ねつワクチン

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ねつワクチン
ワクチン概要がいよう
病気びょうき ねつ
種別しゅべつ 弱毒じゃくどくワクチン
臨床りんしょうデータ
Drugs.com monograph
MedlinePlus a607030
投与とうよ経路けいろ 皮下ひか注射ちゅうしゃ
識別しきべつ
CAS番号ばんごう
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ATCコード J07BL01 (WHO)
ChemSpider none ×
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ねつワクチン(おうねつワクチン)は、ねつ予防よぼうもちいるワクチンである[1]ねつアフリカみなみアメリカられるウイルスせい感染かんせんびょうである[1]。ワクチン投与とうよ1かげつ以内いないに、99%のひと免疫めんえきりょく獲得かくとくし、免疫めんえき持続じぞく期間きかん生涯しょうがいにわたるとおもわれる[1]

このワクチンは、ねつ流行りゅうこうふせぐために使用しようされる場合ばあいもありえる[1]接種せっしゅほう筋肉きんにく注射ちゅうしゃ皮下ひか注射ちゅうしゃである[1]ねつ流行りゅうこうしているくに入国にゅうこくするさいに、接種せっしゅ証明しょうめいしょイエローカード)の提示ていじ要求ようきゅうする国家こっか存在そんざいする[1]

推奨すいしょう[編集へんしゅう]

世界せかい保健ほけん機関きかん(WHO)は定期ていきてき予防よぼう接種せっしゅ感染かんせん危険きけんせいのある国家こっか推奨すいしょうしている[1]おもに9かげつから12かげつ子供こども対象たいしょうにしている[1]。また感染かんせん危険きけんせいのある地域ちいき渡航とこうするものは、予防よぼう接種せっしゅけなければならない[1]一般いっぱんてきいち投与とうよさい投与とうよ必要ひつようない[2]WHO必須ひっす医薬品いやくひんモデル・リスト記載きさいされており、基礎きそてき医療いりょう制度せいど重要じゅうようされている医薬品いやくひんである[3]

製法せいほう[編集へんしゅう]

弱毒じゃくどくしたねつウイルス17Dかぶもちいた、なまワクチンである[1]。2014ねん世界せかい価格かかくは1投与とうよにつき4.30から21.30あめりかドルである[4]アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは50から100あめりかドルである[5]

安全あんぜんせい[編集へんしゅう]

一般いっぱんてき安全あんぜんなワクチンであり[1]、これは症状しょうじょうていないHIV感染かんせんしょう患者かんじゃにもてはまる[1]軽度けいど副作用ふくさよう頭痛ずつう筋肉きんにくつう接種せっしゅ部位ぶいいたみ、発熱はつねつ発疹はっしんがありえる[1]副作用ふくさようによる重度じゅうどのアレルギーは8/1,000,000投与とうよ重度じゅうど神経しんけいせい問題もんだいは4/1,000,000投与とうよ臓器ぞうき不全ふぜん は3/1,000,000投与とうよ割合わりあいである[1]なまワクチンであるが、妊娠にんしんなか投与とうよ安全あんぜんとみなされているゆえ、感染かんせん危険きけんせいたかひとには推奨すいしょうしている[1]免疫めんえき機能きのう非常ひじょうとぼしいひとには、投与とうよするべきではない[6]

有効ゆうこう期間きかん[編集へんしゅう]

ねつワクチンによる免疫めんえき生涯しょうがいにわたって有効ゆうこうであり、追加ついか接種せっしゅ必要ひつようはない。1930年代ねんだい以降いこう6おくかい以上いじょう投与とうよされているが、ワクチン接種せっしゅねつ発症はっしょうしたのは12れいぎず、そのすべては接種せっしゅ5ねん以内いない発症はっしょうしている。このことから、ワクチンによる免疫めんえき年月としつきてもげんじゃくしないと結論けつろんできる[7]

歴史れきし[編集へんしゅう]

ねつのワクチン作出さくしゅつこころみは、1912ねんパナマ運河うんが開通かいつうしたことで、ねつ感染かんせんリスクが増大ぞうだいしたことがきっかけだった[8]野口のぐち英世ひでよエクアドルでの「ねつ」について、レプトスピラ病原びょうげんたいとして見出みだしワクチンを作製さくせいしたが、これはワイル病わいるびょうとの混同こんどうであり、このワクチンはねつには効果こうかかった。

