田中たなか森一もりいち

たなか もりかず 田中たなか 森一もりいち
生誕せいたん	(1943-06-08) 1943年ねん6月8日にち 日本にっぽん 長崎ながさき県けん平戸ひらど市し
死没しぼつ	(2014-11-22) 2014年ねん11月22日にち（71歳さい没ぼつ） 日本にっぽん 東京とうきょう都と
出身しゅっしん校こう	岡山大学おかやまだいがく法文学部ほうぶんがくぶ
職業しょくぎょう	検事けんじ、弁護士べんごし （法曹ほうそう資格しかく喪失そうしつ）

田中たなか 森一もりいち（たなか もりかず、1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）6月8日にち - 2014年ねん（平成へいせい26年ねん）11月22日にち）は、日本にっぽんの検察官けんさつかん、弁護士べんごし（1988年ねん2月がつ 弁護士べんごし登録とうろく〈大阪おおさか弁護士べんごし会かい〉、2008年ねん1月がつに禁錮きんこ以上いじょうの刑けいの確定かくていにより法曹ほうそう資格しかく喪失そうしつ）。　

長崎ながさき県けん平戸ひらど市し（現げん）出身しゅっしん。生家せいかは貧まずしく、苦学くがくの末すえに岡山大学おかやまだいがく法文学部ほうぶんがくぶ在学ざいがく中ちゅうに司法しほう試験しけんに一発いっぱつ合格ごうかくし、検察官けんさつかんとなった。

上司じょうしの土肥どい孝治こうじ（後のちに検事けんじ総長そうちょう）から検事けんじとしての捜査そうさ能力のうりょくを評価ひょうかされ、出世しゅっせコースである大阪おおさか地検ちけん特捜とくそう部ぶ検事けんじ、東京とうきょう地検ちけん特捜とくそう部ぶ検事けんじを歴任れきにんし、「特捜とくそうのエース」と謳うたわれて数々かずかずの汚職おしょく事件じけんを担当たんとうした。

1987年ねん（昭和しょうわ62年ねん）のバブル景気けいき絶頂ぜっちょう期きに弁護士べんごしへ転身てんしん。山口組やまぐちぐみなどの暴力団ぼうりょくだん幹部かんぶや仕手して筋すじ、総会そうかい屋やなど、いわゆる裏うら社会しゃかいの人間にんげんの顧問こもん弁護士べんごしを多おおく務つとめたほか、許永中きょえいちゅうや中岡なかおか信栄のぶえいなどの裏うら社会しゃかいの人物じんぶつとの親交しんこうも深ふかく、「闇やみ社会しゃかいの守護神しゅごじん」、「闇やみ社会しゃかいの代理人だいりにん」などと呼よばれていた。また山口やまぐち敏夫としおをはじめとする政治せいじ家かとの関係かんけいも深ふかかった。検察けんさつ時代じだいから「ヤメ検けん」弁護士べんごし時代じだいの経験けいけんをつづった『反転はんてん 闇やみ社会しゃかいの守護神しゅごじんと呼よばれて』など複数ふくすうの著書ちょしょがあり、同書どうしょはベストセラーとなった。

石橋いしばし産業さんぎょう事件じけんでの有罪ゆうざい判決はんけつを受うけて、2008年ねん（平成へいせい20年ねん）4月がつ1日にち付づけで受刑じゅけい者しゃとなり、滋賀しが刑務所けいむしょに収監しゅうかんされる。2012年ねんに仮釈放かりしゃくほうとなったが、2014年ねんに病死びょうしした。71歳さい没ぼつ。

経歴けいれき

出生しゅっしょうから学生がくせい時代じだいまで

太平洋戦争たいへいようせんそうさなかの1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）6月8日にち、長崎ながさき県けん・平戸島ひらどしま南端なんたんの船越ふなこし村むらで出生しゅっしょう。

田中たなかの出生しゅっしょう時じに兵役へいえきに就ついていた父ちちは、1945年ねんの終戦しゅうせんを内地ないちで迎むかえ、直後ちょくごに五体ごたい満足まんぞくで復員ふくいんできた。しかし生家せいか（半はん農のう半はん漁りょう）は貧まずしく、稀まれに見みる勤勉きんべんな父ちちをもってしても、7人にんの子供こども（田中たなかを含ふくむ）のうち、特とくに勉強べんきょうが出来できた長男ちょうなんの田中たなかのみを、平戸島ひらどしま内ないの長崎ながさき県立けんりつ猶なお興きょう館かん高等こうとう学校がっこう津吉つよし分校ぶんこう（定時ていじ制せい・4年ねん課程かてい）に進学しんがくさせるのが限度げんどだった。

一切いっさいの仕送しおくりを得えられない田中たなかは、和歌山わかやま県けんの篤志とくし家かの書生しょせいを経へて、一浪いちろうで岡山大学おかやまだいがく法文学部ほうぶんがくぶに進すすみ、在学ざいがく中ちゅうの1968年ねんに25歳さいで司法しほう試験しけん一発いっぱつ合格ごうかくを果はたした。

