田中たなか平八へいはち

たなか へいはち 田中たなか 平八へいはち
生誕せいたん	藤島ふじしま釜がま吉きち (1834-08-15) 1834年ねん8月がつ15日にち 信濃しなの国こく伊那いな郡ぐん赤須あかす村むら
死没しぼつ	(1884-06-08) 1884年ねん6月8日にち（49歳さい没ぼつ）
墓地ぼち	良よ泉寺いずみでら (横浜よこはま市し)
国籍こくせき	日本にっぽん
別名べつめい	政春まさはる（諱いみな）
職業しょくぎょう	生糸きいと商しょう、両替りょうがえ商しょう
著名ちょめいな実績じっせき	第だい百ひゃく十じゅう二に国立こくりつ銀行ぎんこう・田中たなか銀行ぎんこう設立せつりつ、東京とうきょう米べい商会しょうかい所しょ初代しょだい頭取とうどり
運動うんどう・動向どうこう	尊攘そんじょう派は
罪名ざいめい	謀反ぼうほん（天狗てんぐ党とうの乱らん）
刑罰けいばつ	投獄とうごく

駒ヶ根こまがね郵便ゆうびん局きょく（長野ながの県けん駒ヶ根こまがね市し）。出入でいり口脇くちわきに出生しゅっしょう地ちを示しめす石碑せきひが建たつ。

田中たなか 平八へいはち（たなか へいはち、1834年ねん8月がつ15日にち（天保てんぽう5年ねん7月がつ11日にち） - 1884年ねん（明治めいじ17年ねん）6月8日にち）は、幕末ばくまつ・明治めいじの実業じつぎょう家か・相場そうば師し。横浜よこはまで糸いと屋平やひら八はち商店しょうてんを営いとなみ、生糸きいと・洋銀ようぎんなどの相場そうばで財ざいを成なし、「天下てんかの糸いと平たいら」と呼よばれた。本姓ほんせいは藤島ふじしま。幼名ようみょうは釜がま吉きち。名なは政春まさはる。

経歴けいれき

信濃しなの国こく伊那いな郡ぐん赤須あかす村むら（三さん州しゅう街道かいどう赤須あかす上うえ穂ほ宿やど、現在げんざいの長野ながの県けん駒ヶ根こまがね市し）生うまれ。生家せいかは資産しさん家かであったが米べいと綿めん相場そうばで失敗しっぱいし没落ぼつらく。三男さんなんであった平八へいはちは1846年ねん（弘ひろし化か3年ねん）頃ごろに飯田いいだ城じょう下したの魚屋さかなやに丁稚でっち奉公ほうこうに出だされた。1849年ねん（嘉よしみ永ひさし2年ねん）頃ごろには魚屋さかなやとして独立どくりつ。1853年ねん（嘉よしみ永ひさし6年ねん）に飯田いいだ城じょう下したの染物そめもの屋やの娘むすめ、田中たなかはると結婚けっこんし、田中たなか家かの婿養子むこようしとなる。その後ご、名古屋なごや・伊勢いせ町まちや大阪おおさか・堂島どうじまの米べい相場そうばに手てを出だすが大損おおぞんをする。

その後ご、江戸えどの斎藤さいとう弥わたる九郎くろうの練兵れんぺい館かんの門下生もんかせいとなり、吉田よしだ松陰しょういんや清河きよかわ八郎はちろうらと交まじわったとされる。1864年ねん（元治もとはる元年がんねん）には水戸みとの天狗てんぐ党とうの乱らんに参加さんか、捉とらえられ小伝馬こでんま町まちに投獄とうごくされた。この投獄とうごくによって剣けんに生いきることは諦あきらめ、商売しょうばいに生いきることを決意けついしたという。 1865年ねん（慶応けいおう元年がんねん）横浜よこはまで大和屋やまとやの後うしろ盾たてを得えて、弁天通べんてんどおりに「糸いと屋平やひら八はち商店しょうてん」を開業かいぎょう。生糸きいと・為替かわせ・洋銀ようぎん・米べい相場そうばで巨利きょりを得えた。通称つうしょう「糸屋いとやの平八へいはち」「天下てんかの糸いと平ひらた」と呼よばれた。

