貨客船かきゃくせん

貨客船かきゃくせん（かきゃくせん）は、旅客りょかく輸送ゆそうと貨物かもつ輸送ゆそうの双方そうほうを行おこなう船舶せんぱくである。国際こくさい的てきには旅客船りょかくせんの範疇はんちゅうで捉とらえられているが、南太平洋みなみたいへいよう諸国しょこくが採択さいたくしたSRNCVのように定義ていぎを設もうけている例れいもある。

豪華ごうか客船きゃくせんをはじめとする純然じゅんぜんたる客船きゃくせんに比くらべると、貨客船かきゃくせんは格かく落おちの印象いんしょうを持もたれることも少すくなくない。実際じっさいに後述こうじゅつの事情じじょうから競争きょうそう力りょくが低下ていかした古ふるい客船きゃくせんの貨客船かきゃくせん落おちもあった。

ただし船舶せんぱくは、大型おおがたになるほど航続こうぞく性能せいのうや、波浪はろう・船体せんたい動揺どうように対たいする耐たい性せいなどの点てんで居住きょじゅう性せいでも有利ゆうりである一方いっぽう、二乗にじょう三さん乗じょう則そくにより大型おおがたほど容積ようせき比ひで外部がいぶに接せっする面積めんせきが小ちいさく、船体せんたい内部ないぶでは通気つうきや大だい出力しゅつりょく機関きかんからの振動しんどうや騒音そうおん、熱ねつなどの問題もんだいが大おおきくなる（空母くうぼ赤城あかぎ、加賀かがやヘルシップも参照さんしょう）。このため客船きゃくせんは高級こうきゅうの船室せんしつは上部じょうぶ構造こうぞう物ぶつの窓まどがある外壁がいへき寄よりに設もうけられ、低級ていきゅうの船室せんしつや乗員じょういん室しつ、外そと寄よりに置おく必要ひつようのない設備せつび等とうは下層かそう・内部ないぶ側がわに設もうけられるが、超ちょう大型おおがた船せんになると旅客りょかく輸送ゆそうに耐たえ難がたい空間くうかんが生しょうじてくる。こうした箇所かしょは乗客じょうきゃくを詰つめ込こむよりも貨物かもつ輸送ゆそうに充あてた方ほうが、食料しょくりょうや用水ようすい、設備せつびに要ようする運行うんこうコストも抑制よくせいでき経済けいざい的てきである。

史上しじょう最大さいだい級きゅうの海難かいなん事故じこで知しられるタイタニック号ごうを代表だいひょうとするオーシャン・ライナーは一般いっぱんに豪華ごうか客船きゃくせんとして知しられているが、実態じったいは貨客船かきゃくせんであった。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん以前いぜん頃ごろまではこうした大洋たいよう航路こうろに就つく客船きゃくせんは運輸うんゆの花形はながたであり、日本にっぽんも橿原かしはら丸まる級きゅうや新しん田丸たまる級きゅうといった豪奢ごうしゃな大型おおがた高性能こうせいのう船せんを建造けんぞうし海運かいうん列強れっきょうと覇はを競きそっており、これらもやはり貨客船かきゃくせんであった。

大戦たいせん後ご、長距離ちょうきょり旅客りょかくの主流しゅりゅうが急速きゅうそくに発展はってんしてきたジェット旅客機りょかくきに移行いこうすると、旅客船りょかくせんの花形はながたも豪奢ごうしゃなイメージを売うりにするクルーズ客船きゃくせんに取とって代かわられ、豪華ごうか貨客船かきゃくせんは消きえていった。

各かく地域ちいきの貨客船かきゃくせん

日本にっぽん

日本にっぽんでは船舶せんぱく安全あんぜん法ほう第だい8条じょうによって旅客りょかく定員ていいんが12名めいを超こえる船舶せんぱくが旅客船りょかくせんとされている。貨客船かきゃくせんは法律ほうりつで用もちいられる用語ようごではないが、旅客りょかく定員ていいんが12名めいを超こえる船舶せんぱくが旅客船りょかくせんとなるため、旅客りょかく定員ていいんが12名めい以下いかで貨物かもつを運はこぶ船舶せんぱくは単たんに貨物かもつ船せんとして扱あつかわれる。検疫けんえき手続てつづき上じょうも船舶せんぱく安全あんぜん法ほうなどに基もとづき「貨客船かきゃくせんとは旅客りょかく定員ていいん13名めい以上いじょうの貨物かもつ輸送ゆそうできる船舶せんぱく」とされている。旅客りょかく定員ていいんが12名めいを超こえる貨客船かきゃくせんは法的ほうてきには旅客船りょかくせんと位置いちづけられるため、旅客船りょかくせんと同様どうようの救命きゅうめい設備せつび等とうが必要ひつようとなる。

