真昼岳まひるだけ

真昼岳まひるだけ
北きたノ又また岳たけから見みた真昼岳まひるだけ 中央ちゅうおう右みぎの山頂さんちょうに神社じんじゃがある山やまが真昼岳まひるだけ
標高ひょうこう	1,059 m
所在地しょざいち	日本にっぽん 秋田あきた県けん仙北せんぼく郡ぐん美郷みさと町まち 岩手いわて県けん和賀わが郡ぐん西にし和賀わが町まち
位置いち	北緯ほくい39度ど26分ふん52.2秒びょう 東経とうけい140度ど40分ふん35.4秒びょう
山系さんけい	真昼山地まひるさんち
真昼岳まひるだけの位置いち 北緯ほくい39度ど26分ふん52.2秒びょう 東経とうけい140度ど40分ふん35.4秒びょう 真昼岳まひるだけ - 地理ちり院いん地図ちず 真昼岳まひるだけ - Google マップ
OpenStreetMap
プロジェクト 山やま

真昼岳まひるだけ（まひるだけ）とは、秋田あきた県けん仙北せんぼく郡ぐん美郷みさと町まちと岩手いわて県けん和賀わが郡ぐん西にし和賀わが町まちとの県境けんきょうにある山やまである。真昼まひる山やまとも。真昼山地まひるさんちの主峰しゅほうで、標高ひょうこうは1059mである。

概要がいよう

秋田あきた県けん側がわの周囲しゅういは真木まき真昼まひる県立けんりつ自然しぜん公園こうえんに指定してい。なお、県境けんきょうをまたぐ真昼岳まひるだけ林道りんどう（峰みね越えつ連絡れんらく林道りんどう）が付近ふきんを通とおるが、未み舗装ほそうかつ大変たいへん狭せまい。

古ふるくから信仰しんこうの対象たいしょうとして真昼まひる山大やまだい権現ごんげん社しゃ（三さん輪りん神社じんじゃ）が設もうけられ、中世ちゅうせいには周辺しゅうへんの小野寺おのでら氏しや本堂ほんどう氏しの氏神うじがみともなっていた。 山名やまなは伝説でんせつの坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろが東征とうせいの折おり、昼ひる頃ごろに山頂さんちょうについたからとされている。山頂さんちょうの三さん輪りん神社じんじゃはその時とき将軍しょうぐんが建立こんりゅうしたものという。江戸えど時代じだいの記録きろくには「麓ふもとに石いしの鳥居とりいがある。三輪さんりん神社じんじゃがある。大同だいどう2年ねんに田村たむら麻呂まろが開基かいきした。祭礼さいれいは4月がつの6月がつとも12日にちである。この山やまには怪異かいいの話はなしが残のこされている。

登山とざん口こうは秋田あきた側がわに赤倉あかくら口こうと善知鳥うとう口こう、岩手いわて側がわに沢内さわうち口こうがある。また、峰みね越こし（みねこし）林道りんどうの秋田あきた、岩手いわて県境けんきょうからの登山とざんが最もっとも容易よういに登のぼることができる。 峰みね越えつ林道りんどうからは、北きたノ又また岳たけ（きたのまただけ）と音おと動どう岳だけ（おんどうだけ）を通とおり、約やく１時じ間あいだ半はん程度ていどで山頂さんちょうに到着とうちゃくする。写真しゃしん右みぎの山やまが音おと動どう岳だけである。

登山とざん道どうや山頂さんちょうからは、北きたに雄大ゆうだいな和賀わが山塊さんかいを見みることができる。美うつくしい景色けしきを見みることができるのがこの山やまの特徴とくちょうである。ただ、山頂さんちょう部分ぶぶんは笹ささが多おおく紅葉こうようは期待きたいできない。山腹さんぷくの紅葉こうようや新緑しんりょくとの対比たいひは美うつくしい。

