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ERCC4

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ERCC4
PDBに登録とうろくされている構造こうぞう
PDBオルソログ検索けんさく: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧いちらん

1Z00, 2A1J, 2MUT, 2KN7, 2AQ0

識別子しきべつし
記号きごうERCC4, ERCC11, FANCQ, RAD1, XPF, XFEPS, excision repair cross-complementation group 4, ERCC excision repair 4, endonuclease catalytic subunit
外部がいぶIDOMIM: 133520 MGI: 1354163 HomoloGene: 3836 GeneCards: ERCC4
遺伝子いでんし位置いち (ヒト)
16番染色体 (ヒト)
染色せんしょくたい16ばん染色せんしょくたい (ヒト)[1]
16番染色体 (ヒト)
ERCC4遺伝子の位置
ERCC4遺伝子の位置
バンドデータ開始かいしてん13,920,138 bp[1]
終点しゅうてん13,952,348 bp[1]
遺伝子いでんし位置いち (マウス)
16番染色体 (マウス)
染色せんしょくたい16ばん染色せんしょくたい (マウス)[2]
16番染色体 (マウス)
ERCC4遺伝子の位置
ERCC4遺伝子の位置
バンドデータ開始かいしてん12,927,548 bp[2]
終点しゅうてん12,968,481 bp[2]
RNA発現はつげんパターン
さらなる参照さんしょう発現はつげんデータ
遺伝子いでんしオントロジー
分子ぶんし機能きのう protein N-terminus binding
damaged DNA binding
protein C-terminus binding
血漿けっしょうタンパク結合けつごう
TFIID-class transcription factor complex binding
ヌクレアーゼ活性かっせい
エンドヌクレアーゼ活性かっせい
加水かすい分解ぶんかい酵素こうそ活性かっせい
endodeoxyribonuclease activity
single-stranded DNA binding
telomerase inhibitor activity
3' overhang single-stranded DNA endodeoxyribonuclease activity
DNA結合けつごう
identical protein binding
single-stranded DNA endodeoxyribonuclease activity
細胞さいぼう構成こうせい要素ようそ ERCC4-ERCC1 complex
TFIID
核質かくしつ
テロメア
nucleotide-excision repair factor 1 complex
nucleotide-excision repair complex
細胞さいぼうかく
生物せいぶつがくてきプロセス resolution of meiotic recombination intermediates
interstrand cross-link repair
cellular response to UV
cellular response to DNA damage stimulus
global genome nucleotide-excision repair
nucleotide-excision repair involved in interstrand cross-link repair
紫外線しがいせん防御ぼうぎょ
negative regulation of telomere maintenance
transcription-coupled nucleotide-excision repair
nucleotide-excision repair, DNA incision
telomere maintenance
response to UV
double-strand break repair via homologous recombination
DNA修復しゅうふく
nucleotide-excision repair, DNA incision, 3'-to lesion
ヌクレオチド除去じょきょ修復しゅうふく
nucleotide-excision repair, DNA incision, 5'-to lesion
nucleotide-excision repair, preincision complex stabilization
double-strand break repair via nonhomologous end joining
negative regulation of telomerase activity
negative regulation of telomere maintenance via telomere lengthening
negative regulation of protection from non-homologous end joining at telomere
negative regulation of double-stranded telomeric DNA binding
telomeric DNA-containing double minutes formation
regulation of autophagy
出典しゅってん:Amigo / QuickGO
オルソログ
たねヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_005236

NM_015769

RefSeq
(タンパク質たんぱくしつ)

NP_005227

NP_056584

場所ばしょ
(UCSC)
Chr 16: 13.92 – 13.95 MbChr 16: 12.93 – 12.97 Mb
PubMed検索けんさく[3][4]
ウィキデータ
閲覧えつらん/編集へんしゅう ヒト閲覧えつらん/編集へんしゅう マウス

