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脂肪しぼうきも

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
CTによって撮影さつえいされた脂肪しぼうきも

脂肪しぼうきも(しぼうかん、英語えいご: Steatotic liver disease, SLD[1])とは、肝臓かんぞう中性ちゅうせい脂肪しぼう異常いじょう蓄積ちくせきした状態じょうたいのこと、脂肪しぼうせいきも疾患しっかんのひとつの状態じょうたい

組織そしき標本ひょうほんにした場合ばあいは、かん細胞さいぼううち脂肪しぼうそら胞がられる。要約ようやくすれば、なんらかの理由りゆうによって脂肪しぼう代謝たいしゃ処理しょりいつかない状況じょうきょうおちいったため、かん細胞さいぼうなか脂肪しぼうあぶらしずくのようにまって、かん細胞さいぼうふくれている状態じょうたいである。

正常せいじょう肝臓かんぞういても湿しめ重量じゅうりょうで 5%程度ていど脂肪しぼうっているが、30%以上いじょう脂質ししつおも中性ちゅうせい脂肪しぼう)が過剰かじょう蓄積ちくせきしている状態じょうたいである[2]ボディマス指数しすう(BMI) 30 以上いじょうひとはほとんどが脂肪しぼうきもとの報告ほうこくもある[3]まれ疲労ひろう腹部ふくぶかる不快ふかいかんかんじることがあるが特徴とくちょうてき自覚じかく症状しょうじょうく、肥満ひまんしゃでもしょうかん障害しょうがいたんなる合併症がっぺいしょうとしてとらえられていたうえに、肝硬変かんこうへんなどとはことなりいま肝臓かんぞう可逆かぎゃくてき状態じょうたいであるため、医師いし関心かんしんひく臨床りんしょうてき軽視けいしされ臨床りんしょう研究けんきゅう対策たいさく不充分ふじゅうぶん指摘してきされていた[4]が、研究けんきゅう進展しんてんにより肥満ひまん内臓ないぞう脂肪しぼう蓄積ちくせき、インスリン抵抗ていこうせいなどの因子いんしくわわることでこころ血管けっかん疾患しっかん発症はっしょうリスクが相乗そうじょうてきたかまることが報告ほうこくされている[5]

ガチョウかも肝臓かんぞう強制きょうせい肥育ひいくによって肥大ひだいさせた高級こうきゅう食材しょくざいフォアグラ」や、まれニワトリめすにわとりられる「しろきも」もじつ脂肪しぼうきもである。このため脂肪しぼうきものことを、ぞくフォアグラ状態じょうたいになっているなどとたとえられる事例じれいられる。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

かつては飲酒いんしゅりょうによってアルコールせい脂肪しぼうきも(alcoholic fatty liver disease, AFLD)とアルコールせい脂肪しぼうせいきも障害しょうがい(nonalcoholic fatty liver disease, NAFLD)に大別たいべつしていたが、2020ねんあらたな分類ぶんるい概念がいねん提唱ていしょうされ[6]メタボリック症候群しょうこうぐん基準きじゅんの「肥満ひまん」「2がた糖尿とうにょうびょう」「2種類しゅるい以上いじょう代謝たいしゃ異常いじょう」をたす場合ばあい限定げんていして(Metabolic dysfunction associated steatotic liver disease, MASLD)[1]、(Metabolic dysfunction associated steatohepatitis, MASH)、アルコールせいきも疾患しっかんは (Alcohol-associated (alcohol-related) liver disease, ALD)となった[1]

疫学えきがく[編集へんしゅう]

世界せかいてきにみると飲酒いんしゅ原因げんいんのアルコールせい脂肪しぼうせい肝炎かんえん脂肪しぼうきも典型てんけいれいである[7][8]日本にっぽんでは、女性じょせい重症じゅうしょうがたアルコールせい脂肪しぼうせい肝炎かんえん増加ぞうか傾向けいこうにあるのは発泡はっぽうしゅワインブームの影響えいきょう場合ばあいがあるものの、日本にっぽんではさけ消費しょうひりょう減少げんしょうしているにもかかわらず脂肪しぼうせい患者かんじゃすう増加ぞうかしている[9][10]。1991-1998ねん宮城みやぎけんおこなわれた調査ちょうさによると、脂肪しぼうきも頻度ひんどは16.6%から32.6%と7年間ねんかんで2ばい増加ぞうかした[10]アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく調査ちょうさによれば成人せいじんだけで小児しょうにの13%に脂肪しぼうきもがあり、肥満ひまん小児しょうにの38%は脂肪しぼうきもゆうしているとの報告ほうこくがある[11][5]

