(Translated by https://www.hiragana.jp/)
HE 1327-2326 - Wikipedia コンテンツにスキップ

HE 1327-2326

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
HE 1327-2326
星座せいざ うみへび
かけの等級とうきゅう (mv) 13.55[1]
分類ぶんるい じゅん巨星きょせい[2][3]
ごくちょう金属きんぞく欠乏けつぼうぼし (HMPほし) [3]
化学かがく特異とくいぼし[1]
位置いち
もと:J2000.0
あかけい (RA, αあるふぁ)  13h 30m 05.9394958608s[4]
あかぬき (Dec, δでるた) −23° 41′ 49.699340853″[4]
視線しせん速度そくど (Rv) 61.74±9.18 km/s[4]
固有こゆう運動うんどう (μみゅー) あかけい: -52.470 ミリびょう/とし[4]
あかぬき: 45.515 ミリびょう/とし[4]
とししゅう視差しさ (πぱい) 0.9411 ± 0.0154ミリびょう[4]
誤差ごさ1.6%)
距離きょり 3470 ± 60 光年こうねん[ちゅう 1]
(1060 ± 20 パーセク[ちゅう 1]
絶対ぜったい等級とうきゅう (MV) 3.4[ちゅう 2]
物理ぶつりてき性質せいしつ
有効ゆうこう温度おんど (Teff) 6,180 K[5]
金属きんぞくりょう[Fe/H] -5.71[5]
年齢ねんれい やく130おくさい[6]
発見はっけん
発見はっけんねん 2000ねん[2]
発見はっけんしゃ The Hamburg/ESO survey[2]
発見はっけん場所ばしょ ラ・シヤ天文台てんもんだいチリ
発見はっけん方法ほうほう シュミットしき望遠鏡ぼうえんきょうによる掃天観測かんそく[2]
カタログでの名称めいしょう
2MASS J13300595-2341497[1], Gaia DR3 6194815228636688768[1]
Template (ノート 解説かいせつ■Project

HE 1327-2326は、太陽系たいようけいからうみへび方向ほうこうやく3,470光年こうねん距離きょりにある恒星こうせいである。2005ねん発見はっけんされた時点じてんもっと金属きんぞくりょうすくない恒星こうせいであった[2][6]太陽たいようよりかる[2][6]年齢ねんれいは130おくねん推定すいていされている[2][6]。これは既知きち恒星こうせいなかではもっとふるいものの1つである。

化学かがく組成そせい

[編集へんしゅう]

HE 1327-2326は、2005ねん時点じてんられているなか金属きんぞくりょうもっとすくない恒星こうせいであった[2][6]金属きんぞくりょう指標しひょうとしてよく使つかわれる[Fe/H]のは-5.4で、これはてつ原子げんし太陽たいようの25まんぶんの1の割合わりあいしかふくまれていないことを意味いみする[2][6]。これまでられていたなかもっと金属きんぞくりょうすくない恒星こうせいは[Fe/H] = -5.3のHE 0107-5240だったが、このほしはその1.5ぶんの1しかない。2019ねん研究けんきゅうではさらにひくい[Fe/H] = -5.71 というしめされている[5]発見はっけん種族しゅぞくIII恒星こうせいは、理論りろんじょうは[Fe/H] = -6.0というつが、この恒星こうせいはそれにせまである。このようにきわめて金属きんぞくりょうすくない恒星こうせいごくちょう金属きんぞく欠乏けつぼうぼし[7] (HMP, hyper-metal-poor star[8]) とばれている[ちゅう 3]

