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バイオ医薬品いやくひん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

バイオ医薬品いやくひん英語えいご: biopharmaceutical)、生物せいぶつがくてき製剤せいざい英語えいご: biological medical product)、バイオロジクス(英語えいご: biologic)とばれるものは、生物せいぶつもちいて製造せいぞう抽出ちゅうしゅつはん合成ごうせいなどされた医薬品いやくひんのことである。化学かがく合成ごうせいされた医薬品いやくひんことなり、ワクチン血液けつえきまたはその成分せいぶんアレルゲンからだ細胞さいぼう遺伝子いでんし治療ちりょう組織そしき、リコンビナントタンパク、および細胞さいぼう治療ちりょうにおけるなま細胞さいぼうふくむ。バイオ医薬品いやくひんとう、タンパク、核酸かくさん、またはそれらの混合こんごうぶつふくむ。これらはヒト、動物どうぶつ、または微生物びせいぶつといった生物せいぶつからられる。 

バイオ医薬品いやくひんをめぐる用語ようごについては、その下位かい分類ぶんるいについて組織そしき団体だんたいごとにことなった名称めいしょうもちいられている。規制きせい当局とうきょくによっては biological medicinal products ないし therapeutic biological product という用語ようごは、タンパクや核酸かくさんといった高分子こうぶんしとして製造せいぞうされた医薬品いやくひんを、血液けつえきやその成分せいぶん、ワクチンといった生物せいぶつから直接ちょくせつ抽出ちゅうしゅつされた製品せいひん区別くべつするためにもちいられている。[1][2][3] スペシャリティ医薬品いやくひんばれる高価こうか薬品やくひんぐん対象たいしょうとする分類ぶんるいは、しばしばバイオ医薬品いやくひんふくむ。[4][5][6]

たとえば遺伝子いでんし、または細胞さいぼうによるバイオ医薬品いやくひん研究けんきゅう最前線さいぜんせんであることがおおく、代替だいたい療法りょうほうのない疾病しっぺい処置しょちもちいられる。[7]

ほう制度せいどによっては、バイオ医薬品いやくひんてい分子ぶんしやく医療いりょう機器ききことなる規制きせいにある場合ばあいもある。[8]

主要しゅよう分類ぶんるい

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血漿けっしょう生物せいぶつから直接ちょくせつ採取さいしゅされるバイオ医薬品いやくひんいちれいである

生体せいたい由来ゆらい材料ざいりょう

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もっとふるいバイオ医薬品いやくひん一部いちぶ動物どうぶつやヒトに由来ゆらいするものである。重要じゅうよう製品せいひんには

ふくまれる。インスリンのように、かつて動物どうぶつから採取さいしゅされていたバイオ医薬品いやくひん一部いちぶ今日きょうではリコンビナントDNA(くみえDNA)をもちいて生産せいさんされることが一般いっぱんてきになっている。

リコンビナントDNAによる製品せいひん

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<バイオ医薬品いやくひん>という用語ようご広義こうぎには様々さまざま生物せいぶつがくてき医薬品いやくひんもちいられるが、おおくの場合ばあい、より狭義きょうぎにリコンビナントDNAをふくバイオテクノロジー利用りようして生産せいさんされた医薬品いやくひんす。一般いっぱんめいに(遺伝子いでんしぐみえ)がえられるこれらの医薬品いやくひん通常つうじょう以下いかの3しゅのいずれかに分類ぶんるいされる。 