脂肪しぼうきも原因げんいん様々さまざまだが、進行しんこうせい可逆かぎゃくてき変化へんかであるため原因げんいん除去じょきょすると正常せいじょうもど[4]。したがって、脂肪しぼうきも段階だんかい生活せいかつ改善かいぜん実施じっしして、脂肪しぼうきも解消かいしょうしてしまえば、いのちかかわることく、脂肪しぼうきも自体じたい病気びょうきとはとらえられていない[4]。ただし、脂肪しぼうきも肝臓かんぞう慢性まんせいてき炎症えんしょう誘発ゆうはつしたり、きも機能きのう障害しょうがいしょうじさせる場合ばあいり、放置ほうちすると不可ふかぎゃくてき病変びょうへんである肝硬変かんこうへん肝臓かんぞうガン原因げんいんともなる[12]とくに、日本にっぽんにおける脂肪しぼうきものうちアルコールせい脂肪しぼうせい肝炎かんえん成人せいじん健診けんしん受診じゅしんしゃやく30%(男性だんせい-やく40%、女性じょせい-やく17%[13])が罹患りかんしているとされる[14][15]

日本人にっぽんじん倹約けんやく遺伝子いでんしとしてられる変異へんいがた βべーた-adrenergic receptor (Trp64Agr)の保有ほゆうりつたかく、Trp64Agr をゆうしている場合ばあいアルコールせい脂肪しぼうせいきも疾患しっかん罹患りかんリスクは2.4ばい上昇じょうしょうする[3]。このほか、PNPLA3の遺伝子いでんしがたやコリン欠乏症けつぼうしょう関連かんれんする Val175Met 遺伝子いでんしがたゆうしていると脂肪しぼうきも発症はっしょうしやすい[3]

臨床りんしょうぞう[編集へんしゅう]

脂肪しぼうきもによる肝臓かんぞう変化へんか脂肪しぼう蓄積ちくせきして肥大ひだいひだり)→かん細胞さいぼう壊死えしし、線維せんいわって瘢痕はんこんとなり(なか)→肝硬変かんこうへんいたる(みぎ)。

脂肪しぼうきも自体じたい病気びょうきとはとらえられず軽視けいしされがちであるものの[4]肥満ひまん脂質ししつ異常いじょうしょう糖尿とうにょうびょうなどの生活せいかつ習慣しゅうかんびょう密接みっせつ関係かんけいして発生はっせいする場合ばあいもある。一方いっぽうで、人間にんげんドック受診じゅしんしゃのうち BMI 25 以下いか肥満ひまんきも機能きのう検査けんさで ALT(GPT) や ALP(GOT) になんらかの異常いじょうみとめないぐんからも脂肪しぼうきも所見しょけんゆうするひとが 30% 程度ていどいるとの報告ほうこくがある[16]

しかし、アジア太平洋たいへいよう地域ちいきではアルコールせい脂肪しぼうせいきも疾患しっかん(NAFLD)患者かんじゃの15%から21%は肥満ひまんともなっている[17][5]。また、長期ちょうき糖尿とうにょうびょう患者かんじゃではづかぬうちに脂肪しぼうきもから肝硬変かんこうへん進展しんてんすることもある[14]

なお、過剰かじょう栄養えいようによって脂肪しぼうきもとなることがある一方いっぽうで、こばめしょくしょう[18]不適切ふてきせつダイエットによるてい栄養えいよう飢餓きが状態じょうたい長期間ちょうきかん継続けいぞくした場合ばあいも、脂肪しぼうきもになることもられている[12]

ステージ[編集へんしゅう]

脂肪しぼう蓄積ちくせき進行しんこうするときも細胞さいぼう徐々じょじょ線維せんいしてく。線維せんいのステージは下記かきよう分類ぶんるいされる[19]

