蔡温

蔡温

蔡 温ぬる（さい おん、1682年ねん10月25日にち（尚なお貞さだ14年ねん9月25日にち） - 1762年ねん1月がつ23日にち（尚なお穆きよし10年ねん12月29日にち））は、琉球りゅうきゅう王国おうこくの政治せいじ家か。三さん司つかさ官かんの一員いちいんとして、羽はね地ち朝あさ秀しゅうを引ひき継つぎ、近世きんせい的てきな民衆みんしゅう支配しはいの制度せいどを確立かくりつした。大和やまと名めいは具志頭ぐしかみ親方おやかた文ぶん若わか（ぐしちゃんウェーカタぶんじゃく）。蔡氏具志頭ぐしかみ殿どの内ないの小しょう祖そ（蔡氏志多伯したはく家か十じゅう一いち世せい）。久米くめ三さん十じゅう六ろく姓せいの出身しゅっしんである。

著作ちょさくに『家内かない物語ものがたり』、『獨どく物語ものがたり』、『自じ敘傳』、『圖ず治ち要よう傳つて』や『簔翁片言かたこと』等ひとし多数たすう。

生涯しょうがい

以下いか、日付ひづけは旧暦きゅうれき、年齢ねんれいは数かぞえ年どしで表あらわす。

出生しゅっしょうと少年しょうねん期き

康かん熙21年ねん（天和てんわ2年ねん）9月がつ25日にち（1682年ねん10月25日にち）子この刻こく、那覇なはの久米くめ村むら（現在げんざいの那覇なは市し久米くめ）において、蔡氏志多伯したはく家か十じゅう世せい・蔡鐸と正室せいしつ・真ま呉ご瑞みずほ（マゴゼイ）との間あいだに、次男じなん（正室せいしつの子ことしては長男ちょうなん）として生うまれた。童わらわ名めいを蒲がま戸どといった。蔡鐸は久米くめ村むらの最高さいこう実力じつりょく者しゃである総そう役やくと呼よばれる地位ちいにあり、蔡温より2歳さい上じょうの兄あにとして側室そくしつ・眞ま多満たまの子こである蔡淵（童わらわ名めいは次つぎ良りょう）がいた。

康かん熙32年ねん（1693年ねん）2月がつ15日にち、12歳さいで若わか秀才しゅうさい、康かん熙35年ねん（1696年ねん）8月がつ22日にち、15歳さいで秀才しゅうさいとなった。自伝じでんによれば蔡温の少年しょうねん時代じだいは反抗はんこう的てきで怠なまけ者ものであったとされる。蔡鐸は蔡温を後嗣こうしとするつもりであったが、側室そくしつを迎むかえる際さいに長男ちょうなんを産うめば後嗣こうしとする約束やくそくがあったことから真ま呉ご瑞みずほが納得なっとくせず。夫婦ふうふの見解けんかいの相違そういが少年しょうねん期きの蔡温に影響えいきょうしたものと考かんがえられている。しかしながら17歳さいになると学問がくもんに目覚めざめ、20歳さい頃ごろまでに論語ろんごをはじめとする多おおくの書物しょもつを読よみ込こんだ。康かん熙39年ねん（1700年ねん）12月1日にち、19歳さいで通事つうじ（通訳つうやく）に任命にんめいされ、21歳さいで訓詁くんこ師し（漢文かんぶん読書どくしょの教師きょうし）、25歳さいで講こう解かい師し（講談こうだんの教師きょうし）となった。

大陸たいりく赴任ふにんと国師こくし就任しゅうにん

康かん熙47年ねん（1708年ねん）2月がつ7日にち、27歳さいで進貢しんこう存そん留とめ役やくとなり、存そん留とめ通事つうじ（現地げんちでの通訳つうやく）として清きよしの福ふく州しゅうへ赴任ふにんすることとなった。同年どうねん11月がつ3日にちに那な覇はを発たち、11月17日にちに福ふく州しゅうへ入はいった。福ふく州しゅう琉球りゅうきゅう館かんの近ちかくに凌しのげ雲寺くもでらがあり、ここで住職じゅうしょくに紹介しょうかいされ「湖みずうみ広ひろの者もの」と名乗なのる隠者いんじゃに出会であう。隠者いんじゃから「書物しょもつを読よみ知識ちしきを習得しゅうとくしただけでは何なんの役やくにも立たたない」との指摘してきを受うけ実学じつがくの思想しそうに目覚めざめる。隠者いんじゃから陽明学ようめいがくに関かんする教おしえを受うけ、康かん熙49年ねん（1710年ねん）1月がつ20日はつかに福ふく州しゅうを発たち1月がつ29日にちに帰国きこくした。帰国きこく後ごまもなく自みずから琉球りゅうきゅう北部ほくぶを視察しさつしている。6月21日にちに都と通事つうじに昇格しょうかくした。