ERCC4(excision repair cross-complementation group 4)もしくはXPF(xeroderma pigmentosum complementation group F)は、ヒトではERCC4遺伝子いでんしにコードされるタンパク質たんぱくしつである。ERCC4はERCC1とともにERCC1-XPFふく合体がったい形成けいせいし、DNA修復しゅうふくDNAぐみ関与かんよする[5][6]

ERCC1-XPFはDNAの特定とくてい構造こうぞう切断せつだんするヌクレアーゼである。ERCC1とERCC4はDNA修復しゅうふくのパートナーであるため、これらの因子いんしおおくのめんかんしてとも記載きさいがなされている。ERCC1-XPFふく合体がったいは、DNAのヌクレオチド除去じょきょ修復しゅうふく経路けいろにおいて必須ひっすとなるヌクレアーゼである。ERCC1-XPFヌクレアーゼはDNAほんくさり切断せつだん修復しゅうふくや、2ほんのDNAくさり連結れんけつする有害ゆうがい架橋かきょう損傷そんしょう修復しゅうふく経路けいろにおいても機能きのうする。

ERCC4かつ変異へんいゆうする細胞さいぼうは、紫外線しがいせん(UV)照射しょうしゃやDNAくさりあいだ架橋かきょうおこな化学かがく物質ぶっしつなど、特定とくていのDNA損傷そんしょう因子いんしたいする感受性かんじゅせい正常せいじょう細胞さいぼうよりもたかくなる。Ercc4かつ変異へんいゆうする遺伝子いでんし改変かいへんマウスはDNA修復しゅうふく欠陥けっかんがみられ、また代謝たいしゃストレス誘発ゆうはつせい生理せいりてき変化へんかともなうことで早老そうろうこされる[7]Ercc4完全かんぜんに(ホモ接合せつごうがたで)かけしっしたマウスは生存せいぞんすることができず、またヒトでもERCC4のホモ接合せつごうがたかけしつつかっていない。ヒト集団しゅうだんでは、まれにERCC4の機能きのう不全ふぜんをもたらす遺伝いでんてき変異へんいゆうする個体こたいがみられる。正常せいじょう遺伝子いでんし存在そんざいしない場合ばあい、こうした変異へんいいろ素性すじょういぬいかわしょうコケイン症候群しょうこうぐんファンコニ貧血ひんけつなどの疾患しっかん原因げんいんとなる場合ばあいがある。

遺伝子いでんし

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ERCC4遺伝子いでんし導入どうにゅうによって、CHO細胞さいぼう由来ゆらい特定とくてい紫外線しがいせん感受性かんじゅせい変異へんいかぶのDNA修復しゅうふく欠陥けっかん修正しゅうせいすることができた[8]。CHO細胞さいぼうでは複数ふくすう独立どくりつした相補そうほぐんたんはなされており[9]、この遺伝子いでんしはcomplementation group 4の細胞さいぼう紫外線しがいせんたいせい回復かいふくした。このたねあいだでの遺伝いでんてき相補そうほせい反映はんえいして、遺伝子いでんしは"Excision repair cross-complementing 4"(ERCC4)と命名めいめいされた[10]

ヒトのERCC4遺伝子いでんしは、916アミノ酸あみのさんからなるやく104 kDaのタンパク質たんぱくしつをコードする[11]

ERCC4同等どうとう機能きのうゆうする類似るいじした遺伝子いでんし(オルソログ)はかく生物せいぶつのゲノムにも存在そんざいする。もっともよく研究けんきゅうされている遺伝子いでんしとしては、出芽しゅつが酵母こうぼSaccharomyces cerevisiaeRAD1遺伝子いでんし分裂ぶんれつ酵母こうぼSchizosaccharomyces pomberad16+遺伝子いでんしがある[11]

