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誤差ごさ

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系統けいとう誤差ごさから転送てんそう

誤差ごさ(ごさ、英語えいご: error)は、測定そくてい計算けいさんなどでられた M と、指定していあるいは理論りろんてきただしいあるいはしん T εいぷしろん であり、

あらわされる[1][2]

基本きほんてきには、なんらかの特定とくてい意味いみをもつ対象たいしょうについて、実際じっさいられたが、本来ほんらいからどれだけずれているかをあらわりょうである。ただし、一般いっぱんにはしんからない場合ばあい測定そくてい見積みつもりをおこなうのであり、データのばらつきや、測定そくてい分解能ぶんかいのう以下いか不確ふたしかさを内包ないほうする。したがって、この場合ばあい誤差ごさは、実測じっそくだけから統計とうけいてき見積みつもられるべきりょうとなる。データを定量ていりょうてき議論ぎろんするさいには、つねに、あらゆる種類しゅるい誤差ごさ可能かのうせい考慮こうりょしなければならない。

誤差ごさ発生はっせい原因げんいんとしては、測定そくていするさいしょうじる測定そくてい誤差ごさや、データ計算けいさんするさいしょうじる計算けいさん誤差ごさ標本ひょうほん調査ちょうさによる統計とうけい誤差ごさ標準ひょうじゅん誤差ごさとうげられる。また実際じっさいにおきる現象げんしょう数学すうがくてきなモデルにちがいがある場合ばあいにも誤差ごさしょうじる。

本来ほんらい数値すうちあらわされるものには光速こうそくのように定義ていぎそのものであったり、円周えんしゅうりつのように定義ていぎから一意いちいまるものをのぞいてかなら誤差ごさがある。また円周えんしゅうりつ (πぱい) などは、(直径ちょっけいたいする円周えんしゅうながさの割合わりあいという)定義ていぎからは数値すうち一意いちいまるにもかかわらず、それが無理むりすうであるために、それを現実げんじつ小数しょうすう表示ひょうじしようとするとかなら誤差ごさまる誤差ごさ)がしょうじる。科学かがくてき文脈ぶんみゃくにおいて数値すうちあつかさいには誤差ごさ存在そんざいしない場合ばあいのぞいてかなら誤差ごさ表示ひょうじされている。台風たいふう予想よそうえんなどは身近みぢかにある誤差ごさ表示ひょうじいちれいである。

また、これらのことから、工業こうぎょう製品せいひんとう設計せっけいおこなうときに製作せいさく段階だんかいでの誤差ごさ考慮こうりょして「まち」や「あそび」をつく誤差ごさ発生はっせいぶん吸収きゅうしゅうできるようにする。つまり、設計せっけいしゃつね部品ぶひん製作せいさくじょう許容きょようされる誤差ごさ範囲はんい設計せっけいんでおり、この誤差ごさ範囲はんい公差こうさ寸法すんぽう公差こうさ幾何きか公差こうさ)という。

測定そくてい誤差ごさ

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系統けいとう誤差ごさ

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ある測定そくていにおける測定そくていに、おな方法ほうほうもちいて測定そくていするかぎり、「しん」にたいして系統けいとうてきにずれて測定そくていされるような誤差ごさ存在そんざいする場合ばあい、それを系統けいとう誤差ごさぶ。系統けいとう誤差ごさはその原因げんいん傾向けいこうかっている場合ばあいには測定そくていからのぞくことができるが、通常つうじょう完全かんぜんのぞくことは不可能ふかのうである。

系統けいとう誤差ごさつね一定いっていであるとはかぎらない。温度おんど湿度しつどあるいはたん時間じかん経過けいかなどなんらかの外的がいてき要因よういん測定そくていぶつたいして作用さよう[よう曖昧あいまい回避かいひ]するのとはべつ測定そくてい自体じたい作用さようして測定そくてい結果けっかくるわせる場合ばあいがあるが、このようなものも系統けいとう誤差ごさのうちにふくむ。

れいとしてはし磨耗まもうしたたけ物差ものさ使つかっていろいろなおおきさのますふかさをはかることをかんがえる。この場合ばあい測定そくていしんたいして磨耗まもうしたぶんだけつねおおきくなることが予想よそうされる。おおきさがあらかじめかっているほかの物体ぶったいおな物差ものさしではかることによってこのずれのおおきさを決定けっていすることができるので、この物差ものさしを使つかったさき測定そくてい結果けっかからますふかさをもとめることができる。

