Cisco Internetworking Operating System

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Cisco Internetworking Operating System
開発かいはつしゃ シスコシステムズ
開発かいはつじょうきょう 開発かいはつちゅう
ソースモデル クローズドソース
最新さいしん安定あんていばん 15.9(3)M[1] / 2019ねん7がつ31にち (4ねんまえ) (2019-07-31)
プラットフォーム シスコルーターのほとんどと現行げんこうCatalystスイッチ
ウェブサイト Cisco IOS Technologies - Cisco Systems
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Cisco Internetworking Operating System (Cisco IOS) は、シスコシステムズせいのほとんどのルータースイッチ使用しようされているソフトウェアである。ウィリアム・イェーガー英語えいごばんによって開発かいはつされた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

Cisco IOSは、マルチタスクオペレーティングシステム (OS) と統合とうごうされたルーティングスイッチングインターネットワーキングおよびテレコミュニケーション機能きのうのパッケージである。コマンドラインインターフェース (CLI) をゆうしており、他社たしゃのネットワーク製品せいひんもCisco IOSを模倣もほうしているため、おなじコマンドが実行じっこう可能かのうである場合ばあいおおい。使用しよう可能かのうなコマンドは、CLIの「モード」と権限けんげんレベルによって決定けっていされる。「グローバルコンフィグレーションモード」であれば、システム全体ぜんたい設定せってい変更へんこうするコマンドを実行じっこうできるが、「インターフェイスコンフィグレーションモード」では、インターフェイスの設定せってい変更へんこうするコマンドを実行じっこうできる。すべてのコマンドは0から15までの権限けんげんレベルをてられており、ユーザーは自分じぶん権限けんげんレベルにおうじてコマンドを実行じっこうすることができる。

バージョニング[編集へんしゅう]

Cisco IOSは3つの数字すうじといくつかの文字もじによってa.b(c.d)eという形式けいしきでバージョニングされる。

  • aはメジャーバージョン番号ばんごうである。
  • bはマイナーバージョン番号ばんごうである。
  • cはリリース番号ばんごうである。おなじa.bのわせのなかあたらしいリリースがあるさいえる。
  • d一般いっぱんてきなリリースからは省略しょうりゃくされる)は暫定ざんていてきなビルドの番号ばんごうである。
  • e(0 - 2文字もじ)はリリースされたトレインの識別子しきべつしである。なし(下記かきのメインラインであることを明示めいじ)、T(テクノロジーよう)、E企業きぎょうよう)、S(サービスプロバイダよう)、XA臨時りんじ機能きのうのためのもの)、XBべつ臨時りんじ機能きのうのためのもの)とう

たとえば、リリース12.3(1)はバージョン12.3における最初さいしょのCisco IOSのメインラインのリリースである。12.3(2)はつぎのリリースであり以下いか同様どうようである。12.3(1)TはTトレインの最初さいしょのリリースであり12.3(2)Tはそのつぎであり以下いか同様どうようである。暫定ざんていてきなビルドはつぎのリリースの候補こうほであり、つぎのリリースが入手にゅうしゅ可能かのうになるまえにバグを修正しゅうせいするよりはや方法ほうほうとして、シスコのサポートによって頻繁ひんぱん入手にゅうしゅ可能かのうとなる。たとえば、12.3(1.2)Tはリリース12.3(1)Tに対応たいおうする2かい暫定ざんていてきなビルドである。

リビルド - しばしば、あたえられたIOSのバージョンの、単一たんいつ問題もんだいまたは脆弱ぜいじゃくせい解決かいけつするためにリビルドがつくられる。たとえば、12.1(8)E14は12.1(8)Eの14のリビルドである。リビルドは迅速じんそく欠陥けっかん修理しゅうりするため、また重大じゅうだいなインフラストラクチャーを運営うんえいしており、変化へんかとリスクを最小さいしょうしたいためメジャーバージョンのアップグレードをのぞまない顧客こきゃくのために提供ていきょうされる。

暫定ざんていてきなリリース - しゅう単位たんいされ、現在げんざい開発かいはつ成果せいか構成こうせいされる。シスコの報告ほうこくウェブサイトでは、関連かんれんした問題もんだい修正しゅうせいするために複数ふくすう暫定ざんていてきなリリースがリストされるかもしれない(この理由りゆう一般いっぱんには未知みちである)。

メンテナンスリリース - 性能せいのう向上こうじょうとバグ修正しゅうせいふくきびしく修正しゅうせいされたりリース。シスコはリビルドおよび暫定ざんていてきなリリースのうえにある、可能かのうかぎりのメンテナンスリリースにアップデートするようすすめる。

トレイン[編集へんしゅう]