タンパク質たんぱくしつ

[編集へんしゅう]
XPFのしき活性かっせいなヘリカーゼドメイン、ヌクレアーゼドメイン、ヘリックス-ヘアピン-ヘリックス(HhH)ドメインがしめされている。

1分子ぶんしのERCC1と1分子ぶんしのERCC4(XPF)が結合けつごうすることで、活性かっせいがたヌクレアーゼであるERCC1-XPFヘテロりょうたい形成けいせいされる。ERCC1-XPFヘテロりょうたいにおいては、ERCC1がDNA-タンパク質たんぱくしつあいだ相互そうご作用さようタンパク質たんぱくしつ-タンパク質たんぱくしつあいだ相互そうご作用さよう媒介ばいかいしている。XPFはエンドヌクレアーゼ活性かっせい部位ぶいち、またDNA結合けつごうタンパク質たんぱくしつ-タンパク質たんぱくしつあいだ相互そうご作用さよう関与かんよしている[8]

ERCC4/XPFには2つの保存ほぞんされたドメインが存在そんざいし、そのあいだてい保存ほぞんせい領域りょういきによってへだてられている。N末端まったん領域りょういきDNAヘリカーゼスーパーファミリーIIの保存ほぞんされたドメインのいくつかとのあい同性どうせいがみられるが、XPFはDNAヘリカーゼではない[12]C末端まったん領域りょういきにはヌクレアーゼ活性かっせい活性かっせい部位ぶいざんもと位置いちしている[13]。ERCC1のだい部分ぶぶんはXPFのC末端まったん領域りょういき配列はいれつレベルで関連かんれんしているが[14]、ヌクレアーゼドメインのざんもと存在そんざいしていない。ERCC1とXPFにはどちらもC末端まったんに、DNAを結合けつごうするヘリックス-ヘアピン-ヘリックス(HhH)ドメインが存在そんざいする。

構造こうぞう特異とくいてきヌクレアーゼ

[編集へんしゅう]
ERCC1-XPFヌクレアーゼの基質きしつとなるDNA構造こうぞう

ERCC1-XPFふく合体がったい構造こうぞう特異とくいてきエンドヌクレアーゼである。ERCC1-XPFは一本いっぽんくさりのみまたはほんくさりのみからなるDNAにたいする切断せつだん活性かっせいたないが、ほんくさりDNAと一本いっぽんくさりDNAの接合せつごうのDNAホスホジエステル骨格こっかく特異とくいてき切断せつだんする。切断せつだん導入どうにゅうされるのは、こうした接合せつごうの5'がわやく2ヌクレオチドはなれた位置いちほんくさりDNAである[15]。この構造こうぞう特異とくいせいは、ERCC1-XPFの酵母こうぼオルソログであるRAD10-RAD1ではじめてしめされた[16]

ERCC1とXPFのC末端まったん領域りょういき位置いちする疎水そすいてきなHhHモチーフは、たがいに相互そうご作用さようして両者りょうしゃりょうからだ促進そくしんする[17][18]りょうからだしていない場合ばあい触媒しょくばい活性かっせいしめすことはない。触媒しょくばいドメインはXPFない存在そんざいし、ERCC1自体じたい触媒しょくばい活性かっせいつわけではないが、ERCC1はふく合体がったい活性かっせい必要ひつよう不可欠ふかけつである。

ERCC1-XPFのDNAへの結合けつごうかんしては、関連かんれんするタンパク質たんぱくしつ断片だんぺん原子げんし分解能ぶんかいのう構造こうぞうもとづいて、いくつかのモデルが提唱ていしょうされている[17]。DNAへの結合けつごうはERCC1とXPFのHhHドメインによって媒介ばいかいされ、これらのドメインによってヘテロりょうたい接合せつごう配置はいちされているとかんがえられている。

ヌクレオチド除去じょきょ修復しゅうふく

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ヌクレオチド除去じょきょ修復しゅうふく(NER)には、いくつかのタンパク質たんぱくしつふく合体がったい協調きょうちょうてき損傷そんしょうDNAを認識にんしきし、損傷そんしょう部位ぶい両側りょうがわみじか範囲はんいのDNAらせんを局所きょくしょてきひらく。ERCC-XPFヌクレアーゼは損傷そんしょうDNAくさり損傷そんしょう部位ぶいの5'がわみをれる[15]。ERCC1はNERの過程かていではXPA英語えいごばん相互そうご作用さようし、DNAやタンパク質たんぱくしつとの協調きょうちょうてき相互そうご作用さようおこなう。