しかし系統けいとう誤差ごさ原因げんいん傾向けいこうをこのように特定とくていすることは一般いっぱんにはむずかしい。たとえばこの物差ものさしの目盛めもり間隔かんかく製造せいぞうじょう問題もんだい保管ほかん方法ほうほう問題もんだいによってくるっていた場合ばあいどうぶつはかればおなじように測定そくていされるのでこれも系統けいとう誤差ごさ一種いっしゅであるがこの傾向けいこうべつ方法ほうほうによって較正こうせいすることはさきほどのれいくらべて格段かくだんむずかしい。また測定そくていかえ自体じたいによって物差ものさしの磨耗まもう進行しんこうするかもしれない。この場合ばあいさきほどとったような簡単かんたん方法ほうほうではもはや系統けいとう誤差ごさのぞくことは不可能ふかのうである。

一般いっぱん測定そくていにおける系統けいとう誤差ごさ様々さまざま原因げんいんによる誤差ごさかさねであり、そのなかには特定とくていすることがほとんど不可能ふかのうであるようなものもふくまれる。したがって原因げんいん傾向けいこうがわかっているものについて極力きょくりょくのぞ努力どりょくをしたとしてもある程度ていど系統けいとう誤差ごさのこることはやむをないことといえる。重要じゅうようなのは最後さいごのこ系統けいとう誤差ごさをできるかぎちいさくしたうえで、その上限じょうげん正確せいかく把握はあくしていることである。

偶然ぐうぜん誤差ごさ

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系統けいとう誤差ごさ測定そくていかえしにたいして一定いっていであるのにたいして、測定そくていごとにばらつく誤差ごさのことを偶然ぐうぜん誤差ごさという。

ふたたはし磨耗まもうしたたけ物差ものさしをかんがえる。一般いっぱんてきには磨耗まもうしたはしはもはや直線ちょくせんではないとかんがえられる。したがって物差ものさしをてるたびに実際じっさいます接触せっしょくするてんわりあるいは物差ものさしがわずかにかたむ測定そくてい結果けっかをばらつかせるとかんがえられる。

偶然ぐうぜん誤差ごさおおくは測定そくてい方法ほうほう自体じたいによって規定きていされるので測定そくてい方法ほうほう自体じたい改善かいぜんしないかぎのぞくことはできない。また偶然ぐうぜん誤差ごさ毎回まいかいランダムをとるので測定そくていのぞくことができない。偶然ぐうぜん誤差ごさによって測定そくてい精度せいど決定けっていされることがおおい。しかし、かえ測定そくていにより十分じゅうぶんおおくの回数かいすう測定そくていによって特定とくてい分布ぶんぷることができれば、その測定そくてい方法ほうほうそくした最適さいてき方法ほうほう平均へいきんをとる、さいしき採用さいようするなど)によってしん推定すいてい精度せいどげることができる。

偶然ぐうぜん誤差ごさおおきさをあらわ指標しひょう

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測定そくてい対象たいしょうが1つではないときの測定そくてい誤差ごさ

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上記じょうき議論ぎろんはある1つの対象たいしょうぶつたいする測定そくていさいしてこる誤差ごさについて議論ぎろんしてきたが、測定そくてい対象たいしょうとなる事象じしょう自体じたいがある分布ぶんぷっているような対象たいしょうたいする測定そくていおこな場合ばあいがある。工場こうじょうなどで生産せいさんする製品せいひん寸法すんぽう規格きかく寸法すんぽうたいしてある一定いってい範囲はんいおさまっているかどうかを測定そくていする場合ばあいなどである。

この場合ばあいはかろうとしている対象たいしょうばらつきと、測定そくてい方法ほうほう自体じたいがもつ誤差ごさ区別くべつしてかんがえなければ混乱こんらんしょうじることになる。たとえば、ある部品ぶひん寸法すんぽう精度せいどが±1%の範囲はんいおさまっているかどうかを検定けんていしたいときに、測定そくてい方法ほうほう自体じたいが±1%の誤差ごさっていたとすると測定そくてい自体じたい意味いみをなさなくなってしまったりする。このような測定そくていもちいる測定そくてい装置そうちは、あらかじめ測定そくてい誤差ごさ検定けんていしたうえで、はかろうとしている精度せいどたいして誤差ごさ十分じゅうぶんちいさいことを確認かくにんしておく必要ひつようがある。

