲間なかま同士どうし不和ふわ結束けっそく団結だんけつ欠如けつじょ)によってこるケース。また、戦時せんじでなくとも、軍隊ぐんたいないでのいじめ・虐待ぎゃくたいなどが原因げんいん殺害さつがいころい)にいた場合ばあいもあり、通常つうじょう勤務きんむでもこりうる。これはてきぐん戦術せんじゅつ直接的ちょくせつてきではなく、間接かんせつてき方法ほうほうによる疑心暗鬼ぎしんあんき助長じょちょう)によってもこる場合ばあいがあり、内因ないいん外因がいいん両面りょうめんしょうる。隔絶かくぜつされた状況じょうきょうこりやすく、映画えいがとう創作そうさくぶつでも演出えんしゅつされる。

潜水せんすいかん事故じこ海中かいちゅうしずみ、艦内かんないにガスが充満じゅうまんし、乗組のりくみいんそとげようとハッチにあつまって、たがいにころいにまで発展はってんしたケースもみられる(詳細しょうさいだいろく潜水せんすいてい#だいろく潜水せんすいてい遭難そうなんのイタリア海軍かいぐん参照さんしょう)。

撤退てったい逃亡とうぼうにおける同士討どうしう

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奇襲きしゅうなどの急襲きゅうしゅうけたさい撤退てったいルートをぜんへいすうふん確保かくほできず、結果けっかとして、のがれるために、ころいに発展はってんするケース。事例じれいとして、『平家ひらか物語ものがたり』の記述きじゅつに、みなもとぐん一ノ谷いちのやたたかにおいて「鵯越ひよどりごえぎゃくとし」を平家へいけぐん仕掛しかけたさい平家へいけかたふね海上かいじょうげようとするも、乗員じょういん過剰かじょうのため、沈没ちんぼつするふねて、せまいとして同士討どうしうちがこり、海岸かいがんまったとしるされている。

訓練くんれんにおける同士討どうしう

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実戦じっせん戦闘せんとうではなく、訓練くんれんちゅう模擬もぎ戦闘せんとうにおいても同士討どうしうちはこりうる。情報じょうほう判断はんだんのミス・誤報ごほう武器ぶき兵器へいき操作そうさミス(実弾じつだんはいった状態じょうたい[8])などが原因げんいんとなる。この場合ばあいてき損害そんがいがなければ、経験けいけんとしてかせるが(マニュアルすすめられる)、てき損害そんがいしょうじた場合ばあい問題もんだいとなる。(れいF-15僚機撃墜げきつい事故じこ

潜入せんにゅう捜査そうさ・スパイとうにおける同士討どうしう

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潜入せんにゅう捜査そうさ」や「じゅうスパイ」など、特殊とくしゅ任務にんむびたものはその作戦さくせん性質せいしつじょう一部いちぶ仲間なかまにしか認知にんちされず、イレギュラーなアクシデントにまれやすく、同士討どうしうちの危険きけんせいたかくなる。前者ぜんしゃはそうなるまえめることも可能かのうだが(仲間なかまかんされているため、事前じぜんらない仲間なかまはらうことも)、後者こうしゃでは見捨みすてられる可能かのうせいたかい(国際こくさい法的ほうてきにも外交がいこうてきにも問題もんだいしょうじるため、存在そんざい自体じたい否定ひていされかねない)。したがって、じゅうスパイのほう同士討どうしうちの危険きけんせい必然ひつぜんてきたかい。

功績こうせき独占どくせんよくから同士討どうしう

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史記しき』には、すわえかん戦争せんそう最後さいご項羽こうう自決じけつしたさい恩賞おんしょう目当めあてに同士討どうしうちがこってすうじゅうにん死者ししゃたとの記述きじゅつがある。『漢書かんしょ』にも、しんおうころされたさい同様どうようのことがこったむね記述きじゅつがみられる。

てき同士討どうしうちをさせるため作戦さくせんわなとしての同士討どうしうち)

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また、文書ぶんしょおくり(リーク)、てきぐん内部ないぶ裏切うらぎりをうたがわせる内容ないようせつけ、てきしょう部下ぶか処罰しょばつさせるのも同士討どうしうちとしてもちいられる(不和ふわによる疑心暗鬼ぎしんあんき)。誤報ごほうつかませ、てき兵力へいりょくひとつの拠点きょてん誘導ゆうどうさせる(てきかたてきぐんがいると認識にんしきして同士討どうしうちをするかくりつたかまる)。ぎゃくに、てきかた同士討どうしうちをしたとせかけ、さそむ(つぎ段階だんかいすすめる)戦法せんぽうれる(情報じょうほう撹乱かくらんによるてきへの誘導ゆうどう)。

