科学かがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎ

科学かがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎ(かがくてきかいぎしゅぎ、英えい: scientific skepticism)とは、言説げんせつが経験けいけん（実証じっしょう）にもとづいた研究けんきゅうによって支持しじされているのか、再現さいげん性せいを備そなえているのかを吟味ぎんみ・検討けんとうする活動かつどうであり、確たしかな知識ちしきを増ふやすための方法ほうほう論ろんとしての基準きじゅんの一部いちぶである。実際じっさいには、科学かがく者しゃの通常つうじょう的てきな議論ぎろんや研究けんきゅうに対たいしては適用てきようされておらず、主流しゅりゅうからはずれていると思おもわれるような理論りろんや主張しゅちょうの検証けんしょうに使用しようされる。

科学かがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎは哲学てつがくの懐疑かいぎ主義しゅぎとは異ことなる。厳格げんかくな哲学てつがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎというのは世界せかいの性質せいしつを知しるための我々われわれの知識ちしきや能力のうりょくをも疑うたがう。それに比くらべて、科学かがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎというのは妥当だとうな証拠しょうこを欠かいていると思おもわれる主張しゅちょうに反対はんたいしはするが、批判ひはん的てき思考しこうと帰納的きのうてき推論すいろんは（懐疑かいぎせず、受うけ入いれて）利用りようする。ポール・カーツが「The New Scepticism」で科学かがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎを詳述しょうじゅつした。

特徴とくちょう

科学かがく者しゃ同様どうよう、科学かがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃは信仰しんこう、逸話いつわ、噂うわさを受うけ入いれたり、反証はんしょう不可能ふかのうな概念がいねんに頼たよるよりも、立証りっしょう可能かのう性せいや反証はんしょう可能かのう性せいにもとづいて主張しゅちょうを評価ひょうか・吟味ぎんみしようと試こころみる。懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃはしばしば、彼かれらが「信しんじがたい」「疑うたがわしい」「一般いっぱん的てきに認みとめられた科学かがく理論りろんや知識ちしきに明あきらかに反はんする」と感かんじる主張しゅちょうに注意ちゅういを向むける。これは科学かがく的てき懐疑かいぎ論ろん者しゃと専門せんもん的てきな科学かがく者しゃの間あいだの違ちがいである。科学かがく者しゃはそれぞれの分野ぶんやで作つくられる仮説かせつを検証けんしょうするか、立証りっしょうするか、反証はんしょうしようと試こころみる。科学かがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃは風変ふうがわりな主張しゅちょうが自動的じどうてきに即座そくざに拒絶きょぜつされなければならないとは主張しゅちょうしない。そうではなくて、彼かれらは「超ちょう常つね現象げんしょうや特異とくいな現象げんしょうは徹底的てっていてきに検証けんしょうされなければならない」とし、また「途方とほうもない主張しゅちょうというのは、有効ゆうこうであると受うけ入いれられる前まえに、相応そうおうの途方とほうもない量りょうや質しつの証拠しょうこが提示ていじされなければならない」と主張しゅちょうする。

The Skeptics Societyは次つぎのように科学かがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎを説明せつめいする。

一部いちぶの人々ひとびとは懐疑かいぎ主義しゅぎが新あたらしいアイディアを拒絶きょぜつすることだと考かんがえている。さらに悪わるいことに彼かれらは「懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃ」を「皮肉ひにく屋や」と混同こんどうして、懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃは定説ていせつに異ことを唱となえるあらゆる主張しゅちょうを拒否きょひする気きむずかしいひねくれ者しゃであると考かんがえる。それは誤あやまりだ。懐疑かいぎ主義しゅぎは主張しゅちょうへの暫定ざんてい的てきなアプローチである。それはあらゆる全すべての主張しゅちょうへの理性りせい、判断はんだん、分別ふんべつの応用おうようである。神聖しんせい不可侵ふかしんなものなどない。い換いかえると、懐疑かいぎ主義しゅぎは方法ほうほう論ろんであって立場たちばではない。原則げんそく的てきには、懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃは現象げんしょうが本当ほんとうかも知しれない、あるいは主張しゅちょうが真実しんじつかも知しれないと落着らくちゃくした事象じしょうの調査ちょうさには入はいらない。我々われわれが「懐疑かいぎ的てき」であると言いうとき、我々われわれは「信しんじる前まえに確固かっこたる証拠しょうこを見みなければならない」と言いっているのだ。

...