平均へいきん測定そくてい

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ばらつきを複数ふくすう平均へいきんもとめたい場合ばあいがある。たとえば、日本人にっぽんじん身長しんちょう平均へいきんなどである。このような測定そくていおこな場合ばあい普通ふつう全数ぜんすう測定そくていすることはせず対象たいしょうとする母集団ぼしゅうだんからランダムにえらんだ標本ひょうほんもちいて測定そくていすることになる。このような場合ばあいもとめられる平均へいきん精度せいど調しらべた人数にんずうとうによる(推計すいけい統計とうけいがく)が、その測定そくてい自体じたい精度せいど勘案かんあんしなければならない。系統けいとう誤差ごさ無視むしできるような測定そくてい方法ほうほうをとるとして、偶然ぐうぜん誤差ごさについてはひとつの測定そくてい対象たいしょうかえ測定そくていする場合ばあい同様どうよう測定そくてい回数かいすうげることによって十分じゅうぶんちいさくすることが出来できる。詳細しょうさい議論ぎろんけるが、ほとんどの場合ばあい平均へいきん統計とうけいてき意味いみがあるくらい十分じゅうぶんおおくの対象たいしょうについて測定そくていしたならば、偶然ぐうぜん誤差ごさ影響えいきょう十分じゅうぶんちいさくなるが、母集団ぼしゅうだんちいさかった場合ばあいなど誤差ごさ無視むしできるだけの測定そくていすう統計とうけいてき意味いみのある測定そくていすうことなる場合ばあいもある。このような場合ばあいには測定そくてい誤差ごさによる影響えいきょうべつ考慮こうりょする必要ひつようがある。

しん

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上記じょうきのように測定そくていから誤差ごさくすことは不可能ふかのうである。したがってわれわれがるのはつね誤差ごさづけでしかない。しかしながら測定そくていすべきりょうには測定そくてい方法ほうほうとは無関係むかんけいなあるさだまったがあるとかんがえるのが合理ごうりてきである。こののことを誤差ごさ理論りろんにおいて しんまたはしんんでいる。しん未知みちであるとする立場たちばでは、しんわりに測定そくていによってられたさいかくしんかんがえる。さいかくとしてはおな測定そくていふくすうかいだけしたときの平均へいきんもちいることがおおい。

なお、量子力学りょうしりきがくによるとそもそも物理ぶつりりょうそのものが確定かくていしたたず、あるかくりつ分布ぶんぷしたがったひろがりをつ(確定かくていせい)。物理ぶつりりょう自体じたいもとから内包ないほうしている確定かくていせいと、それ以外いがい原因げんいん発生はっせいする誤差ごさ厳密げんみつ区別くべつしてかんがえる必要ひつようがある。

誤差ごさ伝播でんぱ

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一般いっぱん測定そくていによって最終さいしゅうてきもとめたいひとつの測定そくてい結果けっかからられるとはかぎらず、それぞれ固有こゆう誤差ごさ複数ふくすうからもとめなければならない場合ばあいおおい。ふくすうかい測定そくてい結果けっか平均へいきん場合ばあいなどもそのうちのひとつである。

たとえば最終さいしゅうてきもとめたい z が2つの測定そくてい x, y から z = f(x, y) という関係かんけいしきもとめられる場合ばあいx, y標準ひょうじゅん偏差へんさをそれぞれ sx, sy とすると、z標準ひょうじゅん偏差へんさ szつぎ誤差ごさ伝播でんぱ公式こうしき[3]によりもとめられる:

計算けいさん誤差ごさ種類しゅるい

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まる誤差ごさ

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数値すうちたいしてまる(まるめ、えい: rounding)をおこな場合ばあいに、すなわちその数値すうちのどこかのけたげ・てなどはしすう処理しょりおこなった場合ばあいしょうじる誤差ごさまる誤差ごさ(まるめごさ、えい: rounding error, round-off error)という[4][5]

誤差ごさ

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反復はんぷく計算けいさんにおいて、必要ひつようとされる回数かいすうよりすくない回数かいすう反復はんぷくめること()によってしょうじる誤差ごさ打切うちき誤差ごさである[4][5]

無限むげん級数きゅうすうをはじめのすうこうだけで計算けいさんすることによる誤差ごさ代表だいひょうてきである。たとえば、sin xマクローリン展開てんかい

である。これを最初さいしょの3こう計算けいさんする

誤差ごさしょうじる。

情報じょうほう

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浮動ふどう小数点しょうすうてんすう計算けいさんのように精度せいどかぎられている条件下じょうけんかで、絶対ぜったいおおきいかず絶対ぜったいちいさいかず加減かげんさんしたとき、絶対ぜったいちいさいかず無視むしされてしまう現象げんしょう[6]つぎのようなれいがある。 有効ゆうこう桁数けたすうが11けたある場合ばあいでは