ほんくさり切断せつだん修復しゅうふく

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ERCC1-XPFに変異へんいゆうする哺乳類ほにゅうるい細胞さいぼう正常せいじょう細胞さいぼう比較ひかくして、DNAほんくさり切断せつだんこす因子いんし電離でんり放射線ほうしゃせんなど)にたいする感受性かんじゅせいがある程度ていどたかくなる[19][20]あいどうくみ修復しゅうふくあいどう末端まったん結合けつごう双方そうほうがERCC-XPF1の機能きのう依存いぞんしており[21][22]、どちらのほんくさり切断せつだん修復しゅうふく経路けいろにおいてもERCC1-XPFの活性かっせいさい結合けつごうまえのDNAまつはしからのあいどうな3'一本いっぽんくさりテールの除去じょきょ関係かんけいしている。あいどうくみえにおいては、この活性かっせい一本いっぽんくさりアニーリング(single-strand annealing、SSA)経路けいろ必要ひつようとされる。3'末端まったん一本いっぽんくさりテールのトリミングはあいどう末端まったん結合けつごう経路けいろにおいても必要ひつようであり、この経路けいろにおいてはKuタンパク質たんぱくしつ活性かっせい依存いぞんしている[23][24]あいどうくみえを利用りようしたDNAのみは遺伝子いでんし操作そうさ重要じゅうよう技術ぎじゅつであるが、ホスト細胞さいぼうのERCC-XPFの機能きのう依存いぞんしている[25]

くさりあいだ架橋かきょう修復しゅうふく

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ERCC1もしくはXPFに変異へんいゆうする哺乳類ほにゅうるい細胞さいぼうは、DNAくさりあいだ架橋かきょうこす因子いんしたいする感受性かんじゅせいとくたか[26]くさりあいだ架橋かきょうはDNA複製ふくせい進行しんこう遮断しゃだんし、遮断しゃだんされたDNA複製ふくせいフォーク部分ぶぶん構造こうぞうがERCC-XPFによる切断せつだん基質きしつとなる[27][28]。DNAの一方いっぽうくさり架橋かきょう両側りょうがわみをれて架橋かきょうはずすことで、修復しゅうふく開始かいしされている可能かのうせいがある。に、くさりあいだ架橋かきょう付近ふきんのDNAにほんくさり切断せつだん導入どうにゅうされ、そのあいどうくみ修復しゅうふくにERCC1-XPFが関与かんよしている可能かのうせいもある。ERCC1-XPFはくさりあいだ架橋かきょう修復しゅうふく関与かんよする唯一ゆいいつのヌクレアーゼではないものの、細胞さいぼう周期しゅうきのいくつかの段階だんかいくさりあいだ架橋かきょう修復しゅうふく必要ひつようとされる[29][30]

臨床りんしょうてき意義いぎ

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いろ素性すじょういぬいかわしょう

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希少きしょう遺伝いでん疾患しっかんであるいろ素性すじょういぬいかわしょう(XP)の患者かんじゃ一部いちぶは、ERCC4変異へんいかかえている。これらの患者かんじゃはグループF(XP-F)に分類ぶんるいされる。XPの診断しんだん基準きじゅんとなる特徴とくちょうは、乾燥かんそうした鱗状りんじょう皮膚ひふ露光ろこう皮膚ひふへの異常いじょう色素しきそ沈着ちんちゃく重度じゅうどひかり感受性かんじゅせいであり、紫外線しがいせんによる皮膚ひふがん発症はっしょうリスクが1000ばい以上いじょうたかくなる[5]

コケイン症候群しょうこうぐん

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XP-Fの患者かんじゃだい部分ぶぶんではXPの症状しょうじょう中等ちゅうとうであるが、そのなかのわずかな割合わりあいでさらにコケイン症候群しょうこうぐん(CS)の症状しょうじょうがみられることがある[31]。コケイン症候群しょうこうぐん患者かんじゃひかり感受性かんじゅせいしめし、さらに発生はっせい欠陥けっかん神経症しんけいしょうじょうしめ[5][7]