Stage 1
しょう中心ちゅうしん線維せんい部分ぶぶんてきないし広汎こうはん
Stage 2
Stage 1 にくわえてもんみゃくいき線維せんい部分ぶぶんてきないし広汎こうはん
Stage 3
Bridging fibrosis
Stage 4
肝硬変かんこうへん

線維せんい進展しんてん予測よそくできる指標しひょうとして FIB-4 index がある[20][21]

FIB-4 index 算出さんしゅつ方法ほうほう
( AST 年齢ねんれい ) ( 血小板けっしょうばんすう )
  • 注記ちゅうき
    AST および ALT は、IU/L。血小板けっしょうばんすうは、109/L (0.1まん/μみゅーL)
  • 判定はんてい
    2.67以上いじょうかん線維せんい確実かくじつで NASH の可能かのうせいたかい。ようきもせいけん[22]
    ALT基準きじゅんないであっても NAFLD の場合ばあいは、1.659以上いじょう(≧)、きも線維せんい可能かのうせい[23]
    1.3以下いかかん線維せんいなし。経過けいか観察かんさつ[22]

原因げんいん[編集へんしゅう]

もっとおお原因げんいんで、とくエタノール換算かんさんで20 (g/にち)をえる大量たいりょう飲酒いんしゅは、しばしばアルコールせい脂肪しぼうきもこす。
急性きゅうせい妊娠にんしん脂肪しぼうきも(AFLP)・HELLP症候群しょうこうぐんひとし
  • 栄養えいよう摂取せっしゅ異常いじょう摂食せっしょく障害しょうがい過多かた - 肥満ひまん不足ふそく - 飢餓きがこばめしょくしょう[18][25]小腸しょうちょう外科げか手術しゅじゅつ[26])、とう代謝たいしゃ異常いじょう[27]

診断しんだん[編集へんしゅう]

いくつかの検査けんさ問診もんしんにより診断しんだんおこなう。

NAFLD/NASH 診断しんだんチャート[28]
脂肪しぼうきも
かん障害しょうがい
HBs 抗原こうげん, HVC 抗体こうたい
各種かくしゅ自己じこ抗体こうたいなど
ウイルスせいきも疾患しっかん
自己じこ免疫めんえきせいきも疾患しっかん
飲酒いんしゅれき アルコールせいきも障害しょうがい
NAFLD 生肝いきぎもけんによる
病理びょうり診断しんだん
アルコールせい脂肪しぼうせい肝炎かんえん
(NASH)
アルコールせい脂肪しぼうきも
NAFL
  • 日本にっぽん消化しょうかびょう学会がっかい NAFLD/NASH 診療しんりょうガイドライン2014」[28]引用いんよう改変かいへん

血液けつえき検査けんさ[編集へんしゅう]

Bがた肝炎かんえんウイルス(HBs 抗原こうげん)、Cがた肝炎かんえんウイルス(HVC 抗体こうたい)、各種かくしゅ自己じこ抗体こうたい自己じこ免疫めんえきせい肝炎かんえん)などの検査けんさおこなげん疾患しっかん鑑別かんべつおこなう。アラニンアミノもと転移てんい酵素こうそ (ALT)やアスパラギンさんアミノもと転移てんい酵素こうそ(AST)の血液けつえき検査けんさ結果けっかだけで、脂肪しぼうきも診断しんだんおこなえない。理由りゆうはウイルスせい肝炎かんえん原因げんいんとなる脂肪しぼうきもでは ALT、AST がときに、ときに100 (IU/L)をえる高値たかねになるのにたいして、アルコールせい脂肪しぼうきもでは ALT、AST の上昇じょうしょう程度ていどちいさい[29]。また、アルコールせい脂肪しぼうせい肝炎かんえん(NASH)ではかん細胞さいぼう線維せんい進行しんこうして正常せいじょうかん細胞さいぼうすくなくなると、ALTやASTのはむしろ低下ていかするためである[29]