康かん熙50年ねん（1711年ねん）4月がつ、30歳さいで当時とうじの皇太子こうたいし尚なお敬たかしの教師きょうしである世子せいし師し職しょく兼務けんむ近習きんじゅ役やくを任命にんめいされた。翌年よくねんの7月がつ15日にちに尚なお益えき王おうが死去しきょし尚なお敬けいが王おうに即位そくいすると、国師こくしと呼よばれる地位ちいに就任しゅうにんした。国師こくしは琉球りゅうきゅう王国おうこくにおいて蔡温以前いぜんにも以後いごにも就任しゅうにんした者もののない地位ちいであり、琉球りゅうきゅう国こく全体ぜんたいを指導しどうする役割やくわりを担になうことになった。翌よく康かん熙54年ねん（1715年ねん）1月がつ27日にち、34歳さいで勝連かつれん間あいだ切きり神しん谷地頭やじがしら職しょくに就任しゅうにんし神谷かみや親ちかし雲上うんじょうとなった。同年どうねん、首里赤平しゅりあかひらに転居てんきょした。康かん熙53年ねん（1714年ねん）8月がつ1日にち、33歳さいで正義せいぎ大夫たいふとなり、同年どうねん8月がつ15日にちに長男ちょうなんの蔡翼が生うまれている。翌年よくねんの3月がつ18日にち、尚なお敬けい王おうが蔡温宅たくを訪おとずれ、蔡温は自みずから茶ちゃを点たててもてなした。同年どうねん8月がつ2日にち、政治せいじや道徳どうとくなど帝王ていおう学がくについてまとめた『要務ようむ彙編』を著あらわした。

冊さつ封ふうへの対応たいおう

康かん熙55年ねん（1716年ねん）、尚なお敬けい王おう就任しゅうにんに伴ともなう冊さつ封ふう使しを求もとめる使節しせつ団だんの副使ふくしに選えらばれ、2月がつ25日にちに35歳さいで申さる口座こうざ（三さん司つかさ官かんへの取とり次つぎ役やく）、7月がつ23日にちには末吉すえきち地頭じとう職しょくとなった。11月15日にちに那な覇はを発たち北京ぺきんへ向むかったが、途中とちゅうで暴風ぼうふうに遭あい12月がつ2日にちに久米島くめじまへ漂着ひょうちゃくした。翌年よくねんの1月がつ20日はつかに久米島くめじまを発たち、2月がつ2日にちから7月がつ12日にちまで福ふく州しゅうに滞在たいざいし、10月28日にちに北京ぺきんへ到着とうちゃくした。翌年よくねん1月がつ8日にちに北きた京王けいおう府ふへ貢物みつぎものを納おさめ、2月がつ27日にちに勅書ちょくしょを受うけ取とった。2月29日にちに北京ぺきんを発たち、福ふく州しゅうを経へて8月がつ9日にちに帰国きこくした。

康かん熙58年ねん（1719年ねん）、38歳さいで紫むらさき金きん大夫たいふ、末吉すえきち親方おやかたとなった。同年どうねん6月がつ、清しんからの冊さつ封ふう船せんが那な覇はに到着とうちゃくした。このとき冊さつ封ふう使しの従者じゅうしゃが大量たいりょうの貨物かもつを持もち込こみ、琉球りゅうきゅう王おう府ふに買かい取とりを要求ようきゅうした。しかしながら当時とうじの王おう府ふにはこれに対応たいおうできるだけの財力ざいりょくがなく、従者じゅうしゃたち500名めいとの間あいだで騒動そうどうとなった。王おう府ふの高官こうかんたちは交渉こうしょうをまとめることができず、対応たいおうを蔡温に一任いちにんした。蔡温は琉球りゅうきゅう王おう府ふの状況じょうきょうを説明せつめいし、貨物かもつの評価ひょうかに立たち会あい、さらには国くに中ちゅうから有価ゆうか物品ぶっぴんを集あつめるなどして騒動そうどうを収おさめた。冊さつ封ふう使しは翌年よくねん2月がつ16日にちに那な覇はを発たった。この年としの6月がつ13日にち、蔡温は39歳さいで三さん司つかさ官かん座敷ざしき（三さん司つかさ官かんとなりうる資格しかく）を認みとめられた。