ERCC4遺伝子いでんし変異へんいは、非常ひじょうまれにXFE早老そうろう症候群しょうこうぐん(XPF-ERCC1 progeroid syndrome)をこす場合ばあいがある[32]患者かんじゃはXPとCSの特徴とくちょうくわえ、神経しんけい肝胆かんたんどう筋骨きんこつかく造血ぞうけつけい症状しょうじょうがみられる。

ファンコニ貧血ひんけつ

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ファンコニ貧血ひんけつ(FA)の症状しょうじょうしめ患者かんじゃなかには、ERCC4遺伝子いでんし原因げんいん変異へんい存在そんざいする場合ばあいがある。ファンコニ貧血ひんけつは、おも造血ぞうけつけい症状しょうじょうともなふくあいてき疾患しっかんである。FAの特徴とくちょうは、DNAくさりあいだ架橋かきょうこす因子いんしたいする過敏かびんせいである。ERCC4遺伝子いでんし変異へんいゆうするFAの患者かんじゃはグループQ(FANCQ)に分類ぶんるいされる[31][33]

正常せいじょう結腸けっちょうにおけるERCC4

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免疫めんえき染色せんしょくおこなった結腸けっちょうかげ窩の連続れんぞく断面だんめん。DNA修復しゅうふくタンパク質たんぱくしつPMS2(A)、ERCC1(B)、ERCC4(C)の正常せいじょうこう発現はつげんしめされている。このかげ窩は結腸けっちょうしん生物せいぶつ発生はっせいしていない58さい男性だんせいなまけん試料しりょうであり、かげ窩のだい部分ぶぶん吸収きゅうしゅう細胞さいぼうかくないでこれらのタンパク質たんぱくしつこう発現はつげんがみられる。かげ窩のいただき上部じょうぶかげ窩間のうち腔表めん細胞さいぼうかくでは、PMS2やERCC4の発現はつげん低下ていかしている、もしくはみられない[34]

通常つうじょう、ERCC4(XPF)は結腸けっちょう内壁ないへき細胞さいぼう細胞さいぼうかくこうレベルに発現はつげんしている。結腸けっちょう内壁ないへきおちいいれともなたんそう円柱えんちゅう上皮じょうひおおわれている。おちい入部にゅうぶちょうせんもしくはちょうかげばれる。結腸けっちょうかげ窩はあつかべ試験管しけんかんのような微視的びしてき形状けいじょうをしており、かんなが方向ほうこう中心ちゅうしんあなひらいている。かげ窩のふかさは細胞さいぼう75から110ぶん程度ていどである。正常せいじょう腫瘍しゅようせい結腸けっちょう上皮じょうひではDNA修復しゅうふく非常ひじょう活発かっぱつなようであり、ERCC4、PMS2、ERCC1のこう発現はつげんともなう。

細胞さいぼうかげ窩の底部ていぶされ、かげ窩のじく沿って上方かみがた移動いどうし、数日すうじつには結腸けっちょうかん腔へ脱落だつらくする[35]かげ窩の底部ていぶには5から6みき細胞さいぼう存在そんざいする。底部ていぶみき細胞さいぼうがERCC4を発現はつげんしている場合ばあい一般いっぱんてきにそのかげ窩のすうせん細胞さいぼうすべてでERCC4が発現はつげんしている。このことはこのふしのパネルCにおいて、かげ窩内のほぼすべてのちょう細胞さいぼうがERCC4にたいする免疫めんえき染色せんしょく褐色かっしょく染色せんしょくされていることからもしめされる。正常せいじょう結腸けっちょう上皮じょうひかくかげ窩のすうせんちょう細胞さいぼうでは、PMS2やERCC1でも同様どうよう発現はつげんがみられる。このではヘマトキシリンによるDNAの対比たいひ染色せんしょくおこなわれており、かくあお灰色はいいろしめされている。粘膜ねんまく固有こゆうそう細胞さいぼうかげ窩の下部かぶ周囲しゅうい細胞さいぼう)のかくだい部分ぶぶんはヘマトキシリンのあお灰色はいいろていしており、PMS2、ERCC1、ERCC4をほとんど発現はつげんしていない。また、かげ窩のいただき上部じょうぶ位置いちする細胞さいぼうではPMS2やERCC4の発現はつげん低下ていかしており、同様どうようあお灰色はいいろていしている[34]