1868年ねん（慶応けいおう4年ねん）に、四日市よっかいちから横浜よこはまに茶ちゃを運はこぶ途中とちゅうに船ふねが難破なんぱし全ぜん財産ざいさんを失うしなう。1872年ねん（明治めいじ5年ねん） 横浜よこはま金きん穀こく相場そうば会所かいしょを設立せつりつし頭取とうどりとなった。また洋銀ようぎん相場そうば会所かいしょを設立せつりつ。その後ご、相場そうば師しの諸戸もろと清六せいろく、今村いまむら清之助せいのすけと組くんでイギリス人じん貿易ぼうえき商しょうや清国きよくに人じん商人しょうにんを相手あいてに仕手して戦せんを仕掛しかけるが、負まけそうになったことから、偽札にせさつを作つくり見みせ金がねとすることによって勝利しょうり。しかしこれが露見ろけんし横浜よこはまの商売しょうばいから手てを引ひくことになった。

1876年ねん（明治めいじ9年ねん）に東京とうきょうで田中組たなかぐみ（後ごの田中たなか銀行ぎんこう）を創立そうりつ。1878年ねん（明治めいじ11年ねん）に渋沢しぶさわ喜作きさく（渋沢しぶさわ栄一えいいちの従兄じゅうけい）を発起ほっき人じんとして東京とうきょう株式かぶしき取引とりひき所しょを設立せつりつし、同時どうじに大だい株主かぶぬしとなる。

1883年ねん（明治めいじ16年ねん）に東京とうきょう米べい商会しょうかい所しょ（後ごの東京とうきょう米穀べいこく取引とりひき所しょ、現在げんざいの東京とうきょう穀物こくもつ商品しょうひん取引とりひき所しょ）の初代しょだい頭取とうどりに就任しゅうにん。この米べい商会しょうかい所しょの株式かぶしきを上場じょうじょう。これも仕手して戦せんと化かし、田中たなかは大儲おおもうけしたという。

病気びょうきとなり熱海あたみで療養りょうよう中ちゅうには私財しざいを投とうじて熱海あたみまでの水道すいどう・電話でんわ線せんを架設かせつした。1884年ねん（明治めいじ17年ねん）に没ぼっした。

1891年ねん（明治めいじ24年ねん）、東京とうきょう都と墨田すみだ区くの木き母はは寺てらに伊藤いとう博文ひろぶみの揮毫きごうによる「天下てんか之の糸いと平たいら」の石碑せきひが建立こんりゅうされた。1915年ねん（大正たいしょう4年ねん）に従したがえ五ご位いを遺贈いぞうされた。

「相場そうばは騎虎きこの勢いきおい」が座右ざゆうの銘めいで、長女ちょうじょの名前なまえも「とら」。横浜よこはまではお倉くらという女将おかみに富貴ふうき楼ろうという待合まちあいをもたせた。

子孫しそん

子孫しそんには、長男ちょうなんの二に代目だいめ田中たなか平八へいはち（慶応けいおう2年ねん生うまれ）。長女ちょうじょとらの婿むこに糸いと平ひら不動産ふどうさんや田中たなか鉱山こうざん（後ごの田中たなか鉱業こうぎょう）を興おこした三さん代目だいめ田中たなか平八へいはち（北村きたむら菊次郎きくじろう）、三さん代目だいめ田中たなか平八へいはちの長男ちょうなんに日本にっぽんのラグビーの父ちちと言いわれる田中たなか銀之助ぎんのすけがいる。

三男さんなんの釜がま吉きちは高田たかだ慎まこと蔵ぞうの娘むすめの雪子ゆきこと結婚けっこんして、高田たかだ釜がま吉きちとなり、高田商たかだしょう会かいを継ついだ。タレントの高田たかだ万由子まゆこは釜がま吉きちの曾孫そうそん。

参考さんこう文献ぶんけん

• 小林こばやし郊人編著へんちょ 　『天下てんかの糸いと平たいら : 糸いと平たいらの祖先そせんとその子孫しそん』　信濃しなの郷土きょうど出版しゅっぱん社しゃ、1967年ねん
• 早乙女さおとめ貢みつぐ　『天下てんかの糸いと平ひらめ（上うえ・下した）』　文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう〈文庫ぶんこ〉、1989年ねん、ISBN 4-16-723021-6、ISBN 4-16-723022-4
• 日本にっぽん工業こうぎょう倶楽部くらぶ編著へんちょ　『日本にっぽんの実業じつぎょう家か-近代きんだい日本にっぽんを創つくった経済けいざい人じん伝記でんき目録もくろく』　日外にちがいアソシエーツ・紀伊国屋きのくにや書店しょてん、2003年ねん、ISBN 4-81-691789-6