内政ないせい改革かいかく

康かん熙61年ねん（享とおる保ほ7年ねん、1722年ねん）、江戸えど幕府ばくふが日本にっぽん国内こくないに享とおる保ほ検地けんちと呼よばれる検地けんちを行おこなうことを命めいじた。琉球りゅうきゅう国内こくないでは薩摩さつま藩はんによる支配しはい体制たいせい強化きょうかの不安ふあんが広ひろがったが、蔡温は支配しはい強化きょうかにならないものの増税ぞうぜいの口実こうじつとなることを予期よきし、後のちにその通とおりになった。雍正4年ねん（1726年ねん）、尚なお敬けい王おうとその配下はいか305名めいによる琉球りゅうきゅう北部ほくぶ視察しさつを取とり仕切しきった。

雍正6年ねん（1728年ねん）10月がつ、政府せいふ高官こうかんらの選挙せんきょにより47歳さいで三さん司つかさ官かんに任命にんめいされる。雍正8年ねん（1730年ねん）に『系図けいず座ざ規模きぼ帳ちょう』と『大だい与座よざ規模きぼ帳ちょう』を、翌年よくねんには『位階いかい定じょう』を編纂へんさんし制度せいどの成文せいぶん化かを進すすめた。『家内かない物語ものがたり』はこのころに書かかれたとされる。

雍正10年ねん（1732年ねん）11月18日にち、諸しょ役人やくにん、農民のうみんの道徳どうとく規範きはん、生活せいかつ心得こころえとして『御ご教条きょうじょう』を公布こうふした。内容ないようは蔡温が考かんがえ豊川とよかわ親方おやかたが筆記ひっきしたものであり、『家いえ言げん録ろく』『醒夢要よう論ろん』『図ず治ち要よう伝つて』からの引用いんようが含ふくまれている。各かく間あいだ切きりや村むらで毎月まいつき1日にち及および15日にちに役人やくにんの読よみ合あわせ会かいが開催かいさいされたり、百姓ひゃくしょうへの読よみ聞きかせも行おこなわれた。1879年ねん（明治めいじ12年ねん）の琉球りゅうきゅう処分しょぶんに至いたるまで教科書きょうかしょとして用もちいられた。 雍正11年ねん（1735年ねん）、那覇なは付近ふきんに住すむ職人しょくにんのために減税げんぜいを実施じっしした。

このころ、蔡温と対立たいりつしていた平敷屋へしきや朝ちょう敏さとしが蔡温を批判ひはんする文書ぶんしょを薩摩さつま藩はんに投書とうしょする事件じけんがあった。薩摩さつま藩はんはこれを取とり合あわず琉球りゅうきゅう王おう府ふに送おくり、朝あさ敏さとしとその配下はいか15名めいが雍正12年ねん（1734年ねん）6月がつ29日にちに処刑しょけいされている（平敷屋へしきや・友寄ともより事件じけん）。

同どう1734年ねん、8月がつに農業のうぎょうの制度せいどや経営けいえいについて解説かいせつした『農務のうむ帳ちょう』が著あらわされた。

翌年よくねんには羽はね地ち大川おおかわで水害すいがいが発生はっせいし、8月がつ16日にちに河川かせん改修かいしゅうの指示しじを受うけ、8月がつ22日にちに現地げんちへ入はいり11月がつ17日にちに完成かんせいさせている。同年どうねん12月がつ10日とおかには山林さんりんを管理かんりする役やくを命めいぜられた。乾いぬい隆たかし元年がんねん（元もと文ぶん元年がんねん、1736年ねん）11月13日にちから翌年よくねん3月がつ3日にちまで自みずから琉球りゅうきゅう北部ほくぶの山林さんりんを巡視じゅんしし、各地かくちで治山ちさんの指導しどうをするとともに山林さんりんの管理かんり方法ほうほうを『杣山そまやま法式ほうしき』にまとめた。