検査けんさ 正常せいじょう 脂肪しぼうきもでは?
AST(GOT) 10-40 IU/L 軽度けいど上昇じょうしょう栄養えいようでは ALT > AST
ALT(GPT) 5-35 IU/L アルコールせい場合ばあいは AST > ALT
γがんま-GTP 50 IU/L以下いか アルコールせい脂肪しぼうきもではたかくなる
コリンエステラーゼ 186-490 IU/L 栄養えいよう上昇じょうしょうする
そうコレステロール 120-220 mg/dl たかくなる
中性ちゅうせい脂肪しぼう 50-150 mg/dl たかくなる
血小板けっしょうばん 13-37.9 まん/μみゅーL[30] 20まん/μみゅーL以下いか[31]

総合そうごうみなみ東北とうほく病院びょういん資料しりょう[32]より引用いんよう改変かいへん

画像がぞう検査けんさ[編集へんしゅう]

  • エコー検査けんさ
    肝腎かんじんコントラスト上昇じょうしょう(hepatorenal contrast)」(じんよりもきもこうエコー)や「かん脾コントラスト上昇じょうしょう」(脾よりもきもこうエコー)がられる。また深部しんぶ減衰げんすい(deep attenuation)もみられる。肝臓かんぞうしゅだいし、かんみぎ下端かたんみぎじんしもきょくよりもがわ位置いちすることがある。ちょう音波おんぱななめに入射にゅうしゃする胆嚢たんのうかべでは、かべ不明瞭ふめいりょうする「fatty boundless sign」もみられる。
    限局げんきょくせい脂肪しぼう沈着ちんちゃくおお部分ぶぶんすくない部分ぶぶんがある場合ばあい腫瘍しゅよう鑑別かんべつようする。鑑別かんべつてんは、もんみゃくなど正常せいじょうみゃくかん構造こうぞう有無うむなどである。
  • CT
    きも脂肪しぼうともなきも実質じっしつてい吸収きゅうしゅうとなる。きも/脾のCTが0.9以下いかきも脂肪しぼう30%の目安めやすとなるため、CTじょうはこれによって脂肪しぼうきもとされることがおおい。みゃくかんかん実質じっしつよりこう吸収きゅうしゅうとなることもある。
  • MRI

病理びょうり検査けんさ[編集へんしゅう]

アルコールせい脂肪しぼうきも疾病しっぺい(NAFLD)のマッソン・トリクロームおよびヴァーホフ染色せんしょくによる顕微鏡けんびきょう写真しゃしんおおきな楕円だえんがた空隙くうげき脂肪しぼうしずくのこったかん細胞さいぼうあか死滅しめつした細胞さいぼうあとあつまった線維せんいみどりまっている。おおきくふくらんだ脂肪しぼうしずくが、圧迫あっぱくによりきも細胞さいぼうかく変形へんけいさせている。

きもせいけんにての病理びょうり組織そしき所見しょけん決定けっていされる。基本きほんてきにはかん細胞さいぼう脂肪しぼう変性へんせいみとめられる。

  • アルコールせい脂肪しぼうきも
  • アルコールせい脂肪しぼうきも
診断しんだん基準きじゅん

観察かんさつしゃ判断はんだん差異さい施設しせつあいだ差異さい低減ていげんのため、下記かきひょうによるスコアリングによる病理びょうり診断しんだん(NAS: NAFLD Activity Score)がおこなわれることがある[28]

NAS (NAFLD Activity Score)
項目こうもく 程度ていど 点数てんすう
かん脂肪しぼう 5%未満みまん 0てん
5-33% 1てん
33-66% 2てん
66%以上いじょう 3てん
しょうない炎症えんしょう 病巣びょうそうなし 0てん
200ばい視野しやで2箇所かしょ病巣びょうそう以下いか 1てん
200ばい視野しやで2-4箇所かしょ病巣びょうそう 2てん
200ばい視野しやで4箇所かしょ以上いじょう病巣びょうそう 3てん
かん細胞さいぼう風船ふうせんさま変化へんか なし 0てん
少数しょうすう風船ふうせんさま変性へんせい細胞さいぼう 1てん
多数たすう風船ふうせんさま変性へんせい細胞さいぼう 2てん
診断しんだん 合計ごうけい
脂肪しぼうきも (NAFL) 0-2てん
境界きょうかいがた NASH 3-4てん
アルコールせい脂肪しぼう肝炎かんえん NASH 0-8てん

さらに、下記かき Younossiの診断しんだん基準きじゅん併用へいようすることがある[28]