現代げんだい懐疑かいぎ主義しゅぎはデータを集あつめ、定式ていしき化かし、テストし、自然しぜん現象げんしょうの自然しぜん主義しゅぎ的てきな説明せつめいを試こころみる科学かがく的てき手法しゅほうとして具現ぐげん化かされる。主張しゅちょうが合理ごうり的てきであるという暫定ざんてい的てきな合意ごういが形成けいせいされたとき、主張しゅちょうは事実じじつと見みなされる。しかし全すべての科学かがく的てき事実じじつは暫定ざんてい的てきであり、挑戦ちょうせんに曝さらされる。従したがって懐疑かいぎ主義しゅぎは暫定ざんてい的てきな判定はんていを導みちびく方法ほうほう論ろんである。

...

懐疑かいぎ主義しゅぎのカギは「何なにも知しらない」哲学てつがく的てき懐疑かいぎ主義しゅぎと、「なんでもあり」の騙だまされやすさに挟はさまれた危険きけんな海峡かいきょうを航行こうこうするための、継続けいぞく的てきな、そして精力せいりょく的てきな科学かがく的てき手法しゅほうの適用てきようである。...

—http://www.skeptic.com/about_us/

懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃがしばしば批評ひひょうの対象たいしょうとするのは心霊しんれい主義しゅぎ、超ちょう心理しんり学がく、ダウジング、占星術せんせいじゅつ、ホメオパシー、タロット占うらない、エイリアンによる誘拐ゆうかい、超ちょう能力のうりょくなどが含ふくまれる。ジェームズ・ランディのような懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃはこうした主張しゅちょうの偽いつわりを暴あばくことで有名ゆうめいになった。彼かれらのように偽いつわりを暴あばくことを活動かつどうの中心ちゅうしんとしている人々ひとびとをデバンカーと呼よぶ。

懐疑かいぎ主義しゅぎは科学かがく的てき手法しゅほうの一部いちぶでもある。例たとえばそれが独立どくりつして再現さいげん可能かのうであることが示しめされるまで、実験じっけんの結果けっかは確立かくりつされたとは考かんがえない。

懐疑かいぎ主義しゅぎ的てきな原則げんそくに基もとづき、権威けんいや信仰しんこうなど懐疑かいぎ的てきでない根拠こんきょではなく、確たしかな根拠こんきょによって自分じぶんの心しんを決きめられるようになることが理想りそう的てきである、と考かんがえる。

懐疑かいぎ主義しゅぎというのは、また、風変ふうがわりであったり、一般いっぱん的てきではないような主張しゅちょうに対たいする接せっし方かた（アプローチのしかた）であり、確実かくじつな証拠しょうこが不足ふそくしている場合ばあいは、信しんじることよりも疑うたがうことのほうを好このむ。懐疑かいぎ主義しゅぎは、UFOや超ちょう能力のうりょくを信しんじることは、もしそれを支持しじする経験けいけん的てきな証拠しょうこがないならば、誤あやまって導みちびかれたのだと考かんがえる。古代こだいギリシアの哲学てつがく者しゃプラトンは他たの人々ひとびとを無知むちから解放かいほうすることは、最初さいしょは人々ひとびとに抵抗ていこうされるが、それでも素晴すばらしくて壮大そうだいなことだと考かんがえていた。現在げんざいの懐疑かいぎ主義しゅぎ的てきな著述ちょじゅつ家かは様々さまざまな方法ほうほうでこの問題もんだいについて述のべる。

疑似ぎじ科学かがくの危険きけん視し

バートランド・ラッセルは、個人こじんの行動こうどうはそれぞれの信念しんねんに基もとづいている、と考かんがえた。そしてその信念しんねんが証拠しょうこによって支持しじされていなければ信念しんねんは破壊はかい的てきな行動こうどうを引ひき起おこすことがある、と考かんがえた。ジェームズ・ランディもしばしば詐欺さぎの問題もんだいについて書かく。ランディはニセ科学かがくを主張しゅちょうする者ものが、それを主張しゅちょうすることによってどのように金儲かねもうけをしているかを示しめそうと試こころみる。偽にせ医療いりょうの批判ひはん者しゃは、不ふ適格てきかくな開業医かいぎょういの不適切ふてきせつな助言じょげん（診断しんだん・処方しょほう）の問題もんだいを指摘してきする。偽にせ医療いりょうは深刻しんこくな健康けんこう被害ひがい、さらには死しをまねくことすらある。

