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黒米くろごめ

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黒米くろごめ

黒米くろごめ(くろまい、くろごめ)、またはむらさき黒米くろごめ(しこくまい)[1]むらさきよね(むらさきまい)[2]とはイネ栽培さいばい品種ひんしゅのうち、玄米げんまい種皮しゅひまたは果皮かひすくなくとも一方いっぽうおも果皮かひ[3])にアントシアニンけいむらさきくろ色素しきそふく品種ひんしゅのことである[4]中国ちゅうごくでは「むらさきまい[5]、「むらさきもち[6]、「くろもち[6]、「にわとりもち[6]ばれる。あかまい一種いっしゅとされる場合ばあいもある[7]

性質せいしつ特徴とくちょう

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調理ちょうりした黒米くろごめ

黒米くろごめぬかビタミンビタミンBビタミンEなど)[8]リンカルシウムなどのミネラル[9]ふくみ、摂取せっしゅすることで滋養じよう強壮きょうそう作用さようがもたらされるといわれている[8]。また、白米はくまいあかまいよりもたかこう酸化さんか機能きのう[10]

玄米げんまい種皮しゅひまたは果皮かひすくなくとも一方いっぽうアントシアニンけいむらさきくろ色素しきそふく[4]食用しょくようまいとしての黒米くろごめおも果皮かひふくまれるものを[3]タンニンけい赤色あかいろ色素しきそあわせもつ品種ひんしゅもあるが、そうしたものはかけのいろから黒米くろごめ分類ぶんるいされるとかんがえられている[3]。アントシアニンはポリフェノール一種いっしゅで、視力しりょく増強ぞうきょうかん機能きのう強化きょうか作用さようがあるとされる[11]着色ちゃくしょく程度ていど栽培さいばい方法ほうほう栽培さいばい環境かんきょうによっておおきく左右さゆうされ[12]高温こうおん[13]乾燥かんそう[12]によって着色ちゃくしょくわるくなる。また、とうじゅく期間きかん高温こうおん環境かんきょうむかえても着色ちゃくしょくわる[12]稲穂いなほいろは、出穂しゅつほ開花かいか1〜2週間しゅうかんもっとうつくしいとされる[14]

吸肥りょくつよ[15]気候きこう変化へんかなどの環境かんきょう変化へんか[16]つよい、棚田たなだなどの環境かんきょう不良ふりょうであっても育成いくせい比較的ひかくてき容易ようい[16]といった特徴とくちょうがある。一方いっぽうたけながたおれやすい、収量しゅうりょうすくないなどの難点なんてんゆうしている[17]。また、普通ふつう品種ひんしゅあかまいくらべて室温しつおん長期間ちょうきかん保存ほぞんした場合ばあい発芽はつがりつたかいことから、貯蔵ちょぞうせい保存ほぞんせいひくいとされる。

用途ようととしてはさけ[18]、うどん[19]蕎麦そば[20]もち[21]菓子かし[22]、パン[21]などの食品しょくひん加工かこうされるほか、染色せんしょくにももちいられ[23]わらリース注連縄しめなわ[21]、ドライフラワー[24]などに加工かこうされる。

さけについては、あかまいをはじめとする有色ゆうしょくまい使つかって着色ちゃくしょくしゅ製造せいぞうする方法ほうほうが1980年代ねんだい日本にっぽん考案こうあんされ、特許とっきょ取得しゅとくしている[25]。また、東京農業大学とうきょうのうぎょうだいがく門倉かどくらとしもりらは、した玄米げんまい酸素さんそざいにより糖化とうかし、乳酸にゅうさんくわえ、酵母こうぼくわえて発酵はっこうさせる方法ほうほうにより、黒米くろごめ原料げんりょうとする赤色あかいろライスワインつくることに成功せいこうした[26][ちゅう 1]

歴史れきし

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黒米くろごめ稲穂いなほ

中国ちゅうごくでは「むらさきまい[5]、「むらさきもち[6]、「くろもち[6]、「にわとりもち[6]などとばれ、ふるくから栽培さいばいされてきた。さけ加工かこうされたほか、漢方薬かんぽうやく産婦さんぷ栄養えいよう食品しょくひんとしてももちいられた[6]バリ島ばりとうではふるくから在来ざいらいしゅ栽培さいばいされており、ミャンマータイマレーシアカンボジアラオスベトナムフィリピン台湾たいわんネパールなどでも栽培さいばいされている[27]東南とうなんアジアでは吸水きゅうすいさせた黒米くろごめ石臼いしうすですりつぶし、ヤシとうココナッツミルクくわえてなべいたケーキや、竹筒たけづつなか黒米くろごめみずまたはココナッツミルクをれていためし[ちゅう 2]つくられている[27]