2.0000000000 × 1010 + 1.0000000000 =2.0000000001 × 1010

期待きたいする結果けっかられるが、 有効ゆうこう桁数けたすうが10けたまでしか場合ばあい

2.000000000 × 1010 + 1.000000000 = 2.000000000 × 1010

となってしまう。

けた

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けたち(けたおち、えい: cancellation)とは、がほぼひとしくまる誤差ごさ数値すうち同士どうし減算げんざんおこなった場合ばあい有効ゆうこう数字すうじ減少げんしょうすること[5][7]絶対ぜったいがほぼひとしく符号ふごうことなる数値すうちどうしの加算かさん場合ばあい同様どうよう固定こてい小数点しょうすうてんすうでは、上位じょういけたにゼロがならんだかずになり、意味いみのあるはいっているけたしたのわずかなけただけとなるのでわかりやすい。浮動ふどう小数点しょうすうてんすうでは、上位じょういけたがゼロになると、正規せいきによってそれをめ、以下いかけたに "0" を強制きょうせいてき挿入そうにゅうするので、以降いこう計算けいさん下位かいけた意味いみいものになる。演算えんざんしき変形へんけいなどで、けたちをけるのが基本きほんである。

れい

有効ゆうこう数字すうじ8けた

計算けいさんする。

(1) しきとおりに計算けいさんすると、

有効ゆうこう数字すうじが5けたになってしまう。

有効ゆうこう数字すうじが8けたなので本来ほんらいなら±0.00000005%程度ていど誤差ごさであるはずが、±0.00005%程度ていど、ざっと1,000ばい誤差ごさふくむことになる。

(2) しき変形へんけいして、ほぼひとしい数値すうち同士どうし減算げんざん回避かいひすると、

となり、有効ゆうこう数字すうじ8けた結果けっかられる。ただし、つねにこのような回避かいひ可能かのうであるわけではない。

本質ほんしつは、もととなるデータ 31.638584 と 31.606961 とが、すでに最下位さいかいけたまる誤差ごさふく近似きんじであるてんにある。(1) では、上位じょうい3けたがゼロになることによって、このまる誤差ごさおおきな相対そうたい誤差ごさになってしまう。(もし、これらのもとデータがまる誤差ごさふくまないであった場合ばあいは、結果けっかまった誤差ごさふくまないてん注意ちゅういようする。)

最大さいだい問題もんだいはこののちまる誤差ごさふくんだけた上位じょうい有効ゆうこうけた喪失そうしつともな正規せいきによって上位じょういけたおおきく移動いどうすることになるため、おおきな誤差ごさふくんだままうしなわれた有効ゆうこう桁数けたすうかけじょう回復かいふくするところにある。これによって、後続こうぞくする演算えんざんすべて「巨大きょだい誤差ごさ」を「有効ゆうこうけた」として演算えんざんつづけることになり、最終さいしゅうてき演算えんざん結果けっかかけどおりの有効ゆうこう桁数けたすうっていない状態じょうたいになる。

乗除じょうじょざんおよび加算かさん符号ふごうことなる減算げんざん)にかんしては有効ゆうこう桁数けたすう減少げんしょう上位じょうい有効ゆうこうけた喪失そうしつ)をともなわないのでこの問題もんだい発生はっせいしない。また正規せいきおこなわない固定こてい小数点しょうすうてん形式けいしきでもこの問題もんだい発生はっせいしない(そもそも固定こてい小数点しょうすうてん場合ばあい精度せいどかんがかたことなるため)。(※まる誤差ごさ累積るいせきする問題もんだい発生はっせいするが、それはけた誤差ごさではない)

出典しゅってん

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  1. ^ 岡村おかむらそうわれ監訳かんやく『IEEE電気でんき電子でんし用語ようご事典じてん丸善まるぜん、1989ねん
  2. ^ 西野にしのおさむ標準ひょうじゅん電気でんき工学こうがく講座こうざ 電気でんき計測けいそくだい1しょうコロナしゃ、1985ねん
  3. ^ 誤差ごさ伝播でんぱ公式こうしき意味いみ証明しょうめい”. 具体ぐたいれいまな数学すうがく. 2022ねん1がつ22にち閲覧えつらん
  4. ^ a b 大石おおいし進一しんいち編著へんちょ精度せいど保証ほしょう数値すうち計算けいさん基礎きそコロナしゃ、2018ねん7がつISBN 978-4-339-02887-4 
  5. ^ a b c 山本やまもと哲朗てつろう数値すうち解析かいせき入門にゅうもん』(ぞうていばんサイエンスしゃ〈サイエンスライブラリ 現代げんだい数学すうがくへの入門にゅうもん 14〉、2003ねん6がつISBN 4-7819-1038-6 
  6. ^ 奥村おくむら (1991)、pp. 125–126。
  7. ^ 奥村おくむら (1991)、p. 69。

参考さんこう文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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関連かんれん項目こうもく

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