また、この年としから元もと文ぶん検地けんちと呼よばれる検地けんちを始はじめた。乾いぬい隆たかし11年ねん（1746年ねん）に『簔翁片言かたこと』、翌年よくねん9月がつに『杣山そまやま法式ほうしき仕つかまつ次つぎ』を著あらわした。乾いぬい隆たかし15年ねん（1750年ねん）、首くび里さとから名護なごへの遷都せんとや名護なごにおける運河うんが建設けんせつの要求ようきゅうが高たかまり、これらの論争ろんそうを収拾しゅうしゅうさせるため名護なごに三さん府ふ龍りゅう脈みゃく碑ひを建立こんりゅうした。同年どうねんに『独どく物語ものがたり』を著あらわしている。

晩年ばんねん

蔡温具志頭ぐしかみ親方おやかた文ぶん若わか頌徳碑ひ。沖縄おきなわ県けん那覇なは市し若狭わかさ1丁目ちょうめ25

乾いぬい隆たかし17年ねん（1752年ねん）に尚なお敬けい王おうが死去しきょすると自みずから隠居いんきょを申もうし出でたが、薩摩さつま藩はんの指示しじにより三さん司つかさ官かんを退官たいかんするのみに留とめ職務しょくむを継続けいぞくすることになった。9月29日にちに三さん司つかさ官かんの役やくを解とかれ、10月2日にちに紫むらさき地ち五色ごしき花織かおり冠かんむりの地位ちいとなっている。乾いぬい隆たかし19年ねん（1754年ねん）に『醒夢要よう論ろん』を著あらわした。乾いぬい隆たかし21年ねん（1756年ねん）6月がつには冊さつ封ふう使しが訪おとずれ、このときにも蔡温が貨物かもつ評価ひょうかを取とり仕切しきった。翌年よくねん1月がつ29日にちに冊さつ封ふう使しが帰かえって間あいだもなく、2月がつ21日にちに76歳さいで再ふたたび隠居いんきょを願ねがい出でた。『自叙伝じじょでん』はこのころに書かかれている。乾いぬい隆たかし26年ねん（宝たから暦れき11年ねん）12月29日にち（1762年ねん1月がつ23日にち）、80歳さいで死去しきょ。

大正たいしょう4年ねん（1915年ねん）、正せい五ご位いを追贈ついぞうされた。

人物じんぶつ

実学じつがくを重おもんじ、物事ものごとを現実げんじつ的てきにとらえ、自みずから行動こうどうする政治せいじ家かであった。特とくに山林さんりんの保全ほぜんや河川かせん改修かいしゅうにおいて現地げんちに赴おもむき自みずから指揮しきを執とることが多おおかった。著作ちょさくとして『客間きゃくま録ろく』、『家いえ言げん録ろく』、『一言ひとこと録ろく』、『簔翁片言かたこと』、『図ず治ち要よう伝つて』、『治ち家か捷径しょうけい』、『居きょ家か必覧』、『醒夢要よう論ろん』、『実学じつがく真ま秘ひ』、『要務ようむ秘ひ編へん』などがあり『澹園全集ぜんしゅう』と呼よばれる。他ほかにも『山林さんりん真ま秘ひ』、『御ご教条きょうじょう』、『家内かない物語ものがたり』、『独どく物語ものがたり』、『林政りんせい八はち書しょ』、『農務のうむ帳ちょう』、『自叙伝じじょでん』などがある。しかしながら多おおくの書物しょもつは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん末期まっきの沖縄おきなわ戦せんによって失うしなわれている。

3回かいの結婚けっこん歴れきがあり、初婚しょこんは蔡氏渡久地とぐち親ちかし雲上うんじょう政せい包つつみの娘むすめの思おもえ戸と金きん（オミトガニ）であったとされる。2回かい目めは泊村とまりむら相しょう氏し上運天かみうんてん筑登之の親しん雲上うんじょう英章ひであきの娘むすめの真如しんにょ姑しゅうと樽だる（マニクダル）であったが死別しべつしている。3回かい目めは首くび里さと向むかい氏し前川まえかわ親方おやかた朝あさ年ねんの娘むすめで蔡温23歳さいの年としに結婚けっこんしている。好物こうぶつは魚さかなのカステラ、イチムイ（魚さかなの刺身さしみ盛もり合あわせ）、牛肉ぎゅうにくなどであった。夜中よなかでも思おもいついたことを書かき留とめられるよう、寝室しんしつに行灯あんどんと筆記用具ひっきようぐを常備じょうびしていた。