  1. かん細胞さいぼう脂肪しぼう程度ていどわない)にくわしょう中心ちゅうしんせいかん細胞さいぼう風船ふうせんさま変性へんせい(centrilobular ballooning)やMallory-Denkたいみとめるもの。
  2. かん細胞さいぼう脂肪しぼうくわしょう中心ちゅうしんせい細胞さいぼう周囲しゅうい/るいほら周囲しゅうい(pericellular/perisinusoidal)の線維せんいまたは架橋かきょう形成けいせい(bridging fibrosis)をみとめるもの。

以上いじょう 1.または 2.をたす場合ばあいNASHと定義ていぎする。

病態びょうたい[編集へんしゅう]

炭水化物たんすいかぶつ糖分とうぶんはグルコースに分解ぶんかいされ生体せいたい活動かつどう消費しょうひされるが、余剰よじょうぶん中性ちゅうせい脂肪しぼうあぶら合成ごうせいされかん細胞さいぼうちゅう蓄積ちくせきされる。砂糖さとう分解ぶんかいしてできる果糖かとうは、りょう依存いぞんするきも毒性どくせいしめす。果糖かとうは、肝臓かんぞうでのみ代謝たいしゃされる。この理由りゆうとして、果糖かとうはグルコースにくらひらけたまきりつたかく(やく10ばい糖化とうか反応はんのう使つかわれやすいため[33])、生体せいたいへの毒性どくせいはグルコースよりもはるかにたかい。この毒性どくせいはや目的もくてきで、肝臓かんぞうはグルコースよりも果糖かとう優先ゆうせんてき処理しょりする[34]果糖かとうは、肝臓かんぞう骨格こっかくすじインスリン抵抗ていこうせいこす。インスリン抵抗ていこうせいしょうじると、膵臓すいぞうからのインスリン分泌ぶんぴつうながされる。過剰かじょうなインスリンによるこうインスリンしょうは、各種かくしゅ臓器ぞうき障害しょうがいをもたらす。たとえば、脂質ししつ異常いじょうしょう肝臓かんぞう炎症えんしょうをもたらす[35][36]

これとはぎゃくに、たとえばこばめしょくしょうなどによって、生体せいたい飢餓きが状態じょうたい長期ちょうきにわたってつづいた場合ばあいも、かん細胞さいぼうない脂肪しぼう蓄積ちくせきして、脂肪しぼうきもになることがある。

脂肪しぼうきもにおいては、血清けっせいフェリチン増加ぞうかがしばしばみられ、脂肪しぼうきものなかでもアルコールせい脂肪しぼうせい肝炎かんえん (NASH) をふくんだアルコールせい脂肪しぼうせいきも疾患しっかんでは、きも組織そしきないてつ過剰かじょうかん障害しょうがい増悪ぞうあく因子いんしかんがえられている[37]

治療ちりょう[編集へんしゅう]