太平洋戦争たいへいようせんそうにおけるキスカとう撤退てったい作戦さくせんは、日本にっぽんぐん損害そんがいがほぼ皆無かいむでありながら(しいてえば、友軍ゆうぐん救出きゅうしゅつ撤退てったいによる燃料ねんりょう消費しょうひ道中どうちゅう衝突しょうとつ事故じこによる損傷そんしょう)、一方いっぽうてきべいぐん同士討どうしうちによる損害そんがいさせたまれなケースである。これは日本にっぽんぐん意図いとによるものではないが、実際じっさいには日本にっぽんぐん撤退てったい完了かんりょうしている小島こじまたいし、べいぐんてき勢力せいりょく残存ざんそんしているものと断定だんていして濃霧のうむによる視界しかい不良ふりょうなか上陸じょうりく作戦さくせん決行けっこうした結果けっか上陸じょうりく部隊ぶたいあいだ味方みかたてきあやまったことにより発生はっせいしたものである。

戦史せんしにおける同士討どうしう

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備考びこう

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  • ケルト神話しんわには、同士討どうしうちをさせるネヴァンという女神めがみ存在そんざいし、同士討どうしうちもかみまどわした結果けっかかんがえた。
  • コンピューターゲームなどでは同士討どうしうちしないよう、攻撃こうげきしてもダメージがたらないようにプログラムされているものもある(れい、『バイオハザード』)。ぎゃくにあえてプレイ難易なんいげるために同士討どうしうちをプログラムするソフトもある。また臨場りんじょうかんすためにあえて「フレンドリーファイヤー(FF)」として実装じっそうしているゲームもある。
  • 自軍じぐん不利ふり状況じょうきょうにおいて、てき部隊ぶたい壊滅かいめつさせるために味方みかた部隊ぶたいともども壊滅かいめつさせる行為こうい作戦さくせんについては、同士討どうしうちではない。これは厳密げんみつには、「大局たいきょくてき勝利しょうりのために見捨みすてる・救助きゅうじょあきらめる」行為こういである(作戦さくせんじょう最初さいしょからてきくぎづけにするための「こま」という場合ばあいもある)。
  • スリルをもとめて仲間なかま同士どうしによるロシアンルーレット捕虜ほりょなどに強制きょうせいてきおこなわせる場合ばあいふくめ)をすることも同士討どうしうちの部類ぶるい[9] だが、本来ほんらい意図いとべつにある場合ばあい多々たたある(れい人数にんずうわせ、くちふうじなど)。
  • トーナメント形式けいしき大会たいかい選挙せんきょ活動かつどうなどで、味方みかたを1にんでもうえのこさなければならない状況じょうきょうにおいて、くじうんわるく、味方みかた同士どうし対決たいけつする状態じょうたいおな所属しょぞくでのつぶい)も皮肉ひにくをこめて同士討どうしうちという

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 吾妻あづまきょう』における中世ちゅうせいでの表記ひょうき。また、現代げんだいではあまもちいられないが、『源平げんぺい盛衰せいすい』では、「ともあらそ」ともしるし、「とも(ともうち)」といったかたり存在そんざいする(いまでいう友軍ゆうぐんしょうげきちかいニュアンス)。
  2. ^ 平家ひらか物語ものがたりおよび『うけたまわひさ』の表記ひょうきれい。「どうし」ではなく、「どし」とむ。
  3. ^ 英和えいわ/和英かずひで対訳たいやく最新さいしん軍事ぐんじ用語ようごしゅう」2007ねん
  4. ^ Marshall, S.L.A. (1947). Men Against Fire. University of Oklahoma Press. p. 193.
  5. ^ ゆみけなくなるため、指切ゆびきり片手かたてでも十分じゅうぶんばちとなった。
  6. ^ れいとして、だい大戦たいせんにおけるべいぐんキスカとう上陸じょうりく作戦さくせん
  7. ^ 日本書紀にほんしょきみずのえさるらん7世紀せいきすえ合言葉あいことばさだめて、奇襲きしゅうさいして同士討どうしうち(い)をふせいだ記述きじゅつがある。
  8. ^ れいとして、2016ねん5月24にち火曜かよう陸自りくじ然別しかりべつ演習えんしゅうじょうで、空砲くうほう訓練くんれん実弾じつだんくばられ、負傷ふしょうしゃ事態じたいとなっている。空砲くうほう実弾じつだん先端せんたん形状けいじょうちがうため、本来ほんらい間違まちがいにくいはずだが、空砲くうほう請求せいきゅうしたさい弾薬だんやく管理かんりするたいには実弾じつだん記入きにゅうがなされていた。参考さんこう朝日新聞あさひしんぶん 2016ねん5がつ25にち水曜すいよう・5月27にち金曜きんようづけ記事きじ横山よこやまぞう
  9. ^ ロシアンルーレットは、場合ばあいによっては、ひとつの拳銃けんじゅう使用しようするにかぎらず、ちょう用意よういしてたがいにったり、または、集団しゅうだん複数ふくすうじゅうもちいて一斉いっせいおこな場合ばあいもあり、ルールによっては同士討どうしうちとなる。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 日本書紀にほんしょき
  • 平家ひらか物語ものがたり
  • うけたまわひさ
  • 吾妻あづまきょう
  • 土佐とさ物語ものがたり
  • 自衛隊じえいたいシリーズ② 航空こうくう自衛隊じえいたい F-15』 イカロス出版いかろすしゅっぱん 2004ねん ISBN 4-87149-5221

関連かんれん項目こうもく

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