Cisco IOSはちが機能きのうのセットをふくむ、いくつかの「トレイン」にけられる。トレインはシスコがターゲットとしている顧客こきゃくべつ市場いちばとグループに多少たしょう対応たいおうする。

  • メインライントレインはシスコが提供ていきょうできるもっと安定あんていしたリリースであるようにデザインされ、ライフタイムのあいだけっして機能きのうセットは拡張かくちょうされない。アップデートは製品せいひんちゅうバグ対処たいしょするためだけにリリースされる。直前ちょくぜんのTトレインはメインライントレインの基礎きそとなる。たとえば12.1Tは12.2の基礎きそとなる。よって、あるメインライントレインのリリースで利用りよう可能かのう機能きのう調しらべるさいには、直前ちょくぜんのTトレインをるとよい。
  • T - テクノロジートレイン。そのライフタイムのあいだあたらしい機能きのうとバグの修正しゅうせいる。よって、メインラインほど安定あんていしない。(12.0よりふるいIOSでは、Pトレインがテクノロジートレインとして役立やくだっていた。)シスコはあるTトレインのあたらしい機能きのう実装じっそうする緊急きんきゅうせいがない場合ばあいにおける生産せいさん現場げんばでのTトレインの使用しよう推奨すいしょうしない。
  • S - サービスプロバイダトレイン。ある会社かいしゃのコアルータ製品せいひんのみに対応たいおうし、サービスプロバイダの顧客こきゃくのためにおおきくカスタマイズされる。
  • E - エンタープライズトレイン。企業きぎょうにおける実装じっそうのためにカスタマイズされる。
  • B - ブロードバンドトレイン。インターネットベースのブロードバンド機能きのうをサポートしている。
  • XAXB、… - 文書ぶんしょされる必要ひつようのある特別とくべつ機能きのうのトレイン。

時々ときどき特定とくていのニーズに対応たいおうするためにべつのトレインがリリースされる。たとえば、12.0AAトレインはCisco AS5800のために必要ひつようあたらしいコードがふくまれている。

パッケージング・機能きのうセット[編集へんしゅう]

ほとんどのIOSを動作どうささせるシスコの製品せいひん1個いっこ以上いじょうの「機能きのうセット」もしくは「パッケージ」をっている。典型てんけいてきにはシスコせいルーターのための8つのパッケージと、シスコせいスイッチングハブのための5つのパッケージが存在そんざいする。たとえば、Catalystスイッチでの使用しよう意図いとしているCisco IOSのリリースは、「標準ひょうじゅん」バージョン(基本きほんてきなIPルーティングのみのサポート)、「強化きょうか」バージョン(完全かんぜんIPv4ルーティングのサポート)、および「高度こうどなIPサービス」バージョン(強化きょうかされた機能きのうIPv6のサポート)が利用りよう可能かのうである。

かくパッケージは以下いかのようなのサービスカテゴリーに対応たいおうする。

  • IPデータ
  • 集中しゅうちゅうした音声おんせいとデータ
  • セキュリティとVirtual Private Network

アーキテクチャ[編集へんしゅう]

すべてのIOSにおいて、ルーティングパケット転送てんそうLANスイッチング)は別々べつべつ機能きのうである。ルーティングなどのプロトコルはCisco IOSのプロセスとして動作どうさし、ルーティング情報じょうほうベース (RIB) に貢献こうけんする。RIBはルーターの転送てんそう機能きのう使用しようする最終さいしゅうてきなIP転送てんそうテーブル (FIB, Forwarding Information Base) をつくるために処理しょりされる。ソフトウェアのみのよる転送てんそう機能きのうつルーター(れい:Cisco 7200)において、アクセス制御せいぎょリストによるフィルタリングと転送てんそうふくむほとんどのトラフィックは、 Cisco Express Forwarding (CEF)もしくはdCEF(配布はいふされたCEF)によってみレベルでおこなわれる。これによって、IOSはパケットを転送てんそうするためにプロセスコンテキストスイッチをもちいる必要ひつようがない。Open Shortest Path FirstBorder Gateway Protocolのようなルーティング機能きのうはプロセスレベルで動作どうさする。Cisco 12000シリーズのようなハードウェアベースの転送てんそうおこなうルーターの場合ばあい、IOSはソフトウェアでFIBをつくり、実際じっさいのパケットを転送てんそうする機能きのう実行じっこうするハードウェア(ASICネットワークプロセッサなど)にロードする。

Cisco IOSは「モノリシック」な(いわゆる「モノリシックカーネル」ということではなく、システム全体ぜんたいひとつのイメージとして動作どうさし、すべてのプロセスがおなじメモリ空間くうかん共用きょうようする)アーキテクチャをっている。プロセスあいだのメモリの保護ほご存在そんざいしない。したがって、IOSのコードないのバグが、ほかのプロセスが使用しようしているデータを破壊はかいしうる。

