真下ました晩ばん菘すずな

真下ました晩ばん菘すずな（ました ばんすう、寛政かんせい11年ねん（1799年ねん） - 明治めいじ8年ねん（1875年ねん）10月17日にち）は、江戸えど時代じだい後期こうきの幕臣ばくしん・明治めいじ初期しょきの教育きょういく家か。

来歴らいれき

「真下ました晩ばん菘すずな先生せんせい生誕せいたん之の地ち」の碑いしぶみ
（山梨やまなし県けん甲州こうしゅう市し・慈雲じうん寺てら）

甲斐かい国こく山梨やまなし郡ぐん中萩原なかはぎわら村むら向むかい久保ひさやす（山梨やまなし県けん甲州こうしゅう市し塩山しおやま中萩原なかはぎわら）に生うまれる。父ちちは百姓ひゃくしょうの鶴田つるた（益田ますだ）仙せん右みぎ衛門えもん。幼名ようみょうは藤ふじ助すけ。文政ぶんせい8年ねん（1825年ねん）に江戸えどへ出府しゅっぷし、幕臣ばくしん小原おはら氏しの下僕げぼくとなる。その後ご、甲斐かい国こくの石和いさわ代官だいかん所しょ・谷村たにむら代官だいかん所しょの手代てだいを経へて、天保てんぽう7年ねん（1836年ねん）に幕臣ばくしんである真下ました家かの家いえ禄ろくを買かい、名なを専せん之の丞すすむと改あらためる。

その後ご、蕃しげる書しょ調ちょう所しょ調しらべ役やく勤番きんばん衆しゅ、調しらべ役やく肝煎きもいりとなり、慶応けいおう2年ねん（1866年ねん）には陸軍りくぐん奉行ぶぎょう並なみ支配しはいとなる。

明治維新めいじいしん後こうは江戸えどを離はなれて武蔵むさし国こく南多摩みなみたま郡ぐん原町田はらまちだ（東京とうきょう都と町田まちだ市し）、丹後たんご国こく久美浜くみはま（京都きょうと府ふ熊野くまの郡ぐん久美浜くみはま町まち）、駿府すんぷなどへ移うつり、現在げんざいの神奈川かながわ県けん横浜よこはま市し野毛のげ町まちで私塾しじゅく「融とおる貫ぬき塾じゅく」を開ひらいた。晩ばん菘すずなの縁戚えんせきである原町田はらまちだの渋谷しぶや仙せん次郎じろう宅たくには融とおる貫ぬき塾じゅくの出張所しゅっちょうしょがあり、板垣いたがき退助たいすけらの主導しゅどうによる自由じゆう民権みんけん運動うんどうが盛さかんな多摩たま地方ちほうにおいて、多おおくの民権みんけん運動うんどう家かを輩出はいしゅつした。

人物じんぶつ

板垣いたがき駿河するが守まもる信しんじ方かた肖像しょうぞう 恵林寺えりんじ蔵ぞう
（松本まつもと楓湖ふうこ画が、板垣いたがき退助たいすけ揮毫きごう）

松本まつもと楓湖ふうこ画が、山本やまもと勘助かんすけ肖像しょうぞう
（「武田たけだ二に十じゅう四よん将しょう図ず」より）

晩ばん菘すずなは上京じょうきょうした甲州こうしゅう人じんに対たいしても支援しえんを行おこなっている。晩ばん菘すずなと同郷どうきょうの中萩原なかはぎわら村むらには百姓ひゃくしょう・樋口ひぐち八はち左衛門さえもんがおり、八はち左衛門さえもんの孫まごに女流じょりゅう小説しょうせつ家かの樋口ひぐち一葉かずはがいる。晩ばん菘すずなは八はち左衛門さえもんと知ち縁えんがあり、八はち左衛門さえもんの子こ・一葉いちようの父ちちである大吉だいきち（則のり義よし）は安政あんせい4年ねん（1857年ねん）に江戸えどへ出府しゅっぷすると、蕃しげる書しょ調ちょう所しょ時代じだいの晩ばん菘すずなを頼たより蕃しげる書しょ調ちょう所しょの使用人しようにんとなっている。また、原町田はらまちだの渋谷しぶや仙せん次郎じろうの弟おとうと・三郎さぶろう（後ごの秋田あきた県けん・山梨やまなし県知事けんちじの阪本さかもと三郎さぶろう）は晩ばん菘すずなの孫まごにあたり、破談はだんとなったが三さん郎ろうと一いち葉ようは許婚きょこんの間柄あいだがらであった。

また、晩ばん菘すずなは明治めいじ後ごに現在げんざいの甲州こうしゅう市し塩山しおやま藤木ふじきの放ひ光ひかり寺てらに養やしなえ鸕徹定じょう寄進きしんの「法隆寺ほうりゅうじ金堂こんどう西にし壁かべ阿弥陀あみだ三さん尊像そんぞう図ず写うつし」、川上かわかみ冬崖とうがい筆ふで「五百羅漢ごひゃくらかん像ぞう」を寄進きしん。更さらに明治めいじ5年ねん4月がつ12日にち（1872年ねん5月18日にち）武田たけだ信玄しんげん公おおやけ三さん百ひゃく回忌かいきを恵林寺えりんじで斎とき行ぎょうするにあたり、その前年ぜんねんの明治めいじ4年ねん（1872年ねん）、松本まつもと楓湖ふうこ筆ふで「武田たけだ二に十じゅう四よん将しょう図ず」を買上かいあげて恵林寺えりんじに奉納ほうのうした。そのうちの「板垣いたがき信しん方かた肖像しょうぞう画が」は、三さん百ひゃく回忌かいき法要ほうように来賓らいひん参列さんれつした板垣いたがき退助たいすけの画が讃さんがあり特とくに著名ちょめい。また「山本やまもと勘助かんすけ肖像しょうぞう画が」は勘助かんすけの肖像しょうぞうとしてよく知しられた作品さくひんである。

晩ばん菘すずなの伝記でんきとして、1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）4月がつに孫まごの阪本さかもと三郎さぶろうが記しるした『晩ばん菘すずな余あまり影かげ』がある。生地きじの甲州こうしゅう市し塩山しおやま中萩原なかはぎわらの慈雲じうん寺てら境内けいだいには「真下ました晩ばん菘すずな先生せんせい生誕せいたん之の地ち」の碑文ひぶんがある。これは1914年ねん4月がつに親族しんぞくや慈雲じうん寺てら住職じゅうしょく、地元じもと有志ゆうしらによって建立こんりゅうされたもので、撰文せんぶんは松平まつだいら康やすし國こく、篆額は徳川とくがわ家達いえさとで、日高ひだか秩父ちちぶの書しょ。同おなじ境内けいだいには1922年ねん(大正たいしょう11年ねん）に建立こんりゅうされた「一葉いちよう女史じょし碑ひ」も建たてられている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『晩ばん菘すずな余あまり影かげ』阪本さかもと三郎さぶろう、1914年ねん4月がつ。 
• 『樋口ひぐち一葉かずはと甲州こうしゅう』山梨やまなし県立けんりつ文学ぶんがく館かん、2009年ねん