背せ斜はす

背せ斜はす構造こうぞうを表あらわした図ず

中央ちゅうおうに背せ斜はす、ずっと右みぎに向こう斜はすが見みられる例れい

レバノン、Ehden近ちかくに見みられる背せ斜はす

背せ斜はす（はいしゃ、英えい: anticline）は、構造こうぞう地質ちしつ学がくにおいて、山やま状じょうになっていて古ふるい地層ちそうが中心ちゅうしん部ぶに来きているような褶曲しゅうきょくである。山やま状じょうになっていればどのような褶曲しゅうきょくでも指さすアンチフォームとは異ことなる。このため、各かく地層ちそうの年代ねんだい関係かんけいが明あきらかになっていない時ときは、アンチフォームという言葉ことばが使つかわれる。

地質ちしつ図ずにおいて、背せ斜はすは通常つうじょう岩石がんせき地層ちそうの順序じゅんじょが褶曲しゅうきょくの中心ちゅうしんに向むかって次第しだいに古ふるくなっていく。これは隆起りゅうきされた褶曲しゅうきょく中心ちゅうしん部ぶはそれ以外いがいの部分ぶぶんに比くらべて優先ゆうせん的てきに古ふるい層そう序じょの地層ちそうまで風化ふうかしていくからである。地層ちそうは褶曲しゅうきょくの中心ちゅうしんから流ながれ盤ばんになっている。

背せ斜はすが地表ちひょう面めんに対たいして傾斜けいしゃした場合ばあい、表面ひょうめんの地層ちそうは傾かたむきの向むきを示しめすV字じ状じょうになる。背せ斜はすは通常つうじょう、脇わきに向こう斜はすが伴ともなうが、断層だんそうによりこれらの関係かんけいが複雑ふくざつになりはっきりしなくなることがある。褶曲しゅうきょくは典型てんけい的てきには、造山つくりやま運動うんどうに伴ともなう圧縮あっしゅくの結果けっかとして起おきる地殻ちかく変動へんどうによって発生はっせいする。

背せ斜はすに関かんする用語ようご

山やま状じょうの褶曲しゅうきょく構造こうぞうは、どのようなものであれアンチフォームと呼よばれる。中心ちゅうしんから離はなれるにつれて次第しだいに新あたらしい地層ちそうになっているようなアンチフォームが背せ斜はすである。

アンチフォームあるいは背せ斜はすには、褶曲しゅうきょくの頂点ちょうてんになっている地層ちそう上じょうの最高さいこう地点ちてんである背せ斜はす冠かんむり (crest) がある。背せ斜はす頂いただき (apex, hinge) は、褶曲しゅうきょくにおけるある地層ちそうにおいて曲きょく率りつが最大さいだいになっている地点ちてんである。背せ斜はす軸じく (axis) は、背せ斜はすにおいてある地層ちそうにおける背せ斜はす頂いただきを2次元じげん断面だんめん的てきに結むすんだものである。異ことなる地層ちそうの背せ斜はす頂いただきを3次元じげん的てきに結むすんだ面めんのことを背せ斜はす軸じく面めん (axial plane, axial surface) と呼よぶ。対称たいしょう的てきな背せ斜はすでは、背せ斜はす軸じく面めんの地表ちひょう面めんとの交線は背せ斜はす冠かんむりと一致いっちする。非対称ひたいしょう的てきな背せ斜はすでは、背せ斜はす軸じく面めんの地表ちひょう面めんとの交線は背せ斜はす冠かんむりから褶曲しゅうきょくのよりきつい面めんの側がわにずれる。転倒てんとう背せ斜はす (overturned anticline) は非対称ひたいしょうな背せ斜はすで、一方いっぽうの背せ斜はす翼つばさが垂直すいちょくを超こえて傾かたむいて地層ちそうの層そう序じょが上下じょうげ逆転ぎゃくてんしているようなものである。

すべての方向ほうこうに沈しずみ込こんで円形えんけいや楕円だえん形がた上じょうになっている構造こうぞうをドームと呼よぶ。ドームは1回かいの地殻ちかく変動へんどうによって形成けいせいされるか、岩塩がんえんや頁岩けつがんなどの構造こうぞう的てきに柔軟じゅうなんな物質ぶっしつが下部かぶのマグマの貫入かんにゅう、上部じょうぶへの動うごきによるダイヤピルによって形成けいせいされる。有名ゆうめいなリシャット構造こうぞうは、背せ斜はすあるいはドームが風化ふうかによって露出ろしゅつしたものであると考かんがえられている。