検事けんじとして

1971年ねん検事けんじ任官にんかん。もともとは裁判官さいばんかん志望しぼうだったが、司法しほう修習しゅうしゅう生せい期間きかん中ちゅう、左寄ひだりよりの団体だんたいと見みられていた青年せいねん法律ほうりつ家か協会きょうかいと関係かんけいしていたのではないかと疑うたがわれたために裁判官さいばんかんに任官にんかんできず、検事けんじに任官にんかんした。

検事けんじ在任ざいにん中ちゅう、阪大はんだいワープロ汚職おしょく事件じけん、撚糸ねんし工こう連れん事件じけん、平和へいわ相互そうご銀行ぎんこう事件じけん、山一證券やまいちしょうけんと総会そうかい屋やによる三菱重工みつびしじゅうこう転換てんかん社債しゃさい事件じけん、苅田かりた町長ちょうちょう公金こうきん横領おうりょう事件じけんなどを担当たんとうした。平和へいわ相銀そうぎん事件じけん以降いこう、自民党じみんとうを含ふくめた国会こっかい議員ぎいんの逮捕たいほを視野しやに入いれた捜査そうさを行おこなっていたが検察けんさつ上層じょうそう部ぶの政治せいじ的てき配慮はいりょによって事件じけんそのものが潰つぶされ続つづけたこともあり、退官たいかんを決意けついする。

弁護士べんごしとして

1987年ねん12月検事けんじ退官たいかん、弁護士べんごしとなる。その後ご、山口組やまぐちぐみ若わか頭あたま・宅たく見み勝かち、「アイチ」森下もりした安やすし道どう、「イトマン」元もと常務じょうむ・伊藤いとう寿ひさし永光ながみつ、「コスモポリタン」池田いけだ保次やすじなどの顧問こもん弁護士べんごしを務つとめた。許永中きょえいちゅうとも懇意こんいだった（ただし、許もとの顧問こもん弁護士べんごしに就任しゅうにんしたことはない）。2000年ねん3月がつ石橋いしばし産業さんぎょう事件じけんで逮捕たいほされる。

2002年ねん6月29日にち石橋いしばし事件じけんで許もとらと共謀きょうぼうして手形てがたをだまし取とったとして東京とうきょう地裁ちさいで懲役ちょうえき4年ねんの実刑じっけい判決はんけつを受うけ、控訴こうそ。同どう判決はんけつは「（田中たなかが）元もと特捜とくそう部ぶ検事けんじの弁護士べんごしという肩書かたがきを利用りようした。田中たなかなくして詐欺さぎ事件じけんは不可能ふかのうだった」とした。2006年ねん1月がつ31日にち石橋いしばし産業さんぎょう事件じけんで東京とうきょう高裁こうさいで懲役ちょうえき3年ねんの実刑じっけい判決はんけつを受うけ、最高裁判所さいこうさいばんしょへ上告じょうこく。

2007年ねん12月1日にち奨学しょうがく財団ざいだん設立せつりつへ向むけて「田中たなか森一もりいち塾じゅく」を設立せつりつ。推薦人すいせんにんには塩川正十郎しおかわまさじゅうろう（元もと財務ざいむ大臣だいじん・東洋大学とうようだいがく総長そうちょう）や田原たはら総一朗そういちろうが名なを連つらねる。 2008年ねん2月がつ12日にち石橋いしばし産業さんぎょう事件じけんで最高裁さいこうさい第だい一いち小しょう法廷ほうてい（横尾よこお和子かずこ裁判さいばん長ちょう）が田中たなかの上告じょうこくを棄却ききゃくする決定けってい。同どう決定けっていに対たいする異議いぎ申立もうしたてて（刑訴法けいそほう414条じょう、386条じょう2項こう、385条じょう2項こう）も同月どうげつ28日にち棄却ききゃくされたことにより、2審しんの東京とうきょう高裁こうさい判決はんけつが確定かくてい（懲役ちょうえき3年ねん）。弁護士べんごし資格しかくを喪失そうしつする。3月9日にち 報道ほうどうによると、自みずからがオーナーとなっている地理ちり情報じょうほう会社かいしゃが出資しゅっし者しゃと金銭きんせんトラブルとなっていることが判明はんめいした。3月31日にち東京とうきょう高検こうけんにより、東京とうきょう拘置こうち所しょに収監しゅうかんされる。収監しゅうかん中ちゅう、4月がつ7日にち、刑事けいじ事件じけんの相談そうだん者しゃから9,000万まん円えんを詐取さしゅした詐欺さぎ容疑ようぎで逮捕たいほされる。

石橋いしばし産業さんぎょう事件じけんで服役ふくえき中ちゅう、2010年ねん1月がつ22日にち、9,000万まん円えん詐取さしゅの件けんにより、大阪おおさか高裁こうさいで懲役ちょうえき3年ねんの実刑じっけい判決はんけつを受うける。上告じょうこくせず、2月がつ6日にちに刑けいが確定かくてい。2008年ねん3月の収監しゅうかん期間きかんに加算かさんされる。 2012年ねん11月22日にち滋賀しが刑務所けいむしょから仮釈放かりしゃくほう。