結腸けっちょうがんと隣接りんせつ領域りょういきにおけるERCC4の欠損けっそん

[編集へんしゅう]
大腸だいちょうがん近傍きんぼう結腸けっちょう上皮じょうひ連続れんぞく断面だんめん結腸けっちょうかげ窩内でのPMS2(A)、ERCC1(B)、ERCC4(C)の発現はつげん低下ていかもしくは消失しょうしつしめされている。この組織そしき断片だんぺんは、Sじょう結腸けっちょう腺腫せんしゅ発生はっせいした男性だんせい患者かんじゃ切除せつじょ結腸けっちょうなか組織そしきがくてき正常せいじょう領域りょういき由来ゆらいするものである。PMS2(A)にかんしては、かげ窩の本体ほんたい入口いりくち部分ぶぶん、そして隣接りんせつするかん腔表めんすべての上皮じょうひ細胞さいぼう細胞さいぼうかく発現はつげんがみられない。ERCC1(B)にかんしては、かげ窩の細胞さいぼうかくだい部分ぶぶん発現はつげん低下ていかしているが、入口いりくち部分ぶぶん隣接りんせつするかん腔表めんではこう発現はつげんがみられる。ERCC4(C)にかんしては、かげ窩やかん腔表めん細胞さいぼうかくだい部分ぶぶんでは発現はつげんがみられないが、一部いちぶかげ窩の入口いりくち部分ぶぶんでは発現はつげん検出けんしゅつされる。この組織そしきにおけるDNA修復しゅうふく遺伝子いでんし発現はつげん低下ていかまたは喪失そうしつは、エピジェネティックな抑制よくせいによるものであるようである[34]

大腸だいちょうがんやく55%、そしてがんの周囲しゅうい10 cm以内いないはつがん可能かのうせいたかい「はつがん素地そじ」(field defect)に位置いちする)結腸けっちょうかげ窩のやく40%でERCC4(XPF)の発現はつげん欠損けっそんしている[34]はつがん素地そじにおいてERCC4が減少げんしょうしている場合ばあいには、DNA修復しゅうふく酵素こうそERCC1やPMSの発現はつげん同様どうよう低下ていかしていることがおおい。結腸けっちょう上皮じょうひにおけるERCC1の欠乏けつぼうは、エピジェネティック抑制よくせいによるものであるようである[34]。ERCC4の欠乏けつぼうはDNA損傷そんしょう修復しゅうふく減少げんしょうをもたらすとかんがえられる。おおくの種類しゅるいのがんの根底こんていには、DNA損傷そんしょうたいして適切てきせつ応答おうとうして修復しゅうふくおこな能力のうりょく欠如けつじょがある[36]。がんやその周囲しゅういはつがん素地そじにおけるERCC4のエピジェネティックな抑制よくせいは(ERCC1やPMS2のエピジェネティックな抑制よくせいとともに)、こうした変化へんかおおくの結腸けっちょうがんへの進行しんこう中心ちゅうしんてき役割やくわりたしている可能かのうせいしめしている。

ERCC4の発現はつげんのエピジェネティックな低下ていかはヒトの結腸けっちょうがんでこう頻度ひんどでみられるが、ERCC4に変異へんいしょうじていることはまれである[37]。ERCC4の変異へんい皮膚ひふがんのリスクをたかめる[37]。また、ERCC4遺伝いでんてきかたにゅうがんにおいても重要じゅうようであるようである[38]。こうしたまれ変異へんいもまた、ERCC4の欠乏けつぼうががんへの進行しんこう関与かんよしている可能かのうせいたかいことを強調きょうちょうしている。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
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外部がいぶリンク

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