藪内やぶうち節たかし庵あん

藪内やぶうち 節たかし庵あん（やぶのうち せつあん、慶応けいおう4年ねん1月がつ17日にち（1868年ねん2月がつ10日とおか） - 昭和しょうわ15年ねん（1940年ねん）9月がつ20日はつか）は、日本にっぽんの茶人ちゃじん。本名ほんみょうは乙おつ弥わたる（おとや）。4代だい福田ふくだ隨ずい竹ちく庵あん。野村のむら徳七とくしちをはじめとする実業じつぎょう家かを多数たすう門下もんかに抱かかえ、流派りゅうはを超こえて財閥ざいばつ・財界ざいかい人じんと交流こうりゅうし、明治めいじ後期こうきから昭和しょうわ初期しょきにかけての茶道さどうの隆盛りゅうせいに大おおきく影響えいきょうを与あたえた。

養父やぶ（休きゅう々斎とき竹ちく翠みどり紹智）に学まなんで鑑識かんしきに優すぐれた一方いっぽうで茶室ちゃしつ建築けんちくや築庭ちくていにも精通せいつうし、節ふし庵あんが設計せっけいした茶室ちゃしつ・庭園ていえんが現在げんざいも日本にっぽん国内こくない各地かくちに点在てんざいしている。

来歴らいれき

藪やぶ内ない九きゅう代だい・宝林ほうりん斎とき竹ちく露ろの次男じなんとして京都きょうとに生うまれた。実兄じっけいはのちの藪やぶ内ない11代だい・透とおる月がつ斎とき竹ちく窓まどである。明治めいじ7年ねん（1874年ねん）に実父じっぷの宝林ほうりん斎ときが逝去せいきょした時とき、節ふし庵あんは6歳さいで、藪内やぶうち家かの継承けいしょう者しゃである実兄じっけいもわずか9歳さいであった。この幼おさない二人ふたりを養育よういくし、藪内やぶうち家かを存続そんぞくさせるため、加賀かが大聖寺だいしょうじ侯こうの茶ちゃ頭あたまであった福田ふくだ家か3代だい隨ずい竹ちく庵あん・休きゅう々斎ときが婿養子むこようしとして藪内やぶうち家かに入はいり、10代竹ちく翠みどり紹智を襲名しゅうめい、のちの透とおる月がつ斎ときと節ふし庵あんの養父ようふとなる。

その後ご、実兄じっけいが11代だい竹ちく窓まど紹智を襲名しゅうめいし、養父ようふ・休きゅう々斎ときは大阪おおさか吹田すいたへ隠棲いんせいした。それに伴ともない節ふし庵あんも大阪おおさかへと移うつり、養父ようふの実家じっかである福田ふくだ家かの養子ようしとなり、隨ずい竹ちく庵あんを継承けいしょうした。

4代だい隨ずい竹ちく庵あんとして

隨ずい竹ちく庵あんを継承けいしょうした節ふし庵あんは、門下もんかに野村のむら徳七とくしち・村山むらやま龍平りゅうへいらをはじめとする当時とうじの有力ゆうりょくな財界ざいかい人じんを抱かかえ、流派りゅうはを問とわず財閥ざいばつ・実業じつぎょう家かと広ひろく交流こうりゅうし、大阪おおさかを拠点きょてんに「篠しの園えん会かい」「十じゅう八はち会かい」等とうを組織そしき・主宰しゅさいした。これらの会かいでは毎月まいつき会員かいいん内ないで亭主ていしゅを順番じゅんばんに担当たんとうし、各々おのおのの自慢じまんのコレクションを取とり合あわせた、名物めいぶつ・名品めいひん揃ぞろいの月つき釜がまを開催かいさいしていた。当時とうじのコレクションの多おおくは、野村のむら美術館びじゅつかん・香雪こうせつ美術館びじゅつかん・三井みつい記念きねん美術館びじゅつかん等ひとし、国内こくない各地かくちの財閥ざいばつ系けい美術館びじゅつかんに所蔵しょぞうされている。

また、節ふし庵あんは茶室ちゃしつ建築けんちく・築庭ちくていにも精通せいつうし、三井みつい高だか棟とうに招まねかれて本邸ほんていや箱根はこね別邸べっていの茶室ちゃしつ・日本にっぽん庭園ていえんを設計せっけいし、国宝こくほう「如庵」を大磯おおいそに移築いちくした。ジョサイア・コンドル設計せっけい「綱つな町まち三井みつい倶楽部くらぶ」に付属ふぞくする19,800m²（約やく6,000坪つぼ）の日本にっぽん庭園ていえんも、節ふし庵あんの設計せっけいである。その他た、大徳寺だいとくじ塔頭たっちゅう真珠しんじゅ庵あん「庭にわ玉だま軒のき」、水無瀬みなせ神宮じんぐう「灯心とうしん席せき」等とうの修復しゅうふく、篠しの園えん会かい会員かいいんの協力きょうりょくを得えて大阪天満宮おおさかてんまんぐう・天野山あまのさん金剛寺こんごうじに茶室ちゃしつ・庭園ていえんを寄贈きぞうした。

当時とうじの大阪おおさかにあった節ふし庵あんの邸宅ていたくは、三井みつい高だか棟とう別邸べっていを移築いちくした正せい八はち角形かくがたの母屋もやを持もつ洋館ようかんであったが、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん時じに同どう邸宅ていたくは取とり壊こわされ、現存げんそんしていない。その離はなれの書庫しょこがあった場所ばしょには現在げんざい、吹田すいた市役所しやくしょがある。

主おもな門下もんか

• 野村のむら得とく庵あん
• 村山むらやま玄げん庵あん
• 三井みつい泰山たいざん
• 山口やまぐち吉郎よしろう兵衛ひょうえ
• 西尾にしお積つもる翠みどり庵あん
• 貴志きし聴雪
• 梅うめ上じょう尊みこと融とおる
• 上野うえの有ゆう竹ちく
• 太田おおた芦あし庵あん

参考さんこう文献ぶんけん

• 筒井つつい紘一こういち・井口いぐち海かい仙せん・末すえ宗廣むねひろ・永島ながしま福太郎ふくたろう 監修かんしゅう『新版しんぱん 茶道さどう大だい辞典じてん』淡あわ交社、2010年ねん。 
• 井口いぐち海かい仙せん・末すえ宗廣むねひろ・永島ながしま福太郎ふくたろう 監修かんしゅう『原色げんしょく茶道さどう大だい辞典じてん』淡あわ交社、1975年ねん。 
• 小田おだ栄一えいいち・古賀こが健藏けんぞう 監修かんしゅう『落款らっかん花押かおう大だい辞典じてん（上巻じょうかん・下巻げかん）』淡あわ交社、1982年ねん。 
• 宮みや帯たい出版しゅっぱん社しゃ編集へんしゅう部ぶ 編へん『茶ちゃ湯ゆ手帳てちょう2023』宮みや帯たい出版しゅっぱん社しゃ、2023年ねん。