政策せいさく

当時とうじの琉球りゅうきゅう王国おうこくは薩摩さつま藩はんの支配しはいにより停滞ていたい状じょう況きょうにあったが、蔡温は薩摩さつま藩はんに従したがう利点りてんを説とき、現実げんじつ的てきに対応たいおうするよう指導しどうした。主君しゅくんである尚なお敬けい王おうに対たいして「清きよしとの付つき合あいは難むずかしくないが、薩摩さつま藩はんとの付つき合あいには十分じゅうぶんな配慮はいりょが必要ひつよう」と忠言ちゅうげんしている。内政ないせいでは羽はね地ち朝あさ秀しゅうの改革かいかくを継承けいしょうし、のちの琉球りゅうきゅう王国おうこくの方向ほうこう性せいを定さだめた。

農業のうぎょう政策せいさく

田たと畑はたけの転換てんかんを禁きんじ、また傾斜地けいしゃちの開墾かいこんを制限せいげんする一方いっぽうで、農民のうみんに耕地こうちの永久えいきゅう耕作こうさく権けんを与あたえて農地のうちの地力じりき保護ほごをはかったり、農業のうぎょう用水路ようすいろの整備せいびを進すすめたりした。村むらや間あいだ切きりの境界きょうかいを明確めいかくにし土地とち所有しょゆうをはっきりさせ、旱魃かんばつや暴風ぼうふうに対たいする食糧しょくりょう備蓄びちく制度せいどを充実じゅうじつさせた。また、農民のうみんを組合くみあいに所属しょぞくさせ納税のうぜいの連帯れんたい責任せきにんを負おわせることで農民のうみん同士どうしの協力きょうりょくを促うながすとともに相互そうご監視かんしによる税収ぜいしゅうの安定あんてい化かをはかった。この組合くみあい組織そしきは後のちにユヒ組ぐみ（ユヒマワル、ユイマール）と呼よばれるようになった。しかしながら蔡温以後いごに有力ゆうりょくな後継こうけい者しゃが現あらわれず、これらの政策せいさくは十分じゅうぶんには浸透しんとうしなかった。

林業りんぎょう政策せいさく

各かく島しまの木材もくざい需給じゅきゅう状況じょうきょうに鑑かんがみ、ある程度ていどの山林さんりんを有ゆうする島しまの用材ようざいは島内とうないでまかない、山林さんりんのない島しまについては沖縄おきなわ本島ほんとう中部ちゅうぶや北部ほくぶから供給きょうきゅうし、八重山やえやまについては将来しょうらいへ向むけての予備よびとする方針ほうしんを定さだめた。また、山林さんりんと田畑たはたとの境界きょうかいを明確めいかくにして管理かんりを強化きょうかした。植林しょくりんを奨励しょうれいし、海岸かいがん部ぶにはアダン、リュウキュウマツ、テリハボクなどからなる潮しお垣かきと呼よばれる林はやし、内陸ないりく部ぶの要所ようしょにはマツなどからなる抱だき護まもると呼よばれる林はやしを設もうけた。さらには森林しんりん資源しげん保護ほごのために新あたらしい家いえや船ふねの建造けんぞうおよび薪たきぎの利用りようを制限せいげんし、まるまる大木たいぼくの一本いっぽんを必要ひつようとする「くり舟ふね」（丸木舟まるきぶね）の製造せいぞうを禁止きんしした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 伊波いは普猷ふゆう、真ま境さかい名めい安やす興おき　『沖縄おきなわ史しの五ご人にん』　pp.133-182、琉球新報りゅうきゅうしんぽう、1974年ねん（1916年ねん『琉球りゅうきゅうの五ご偉人いじん』の復刻ふっこく版ばん）
• 沖縄おきなわ歴史れきし研究けんきゅう会かい編へん　『蔡温選集せんしゅう』　星ほし印刷いんさつ出版しゅっぱん部ぶ、1967年ねん
• 真栄田まえだ義見よしみ　『蔡温・伝記でんきと思想しそう』　月刊げっかん沖縄おきなわ社しゃ、1976年ねん

関連かんれん項目こうもく

• 琉球りゅうきゅう王国おうこく
• 三さん司つかさ官かん
• 久米くめ三さん十じゅう六ろく姓せい

外部がいぶリンク

• 『蔡温』 - コトバンク

先代せんだい 名護なご良りょう意い

琉球りゅうきゅうの法ほう司し（酉とり日び番ばん） 1728年ねん - 1752年ねん

次代じだい 東風平こちひら朝ちょう衛まもる