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ベンジャミン・フランクリン の1793年 ねん の自伝 じでん の初版 しょはん の表紙 ひょうし
自伝 じでん (じでん、英 えい : autobiography )は、人 ひと が自分 じぶん 自身 じしん の眼 め から見 み た自分 じぶん の生涯 しょうがい 、人生 じんせい を記述 きじゅつ したものを言 い う。自身 じしん による伝記 でんき 。自叙伝 じじょでん (じじょでん)。
自伝 じでん の英語 えいご 表記 ひょうき である autobiography は、ギリシア語 ご の α あるふぁ ὐτός (-autos/自分 じぶん ) + βίος (-bios/生命 せいめい ) + γράφειν (-graphein/書 か く) から由来 ゆらい した言葉 ことば である。
一般 いっぱん 的 てき な、他者 たしゃ による伝記 でんき は通常 つうじょう 、非常 ひじょう に広範囲 こうはんい にわたる資料 しりょう や視点 してん を基 もと にしている。しかし、自伝 じでん は、完全 かんぜん に執筆 しっぴつ 者 しゃ である本人 ほんにん の記憶 きおく 、回顧 かいこ 、回想 かいそう に基 もと づいており、資料 しりょう を利用 りよう するとしても記憶 きおく の補助 ほじょ としてであるという点 てん で一般 いっぱん の伝記 でんき とは異 こと なっている。古代 こだい ギリシア やローマ では、こうした性格 せいかく の書 か き物 もの を、アポロギア(apologia)と称 しょう した。本質 ほんしつ 的 てき にそれは、内省 ないせい というよりも、自分 じぶん の採 と った政治 せいじ 的 てき な言動 げんどう についての自己 じこ 弁明 べんめい の書 しょ であったからである。アウグスティヌス は、彼 かれ の自伝 じでん 的 てき 著述 ちょじゅつ に「告白 こくはく 」(Confession 、信仰 しんこう 告白 こくはく )という表題 ひょうだい をつけた。ジョン・ヘンリー・ニューマン の自伝 じでん は、まさに彼 かれ の人生 じんせい の自己 じこ 弁明 べんめい であった。ジャン・ジャック・ルソー もまたこのタイトルを踏襲 とうしゅう した。自伝 じでん というものを一般 いっぱん 的 てき に広 ひろ めたのはベンジャミン・フランクリン である。
漢字 かんじ 圏 けん では、前漢 ぜんかん の司馬 しば 遷 が「史記 しき 」で最後 さいご の章 しょう に「太 ふとし 史 し 公 おおやけ 自序 じじょ 」を置 お き、解説 かいせつ と自伝 じでん を兼 か ねた。続 つづ いて班 はん 固 かた が「漢書 かんしょ 」でそれを踏襲 とうしゅう し「叙 じょ 伝 でん 」を最後 さいご に置 お いた。
ロ ろ ーマ帝国 まていこく 時代 じだい の弁論 べんろん 家 か リバニウス (Libanius,314-393)は、彼 かれ の弁論 べんろん のひとつとして、人生 じんせい の回顧 かいこ 録 ろく (自伝 じでん )を作 つく ったが、それは公 おおやけ にする類 るい の物 もの ではなく、自身 じしん の研究 けんきゅう の内 うち だけで読 よ まれたであろう文芸 ぶんげい 的 てき な物 もの であった。
回顧 かいこ 録 ろく (回想 かいそう 録 ろく )と自伝 じでん とは少々 しょうしょう 異 こと なる。自伝 じでん がその人物 じんぶつ の「人生 じんせい や生涯 しょうがい 」に焦点 しょうてん を当 あ てるのに対 たい して、回顧 かいこ 録 ろく は、自身 じしん の記憶 きおく や見解 けんかい および感情 かんじょう に重点 じゅうてん を置 お いて、より狭 せま い範囲 はんい (特定 とくてい の事象 じしょう や事件 じけん )について述 の べられる。
近代 きんだい の回顧 かいこ 録 ろく はしばしば、過去 かこ の日記 にっき や手紙 てがみ 、写真 しゃしん を基 もと にしている。
1980年代 ねんだい 頃 ころ までは、著名 ちょめい 人 じん 以外 いがい が回顧 かいこ 録 ろく を書 か いたり出版 しゅっぱん したりすることは稀 まれ だった。しかし、『アンジェラの灰 はい 』や『 The Color of Water 』といった回顧 かいこ 録 ろく が好評 こうひょう を博 はく し、多 おお くを売 う り上 あ げたことにより、多 おお くの人々 ひとびと がこのジャンル に手 て を染 そ めることとなった。
20世紀 せいき 前半 ぜんはん のドイツ の哲学 てつがく 者 しゃ 、ゲオルク・ミッシュ に『自伝 じでん の歴史 れきし 』(Geschichte der Autobiographie)という大部 たいぶ の研究 けんきゅう 書 しょ がある。1907年 ねん から刊行 かんこう 開始 かいし で、最後 さいご の巻 まき が1969年 ねん に出 で ている。日本語 にほんご 訳 やく はまだない。その他 た 、フィリップ・ルジェンヌ の『フランスの自伝 じでん 自伝 じでん 文学 ぶんがく の主題 しゅだい と構造 こうぞう 』(叢書 そうしょ ・ウニベルジタス 法政大学 ほうせいだいがく 出版 しゅっぱん 局 きょく 1995年 ねん )、同 どう 『自伝 じでん 契約 けいやく 』(水声 すいせい 社 しゃ 1993年 ねん )など、数 かず は多 おお くないが、人間 にんげん の自己 じこ 認識 にんしき の具体 ぐたい 例 れい として自伝 じでん を研究 けんきゅう する動 うご きがある。