初期しょき宇宙うちゅう元素げんそ組成そせいは、ビッグバン元素げんそ合成ごうせい生成せいせいされた水素すいそヘリウム痕跡こんせきりょうリチウムベリリウムのみで構成こうせいされていたとかんがえられている。それ以上いじょうじゅう元素げんそは、恒星こうせい内部ないぶでのかく融合ゆうごうによって生成せいせいされたとかんがえられている。そのため、金属きんぞくりょうすくない恒星こうせいは、それだけ初期しょきちか時代じだい生成せいせいされた恒星こうせいであるとかんがえることができる[2][6]。このような初期しょき宇宙うちゅう恒星こうせいは、現在げんざいではられないような、太陽たいようすうひゃくばいもの質量しつりょう超大ちょうだい質量しつりょうぼしであったとかんがえられているが、質量しつりょうおおきい恒星こうせいは、寿命じゅみょうすうひゃくまんねんきわめてみじか時間じかん寿命じゅみょうむかえ、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつこしてしまうため、種族しゅぞくIIIとばれるこのような恒星こうせいいま発見はっけんされていない[2][6]。しかし質量しつりょうちいさな恒星こうせいならば、宇宙うちゅう開闢かいびゃくからやく138おくねん経過けいかした現在げんざいでも観測かんそく可能かのうなほどのなが寿命じゅみょうつことができる。これまでの理論りろんでは、宇宙うちゅう初期しょきには太陽たいよう質量しつりょう程度ていどかる恒星こうせい形成けいせいされないとかんがえられてきたが、2002ねんのHE 0107-5240と2005ねんのHE 1327-2326の発見はっけんにより、このようなかる恒星こうせい形成けいせいされていることが判明はんめいした[2][6]

HE 1327-2326は、HE 0107-5240とともに、てい金属きんぞくりょう恒星こうせいとはちが特徴とくちょうがある。それは、炭素たんそ窒素ちっそりょうおおいことである[2][6]。2019ねん研究けんきゅうでは、HE 1327-2326の[Fe/H]は-5.71にたいして[C/Fe]は4.18だった[5]。この数字すうじは、てつ原子げんし太陽たいようくらべて10-5.71 = やく50まんぶんの1の割合わりあいでしかふくまれていない一方いっぽうで、炭素たんそてつ比率ひりつ太陽たいようくらべて104.18 = 1まん5000ばいたっすることを意味いみする。このような特徴とくちょう恒星こうせい炭素たんそ過剰かじょう金属きんぞく欠乏けつぼうぼし (CEMP) とばれる[5]

HE 1327-2326からは、ニッケルよわ吸収きゅうしゅうせんみとめられている[9]。また、検出けんしゅつ可能かのうリチウム吸収きゅうしゅうせん発見はっけんされていない[9]。これは、HE 1327-2326の表面ひょうめんで、リチウムを消費しょうひするような元素げんそ枯渇こかつられるためとかんがえられている[9]。[O/Fe]OHのから推定すいていされる[O/Fe]のは2.5か2.8であるが、これはじゅん巨星きょせいである[O/Fe] < 3.0と矛盾むじゅんしないである[10]。また、恒星こうせいであるHE 0107-5240と比較ひかくすると、てつ炭素たんそ以外いがい元素げんそ組成そせい無視むしできないちがいがあり、とくMg/Feと、Sr/FeがHE 0107-5240とくらべるとたか[2][6]。これは、初期しょき恒星こうせい形成けいせい理論りろんつよ制限せいげんくわえるものである[2][6]

ほし形成けいせい仮説かせつ

[編集へんしゅう]

HE 1327-2326のように金属きんぞくりょうすくなく炭素たんそりょうおお恒星こうせい形成けいせいは、以下いかのような複数ふくすうせつがある。

金属きんぞくりょうすくないだい2世代せだいせつ

[編集へんしゅう]

金属きんぞくをほとんどふくまない種族しゅぞくIIIであるだい1世代せだいだい質量しつりょうぼし超新星ちょうしんせい爆発ばくはつこすさいじゅう元素げんそをほとんど放出ほうしゅつしない特異とくい爆発ばくはつがあったというせつ<[6]。この場合ばあい、HE 1327-2326は、超新星ちょうしんせい残骸ざんがいからまれただい2世代せだい恒星こうせいということになる。この場合ばあい対応たいおうするだい1世代せだい恒星こうせいは、太陽たいようすうじゅうばい質量しつりょうとなる[6]。このせつは、HE 0107-5240とくらべた場合ばあい元素げんそちがいも説明せつめいできる[6]

だい1世代せだいのこせつ

[編集へんしゅう]