日本にっぽんでは1989ねん以降いこうすすめられた農林水産省のうりんすいさんしょうによるプロジェクト研究けんきゅう「スーパーライス計画けいかく」により、品種ひんしゅ改良かいりょうすすめられた[28]

品種ひんしゅ

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あさむらさき奥羽おうう349ごう
バリ島ばりとう在来ざいらい品種ひんしゅうるちたね黒米くろごめと、日本にっぽんもちたね品種ひんしゅである「タツミモチ」および「ココノエモチ」を交配こうはいした黒米くろごめ系統けいとうひがしもち396)にさらに「ふくひびき」を交配こうはいして、のうけん機構きこう東北とうほく農業のうぎょう試験場しけんじょう育成いくせいされたもち品種ひんしゅ[29][30]早生わせ収量しゅうりょう改善かいぜんがみられる[31]日本にっぽんでは東北とうほく地方ちほうちゅう南部なんぶ以南いなんでの栽培さいばいてきしている[29]完全かんぜん精白せいはくすると白米はくまいどう程度ていどしろくなる[32]
てんむらさき
うるちしゅ[33]島根しまねけん農業のうぎょう試験しけんしょ育成いくせい[33]
おくのむらさき奥羽おうう368ごう
あさむらさき同様どうようのうけん機構きこう東北とうほく農業のうぎょう試験場しけんじょう育成いくせいした品種ひんしゅ[31][34]うるちしゅであり、大粒おおつぶ収量しゅうりょうおお[31]
接骨せっこつもち
中国ちゅうごく雲南うんなんしょう栽培さいばいされている品種ひんしゅ[35]つぶまる[35]名前なまえ由来ゆらいくだいてもふかすとかたちととのうからとも、きず治療ちりょうもちいるからともされる[35]
くろねば
中国ちゅうごく広東かんとん農業のうぎょう科学かがくいんが、黒米くろごめ改良かいりょうモチ品種ひんしゅをもとに育成いくせい[35]

このほかに、中国ちゅうごくなどで育成いくせいされたはん改良かいりょうしゅがあるが、だつつぶせいおおきく、収量しゅうりょうひくいという欠点けってんがある[31]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ちなみに、門倉かどくららはあかまいからライスワインをつくることもこころみたがいろあかくならず、アルコール十分じゅうぶん生成せいせいされなかった[26]
  2. ^ タイではカオ・ラームとばれる。

出典しゅってん

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  1. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 14.
  2. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 32.
  3. ^ a b c 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 33.
  4. ^ a b 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 31.
  5. ^ a b 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 32, 132.
  6. ^ a b c d e f g 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 132.
  7. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 22–23, 33–34.
  8. ^ a b 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 24.
  9. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 24, 39.
  10. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 37–38.
  11. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 36.
  12. ^ a b c 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 72.
  13. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 41, 72.
  14. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 110.
  15. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 71.
  16. ^ a b 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 25.
  17. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 15.
  18. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 88–90.
  19. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 88, 91.
  20. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 109.
  21. ^ a b c 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 91.
  22. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 56, 88–89, 91.
  23. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 89–90, 111–112.
  24. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 111.
  25. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 102.
  26. ^ a b 猪谷いのたに富雄とみお 2000, pp. 103–104.
  27. ^ a b 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 134.
  28. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 51.
  29. ^ a b 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 55.
  30. ^ イネ品種ひんしゅデータベース検索けんさくシステム 「奥羽おううもち349ごうあさむらさき)」品種ひんしゅ情報じょうほう”. 国立こくりつ研究けんきゅう開発かいはつ法人ほうじん 農業のうぎょう食品しょくひん産業さんぎょう技術ぎじゅつ総合そうごう研究けんきゅう機構きこう 次世代じせだい作物さくもつ開発かいはつ研究けんきゅうセンター. 2021ねん3がつ15にち閲覧えつらん
  31. ^ a b c d 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 53.
  32. ^ 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 56.
  33. ^ a b 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 88.
  34. ^ イネ品種ひんしゅデータベース検索けんさくシステム 「奥羽おうう368ごう(おくのむらさき)」”. 国立こくりつ研究けんきゅう開発かいはつ法人ほうじん 農業のうぎょう食品しょくひん産業さんぎょう技術ぎじゅつ総合そうごう研究けんきゅう機構きこう 次世代じせだい作物さくもつ開発かいはつ研究けんきゅうセンター. 2021ねん3がつ15にち閲覧えつらん
  35. ^ a b c d 猪谷いのたに富雄とみお 2000, p. 133.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • いのたに富雄とみおあかまいむらさき黒米くろごめかおまい : 「古代こだいまい」の品種ひんしゅ栽培さいばい加工かこう利用りようのうやま漁村ぎょそん文化ぶんか協会きょうかい、2000ねんISBN 4-540-99206-6