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福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかい

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福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかいドイツ: Evangelische Kirche)は、おもドイツけんで、16世紀せいき宗教しゅうきょう改革かいかくにおいて主流しゅりゅう地位ちいきずき、その伝統でんとううえにあるキリスト教きりすときょう教派きょうは言葉ことばである。これには、ルター教会きょうかい改革かいかく教会きょうかいカルヴァン主義しゅぎ)、そしてその両者りょうしゃからなる福音ふくいん主義しゅぎ合同ごうどう教会きょうかいふくまれる。さらに、現代げんだいではプロテスタント諸派しょは全般ぜんぱんかたりとしてももちいられる。

スイス福音ふくいん主義しゅぎ神学しんがくしゃカール・バルトは、「“福音ふくいん主義しゅぎの(evangelisch)”という形容詞けいようしによっておもこさせるのは、まず新約しんやく聖書せいしょであり、同時どうじ16世紀せいき宗教しゅうきょう改革かいかくである」とかたっている[1]

ヴィッテンベルクじょう教会きょうかい内部ないぶ

福音ふくいん主義しゅぎ(evangelisch)

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トルガウじょう教会きょうかい内部ないぶ福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかいとして建築けんちくされた世界せかいはつ教会きょうかい

福音ふくいん主義しゅぎ(evangelisch)の教会きょうかい名称めいしょうとしての定着ていちゃく発展はってん

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中世ちゅうせいにおいて、「福音ふくいんてき」あるいは「福音ふくいん主義しゅぎ」(ドイツ: evangelisch, ラテン語らてんご: evangelicus)というかたりは、教会きょうかい批判ひはん意味いみちながら使つかわれていた。„Vita evangelica et apostolica“代表だいひょうてき用例ようれいである[2]

宗教しゅうきょう改革かいかくにおいて、福音ふくいん主義しゅぎ(evangelisch)というかたり概念がいねんはローマ・カトリック教会きょうかい批判ひはんする場合ばあい使つかわれ、マルティン・ルターおしえとルター主義しゅぎしゃばれた支持しじしゃたちをしめさいもちいられた。しかしながら、ルター自身じしんからつくられた「ルタードイツ: Luthertum, Lutheraner, lutherisch)」という教会きょうかい名称めいしょうかんしては、ルター本人ほんにん明確めいかく拒否きょひしていた[3]。ルターは「ルター」という自己じこ表示ひょうじ名称めいしょう拒否きょひしたが、「福音ふくいん主義しゅぎ」というかたり自身じしん神学しんがくてき立場たちば表明ひょうめいした。しかし、ルターにとって「福音ふくいん主義しゅぎ」というかたりけっしてひとつの党派とうはてき名称めいしょうではなく、「キリストきょうてき」(christlich)とおな意味いみもちいられていた[4]福音ふくいん主義しゅぎかんする理解りかいにおいて、宗教しゅうきょう改革かいかくおしえは直接ちょくせつ聖書せいしょ福音ふくいん依拠いきょしているものとなしていたからである。

1555ねんアウクスブルクの宗教しゅうきょう和議わぎによって、ルター基本きほん信条しんじょうである1530ねんアウクスブルク信仰しんこう告白こくはく署名しょめいした諸侯しょこう帝国ていこく自由じゆう都市とし福音ふくいん主義しゅぎ信仰しんこうみとめられた。この信仰しんこう告白こくはく署名しょめいしなかったものたち(おもカルヴァン主義しゅぎ)が次第しだいに「改革かいかく教会きょうかい」(Reformierte Kirchen)を名乗なのるようになり、アウクスブルク信仰しんこう告白こくはくがわ勢力せいりょく(ルター)は「福音ふくいん主義しゅぎ」という呼称こしょうを、自分じぶんたちをしめすものとして使つかうようになったのである[5]

教派きょうはながれのなかルター教会きょうかい改革かいかく教会きょうかいという教会きょうかい組織そしき形成けいせいされはじめ、福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかいEvangelische Kirche)という呼称こしょうは、ルター教会きょうかい改革かいかく教会きょうかい上位じょうい概念がいねんになっていく。ルターだけでなく改革かいかく教会きょうかい容認ようにんしたヴェストファーレン条約じょうやく1648ねん締結ていけつ福音ふくいん主義しゅぎというかたり重要じゅうよう組織そしき概念がいねんになった。その、ルター教会きょうかい改革かいかく教会きょうかいという教会きょうかい名称めいしょうかみきよしマ帝国まていこくにおいて公的こうてきなものとして認知にんちされた。それにたいして、アナバプテストさい洗礼せんれい)などの宗教しゅうきょう改革かいかく急進きゅうしんは、この時点じてんでは「福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかい」にふくまれなかった。

1817ねんのルター改革かいかく教会きょうかい教会きょうかい合同ごうどうによって成立せいりつしたプロイセン福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかいにおいて、「福音ふくいん主義しゅぎ」というかたり合同ごうどう教会きょうかい包括ほうかつてきしめすものとして使つかわれた。

さらに、現代げんだいドイツけんにおいて「福音ふくいん主義しゅぎ」というかたりは、ルター改革かいかく教会きょうかいとその2合同ごうどう教会きょうかい以外いがいにも、前述ぜんじゅつのアナバプテスト[ちゅう 1]や、メソジストバプテストひとしの16世紀せいき宗教しゅうきょう改革かいかくよりのち成立せいりつした諸派しょはをもふくめた、いわゆるプロテスタント全般ぜんぱん在来ざいらいの「しゅう教会きょうかいドイツばん[ちゅう 2]」にたいして「自由じゆう教会きょうかい」とばれる)をしても使つかわれるようになった[6]ドイツでは教会きょうかいぜい申告しんこくに、ドイツ福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかい(EKD)に加盟かめいしている教会きょうかいへの所属しょぞくしめすものとして「福音ふくいん主義しゅぎ」(evangelisch)の略語りゃくごである「EV」を選択せんたくすることとなっており[3][7][8]、プロテスタント、ルター改革かいかくとうという名称めいしょう使つかわれない。