  1. 生体せいたい自身じしんのシグナルタンパクと(ほぼ)同一どういつ物質ぶっしつれいとしては、血液けつえきさんせいうながエリスロポエチン、いわゆる「成長せいちょうホルモン」、インスリンなどがげられる。
  2. モノクローナル抗体こうたい。これらは免疫めんえきけい微生物びせいぶつやウイルスに対処たいしょするためにもちいる抗体こうたいているが、ハイブリドーマなどの手法しゅほうもちいて設計せっけいされたものであり、体内たいない任意にんい物質ぶっしつたい対抗たいこう、ないし阻害そがいすることができる。これらのれい下表かひょうしめされている。
  3. 受容じゅようたいふくごうぶつ融合ゆうごうタンパク質たんぱくしつ)。通常つうじょう天然てんねん受容じゅようたい構造こうぞうとイムノグロブリンを結合けつごうしたものである。これらでは、受容じゅようたい構造こうぞう特異とくいせい発揮はっきし、イムノグロブリン構造こうぞう安定あんていせいやその薬理やくりてき特徴とくちょう寄与きよする。下表かひょうにもれいしめされている。
一般いっぱんめい 商標しょうひょう 適応症てきおうしょう 分類ぶんるい 作用さようじょ
アバタセプト Orencia(オレンシア) 関節かんせつリウマチ イムノグロブリン-CTLA4融合ゆうごうタンパク T細胞さいぼうかつ
アダリムマブ Humira(ヒュミラ) 関節かんせつリウマチ、強直きょうちょくせい脊椎せきついえん乾癬かんせんせい関節かんせつえん乾癬かんせん潰瘍かいようせい大腸だいちょうえんクローンびょう モノクローナル抗体こうたい TNFアンタゴニスト
アレファセプト英語えいごばん Amevive(アメビブ) chronic plaque psoriasis イムノグロブリン-G1融合ゆうごうタンパク 解明かいめい
エリスロポエチン Epogen、Epogin(エポジン) ガン化学かがく療法りょうほうによる貧血ひんけつ慢性まんせい腎不全じんふぜん リコンビナントタンパク 造血ぞうけつ刺激しげき
エタネルセプト Enbrel(エンブレル) 関節かんせつリウマチ、強直きょうちょくせい脊椎せきついえん乾癬かんせんせい関節かんせつえん乾癬かんせん 完全かんぜんヒトがた可溶性かようせいTNFαあるふぁ/LTαあるふぁレセプター TNF アンタゴニスト
インフリキシマブ Remicade(レミケード) 関節かんせつリウマチ、強直きょうちょくせい脊椎せきついえん乾癬かんせんせい関節かんせつえん乾癬かんせん潰瘍かいようせい大腸だいちょうえんクローンびょう モノクローナル抗体こうたい TNF アンタゴニスト
トラスツズマブ Herceptin(ハーセプチン) にゅうガン モノクローナル抗体こうたい HER2/neu (erbB2) アンタゴニスト
ウステキヌマブ Stelara(ステラーラ) 乾癬かんせん モノクローナル抗体こうたい IL-12 および IL-23 アンタゴニスト
デニロイキン・ディフティトックス英語えいごばん Ontak cutaneous T-cell lymphoma (CTCL) Diphtheria toxin engineered protein combining Interleukin-2 and Diphtheria toxin インターロイキン-2受容じゅようたい結合けつごうぶつ
ゴリムマブ Simponi(シンポニー) 関節かんせつリウマチ乾癬かんせんせい関節かんせつえん強直きょうちょくせい脊椎せきついえんクローンびょう モノクローナル抗体こうたい TNFアンタゴニスト

バイオシミラー

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バイオシミラー(Biosimilar; BS)は、類似るいじバイオ医薬品いやくひん(similar biotherapeutic products)、バイオ後続こうぞくひん(follow-on biologics、subsequent entry biologics)ともばれている[9]。2009ねん平成へいせい21ねん)3がつ4にち「バイオ後続こうぞくひん承認しょうにん申請しんせいについて」が通知つうちされ、医薬品いやくひん申請しんせいにおけるあらたな区分くぶんとしてバイオ後続こうぞくひん追加ついかされた[10]。これにより、バイオシミラーは、しん有効ゆうこう成分せいぶん含有がんゆう医薬品いやくひん(ピカしん先発せんぱつひん)やジェネリック医薬品いやくひん(ゾロやく後発こうはつひん)とは区分くぶんしてあつかわれることになった。同日どうじつ、「バイオ後続こうぞくひん品質ひんしつ安全あんぜんせい有効ゆうこうせい確保かくほのための指針ししん」が発出はっしゅつされ、バイオ後続こうぞくひん定義ていぎ対象たいしょう範囲はんいおよびバイオ後続こうぞくひん品質ひんしつ有効ゆうこうせい安全あんぜんせい確保かくほかんするかんがかたなどがしめされた[11]

バイオシミラーの対象たいしょう[12]

