(Translated by https://www.hiragana.jp/)
莢膜 - Wikipedia コンテンツにスキップ

さいかちまく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
原核げんかく細胞さいぼう構造こうぞうCapsule:さいかちまくen:Cell wall:細胞さいぼうかべen:Plasma membrane:細胞さいぼうまくen:Cytoplasm:細胞さいぼうしつen:Ribosomes:リボソームen:Plasmid:プラスミドPili:せんBacterial flagellum:真正しんしょう細菌さいきんむちen:Nucleoid( en: Circular DNA):かくさまたい このはグラム陽性ようせいきんあらわしているので、「そとまく」はない。

さいかちまく(きょうまく、capsule)は、一部いちぶ真正しんしょう細菌さいきんつ、細胞さいぼうかべ外側そとがわ位置いちする被膜ひまくじょう構造こうぞうぶつ細菌さいきん分泌ぶんぴつしたゲルじょうねば質物しちもつが、細胞さいぼう表面ひょうめんにほぼ均一きんいつあつさでそうしたものである。白血球はっけっきゅうによるしょく作用さようなどの宿主しゅくしゅ免疫めんえき機構きこうによって排除はいじょされることを回避かいひする役割やくわりち、病原菌びょうげんきん病原びょうげんせい関与かんよしている。

概要がいよう

[編集へんしゅう]
さいかちまくおよび類似るいじ構造こうぞうぶつ
1. さいかちまく: ほぼ均一きんいつあつみで周囲しゅういとの境界きょうかい明瞭めいりょう
2. 粘液ねんえきそう: 不定ふていがた境界きょうかい不明瞭ふめいりょう
3. バイオフィルム: 物体ぶったい表面ひょうめんそう形成けいせいし、複数ふくすうきん内部ないぶ生存せいぞん

さいかちまくは、ドイツのKapsel(カプセルどうかたり英語えいごのcapsule)にたいする訳語やくごである。「まく」という名称めいしょういているが、細胞さいぼうまくかくまくなどのような細胞さいぼう組織そしきがくてきまく脂質ししつじゅうまく)ではなく、高分子こうぶんしからなるゲルじょうねば質物しちもつきんたい表面ひょうめんにほぼ均一きんいつあつさで付着ふちゃくして出来でき層状そうじょう部分ぶぶんである。細菌さいきんによっては、このそう部分ぶぶんきん周囲しゅういとの境界きょうかいせん明瞭めいりょうになり、光学こうがく顕微鏡けんびきょうしたで、あたかもきんたい周囲しゅういにもう一層いっそうまくっているようにえるものがあり、このような場合ばあい、この層状そうじょう部分ぶぶんさいかちまくぶ。一方いっぽうきんによっては分泌ぶんぴつされたねば質物しちもつ周囲しゅうい境界きょうかい不明瞭ふめいりょうで、形状けいじょう一定いっていでないものがあり、このような場合ばあいには粘液ねんえきそう(slime layer)とばれるが、形態けいたいじょうちがいをのぞけば、本質ほんしつてきにはほぼ同様どうようのものである。また、これらと類似るいじしたものとして、バイオフィルムられている。分泌ぶんぴつした大量たいりょうねば質物しちもつによって複数ふくすうきんたいおおつつみ、また物体ぶったい表面ひょうめんつよ付着ふちゃくして、増殖ぞうしょく生存せいぞんのための「」をつくげたものである。

さいかちまく一部いちぶ細菌さいきんだけがつく構造こうぞうぶつであり、きんしゅあるいは菌株きんしゅによってそれをさんせいするかどうかがことなる。すなわち、同種どうしゅきんであってもさいかちまくつく菌株きんしゅと、つくらない菌株きんしゅとが存在そんざいする。また、おなさいかちまくつく菌株きんしゅであっても、培養ばいよう生育せいいく条件じょうけんによってはさいかちまく形成けいせいしない場合ばあいがある。一般いっぱん病原びょうげん細菌さいきん場合ばあい動物どうぶつ感染かんせんしたときにはさいかちまく形成けいせいするが、そこから分離ぶんりして純粋じゅんすい培養ばいようすると形成けいせいしなくなることはめずらしくない。また、培養ばいようしたきん熱処理ねつしょりなどをおこなうと、だい部分ぶぶんさいかちまく比較的ひかくてき容易ようい分解ぶんかいされ、内部ないぶきんたい露出ろしゅつする。このことは細菌さいきん抗原こうげんかた決定けっていするさい後述こうじゅつ)に利用りようされるが、大腸菌だいちょうきんのAがたさいかちまくのようにたい熱性ねっせいさいかちまく一部いちぶには存在そんざいする。