なお、海上かいじょう運送うんそう法ほうでは、旅客りょかくが限定げんていされている場合ばあいには、旅客りょかく定員ていいんが13人にん以上いじょうでも旅客りょかく航路こうろ事業じぎょうとは扱あつかわれない。

南太平洋みなみたいへいよう諸国しょこく

2002年ねんに採択さいたくされた南太平洋みなみたいへいよう諸国しょこくの海事かいじ規則きそくであるSafety Regulations for Non-Convention Vessels（SRNCV）は、従来じゅうらいの「貨物かもつ船せん」及および「旅客船りょかくせん」の2分類ぶんるいに加くわえて「貨客船かきゃくせん」を新あらたに定義ていぎした。

SRNCVは南太平洋みなみたいへいよう諸国しょこくでは独自どくじに内うち航こう船せんの海事かいじ規則きそくを起草きそうすることが難むずかしいため、国際こくさい海事かいじ機関きかん（IMO）が後援こうえんし、南太平洋みなみたいへいよう諸国しょこく及および旧きゅう宗主そうしゅ国こくで構成こうせいするSPC（South Pacific Commission）の海事かいじ部門ぶもんが中心ちゅうしんとなって共通きょうつう海事かいじ規則きそくを審議しんぎした。IMOが南太平洋みなみたいへいようで貨物かもつ船せんでの旅客りょかく輸送ゆそうが多おおい実情じつじょうに配慮はいりょして「貨客船かきゃくせん」の分類ぶんるいを加くわえるよう提起ていきし、SRNCVでは旅客船りょかくせんより緩和かんわされた安全あんぜん基準きじゅんが規定きていされている。

ギャラリー

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  横浜よこはま市しの山下やました公園こうえんで保存ほぞんされている氷川丸ひかわまる。
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  ヘルシンキ港みなと碇泊ていはく中ちゅうのウガンダ号ごう。
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  鹿児島かごしま市し七ツ島ななつじま港こう-種子島たねがしま西之表にしのおもて港こう-屋久島やくしま宮之浦みやのうら港こうに就航しゅうこうするフェリーはいびすかす。
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  同左どうさ。船首せんしゅ側がわにコンテナを、船尾せんび側がわに車両しゃりょう。右みぎは、デリッククレーン。
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  同左どうさ。ロールオンロールオフ、デリッククレーン、左舷さげん船尾せんびランプウェイ。
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  竣工しゅんこう記念きねん式典しきてん・内覧ないらん会かいのため、東京とうきょう港こう竹たけ芝しば桟橋さんばし碇泊ていはく中ちゅうの三さん代目だいめおがさわら丸まる。
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  ケープタウン碇泊ていはく中ちゅうのセントヘレナ号ごう。
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  大阪おおさか港こう中央ちゅうおう突堤とっていに停泊ていはく中ちゅうの万景峰まんぎょんぼん号ごう（1986年ねん）。

参考さんこう文献ぶんけん

• 大内おおうち健二けんじ『戦たたかう民間みんかん船せん--知しられざる勇気ゆうきと忍耐にんたいの記録きろく』光人みつひと社しゃ〈光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ〉、2006年ねん。ISBN 476982498X。 
• 大内おおうち健二けんじ『不沈艦ふちんかん伝説でんせつ--多彩たさいな運命うんめいを背負せおった30隻せきの生涯しょうがい』光人みつひと社しゃ〈光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ〉、2007年ねん。ISBN 9784769825531。 
• 土井どい全ちょん二郎じろう『撃沈げきちんされた船員せんいんたちの記録きろく--戦争せんそうの底辺ていへんで働はたらいた輸送ゆそう船せんの戦たたかい』光人みつひと社しゃ〈光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ〉、2008年ねん。ISBN 9784769825692。 

関連かんれん項目こうもく

• 貨客混載こんさい
• 旅客船りょかくせん
• 貨物かもつ船せん
• 貨客混載こんさい機き - 貨客船かきゃくせんの航空機こうくうき版ばん
• 国際こくさい海事かいじ機関きかん
• フェリー - カーフェリーや鉄道てつどう連絡れんらく船せんは、車両しゃりょうを貨物かもつ、乗車じょうしゃ者しゃを旅客りょかくとして運はこぶ広義こうぎの貨客船かきゃくせんである