甲状腺こうじょうせんしょう

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甲状腺こうじょうせんしょう
バセドウびょうにより眼球がんきゅう突出とっしゅつ眼瞼がんけん後退こうたいきたした症例しょうれい
概要がいよう
診療しんりょう 科学かがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう

甲状腺こうじょうせんしょう(こうじょうせんがんしょう、thyroid-associated ophthalmopathy: TAO[注釈ちゅうしゃく 1])は、甲状腺こうじょうせん関連かんれん抗体こうたい眼球がんきゅう周囲しゅうい組織そしき付着ふちゃくし、炎症えんしょうこすことを[5]バセドウびょう(グレーブスびょう)や橋本はしもとびょうなどの甲状腺こうじょうせん疾患しっかんにおけるものがひろられているが、甲状腺こうじょうせん機能きのう正常せいじょうであっても発生はっせいすることがある[5][6]

臨床りんしょう[編集へんしゅう]

頻度ひんどはバセドウびょうたか[7]25 - 50%[8]橋本はしもとびょうではこれよりひく[9]2%[8]じょ現在げんざいでも正確せいかくには解明かいめいされていないが、自己じこ免疫めんえきてきじょにより、眼球がんきゅう後部こうぶたま後部こうぶ)の脂肪しぼうそとすじ肥厚ひこうしょうじ、それにされるかたち眼球がんきゅう突出とっしゅつするのではないかと、推定すいていされている[10]。この疾患しっかんでは眼窩がんかやその周囲しゅうい組織そしき自己じこ免疫めんえきせい炎症えんしょうで、うえ眼瞼がんけん後退こうたい眼瞼がんけん遅滞ちたい英語えいごばん腫脹しゅちょう発赤はっせきべにまだら)、結膜炎けつまくえん眼球がんきゅう突出とっしゅつ英語えいごばんなどの症状しょうじょうられる[4]浮腫ふしゅ血管けっかん圧迫あっぱく液体えきたい排出はいしゅつとどこおるためにこるとかんがえられている[4]

3〜5%の患者かんじゃは、激痛げきつううったえたり、角膜かくまく潰瘍かいよう視神経ししんけい圧迫あっぱく視力しりょく障害しょうがい危機ききいたるなど重症じゅうしょうする[11]喫煙きつえんおおくの自己じこ免疫めんえき疾患しっかん影響えいきょうあたえるが、甲状腺こうじょうせんしょう発生はっせいりつを7.7ばいにするとされている[4]けい症例しょうれい回復かいふくすることがおおく、不快ふかいかん乾燥かんそうかん軽減けいげんするため、人工じんこうなみだえき使用しよう禁煙きんえんすすめられる。じゅう症例しょうれいでは視力しりょく障害しょうがいふせぐため、ステロイドざい使つかわれ、ときシクロスポリンなど免疫めんえき抑制よくせいやく導入どうにゅうされる[12]インフリキシマブエタネルセプトアナキンラ英語えいごばんなどこう炎症えんしょうてきはたら生物せいぶつがくてき製剤せいざいもちいた臨床りんしょう試験しけんおこなわれたが、現状げんじょうランダム比較ひかく試験しけん有効ゆうこう判定はんていされた治療ちりょうほう存在そんざいしない[4]

臨床りんしょう兆候ちょうこうおも以下いかの5つに代表だいひょうされる[11]

  1. 眼瞼がんけん退すさちぢみ(eyelid retraction)
  2. 軟部組織そしき浸潤しんじゅん(soft tissue involvement)
  3. 眼球がんきゅう突出とっしゅつ(proptosis)
  4. 視神経ししんけい障害しょうがい(optic neuropathy)
  5. 拘束こうそくせいがいすじ障害しょうがい(restrictive myopathy)


自然しぜん[編集へんしゅう]

甲状腺こうじょうせんしょう自体じたいすくない疾患しっかんのため、不明ふめいてんおおいが、自己じこ免疫めんえき疾患しっかん同様どうよう自然しぜん寛解かんかい増悪ぞうあく特徴とくちょうとする。眼球がんきゅう突出とっしゅつ高度こうどとなると、閉眼困難こんなんとなり、うさぎきたす。(乾燥かんそうによる角膜かくまくのびらん・潰瘍かいよう形成けいせい