山頂さんちょう部ぶへの放牧ほうぼく

兎岳うさぎだけおよび北きた真昼まひるのムツノガリヤス群落ぐんらくと真昼岳まひるだけの山頂さんちょう部ぶ西にし斜面しゃめんに広ひろがるチシマザサ群落ぐんらくは同どう山地さんちの同おなじ海抜かいばつ高だか・傾斜けいしゃの稜線りょうせん西側にしがわにはミヤマナラ群ぐん団だんが分布ぶんぷすることおよび山頂さんちょうわずかにムツノガリヤス群落ぐんらくがあることから判断はんだんして、ミヤマナラ群落ぐんらくを焼やき払はらった後のちムツノガリヤス群落ぐんらくに放牧ほうぼくした可能かのう性せいがある。

民話みんわ

仙北せんぼく郡ぐんの東ひがしに馬うま蛭ひる(まひる)山やまという山やまがある。峻険しゅんけんで岩石がんせきが屏風びょうぶのようになっているところが多おおく、草木くさきが屈曲くっきょくして生ばえていて、上うえの方ほうはオッコと言いわれる木きが畳たたみを敷しいたように生はえている。この山やまの北きたの方かたに数ヶ所すうかしょの沢さわがある。総称そうしょうは大又おおまたという。真昼岳まひるだけの正面しょうめんの沢さわをカトノ沢さわといい、これらの沢さわから流ながれ出でる川かわを馬うま蛭川ひるかわという。

1832年ねん(天保てんぽう3年ねん)6月がつ中旬ちゅうじゅんに横堀よこぼり村むら甚之丞すすむという者ものが、若者わかもの数すう人にんと三さん人にん連づれで大又沢おおまたざわにミヅ(ウワバミソウ)を採とりに出でかけた。若者わかものは左ひだりの沢さわへ、甚之丞すすむは右みぎの沢さわに入はいり、帰かえりは沢さわの入いり口くちで待まち合あうことにした。ところが、甚之丞すすむは若者わかものが待まっていても帰かえらなかったので、日にちが暮くれて来きたのでその日ひは一旦いったん帰かえり、翌日よくじつ大勢おおぜいでその沢さわを捜索そうさくした。しかし、甚之丞すすむの行方ゆくえは分わからなくまた足跡あしあとも無なかった。不思議ふしぎに思おもいながら、なお奥深おくふかくに分わけ入はいると、岩石がんせきが高たかくそびえ、その上うえに登のぼる方法ほうほうが無ないような場所ばしょに着ついた。これより奥おくは行いくことが出来できないと、他たを終日しゅうじつ廻まわったものの何なんら証拠しょうこがなくすごすごと帰かえった。ところが、沢さわの入いり口くちの手前てまえに石切いしきり小屋こやがあって、この小屋こやの中なかで甚之丞すすむがミヅを背負せおって休やすんでいた。皆みなは驚おどろいて昨日きのうからの事情じじょうを聞きいた。甚之丞すすむが言いうところには、昨日きのうはミヅを探さがしたが一本いっぽんも無なく、次第しだいに奥おくに行いくと、岩いわが高たかくなって登のぼることができない。しばらく立たっていると、どこの国こっか分わからないが、女性じょせいの武人ぶじんが来きて私わたしについて来きなさいと言いう。彼かれが岩いわを登のぼることが出来できないと言いうと、女おんなは私わたしに背負しょわれなさいと言いう。言葉ことばに従したがうと、女おんなは何なんの苦くも無なくすらすらと登のぼって行いく。上うえには結構けっこうな家いえがあった。