さいかちまくあつさはきんしゅによってさまざまであり、光学こうがく顕微鏡けんびきょうでの観察かんさつ可能かのうあついもの(〜1 µm程度ていど)から、電子でんし顕微鏡けんびきょうでないと観察かんさつできないうすいもの(マイクロカプセル)までがられている。

構成こうせい成分せいぶん

[編集へんしゅう]

さいかちまくは、きんたいによって分泌ぶんぴつされた親水しんすいせいたか高分子こうぶんし構成こうせいされる。ほとんどのきん場合ばあい糖類とうるいから構成こうせいされるが、炭疽たんそきん代表だいひょうされるバシラスぞく細菌さいきんポリペプチドからなるさいかちまくつ。糖類とうるいからなるさいかちまくでは、ウロンさんグルクロンさんなど、きんたい細胞さいぼうかべにはふくまれない糖類とうるいふくむものもおおい。代表だいひょうてきなものとして、肺炎はいえん桿菌かんきんちょうない細菌さいきんクレブシエラぞく)のグルクロンさんさいかちまく化膿かのうレンサ球菌きゅうきんヒアルロンさんさいかちまくや、ずいまくえんきんシアルさん(N-アセチルノイラミンさんさいかちまく炭疽たんそきんのポリ-D-グルタミン酸ぐるたみんさんさいかちまくなどがある。これらの高分子こうぶんしきん体外たいがい分泌ぶんぴつされたのち、その表面ひょうめん付着ふちゃくしている場合ばあいがほとんどであるが、なかには化膿かのうレンサ球菌きゅうきんのヒアルロンさんさいかちまくのように、細胞さいぼうかべ構成こうせい成分せいぶんであるペプチドグリカン共有きょうゆう結合けつごうしている場合ばあいもある。

さいかちまく抗原こうげんせい

[編集へんしゅう]

糖類とうるいは、タンパク質たんぱくしつくらべるとおとるものの、抗原こうげんとして認識にんしきされて、特異とくいてき抗体こうたいさんせい誘導ゆうどうしうる性質せいしつ抗原こうげんせい)をつ。このためさいかちまくには、それを構成こうせいする糖類とうるい由来ゆらいして、きんたいそのものの表面ひょうめんとはことなる抗原こうげんせい存在そんざいする。細菌さいきん表面ひょうめん抗原こうげん分子ぶんしそとまく抗原こうげんむち抗原こうげんなど)と同様どうようさいかちまく抗原こうげん抗原こうげんせいもまた菌株きんしゅによってちがいがあるため、このちがいを利用りようして、同一どういつたねぞくする細菌さいきんをさらにこまかく分類ぶんるいすることが可能かのうである。これらの抗原こうげんせいちがいを利用りようした分類ぶんるい血清けっせいがた (serotype) とばれる。

さいかちまく抗原こうげんによる血清けっせいがた分類ぶんるいは、ちょうない細菌さいきんビブリオぞくなどのグラム陰性いんせい桿菌かんきん頻用ひんようされており、一般いっぱんK抗原こうげんさいかちまく意味いみするドイツ Kapselの頭文字かしらもじから)とばれる。たとえば2006ねん現在げんざい大腸菌だいちょうきんではやく100種類しゅるいクレブシエラでは86種類しゅるいちょうえんビブリオでは75種類しゅるいのK抗原こうげんつかっており、それぞれのきんしゅごとにK1, K2, K3...というかたちでナンバリングして分類ぶんるいされている。血清けっせいがたによる分類ぶんるいでは、これに抗原こうげん分子ぶんしによる分類ぶんるいわせて、「大腸菌だいちょうきん O4:K12:H5」のようなかたち表記ひょうきされる。K抗原こうげんたない(=さいかちまくたない)菌株きんしゅについては「大腸菌だいちょうきん O157:H7」のように、K抗原こうげん表記ひょうきされない。K抗原こうげん以外いがいにも、つよ毒性どくせいのチフスきんサルモネラ)にられるVi抗原こうげん(Vi抗原こうげん有無うむ判定はんていされる)など、さいかちまく由来ゆらいする抗原こうげん分子ぶんしがある。