  1. 微生物びせいぶつ培養ばいよう細胞さいぼうもちいて生産せいさんされ、高度こうど精製せいせいされ、一連いちれん適切てきせつ分析ぶんせき方法ほうほうにより特性とくせい解析かいせきができる遺伝子いでんしぐみタンパク質たんぱくしつ単純たんじゅんタンパク質たんぱくしつおよとうタンパク質たんぱくしつふくむ)、ポリペプチドおよびそれらの誘導体ゆうどうたいならびにそれらを構成こうせい成分せいぶんとする医薬品いやくひんたとえば、抱合ほうごうたい)。
  2. 細胞さいぼう培養ばいよう技術ぎじゅつもちいて生産せいさんされるぐみタンパク質たんぱくしつ医薬品いやくひん、あるいは組織そしきおよ体液たいえきから分離ぶんりされるタンパク質たんぱくしつやポリペプチドのような上記じょうき範疇はんちゅう以外いがい医薬品いやくひんであっても、高度こうど精製せいせいされ、品質ひんしつ特性とくせい解析かいせき可能かのう医薬品いやくひんには適用てきようできる場合ばあいがある。

バイオシミラーの対象たいしょうそと[12]

  1. 従来じゅうらいがたワクチンや、ヘパリンなどの糖類とうるい
  2. わがくににおいて審査しんさ経験けいけん使用しよう実績じっせきのない製品せいひん
  3. バイオ後続こうぞくひんたいするバイオ後続こうぞくひん将来しょうらいてき可能かのうせいとしてはありる)。


バイオシミラーは、先行せんこうひんのバイオ医薬品いやくひんアミノ酸あみのさん配列はいれつ先行せんこうひん同一どういつだが、細胞さいぼうかぶ培養ばいよう工程こうてい製造せいぞう業者ぎょうしゃによりことなることから、とうくさり不純物ふじゅんぶつ割合わりあいなどが完全かんぜんには一致いっちしないものの、厳格げんかく品質ひんしつ試験しけん薬理やくり試験しけん毒性どくせい試験しけんおよ臨床りんしょう試験しけんによって医薬品いやくひんとしての同等どうとうせい同質どうしつせい(comparability。「品質ひんしつ類似るいじせいたかく、品質ひんしつなんらかの差異さいがあっても安全あんぜんせい有効ゆうこうせい影響えいきょうおよぼさないこと」)が検証けんしょうされている[13]
バイオ医薬品いやくひん高分子こうぶんし化合かごうぶつで、分子ぶんし構造こうぞう複雑ふくざつであることから、バイオシミラーでは同一どういつせいしめすことが困難こんなんなことが、ジェネリック医薬品いやくひん後発こうはつ医薬品いやくひん)とおおきくことなる[14]

  1. ジェネリック医薬品いやくひんでは「生物せいぶつがくてき同等どうとうせい」がしめされればよいのにたいし、バイオシミラーは新薬しんやくじゅんずる申請しんせい資料しりょう提出ていしゅつ要求ようきゅうされる。
  2. バイオシミラーでは免疫めんえきばらせいとう注意ちゅういする必要ひつようがあるため、製造せいぞう販売はんばい安全あんぜんせいかんする調査ちょうさおこな必要ひつようがある。
  3. ジェネリック医薬品いやくひん薬価やっか先発せんぱつひんの50%(内用ないようやくで10品目ひんもくえる場合ばあいは40%、2017ねん10がつ現在げんざい)であるのにたいし、バイオシミラーの薬価やっかは、先行せんこうバイオ医薬品いやくひんの70%が基本きほんとなり、臨床りんしょう試験しけん必要ひつようなことから10%を上限じょうげんとした上乗うわのせが相談そうだん事項じこうとしてみとめられている。


バイオシミラーの一般いっぱんてき名称めいしょうは、先行せんこうバイオ医薬品いやくひん一般いっぱんてき名称めいしょう遺伝子いでんしぐみえにかか記載きさいのぞく)の末尾まつびに「後続こうぞく1 (2, 3,…)」をかく括弧かっこきで追加ついかする[12]。バイオシミラーの販売はんばいめいは、先行せんこうバイオ医薬品いやくひん一般いっぱんてき名称めいしょう(「遺伝子いでんしぐみえ」は省略しょうりゃく)の末尾まつびに、バイオ後続こうぞくひんであることをしめすために「BS」と記載きさいし、ざいがた、含量およ会社かいしゃめい屋号やごうとう)をすことが原則げんそくとなる[12]