そのセネガルダカールで、ねつから回復かいふくした患者かんじゃからたウイルス(フランスかぶ)をもちいてワクチンが作製さくせいされたが、毒性どくせいつよ弱毒じゃくどくにも成功せいこうしなかった。1927ねんにはAsibiというの、アフリカじん血清けっせいより分離ぶんりされたウイルスをもちいたワクチンが作製さくせいされた。これは安全あんぜんではあったが、大量たいりょうのヒト血清けっせい必要ひつようとするという問題もんだいがあった。しかし1937ねんマックス・タイラーが、Asibiかぶから効率こうりつてきねつウイルスかぶ17Dを作出さくしゅつし、これが実用じつようてきねつのワクチンかぶとして利用りようされている。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

ねつ予防よぼう接種せっしゅは、国際こくさい保健ほけん規則きそく規定きていにより、実施じっし機関きかんかぎられる。日本にっぽんでは検疫けんえきしょ日本にっぽん検疫けんえき衛生えいせい協会きょうかい東京とうきょう診療しんりょうしょのほかは、すうしょ指定してい医療いりょう機関きかんのみで実施じっししている。

2018ねん9がつ承認しょうにんけていた「ねつワクチン」(5にんよう: YF-VAX5dose)が、同年どうねん11がつごろかけひんしょうじる見込みこみであることが、厚生こうせい労働省ろうどうしょうより発表はっぴょうされ、これにともない、国立こくりつ国際こくさい医療いりょう研究けんきゅうセンターが中心ちゅうしんとなり、臨床りんしょう研究けんきゅうほうもとづく臨床りんしょう研究けんきゅうとして、一時いちじてき日本にっぽん承認しょうにんワクチンである「Stamaril」の接種せっしゅおこなうこととなった[12]

2019ねん8がつより、同年どうねん5がつ厚生こうせい労働省ろうどうしょう承認しょうにんけた「ねつワクチン1にんよう」(YF-VAX1dose) による予防よぼう接種せっしゅ開始かいしした[12]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o “Vaccines and vaccination against yellow fever. WHO position paper -- June 2013.”. Releve epidemiologique hebdomadaire / Section d'hygiene du Secretariat de la Societe des Nations = Weekly epidemiological record / Health Section of the Secretariat of the League of Nations 88 (27): 269-83. (5 July 2013). PMID 23909008. http://www.who.int/wer/2013/wer8827.pdf?ua=1. 
  2. ^ Staples, JE; Bocchini JA, Jr; Rubin, L; Fischer, M; Centers for Disease Control and Prevention, (CDC) (19 June 2015). “Yellow Fever Vaccine Booster Doses: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices, 2015.”. MMWR. Morbidity and mortality weekly report 64 (23): 647-50. PMID 26086636. 
  3. ^ WHO Model List of EssentialMedicines”. World Health Organization (2013ねん10がつ). 2014ねん4がつ22にち閲覧えつらん
  4. ^ Vaccine, Yellow Fever”. International Drug Price Indicator Guide. 2015ねん12月6にち閲覧えつらん
  5. ^ Hamilton, Richart (2015). Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2015 Deluxe Lab-Coat Edition. Jones & Bartlett Learning. p. 318. ISBN 9781284057560 
  6. ^ Yellow Fever Vaccine”. CDC (2011ねん12月13にち). 2015ねん12月15にち閲覧えつらん
  7. ^ Vaccines” (英語えいご) (2013ねん5がつ17にち). 2013ねん6がつ9にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん11月4にち閲覧えつらん
  8. ^ Frierson, J. Gordon (1 June 2010). “The Yellow Fever Vaccine: A History”. The Yale Journal of Biology and Medicine 83 (2): 77–85. ISSN 0044-0086. PMC 2892770. PMID 20589188. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2892770/. 
  9. ^ 平成へいせい28ねんけんはつ0408だい11ごう生食なましょくはつ0408だい4ごうねつ予防よぼう接種せっしゅ実施じっし機関きかん指定していについて」
  10. ^ 平成へいせい28ねんけんはつ0915だい5ごう生食なましょくはつ0915だい1ごうねつ予防よぼう接種せっしゅ実施じっし機関きかん指定してい解除かいじょについて」
  11. ^ 国際こくさい渡航とこうワクチン外来がいらい|りんくう総合医療そうごういりょうセンター|大阪おおさか泉佐野いずみさの”. www.rgmc.izumisano.osaka.jp. 2019ねん10がつ5にち閲覧えつらん
  12. ^ a b ねつワクチン供給きょうきゅうかんする検疫けんえきしょとう対応たいおうについて”. www.mhlw.go.jp. 厚生こうせい労働ろうどうしょう. 2019ねん10がつ5にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]