  • アルコールせい脂肪しぼうきもであれば、禁酒きんしゅおこなうと6週間しゅうかん以内いない症状しょうじょう改善かいぜんする。必要ひつようであれば食生活しょくせいかつ改善かいぜんおこなう。なお、肝硬変かんこうへんいたっていない、脂肪しぼうきも状態じょうたい肝臓かんぞう可逆かぎゃくてきなので[38]患者かんじゃ生涯しょうがいにわたる禁酒きんしゅではなく、脂肪しぼうきも正常せいじょう肝臓かんぞうもどるまでの一時いちじてきだんしゅ場合ばあいがある。肝臓かんぞう正常せいじょうになったと診断しんだんされたのちには、脂肪しぼうきも再発さいはつしない程度ていど適度てきど飲酒いんしゅであればゆるされる。ぎゃくに、アルコールせい脂肪しぼうきもであるのにもかかわらず飲酒いんしゅしてしまう対応たいおうった場合ばあい、アルコールせい肝炎かんえん、さらには、アルコールせい肝硬変かんこうへんへと進行しんこうしてしまい、一時いちじてき禁酒きんしゅではなく、生涯しょうがいにわたる禁酒きんしゅもとめられる。なぜなら、肝硬変かんこうへん可逆かぎゃくてき肝臓かんぞう病変びょうへんであり延命えんめい治療ちりょうしかできないものの、飲酒いんしゅ肝硬変かんこうへん進行しんこう促進そくしんするため、だんさけすることが、延命えんめいにつながるからである[39]
  • 肥満ひまんともなアルコールせい脂肪しぼうせい肝炎かんえんであれば、ダイエットひとし食生活しょくせいかつ改善かいぜん基本きほんで、間食かんしょく夜食やしょく習慣しゅうかん悪化あっかさせる[40]。コロラド州立しゅうりつ大学だいがく教授きょうじゅの Michael Pagliassotti が、実験じっけん動物どうぶつを、摂取せっしゅエネルギーりょうの20%ぶん砂糖さとう飼育しいくしたところ、その実験じっけん動物どうぶつには、数ヶ月すうかげつには脂肪しぼうきもしょうじて、インスリン抵抗ていこうせいしょうじた。砂糖さとうをやめたところ、脂肪しぼうきもすみやかに消失しょうしつし、インスリン抵抗ていこうせい消失しょうしつしたと報告ほうこくしている[35][40]
  • こばめしょくしょうタンパク質たんぱくしつ摂取せっしゅ削減さくげんするダイエットが原因げんいんとなっている場合ばあい摂取せっしゅカロリーの主体しゅたい炭水化物たんすいかぶつとうしつ過剰かじょうていタンパク-こう炭水化物たんすいかぶつ)となっていることおおいが、タンパク質たんぱくしつ主体しゅたいの(こうタンパク-てい炭水化物たんすいかぶつ)に食事しょくじえることで改善かいぜんされる。
  • 食事しょくじ療法りょうほうのポイント[40]
  1. エネルギー
    • 25-35kcal/kg蛋白質たんぱくしつ 1.0-1.5g/kg
  2. 3だい栄養素えいようそ配分はいぶん
    • 蛋白質たんぱくしつ 20-25%,脂質ししつ 15-20%,とうしつ 60%

こう脂肪しぼうきもビタミンさま物質ぶっしつ[編集へんしゅう]