内うちには山やまの神かみを始はじめ、色々いろいろな神かみ々、鬼おにのようなものが数多かずおおくいた。よくきたと食事しょくじになった。甚之丞すすむは晩ばんになって腹はらもすいたので、食くおうと思おもい持参じさんの焼やき飯めしを出だしたところ、鬼おにたちは焼やき飯めしはやめてまずこれを食くえと餅もちを何なん個こか出だした。餅もちを見みると搗つきたてもあったが、古ふるい餅もちもある。これを食たべて今宵こよいは泊とまって、皆みなが休やすんでいる明日あしたの朝あさ早はやく起おきて帰かえろうとしたが、鬼おにたちは甚之丞すすむにまた餅もちを食たべさせ、そなたには娘むすめが居いるかと問とう。甚之丞すすむが良よく踊おどる娘むすめが一人ひとりいると答こたえると、鬼おには7月がつ17日にちに娘むすめが踊おどりに出でたら鬼おにがさらうと言いう。また、27日にちに餅もちをつきなるべき高たかい所ところにおくべしと言いう。次つぎの日ひ、女おんなが甚之丞すすむを背負せおい、また元もとの沢さわに飛とぶか走はしるかして移動いどうした。昨日きのうと違ちがい沢さわにはミヅがたくさんあり、女おんなとも手伝てつだってもらい送おくられて今いま来きた所ところだという。女おんなは皆みなと会あっているが、他たの人ひとには見みえない。家いえに帰かえった甚之丞すすむは心しんあらずの状態じょうたいであったが、薬くすりを飲のんで今いまは全快ぜんかいしている。甚之丞すすむの家いえでは7月がつ27日にちには餅もちをついて高たかい所ところに置おいたが、何なんの変かわりも無なかったという。また、持参じさんの焼やき飯めしはそのまま持もち帰かえったという。

馬うま蛭ひる山さんより北きたに太田おおた山さん(旧きゅう千畑せんはたスキー場じょうがあった黒沢大台山くろさわおおだいさん)という山やまがある。同おなじ年ねんの7月がつ18日にちに横沢よこさわ村むらの者ものが、ミヅ取とりに太田おおた山さんに行いったが、相当そうとう取とった後のちで、沢さわで根ねを洗あらっていたところ、ヒイヒイという音おとが聞きこえて、気味きみが悪わるく思おもっていたところ、どこからか早はやく帰かえれと山やまに響ひびく大音おおとが聞きこえた。彼かれは逃にげて家いえに帰かえったという、横沢よこさわ村むら七なな之の丞すすむの噂うわさがある。

真昼まひる山やまのうち、人ひとが登のぼることを禁きんじている沢さわがある。菅江すがえ真澄ますみの『月つきの出羽いずは路ろ』にも記載きさいがある。20年ねんほど前まえ、太田おおた町まち国見くにみ村むらの新しん助すけという人ひとが、キノコ狩かりに行いっきある沢さわで大おおきなマイタケを見みつけた。一ひとつの株かぶを全部ぜんぶ持もっていけない大おおきさだから、半分はんぶんを取とって一息ひといきとって上うえを見みると、大蛇おろちがキノコが生はえている木きに体からだを、隣となりの木きには頭あたまをかけていた。大変たいへん恐おそれおののいて逃にげ帰かえったが、それから3年ねん程ほどで果はてたと国見くにみ村むらの者ものが語かたった。

また菅江すがえ真澄ますみの『月つきの出羽いずは路ろ』では、真昼岳まひるだけに怪あやしいものが住すんでいて、元もと本堂ほんどう村むらの男おとこが、太ふとい鳥とり足あしの赤あかい大人おとなを見みてから廃人はいじんのようになってしまったという伝説でんせつも記録きろくしている。さらに、1828年ねん(文政ぶんせい11年ねん)6月がつ3日にち、万ばん太ふとしが仲間なかま2人ふたりと大股おおまた沢さわにミズ採とりに行いった。採とり終おわり、仲間なかまの姿すがたをした男おとこ2人にんが来きたので帰かえろうと笠かさを被こうむったところ、笠かさを鷲わしづかみにされた。仲間なかまがようやく探さがし出だしたが、そこは真昼岳まひるだけの頂いただき近ちかくで、大股おおまた沢さわからは2里さとも離はなれていた。菅笠すげがさを見みると4つの爪痕つめあとがあり、山人さんじんか天狗てんぐかが戯じゃれに投なげ飛とばしたのであろうという記録きろくもある。さらに菅笠すげがさに開ひらいたツメの跡あとを真澄ますみは絵えにしている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 日本にっぽん歴史れきし地名ちめい大系たいけい（オンライン版ばん） 小学しょうがく館かん （『日本にっぽん歴史れきし地名ちめい大系たいけい』 平凡社へいぼんしゃ、1979年ねん-2002年ねん を基もとにしたデータベース）