2014年ねん11月22日にちに胃いがんの治療ちりょうで入院にゅういんしていた東京とうきょう都内とないの病院びょういんで死去しきょした。71歳さい没ぼつ。

人物じんぶつ像ぞう

弁護士べんごし時代じだいには、7億おく円えん近ちかくする豪華ごうかヘリコプターを保有ほゆうしていた。田中たなか森一もりいちによると｢検事けんじをやめ大阪おおさかで弁護士べんごし事務所じむしょを開業かいぎょうした私わたしには、おもしろいように顧問こもん先さきが集あつまり、それに応おうじて、収入しゅうにゅうがうなぎのぼりに増ふえた。そうして、節税せつぜいのために七なな億おく円えんのヘリコプターを買かった。高校こうこうの四よん〇周年しゅうねん記念きねんを口実こうじつにしてわざわざヘリに乗のって生うまれ故郷こきょうの平戸ひらどへ帰かえったのである。なぜそんな大仰おおぎょうなことをして、故郷こきょうに帰かえったのか、今いまになってみると、顔かおから火ひが出でるほど恥はずかしい。でも、あのころは有頂天うちょうてんになっていた。とにかく気分きぶんがよかった。ヘリコプターの管理かんり会社かいしゃの担当たんとう者しゃによると、なんでも買かったヘリは西武せいぶグループの総帥そうすい堤つつみ義明よしあき氏しのものと同おなじタイプで、日本にっぽんに二に機きしかない代物しろものだと聞きかされた」という。

著書ちょしょ

• 『反転はんてん 闇やみ社会しゃかいの守護神しゅごじんと呼よばれて』（幻冬舎げんとうしゃ、 2007年ねん6月がつ）ISBN 9784344013438
• 『必要ひつよう悪あく バブル、官僚かんりょう、裏うら社会しゃかいに生いきる』（宮崎みやざき学まなぶとの共著きょうちょ 扶桑社ふそうしゃ、 2007年ねん11月）ISBN 9784594055233
• 『検察けんさつを支配しはいする「悪魔あくま」』（田原たはら総一朗そういちろうとの共著きょうちょ 講談社こうだんしゃ、 2007年ねん12月がつ）ISBN 9784062144537
• 『バブル』（夏原なつはら武たけしとの共著きょうちょ 宝島社たからじましゃ、 2007年ねん12月がつ）ISBN 9784796661379
• 『どん底ぞこの流儀りゅうぎ』（元もと日本にっぽん共産党きょうさんとう幹部かんぶ・筆ふで坂さか秀世ひでよとの共著きょうちょ 情報じょうほうセンター出版しゅっぱん局きょく、2008年ねん2月がつ）ISBN 9784795836037
• 『正義せいぎの正体しょうたい』（佐藤さとう優ゆうとの共著きょうちょ 集英社しゅうえいしゃインターナショナル、 2008年ねん3月がつ）ISBN 9784797671742
• 『「成なり上あがり」の人間にんげん学がく』（イースト・プレス、2008年ねん6月がつ）ISBN 9784872579512
• 『塀へいのウチでもソトでも しゃあない男おとこら』（講談社こうだんしゃ、 2008年ねん10月がつ）ISBN 9784062149457
• 『遺言ゆいごん　闇やみ社会しゃかいの守護神しゅごじんと呼よばれた男おとこ、その懺悔ざんげと雪辱せつじょく』（双葉社ふたばしゃ、2014年ねん9月がつ20日はつか）

関連かんれん書しょ

• 魚住うおずみ昭あきら 『特捜とくそう検察けんさつの闇やみ』（文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、2001年ねん5月がつ）、ISBN 4163574409（文春ぶんしゅん文庫ぶんこ: 2003年ねん5月がつ）ISBN 4167656655
• 寺尾てらお文孝ふみたか『闇やみの盾たて 政界せいかい・警察けいさつ・芸能げいのう界かいの守まもり神がみと呼よばれた男おとこ』（第だい6章しょう バブル紳士しんしたちの宴うたげ 「闇やみ社会しゃかいの守護神しゅごじん」と言いわれた弁護士べんごし）講談社こうだんしゃ、2021年ねん6月がつ2日にち。ISBN 4065238781

参考さんこう文献ぶんけん

• 田中たなか森一もりいち『遺言ゆいごん：闇やみ社会しゃかいの守護神しゅごじんと呼よばれた男おとこ、その懺悔ざんげと雪辱せつじょく』（Amazon Kindle版ばん）双葉社ふたばしゃ、2014年ねん。 

関連かんれん項目こうもく

• 許永中きょえいちゅう
• ヤメ検けん
• 石橋いしばし産業さんぎょう事件じけん

外部がいぶリンク

• 右脳うのうインタビュー　田中たなか森一もりいちさん
• 公式こうしきホームページ