とうアルコールの1しゅであるイノシトールは、一般いっぱんにビタミンには分類ぶんるいされないものの、ビタミンとたような作用さようったビタミンさま物質ぶっしつの1つとしてげられる[41]。このイノシトールの作用さようの1つとして、脂肪しぼうきもになりにくくする作用さよう存在そんざいするとわれている[42]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c NAFLD,NASHの病名びょうめい変更へんこう (PDF) 日本にっぽん肝臓かんぞう学会がっかい 2023/09/29.
  2. ^ 斎藤さいとう征夫いくお柳生やぎゅう聖子せいこ服部はっとり泰子やすこ ほか、健康けんこう診査しんさ受診じゅしんしゃにおける脂肪しぼうきもかんする研究けんきゅう日本にっぽん衛生えいせいがく雑誌ざっし』 1989ねん 44かん 5ごう p.953-961, doi:10.1265/jjh.44.953
  3. ^ a b c 宮本みやもと敬子けいこ小野おの正文まさふみ西原にしはら利治としはるアルコールせい脂肪しぼうせいきも疾患しっかん疾患しっかん関連かんれん遺伝子いでんし日本にっぽん消化しょうかびょう学会がっかい雑誌ざっし』 2013ねん 110かん 9 p.1597-1601, doi:10.11405/nisshoshi.110.1597
  4. ^ a b c d 斎藤さいとう征夫いくお大塚おおつかとおる高橋たかはしれい岡本おかもと伸夫のぶお脂肪しぼうきも推移すいいとその発症はっしょう因子いんしかんする研究けんきゅう消化しょうか集団しゅうだん検診けんしん』 1993ねん 31かん 3ごう p.26-32, doi:10.11404/jsgcs1982.31.3_26
  5. ^ a b c 小川おがわ祐二ゆうじ, 今城いましろけんじん, 米田よねだ正人まさと ほか、「NAFLDの疫学えきがく病態びょうたいのupdate」『日本にっぽん消化しょうかびょう学会がっかい雑誌ざっし』 2014ねん 111かん 1ごう p.14-24, doi:10.11405/nisshoshi.111.14
  6. ^ 川口かわぐちたくみ脂肪しぼうきもしん概念がいねん:Metabolic dysfunction-associated fatty liver disease(MAFLD)」『肝臓かんぞうだい64かんだい2ごう日本にっぽん肝臓かんぞう学会がっかい、2023ねん、33-43ぺーじdoi:10.2957/kanzo.64.33 
  7. ^ 土居どいただし田中たなかしんさとる佐藤さとう康裕やすひろ ほか、原著げんちょ脂肪しぼうせいきも疾患しっかん頻度ひんどおよぼすアルコール摂取せっしゅ影響えいきょう肝臓かんぞう』 2010ねん 51かん 9ごう p.501-507, doi:10.2957/kanzo.51.501
  8. ^ 山岸やまぎし由幸よしゆき加藤かとうさん、「アルコールせいきも障害しょうがい」『medicina.』 43かん12ごう, 2006/11/30, doi:10.11477/mf.1402101510
  9. ^ 西原にしはら利治としはる大西おおにし三朗さぶろうNASH (アルコールせい脂肪しぼう肝炎かんえん) のあらたな展開てんかい肝臓かんぞう』 2003ねん 44かん 11ごう p.541-545, doi:10.2957/kanzo.44.541
  10. ^ a b 小野寺おのでら博義ひろよし, 鵜飼うかい克明かつあき, 岩崎いわさき隆雄たかお, 渋谷しぶや大助だいすけ, 松井まつい昭義あきよし, 小野おの博美ひろみ, 町田まちだ紀子のりこ, 阿部あべ寿恵ひさえちょう音波おんぱ検査けんさもちいた健診けんしんにおける脂肪しぼうきも頻度ひんど推移すいい」『健康けんこう医学いがくだい15かんだい3ごう日本人にっぽんじんあいだドック学会がっかい、2000ねん、211-214ぺーじdoi:10.11320/ningendock1986.15.211ISSN 0914-0328NAID 130003380856 
  11. ^ Christopher P. Day, Oliver F.W. James (1998). “Steatohepatitis: A tale of two “hits”?”. Gastroenterology 114 (4): 842-845. doi:10.1016/S0016-5085(98)70599-2. ISSN 0016-5085. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0016508598705992. 
  12. ^ a b 上野うえの たかしとう脂肪しぼうきも脂肪しぼうせい肝炎かんえんとはどんな病気びょうき』 (日本にっぽん消化しょうかびょう学会がっかい
  13. ^ 戸塚とつか久美子くみこ、「しょく習慣しゅうかん生活せいかつ習慣しゅうかんびょう発症はっしょう関連かんれん : 既存きそん人間にんげんドックデータを利用りようした検討けんとう筑波大学つくばだいがく学位がくい論文ろんぶん 12102かぶとだい7849ごう, hdl:2241/00143977
  14. ^ a b 糖尿とうにょうびょうだい4の合併症がっぺいしょう脂肪しぼうきも由来ゆらい肝硬変かんこうへん 日経にっけいメディカル 記事きじ:2017ねん6がつ6にち
  15. ^ 小野寺おのでら博義ひろよし, 岩崎いわさき隆雄たかお, 渋谷しぶや大助だいすけ, 松井まつい昭義あきよし, 小野おの博美ひろみ, 町田まちだ紀子のりこ, 阿部あべ寿恵ひさえちょう音波おんぱ健診けんしんでの脂肪しぼうきもれいにおける脂肪しぼうきもおよび血液けつえき生化学せいかがく検査けんさ経時きょうじてき変化へんかかんする検討けんとう」『健康けんこう医学いがくだい16かんだい2ごう日本人にっぽんじんあいだドック学会がっかい、2001ねん、157-161 doi=10.11320/ningendock1986.16.157。 
  16. ^ 大月おおつきかずせん肥満ひまんしゃにおけるちょう音波おんぱ診断しんだんによる脂肪しぼうきも生活せいかつ習慣しゅうかんびょう関連かんれんについて」『日本にっぽん消化しょうか集団しゅうだん検診けんしん学会がっかい雑誌ざっしだい40かんだい6ごう日本にっぽん消化しょうかがん検診けんしん学会がっかい、2002ねん、542-546ぺーじdoi:10.11404/jsgcs2000.40.6_542 
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関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]