﨟

﨟（ろう）とは、日本にっぽんの宮廷きゅうていにおいて用もちいられた年功ねんこうによる序列じょれつのこと。

概要がいよう

元もとは律令制りつりょうせいにもある労ろうや仏教ぶっきょう寺院じいんの臘に由来ゆらいするとされている。

官かん人じん社会しゃかいにおいて、官職かんしょく・位階いかいにおける年功序列ねんこうじょれつが昇進しょうしんなどの基準きじゅんとして重要じゅうよう視しされた平安へいあん時代じだい中期ちゅうき以後いご、任官にんかん・叙位じょいの順番じゅんばんによって一いち﨟・二に﨟・三さん﨟と数字すうじで区別くべつされたり、先さきに任にんじられたものを上うえ﨟、後ごから任にんじられた者ものを中ちゅう﨟・下しも﨟などと区別くべつする習慣しゅうかんが生うまれ、それがそのまま上下じょうげの秩序ちつじょとして用もちいられた。これを﨟次（ろうじ/らっし）と呼よんだ。

原則げんそく的てきに同一どういつの地位ちいにある者ものの﨟次は位階いかいの上下じょうげが優先ゆうせんされ、続つづいて叙じょ日びや任官にんかんの前後ぜんごが重視じゅうしされたが、兼帯けんたいする官職かんしょくの有無うむやその上下じょうげなどによっても﨟次が前後ぜんごする場合ばあいもあり、﨟次を巡めぐる解釈かいしゃくが昇進しょうしんの順番じゅんばんや席次せきじを巡めぐる紛争ふんそうの一因いちいんとなった例れいも見みられる。とりわけ六ろく位い蔵人くろうどにおいては、﨟次が特とくに重要じゅうよう視しされ、実例じつれいは少すくないながらも一いち﨟にあたる極きょく﨟を3代だい続つづけて出だした地下ちか家かは堂上どうじょう家かに格上かくあげされる慣例かんれいがあった。また、極ごく﨟は分配ぶんぱい（役割やくわり分担ぶんたんの決定けってい権けん）などの役目やくめを有ゆうしていた。なお、後世こうせいにおいて二に﨟の六ろく位い蔵人くろうどを差さ次じ（さしつぎ）、続つづいて三さん﨟・四よん﨟をそれぞれ氏し蔵人くろうど・新しん蔵人くろうどと称しょうしたが、この呼称こしょうの成立せいりつ時期じきは不明ふめいである。

女房にょうぼうの世界せかいにおいても上うえ﨟・中ちゅう﨟・下しも﨟の区別くべつがあったが、その区別くべつは実家じっかの家格かかくに影響えいきょうされ、上うえ﨟は公卿くぎょうの家いえの娘むすめがなるのが例れいであり、稀まれに摂家せっけ出身しゅっしんの女房にょうぼうが存在そんざいした場合ばあいには大上おおがみ﨟（おおじょうろう）と呼よばれ、その他たの上うえ﨟である小上こがみ﨟（こじょうろう）とは区別くべつされた。これに対たいして中ちゅう﨟は五ご位い以上いじょう、下しも﨟は六ろく位い官かん人じんか社家しゃけ出身しゅっしんの女性じょせいが就つくこととされていた。

上うえ﨟の制度せいどは江戸城えどじょうの大奥おおおくにおいても導入どうにゅうされた他ほか、「女郎じょろう」の語かたりの由来ゆらいを「上うえ﨟」の訛なまりとする説せつもある。また、「埒らちもない」の語かたりの由来ゆらいも「﨟次もない」の訛なまりとする説せつもある。

参考さんこう文献ぶんけん

• 古瀬ふるせ奈津子なつこ「﨟」『国史こくし大だい辞典じてん 14』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん 1993年ねん） ISBN 978-4-642-00514-2
• 橋本はしもと義彦よしひこ「﨟」2・3『日本にっぽん史し大だい事典じてん 6』（平凡社へいぼんしゃ 1994年ねん） ISBN 978-4-582-13106-2
• 黒板こくばん伸夫のぶお「﨟」『平安へいあん時代じだい史し事典じてん』（角川書店かどかわしょてん 1994年ねん） ISBN 978-4-040-31700-7
• 田中たなか文あや英えい「﨟」『日本にっぽん歴史れきし大だい事典じてん 3』（小学館しょうがくかん 2001年ねん） ISBN 978-4-095-23003-0