両りょう端はしが沈しずみ込こんでいる背せ斜はすはdoubly plunging anticlineと呼よばれ、複ふく数すう回かいの地殻ちかく変動へんどうや2つの褶曲しゅうきょくの重かさね合あわせ、あるいは下部かぶのデタッチメント断層だんそうの幾何きか構造こうぞうの関係かんけいやそのデタッチメント断層だんそう表面ひょうめんに沿そった移動いどう量りょうの差さによって形成けいせいされた可能かのう性せいがある。こうした地質ちしつ構造こうぞうにおいて最高さいこう地点ちてんとなっている場所ばしょを極ごく隆たかし部ぶ (culmination) と呼よぶ。

堆積たいせき物ぶつが溜たまることで発達はったつした細長ほそながいドームは、ペリクライン (pericline) と呼よばれる。

複ふく背せ斜はす (anticlinorium) は地域ちいき的てきな規模きぼでの背せ斜はすで連続れんぞくした背せ斜はす状じょうの褶曲しゅうきょくがあるものである。例れいとしてはジュラ紀じゅらき末すえから白はく亜紀あき初期しょきにかけてのパーセル複ふく背せ斜はす（ブリティッシュコロンビア州しゅう）や、アパラチア山脈さんみゃくのバージニア州しゅう・メリーランド州しゅう北部ほくぶにあるブルーリッジ複ふく背せ斜はす、ペンシルベニア州しゅう中央ちゅうおう部ぶにあるニッタニーバレーなどがある。

経済けいざい的てきな重要じゅうよう性せい

背せ斜はすにおける構造こうぞうトラップ

両りょう端はしが沈しずみ込こんだ背せ斜はすや極きょく隆たかし部ぶ、地質ちしつ構造こうぞう的てきなドームなどは石油せきゆや天然てんねんガス掘削くっさくの好こう適地てきちである。低てい密度みつどの石油せきゆは浮うき上あがって透水とうすい性せいの低ひくい地層ちそうや断層だんそうによって遮さえぎられるまで褶曲しゅうきょくの高たかい部分ぶぶんへと上昇じょうしょうする。炭化たんか水素すいそ（石油せきゆや天然てんねんガス）を閉とじ込こめている透水とうすい性せいの低ひくいものとしては、頁岩けつがん、石灰石せっかいせき、砂岩さがん、岩塩がんえんなどである。透水とうすい性せいの低ひくいものであれば、実際じっさいの地質ちしつを問とわない。

ペリクラインは、熱あつく金属きんぞくを含ふくんだ塩水えんすいをためる重要じゅうような地点ちてんで、アイルランド式しきの鉛なまり-亜鉛あえん鉱石こうせきやウラン鉱石こうせきなどを形成けいせいする。

褶曲しゅうきょくした地層ちそうにおける極ごく隆たかし部ぶが破砕はさいや断層だんそうによって断たち切きられているところは、鞍くら状じょう鉱脈こうみゃくの金鉱きんこう石せきが堆積たいせきしやすい場所ばしょである。

ギャラリー

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  ギリシャ、クレタ島とうにおいて石灰岩せっかいがんやチャートに見みられるきつい褶曲しゅうきょく
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  ペンシルベニア州しゅうのウィルズクリークフォーメーションに見みられるきつい褶曲しゅうきょく
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  チリのヘネラル・カレーラ湖こにおいて、風化ふうかした大理石だいりせきの背せ斜はす
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  ペンシルベニア州しゅう中央ちゅうおう部ぶのニッタニーバレーは複ふく背せ斜はすとなっている
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  エルク盆地ぼんちは断絶だんぜつした背せ斜はすになっている
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  タスカローラフォーメーションがメリーランド州しゅうカンバーランドナローズにあるウィルズ山さんに明瞭めいりょうな背せ斜はすを形成けいせいしている
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  メリーランド州しゅうラウンドトップヒルにて、ウィルズクリークフォーメーションまたはブルームスバーグフォーメーションに見みられる背せ斜はす

参考さんこう文献ぶんけん

• Bates, Robert L.; Jackson, Julia A., eds (April 11, 1984). Dictionary of Geological Terms (3rd ed.). Garden City, New York: Anchor Press/Doubleday. ISBN 978-0-385-18101-3 
• Davis, George H.; Reynolds, Stephen J. (January 19, 1996). Structural Geology of Rocks and Regions (2nd ed.). New York: John Wiley & Sons. ISBN 978-0-471-52621-6 
• Monroe, James S.; Wicander., Reed (February 8, 2005). The Changing Earth: Exploring Geology and Evolution (4th ed.). Brooks Cole. ISBN 978-0-495-01020-3 
• “JOGMEC 石油せきゆ・天然てんねんガス用語ようご辞典じてん 背せ斜はす”. 2012年ねん6月がつ24日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく

• 褶曲しゅうきょく
• 向こう斜はす
• 分水ぶんすい界かい