KこうげんやVi抗原こうげんなどをつ、さいかちまくゆうする菌株きんしゅでは、しばしばそとまく抗原こうげんであるO抗原こうげんたいするこう血清けっせいとの反応はんのうせいうしなわれる。さいかちまく細胞さいぼうもっと外側そとがわ位置いちする構造こうぞうたいであるため、これによってきんたい表面ひょうめんのO抗原こうげんおおわれてしまうからである。きんたいねつ固定こていざい処理しょりしてさいかちまく破壊はかいすると、O抗原こうげん露出ろしゅつして、その抗原こうげんせい調しらべることが可能かのうとなる。

役割やくわり

[編集へんしゅう]

さいかちまくは、宿主しゅくしゅとなる動物どうぶつ体内たいないにその細菌さいきん感染かんせんしたとき、宿主しゅくしゅ免疫めんえき機構きこうによって排除はいじょされることからのがれる役割やくわりになっている。このため、さいかちまくきんは、さいかちまくたないきん比較ひかくすると、宿主しゅくしゅ生体せいたいない増殖ぞうしょくしやすく、こう病原びょうげんせいであることが一般いっぱんてきである。たとえば、チフスきんさいかちまく由来ゆらい抗原こうげんであるVi抗原こうげんゆうする菌株きんしゅは、たない菌株きんしゅよりも毒性どくせいつよい。このことから「つよし毒性どくせい」を意味いみする"virulent"からVi抗原こうげんという名前なまえもちいられるようになった。またさいかちまくうしなった炭疽たんそきんは、病原びょうげんせい低下ていかすることから、動物どうぶつようなまきんワクチン利用りようされている。

さいかちまくによる免疫めんえき機構きこう回避かいひは、白血球はっけっきゅうマクロファージなどのしょく細胞さいぼうによる貪食どんしょくからのがれやすくなるためである。この理由りゆうはまだよくわかっていないが、さいかちまく構成こうせいする高分子こうぶんし親水しんすいせいであること、表面ひょうめんまけ電荷でんかびていることで、しょく細胞さいぼうから認識にんしきされにくくなるためだというせつがある。またこれ以外いがい免疫めんえき回避かいひ機構きこうとして、きんたい表面ひょうめんへのたい結合けつごう抑制よくせいすることで、たいによる殺菌さっきん回避かいひすることがられている。

観察かんさつほう

[編集へんしゅう]

さいかちまく部分ぶぶんひかり屈折くっせつりつ周囲しゅういことなるため、とくあついものの場合ばあいは、光学こうがく顕微鏡けんびきょう直接ちょくせつ観察かんさつすることも可能かのうである。よりよく観察かんさつするためには、墨汁ぼくじゅう染色せんしょく代表だいひょうされるネガティブ染色せんしょくほうきんたい周囲しゅうい染色せんしょくし、染色せんしょくされにくいさいかちまく部分ぶぶん透明とうめいえるのを観察かんさつするか、あるいはHissのさいかちまく染色せんしょくほうなどをもちいて、さいかちまく部分ぶぶんきんたいよりもあわ色調しきちょう染色せんしょくして観察かんさつする。

またさいかちまくたいする抗体こうたい反応はんのうさせると、抗体こうたい結合けつごうすることによってひかり屈折くっせつりつたかくなる結果けっかさいかちまくふくれたようにえて観察かんさつ容易よういになる。これを膨化反応はんのうび、この方法ほうほうによって通常つうじょうではづらいさいかちまく光学こうがく顕微鏡けんびきょう観察かんさつすることも可能かのうである。

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]