「偽にせ医療いりょう」、「藪医者やぶいしゃ」、および「科学かがくにおける不正ふせい行為こうい」も参照さんしょう

宗教しゅうきょうに対たいする態度たいどのバリエーション

多おおくの懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃは無む神かみ論ろんか不可知論ふかちろんで、自然しぜん主義しゅぎ的てきな世界せかい観かんを持もつ。しかし献身けんしん的てきな懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃであっても、一部いちぶの人ひとは神かみへの信仰しんこうを表明ひょうめいしている。たとえばマーティン・ガードナーなどがそうである。

リチャード・ドーキンスは宗教しゅうきょうを「暴力ぼうりょくの源みなもと」と見みなし、また創造そうぞう論ろんを生物せいぶつ学がくの理解りかいへの脅威きょういと見みなす。一部いちぶの懐疑かいぎ主義しゅぎ者しゃは、指導しどう者しゃがパフォーマンスしたり是認ぜにんしたりする嘘うその奇跡きせきを人々ひとびとが信しんじることを懸念けねんして、カルト的てきな宗教しゅうきょうに対たいする反対はんたい運動うんどうを支援しえんする。

「アンチ・カルト運動うんどう」も参照さんしょう

関連かんれん項目こうもく

• 懐疑かいぎ主義しゅぎ
• 科学かがくにおける不正ふせい行為こうい
• CSI
• 呪術じゅじゅつ的てき思考しこう
• Skeptic's Dictionary
• 超ちょう常つね現象げんしょう
• 病的びょうてき科学かがく
• 未み科学かがく

関連かんれん書籍しょせき

• ロバート・Ｔ・キャロル『懐疑かいぎ論ろん者しゃの事典じてん』 上じょう、小久保こくぼ温あつし・高橋たかはし信夫しのぶ・長沢ながさわ裕ひろし・福岡ふくおか洋一よういち訳わけ、楽らく工こう社しゃ、2008年ねん10月がつ。ISBN 978-4-903063-12-6。http://www.rakkousha.co.jp/books/ka_04.html。 
• ロバート・Ｔ・キャロル『懐疑かいぎ論ろん者しゃの事典じてん』 下した、小久保こくぼ温あつし・高橋たかはし信夫しのぶ・長沢ながさわ裕ひろし・福岡ふくおか洋一よういち訳わけ、楽らく工こう社しゃ、2008年ねん10月がつ。ISBN 978-4-903063-13-3。http://www.rakkousha.co.jp/books/ka_05.html。 
• カール・セーガン『カール・セーガン　科学かがくと悪霊あくりょうを語かたる』青木あおき薫かおる訳わけ、新潮社しんちょうしゃ、1997年ねん9月がつ。ISBN 4-10-519203-5。 
  • カール・セーガン『人ひとはなぜエセ科学かがくに騙だまされるのか』 上巻じょうかん、青木あおき薫かおる訳わけ、新潮社しんちょうしゃ〈新潮しんちょう文庫ぶんこ〉、2000年ねん11月。ISBN 4-10-229403-1。  - 『カール・セーガン　科学かがくと悪霊あくりょうを語かたる』改題かいだい・文庫ぶんこ版ばん。
  • カール・セーガン『人ひとはなぜエセ科学かがくに騙だまされるのか』 下巻げかん、青木あおき薫かおる訳わけ、新潮社しんちょうしゃ〈新潮しんちょう文庫ぶんこ〉、2000年ねん11月。ISBN 4-10-229404-X。 
• マーティン・ガードナー『奇妙きみょうな論理ろんり　だまされやすさの研究けんきゅう』 1巻かん、市場いちば泰男やすお訳わけ、早川書房はやかわしょぼう〈ハヤカワ文庫ぶんこ NF〉、2003年ねん1月がつ。ISBN 4-15-050272-2。  英えい題だい In the Name of Science, 1952年ねん。
• マーティン・ガードナー『奇妙きみょうな論理ろんり　なぜニセ科学かがくに惹ひかれるのか』 2巻かん、市場いちば泰男やすお訳わけ、早川書房はやかわしょぼう〈ハヤカワ文庫ぶんこ NF〉、2003年ねん2月がつ。ISBN 4-15-050273-0。