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

眼瞼がんけん後退こうたい眼瞼がんけん腫脹しゅちょう眼球がんきゅう突出とっしゅつふくうさぎなどがられる。

治療ちりょう[編集へんしゅう]

ステロイド内服ないふく[11]放射線ほうしゃせん照射しょうしゃ[11]外科げかてき手術しゅじゅつ[8]などがおこなわれる[11]シクロホスファミド有効ゆうこうったとする報告ほうこくがある[13]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 英語えいごけんでは Graves' ophthalmopathy 、thyroid eye disease; TED、Graves' orbitopathy; GO などの名前なまえもちいられることもある[1][2][3][4]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Davies, Terry F. “Treatment of Graves' orbitopathy (ophthalmopathy)”. UpToDate. 2018ねん6がつ18にち閲覧えつらん
  2. ^ Graves’ Eye Disease (Graves’ Ophthalmopathy or Graves’ Orbitopathy)”. American Thyroid Association. 2018ねん6がつ18にち閲覧えつらん
  3. ^ Thyroid Eye Disease”. British Thyroid Foundation. 2018ねん6がつ18にち閲覧えつらん
  4. ^ a b c d e Bahn, Rebecca S. (2010). “Graves' Ophthalmopathy”. New England Journal of Medicine 362 (8): 726–38. doi:10.1056/NEJMra0905750. PMC 3902010. PMID 20181974. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3902010/. 
  5. ^ a b 甲状腺こうじょうせんしょう”. 日本眼科学会にほんがんかがっかい. 2018ねん6がつ18にち閲覧えつらん
  6. ^ Solomon, David H.; Chopra, Inder J.; Chopra, Usha; Smith, Francoise J. (1977-01-27). “Identification of Subgroups of Euthyroid Graves's Ophthalmopathy”. New England Journal of Medicine 296 (4): 181–186. doi:10.1056/nejm197701272960401. ISSN 0028-4793. PMID 576175. https://doi.org/10.1056/NEJM197701272960401. 
  7. ^ Wiersinga, Wilmar M.; Bartalena, Luigi (October 2002). “Epidemiology and prevention of Graves' ophthalmopathy”. Thyroid: Official Journal of the American Thyroid Association 12 (10): 855–860. doi:10.1089/105072502761016476. ISSN 1050-7256. PMID 12487767. 
  8. ^ a b c せき沙織さおり竹野たけの幸夫ゆきお石野いしの岳志たけし ほか、原著げんちょ甲状腺こうじょうせんしょうたいしてはなない内視鏡ないしきょう眼窩がんか減圧げんあつじゅつ施行しこうした3症例しょうれい 日本にっぽんはな学会がっかい会誌かいし 2017ねん 56かん 4ごう p.570-576, doi:10.7248/jjrhi.56.570
  9. ^ Kan, Emrah; Kan, Elif Kilic; Ecemis, Gülcin; Colak, Ramis (2014-08-18). “Presence of thyroid-associated ophthalmopathy in Hashimoto's thyroiditis”. International Journal of Ophthalmology 7 (4): 644–647. doi:10.3980/j.issn.2222-3959.2014.04.10. ISSN 2222-3959. PMC 4137199. PMID 25161935. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4137199/. 
  10. ^ 臨床りんしょう放射線ほうしゃせん だい47かん 別冊べっさつ 2002/11/30 発行はっこう p.54
  11. ^ a b c d e 尾尻おじり博也ひろや甲状腺こうじょうせんしょう (dysthyroid orbitopathy) の画像がぞう所見しょけん臨床りんしょう 耳鼻咽喉科じびいんこうか展望てんぼう 2005ねん 48かん 6ごう p.353-355, doi:10.11453/orltokyo1958.48.353
  12. ^ Harrison's Principles of Internal Medicine, 16th Ed., Ch. 320, Disorders of the Thyroid Gland
  13. ^ 谷川たにがわ隆久たかひさ岡田おかだ洋右ようすけ田中たなかりょう哉、シクロフォスファミドパルス療法りょうほう有効ゆうこうであった難治なんじせい甲状腺こうじょうせんしょうの1れい Journal of UOEH., 2006ねん 28かん 2ごう p.185-191, doi:10.7888/juoeh.28.185

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]