れい トラスツズマブ(ハーセプチン)のBSで3ざいは、
  • 一般いっぱんめい:トラスツズマブ[トラスツズマブ後続こうぞく3]
  • 販売はんばいめい:トラスツズマブBS点滴てんてきせいちゅうよう「ファイザー」


また、ジェネリック医薬品いやくひん同様どうように、先行せんこうバイオ医薬品いやくひん製薬せいやく会社かいしゃ子会社こがいしゃとうつうじて、有効ゆうこう成分せいぶん製法せいほう先行せんこうひん同一どういつであるバイオセイム(オーソライズド・ジェネリック)も発売はつばいされている。

日本にっぽん承認しょうにんされているバイオシミラー

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( )ない先発せんぱつひん商品しょうひんめい2021ねん5がつ12にち現在げんざい[12]

欧米おうべいのみで承認しょうにんされているバイオシミラー

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( )ない先発せんぱつひん商品しょうひんめい2021ねん1がつ4にち現在げんざい[12]

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ “(Re)defining biopharmaceutical”. Nature Biotechnology 26 (7): 743–51. (Jul 2008). doi:10.1038/nbt0708-743. PMID 18612293. http://www.nature.com/nbt/journal/v26/n7/box/nbt0708-743_BX3.html. 
  2. ^ Drugs@FDA Glossary of Terms”. Food and Drug Administration (2012ねん2がつ2にち). 2014ねん4がつ8にち閲覧えつらん
  3. ^ Walsh, Gary (2003). Biopharmaceuticals: Biochemistry and Biotechnology, Second Edition. John Wiley & Sons Ltd. ISBN 978-0-470-84326-0 
  4. ^ “Health plan utilization and costs of specialty drugs within 4 chronic conditions”. Journal of Managed Care Pharmacy 19 (7): 542–8. (Sep 2013). PMID 23964615. 
  5. ^ Specialty Pharmacies Proliferate, Along With Questions”. Sinking Spring, Pa.: New York Times (2015ねん7がつ15にち). 2015ねん10がつ5にち閲覧えつらん
  6. ^ Murphy, Chad O.. “Specialty Pharmacy Managed Care Strategies”. 2015ねん9がつ24にち閲覧えつらん
  7. ^ Center for Biologics Evaluation and Research (2010ねん4がつ1にち). “What is a biological product?”. U.S. Food and Drug Administration. 2014ねん2がつ9にち閲覧えつらん
  8. ^ United States Food and Drug Administration (Aug 2008). “Supplemental applications proposing labeling changes for approved drugs, biologics, and medical devices. Final rule”. Federal Register 73 (164): 49603–10. PMID 18958946. http://edocket.access.gpo.gov/2008/pdf/E8-19572.pdf. 
  9. ^ バイオ医薬品いやくひんとバイオシミラー(バイオ後続こうぞくひん)にかんするQ&A (PDF) JPMA(日本にっぽん製薬せいやく工業こうぎょう協会きょうかい
  10. ^ バイオ後続こうぞくひん申請しんせい承認しょうにんについて(くすりしょくはつだい0304004ごう (PDF) 厚生こうせい労働省ろうどうしょう医薬品いやくひん食品しょくひん局長きょくちょう
  11. ^ バイオ後続こうぞくひん品質ひんしつ安全あんぜんせい有効ゆうこうせい確保かくほのための指針ししんくすりしょくはつだい0304007ごう (PDF) 厚生こうせい労働省ろうどうしょう医薬品いやくひん食品しょくひん局長きょくちょう
  12. ^ a b c d e f バイオ後続こうぞくひん国立こくりつ医薬品いやくひん食品しょくひん衛生えいせい研究所けんきゅうじょ生物せいぶつ薬品やくひん
  13. ^ バイオシミラーについて”. バイオシミラー協議きょうぎかい (2016ねん). 2018ねん11月27にち閲覧えつらん
  14. ^ バイオシミラーとジェネリック医薬品いやくひんちが日本化薬にっぽんかやく
  15. ^ ネスプとエンブレルのバイオシミラー 11月27にち発売はつばい”. ミクスonline (2019ねん11月27にち). 2020ねん12月9にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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