ETOPS (英語 えいご : Extended-range Twin-engine Operational Performance Standards 、イートップス)とは、民間 みんかん 旅客機 りょかくき の安全 あんぜん 性 せい 確保 かくほ のためのルールの1つである[1] 。エンジン を2基 き しか持 も たない旅客機 りょかくき では、仮 かり にそのうちの1基 き が飛行 ひこう 中 ちゅう に停止 ていし した場合 ばあい でも一定 いってい 時間 じかん 以内 いない に代替 だいたい の空港 くうこう へ緊急 きんきゅう 着陸 ちゃくりく することが可能 かのう な航空 こうくう 路 ろ でのみ飛行 ひこう が許 ゆる されるとして、国際 こくさい 民間 みんかん 航空 こうくう 機関 きかん (ICAO) が取 と り決 き めたものである。緊急 きんきゅう 時 じ にエンジン1基 き のみでの飛行 ひこう する場合 ばあい 、飛行 ひこう 可能 かのう な時間 じかん を定 さだ めたものとい替 いか えることができる。
日本 にっぽん の国土 こくど 交通省 こうつうしょう は、ETOPSを「双発 そうはつ 機 き による長距離 ちょうきょり 進出 しんしゅつ 運航 うんこう 」と呼 よ び、実施 じっし 承認 しょうにん 審査 しんさ 基準 きじゅん を設定 せってい している。
なお、この規定 きてい は今後 こんご 、新 あら たに提案 ていあん されたLROPS (英語 えいご : Long Range Operational Performance Standards ) に置 お き換 か えられる可能 かのう 性 せい もあるが、まだ一般 いっぱん 的 てき ではない。その後 ご さらにEDTO (英語 えいご : Extended Diversion Time Operations )という概念 がいねん も提唱 ていしょう され、ICAO(国際 こくさい 民間 みんかん 航空 こうくう 機関 きかん )のワークショップ[2] で議論 ぎろん されている。
ETOPS制定 せいてい よりずっと以前 いぜん 、エンジンの信頼 しんらい 性 せい が低 ひく かった時代 じだい において、双発 そうはつ 旅客機 りょかくき (エンジン2基 き )は、近 ちか くの空港 くうこう から100マイル まで、1953年 ねん からは空港 くうこう より60分 ふん 以上 いじょう 離 はな れたところを飛 と ぶことが認 みと められていなかった。このため、大洋 たいよう や北極 ほっきょく を最短 さいたん 距離 きょり で横断 おうだん するような航空 こうくう 路 ろ に双発 そうはつ 旅客機 りょかくき を就航 しゅうこう させることは許 ゆる されなかった。1980年代 ねんだい に入 はい り、エンジンの信頼 しんらい 性 せい が高 たか まると、エンジン1基 き のみで飛行 ひこう できる時間 じかん を120分 ふん に延長 えんちょう することができるようになった。事前 じぜん に認定 にんてい を受 う けた双発 そうはつ 旅客機 りょかくき に対 たい して近 ちか くの空港 くうこう から120分 ふん 以内 いない の距離 きょり の飛行 ひこう ルートを認 みと めたものが、ETOPS-120 ルールである(ボーイング767 が初 はつ )。この規制 きせい 緩和 かんわ は、燃費 ねんぴ や整備 せいび 費 ひ で経済 けいざい 性 せい に優 すぐ れた双発 そうはつ 旅客機 りょかくき をより広範 こうはん な路線 ろせん に就航 しゅうこう させたいという航空 こうくう 会社 かいしゃ の要望 ようぼう に応 こた えたもので、これによって、従来 じゅうらい の安全 あんぜん 基準 きじゅん に対応 たいおう するためにエンジンを3基 き や4基 き 備 そな えた機種 きしゅ (DC-10 、トライスター など)は発注 はっちゅう が減 へ っていった。
その後 ご 、エンジンの信頼 しんらい 性 せい がさらに向上 こうじょう すると、ETOPS-180 やETOPS-207 という規定 きてい が設 もう けられ、航続 こうぞく 距離 きょり の長 なが い双発 そうはつ 旅客機 りょかくき では、南極大陸 なんきょくたいりく など一部 いちぶ を除 のぞ き地球 ちきゅう 上 じょう すべての地点 ちてん を飛行 ひこう できるまでになった[3] 。
ETOPSを実際 じっさい に認定 にんてい するのは、アメリカ連邦 れんぽう 航空局 こうくうきょく (FAA)と欧州 おうしゅう 航空 こうくう 安全 あんぜん 機関 きかん (EASA)の2機関 きかん である。
ETOPSの認定 にんてい は、まず機体 きたい とエンジンの組 く み合 あ わせにより型式 けいしき ごとの認定 にんてい (ETOPS type approval)が行 おこな われる。それから実際 じっさい の運航 うんこう を行 おこな うに当 あ たっては、さらに旅客機 りょかくき 1機 き ごとに個別 こべつ で認可 にんか を受 う ける必要 ひつよう があり、航空 こうくう 会社 かいしゃ によってはコスト削減 さくげん などのため、同 おな じ機種 きしゅ でもETOPS「認定 にんてい 」と「未 み 認定 にんてい 」の機体 きたい が混在 こんざい することもある。この場合 ばあい 、ETOPS「認定 にんてい 」の機体 きたい は主 おも に長距離 ちょうきょり の洋上 ようじょう 飛行 ひこう に割 わ り当 あて て、「未 み 認定 にんてい 」の機体 きたい は主 おも に陸上 りくじょう や短距離 たんきょり の洋上 ようじょう 飛行 ひこう に割 わ り当 あ てられる[4] 。