プロテスタントという呼称こしょうとその否定ひていてき評価ひょうか

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類義語るいぎごとして、「プロテスタント教会きょうかい」なるかたり概念がいねん存在そんざいしている。プロテスタント教会きょうかいというかたりは、1529ねんシュパイアー開催かいさいされた帝国ていこく議会ぎかいヴォルムスみことのりれいドイツばん復活ふっかつしたことに反対はんたいした諸侯しょこうたちの行為こうい関連かんれんしてまれたとわれている。しかし、当時とうじのドイツにおいて「プロテスタント」というかたりはローマ・カトリック教会きょうかいへの「抗議こうぎするもの」「不満ふまん分子ぶんし」という意味いみち、ルターとその支持しじしゃたちとって不名誉ふめいよなあだでもあった。

1817ねん教会きょうかい合同ごうどうによってプロイセン福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかい設立せつりつしたプロイセン王国おうこくでは、1821ねんにプロイセン国王こくおうフリードリヒ・ヴィルヘルム3せい1770ねん1840ねん)が教会きょうかい名称めいしょうかんするみことのりれいしている。そこには「プロテスタントとわりに、福音ふくいん主義しゅぎという名称めいしょうを、プロテスタントの信者しんじゃというのではなく、福音ふくいん主義しゅぎ信者しんじゃというかたえらばれねばならない。それによってこの不適切ふてきせつ名称めいしょう次第しだいられるだろう[9]」とかれていた。以来いらい、プロイセン王国おうこくではプロテスタントというかたり忌避きひされ、福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかいという教会きょうかい名称めいしょう完全かんぜん定着ていちゃくした[10]。ただし、シュパイアーがあるプファルツ地方ちほう周辺しゅうへんラインがわ対岸たいがんのフランスりょうアルザスでは、プロテスタントというかたり肯定こうていてき意味いみ使つかわれていた。

福音ふくいん主義しゅぎ(evangelisch)と福音ふくいん(evangelikal)の相違そうい

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ドイツけんにおいて、福音ふくいん主義しゅぎevangelisch:エヴァンゲリッシュ)という呼称こしょうは、あたらしい概念がいねん福音ふくいん」(evangelikal:エヴァンゲリカール)とは区別くべつする必要ひつようがある。きん現代げんだい米国べいこく英国えいこく中心ちゅうしんとしておこった「福音ふくいん」をドイツ語どいつごの「evangelikal」は、英語えいごの「evangelical」からている。英語えいごevangelical」は元々もともとドイツの「evangelisch」を意味いみしていたため、重訳じゅうやくぎゃく輸入ゆにゅうによって語義ごぎ変化へんかこっている。ドイツ・ルターないのムーブメントである敬虔けいけん主義しゅぎなどにはしはっするこのおおきなながれは、「evangelikal」というかたり頻繁ひんぱん表現ひょうげんされている。そこでの信仰しんこう理解りかいにおいては、個人こじん敬虔けいけんさがおおきな役割やくわりたしている。ドイツにおいて福音ふくいん(evangelikal)は、自由じゆう教会きょうかいだけでなく、ドイツ福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかい(EKD)にぞくするしゅう教会きょうかいにも影響えいきょうあたえている。

福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかいきょうせつ

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福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかいにおける共通きょうつうてんは、宗教しゅうきょう改革かいかくされた「4つのソラ」(「Sola」は「~のみ」を意味いみするラテン語らてんご)に要約ようやくされる。

ドイツけん福音ふくいん主義しゅぎ教会きょうかい狭義きょうぎ)の一覧いちらん

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リューベック・マリエン教会きょうかい観音開かんのんびら祭壇さいだん

オーストリア

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ de:Vereinigung Evangelischer Freikirchen」(福音ふくいん主義しゅぎ自由じゆう教会きょうかい連合れんごう)に、アナバプテスト一派いっぱである「de:Arbeitsgemeinschaft Mennonitischer Gemeinden」(メノナイトしょ教会きょうかいきょうはたらけたい)がふくまれている[6]
  2. ^ しゅう(かつてのりょうくに)において、いわば国教こっきょうとされた歴史れきし教会きょうかい

出典しゅってん

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  1. ^ カール・バルト 1962, p. 13.
  2. ^ Lukas Vischer (1986), "evangelisch", Evangelisches Kirchenlexikon, Göttingen, pp. 1198 f.(ドイツ
  3. ^ a b W. Maurer: Art. „Evangelisch,“ in: „Die Religion in Geschichte und Gegenwart,“ 3. Aufl. 1958–1963, Bd. 2, Sp.775f.(ドイツ
  4. ^ H=J.ビルクナー 1991, p. 19.
  5. ^ H=J.ビルクナー 1991, p. 23.
  6. ^ a b Mitgliedskirchen - VEF - Vereinigung Evangelischer Freikirchen”. 2021ねん9がつ1にち閲覧えつらん(ドイツ
  7. ^ Hermann Mulert: „Konfessionskunde.“ Verlag Alfred Töpelmann, Berlin, 2. Auflage 1937, S. 343.(ドイツ
  8. ^ de:Kirchensteuer (Deutschland)#Kirchensteuereinzug durch den Staat参照さんしょう(ドイツ
  9. ^ 深井ふかい 2017, p. 6.
  10. ^ H=J.ビルクナー 1991, p. 14.
  11. ^ Römer 3|Lutherbibel 2017”. ERF Bibleserver. 2021ねん8がつ24にち閲覧えつらん(ドイツ

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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