きゅう)IOS は、run to completionスケジューラをっているので、カーネルは動作どうさしているプロセスからプリエンプトしない。のプロセスが動作どうさするチャンスを前提ぜんていとして、実行じっこうちゅうのプロセスがカーネルをばねばならない。

CRS-1などの非常ひじょうたか稼働かどうせい必要ひつようとするシスコ製品せいひんにとって、この制限せいげん容認ようにんできなかった。くわえて、ジュニパーネットワークスJUNOSのような競合きょうごうするルーターのOSは、そのような制限せいげんがないようにデザインされた。シスコの反応はんのうは、モジュールせいとプロセスあいだのメモリーの保護ほご、スレッドのかるさ、みのスケジューリング、および失敗しっぱいしたプロセスの独立どくりつしたさいスタートの機能きのう提供ていきょうするIOS XRばれるあたらしいCisco IOSの開発かいはつであった。IOS XRはQNXマイクロカーネル使用しようし、現在げんざいのIOSのコードのだい部分ぶぶんは、あたらしいカーネルによって提供ていきょうされる機能きのう利用りようするためにえられている。

マイクロカーネルアーキテクチャは、カーネルちゅう動作どうさすることが絶対ぜったい必要ひつようではないすべてのプロセスをカーネルからのぞき、アプリケーションのプロセスに類似るいじしたプロセスとして実行じっこうする。その方法ほうほうつうじて、IOS XRはあたらしいルーターのプラットフォームのためのたか稼動かどうせい達成たっせいすることができる。よって、IOSとIOS XRは機能きのうとデザインにおいて関連かんれんするが、おおきくことなるコードベースである。2005ねん、シスコはCisco 12000シリーズでIOS XRを導入どうにゅうし、マイクロカーネルアーキテクチャをCRS-1からシスコのひろ展開てんかいされたコアルーターに拡張かくちょうした。

2006ねん、シスコはQNXマイクロカーネル環境かんきょうをより伝統でんとうてきなIOSの環境かんきょう拡張かくちょうするIOS Software Modularity入手にゅうしゅ可能かのうにしたが、まだ顧客こきゃく要求ようきゅうしているソフトウェアアップグレード機能きのう提供ていきょうしている。それはCatalyst6500で入手にゅうしゅ可能かのうである。

セキュリティと脆弱ぜいじゃくせい[編集へんしゅう]

Cisco IOSには、Unixを通常つうじょうかたち利用りようしたシステムにあるような、カーネルとくらべて権限けんげん制限せいげんされたユーザプロセスとしてプロセスを実行じっこうすることによるセキュリティがない。これは、ちょっとしたバグによってきるバッファオーバーランなどが、そく、Unixでいうところの「root権限けんげんによる任意にんいコード実行じっこう」に相当そうとうする危険きけんなセキュリティホールにつながる、ということを意味いみする。

互換ごかんせいのために保持ほじされているレガシーCLIの、Router(config)#username jdoe password 7 0832585B1910010713181Fのような、Type 7ハッシュとしてCLIじょう暗号あんごうされたパスワードは、1995ねん以降いこう入手にゅうしゅ可能かのうな「getpass」とばれるソフトウェアを使つかって、容易ようい突破とっぱできる。上記じょうきれいは「stupidpass」と解読かいどくされる。これはふるいニュースであるが、現在げんざいでもこれらのよわいハッシュは使用しようされている。getpassは、Type 5パスワードや、enable secretコマンドで設定せっていされたMD5処理しょりされたパスワードは突破とっぱできない。

ちゅう:シスコは、すべてのCisco IOS機器きき認証にんしょう (authentication)、認可にんか (authorization)、アカウンティング (accounting) によるセキュリティモデル (AAA) を実装じっそうするようすすめている。AAAはローカル、RADIUSおよびTACACS+データベースを使用しようすることができる。

IOSの後継こうけい[編集へんしゅう]

ルーターやスイッチに搭載とうさいされるIOSの後継こうけいとなるネットワークOSには以下いかがある。これらはネットワーク機器きき機能きのう拡張かくちょうふくまれている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Cross-Platform Release Notes for Cisco IOS Release 15.9(3)M” (2019ねん7がつ31にち). 2024ねん2がつ15にち閲覧えつらん
  2. ^ Cisco IOS XR ソフトウェア
  3. ^ Cisco IOS XE

文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 『インサイドCisco IOSアーキテクチャ - Ciscoルータ内部ないぶ動作どうさ理解りかいするための手引てびき』ISBN 978-4-7973-1726-8

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]