また、ETOPSルールの適用 てきよう 時間 じかん は同 おな じ機種 きしゅ ・型式 けいしき の旅客機 りょかくき でも航空 こうくう 会社 かいしゃ (の運航 うんこう 実績 じっせき と整備 せいび 水準 すいじゅん )によって違 ちが いがある。
ETOPSルール適用 てきよう の旅客機 りょかくき は3発 はつ 機 き (ボーイング727 、DC-10 、トライスター など)や4発 はつ 機 き (ボーイング747 、エアバスA340 ・A380 など)よりも、エンジンを中心 ちゅうしん として厳 きび しい検査 けんさ 体制 たいせい が採 と られている。
ETOPS-120からETOPS-180へ [ 編集 へんしゅう ]
はじめてETOPS-180認定 にんてい を受 う けたボーイング777-200ER
はじめてETOPS-180の認定 にんてい を受 う けた旅客機 りょかくき はボーイング777 で、これは同機 どうき が搭載 とうさい している2基 き のエンジンの信頼 しんらい 性 せい が従来 じゅうらい のものから飛躍 ひやく 的 てき に向上 こうじょう したためである。その後 ご ボーイング757 、ボーイング767 、ボーイング737-600/-700/-800/-900 、ボーイング787 、エアバスA300-600 、エアバスA310 、エアバスA320 、エアバスA330 にもETOPS-180が認定 にんてい されている。
2009年 ねん 10月 がつ に欧州 おうしゅう 航空 こうくう 安全 あんぜん 機関 きかん (European Aviation Safety Agency ,EASA) がエアバスA330 に対 たい して初 はつ のETOPS-240の認定 にんてい を与 あた えた[5] 。
2011年 ねん 12月にFAA はボーイング777(777-300ER、777-200LR、777貨物 かもつ 機 き 、GE社 しゃ のエンジンを搭載 とうさい した777-200ER)に対 たい してETOPS-330の認定 にんてい を与 あた えた[6] 。
2014年 ねん 5月 がつ にはボーイング787 がFAAからETOPS-330の認定 にんてい を受 う けた[7] 。
2015年 ねん 3月 がつ にボーイング747-8 がFAAからETOPS-330の認定 にんてい を受 う けたと発表 はっぴょう し[8] 、4発 はつ 機 き で初 はじ めてETOPSが認定 にんてい されることになった。
2014年 ねん 10月 がつ に欧州 おうしゅう 航空 こうくう 安全 あんぜん 機関 きかん がエアバスA350-900 に対 たい し、ETOPS-180からETOPS-300・ETOPS-370の認定 にんてい を与 あた えた[9] 。
双発 そうはつ 機 き が長距離 ちょうきょり 飛行 ひこう を行 おこな うにあたっては、航空機 こうくうき ・エンジンのみならず、空港 くうこう の要件 ようけん についても3発 はつ ・4発 はつ 機 き より厳格 げんかく に定 さだ められている[10] 。
航路 こうろ 周辺 しゅうへん の緊急 きんきゅう 着陸 ちゃくりく に適 てき した空港 くうこう はAdequate Airport (着陸 ちゃくりく 可能 かのう 飛行場 ひこうじょう )[11] と呼 よ ばれ、運用 うんよう 時間 じかん や飛行場 ひこうじょう 諸 しょ 元 もと 等 とう から安全 あんぜん に着陸 ちゃくりく できるものでなければならない。これはETOPSでない飛行 ひこう (空港 くうこう から60分 ふん 以内 いない の距離 きょり の飛行 ひこう )にも適用 てきよう される。
Adequate Airportの要件 ようけん に加 くわ え、より厳 きび しい条件 じょうけん を満足 まんぞく する空港 くうこう をSuitable Airport (着陸 ちゃくりく に適 てき した飛行場 ひこうじょう )と呼 よ ぶ。Suitable Airportは滑走 かっそう 路 ろ の路面 ろめん 状態 じょうたい を考慮 こうりょ した十分 じゅうぶん な滑走 かっそう 路 ろ 長 ちょう を持 も ち、気象 きしょう 状態 じょうたい も滑走 かっそう 路 ろ の数 かず や進入 しんにゅう 方式 ほうしき に応 おう じた所定 しょてい の条件 じょうけん を満 み たさなければならない。さらに緊急 きんきゅう 時 じ の救難 きゅうなん ・消火 しょうか 体制 たいせい もICAOの定 さだ める「カテゴリー4」以上 いじょう の能力 のうりょく が必要 ひつよう である。通信 つうしん 状 じょう 況 きょう その他 た についても様々 さまざま な条件 じょうけん がある。ETOPS運航 うんこう においては、Suitable Airportの中 なか から、エンルート用 よう のETOPS代替 だいたい 空港 くうこう (ETOPS Alternate Airport)[11] を選定 せんてい しなければならないことになっている。
ETOPS-207の場合 ばあい は、Suitable Airportの救難 きゅうなん ・消火 しょうか 体制 たいせい としてICAOの定 さだ める「カテゴリー7」以上 いじょう の能力 のうりょく が必要 ひつよう で、さらに180分 ふん 飛行 ひこう 距離 きょり 以内 いない にAdequate Airportも別途 べっと 確保 かくほ しておかなければならない。