HE 1327-2326は、だい1世代せだい恒星こうせいのこりであるというせつ。このせつ場合ばあい、HE 1327-2326がじゅん巨星きょせい段階だんかいにあり[10]しゅ系列けいれつぼし[6]ちかいことが問題もんだいとなる。HE 0107-5240は巨星きょせいまで進化しんかした恒星こうせいであるので、内部ないぶ元素げんそ合成ごうせいがある程度ていどすすんでいるが、HE 1327-2326はそれほど進化しんかしていないため、表面ひょうめん内部ないぶ合成ごうせいされた元素げんそ影響えいきょうけていないとかんがえられるからである[6]検出けんしゅつされる元素げんそ説明せつめいは、ほしあいだ物質ぶっしつからHE 1327-2326の表面ひょうめんにわずかな降着こうちゃくがあるのと、けい元素げんそ供給きょうきゅうするみなもと必要ひつようとなる[6]。この場合ばあい、やや質量しつりょうおおきな恒星こうせいとHE 1327-2326がれんぼしをなしており、さき寿命じゅみょうむかえた恒星こうせいからけい元素げんそ供給きょうきゅうされたとかんがえられている。この場合ばあいれんぼしである証拠しょうこつかっていないのが問題もんだいであるが、おそらく白色はくしょく矮星としてくらえており、検出けんしゅつ困難こんなん状態じょうたいになっているとかんがえられている[6]。またこの場合ばあい、どのようにして初期しょき宇宙うちゅうから低質ていしつりょうほし生成せいせいされるのかが問題もんだいである[6]

観測かんそく

[編集へんしゅう]

HE 1327-2326は、ヨーロッパ南天なんてん天文台てんもんだいラ・シヤ天文台てんもんだい設置せっちされている口径こうけい1メートルのシュミットしき望遠鏡ぼうえんきょうもちいたクエーサー探索たんさくのための掃天観測かんそく撮影さつえいされたあかるい金属きんぞく欠乏けつぼうぼし1,777なかから発見はっけんされた。2003ねんに、どう天文台てんもんだいの3.6メートル望遠鏡ぼうえんきょうもちいた観測かんそく極端きょくたん金属きんぞくりょうすくないことがあきらかとなり[2][6]、2004ねんすばる望遠鏡ぼうえんきょうこう分散ぶんさん分光ぶんこう (HDS) をもちいた分光ぶんこう観測かんそくによってくわしい化学かがく組成そせいあきらかとされた[2][6]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b パーセクは1 ÷ とししゅう視差しさびょう)より計算けいさん光年こうねんは1÷とししゅう視差しさびょう)×3.2615638より計算けいさん
  2. ^ 等級とうきゅう + 5 + 5×log(とししゅう視差しさびょう))より計算けいさん小数しょうすうだい1まで表記ひょうき
  3. ^ [Fe/H]< -5のほしをHMPぼし、[Fe/H]< -4のほしをUMPぼし (Ultra Metal-Poor star) とけることがおお[7]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c d "HE 1327-2326". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022ねん7がつ8にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Frebel, Anna et al. (2005). “Nucleosynthetic signatures of the first stars”. Nature (Springer Science and Business Media LLC) 434 (7035): 871–873. arXiv:astro-ph/0503021. Bibcode2005Natur.434..871F. doi:10.1038/nature03455. ISSN 0028-0836. 
  3. ^ a b Korn, A. J. et al. (2009-05-20). “HE 1327-2326, An Unevolved Star with [Fe/H] < -5.0. III. Does its Atmosphere Reflect its Natal Composition?”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 698 (1): 410-416. arXiv:0903.3885. Bibcode2009ApJ...698..410K. doi:10.1088/0004-637x/698/1/410. ISSN 0004-637X. 
  4. ^ a b c d e f Gaia Collaboration. “Gaia DR3 Part 1. Main source”. VizieR On-line Data Catalog: I/355/gaiadr3. Bibcode2022yCat.1355....0G. https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ62c78a59f8f98&-out.add=.&-source=I/355/gaiadr3&-c=202.52449322638%20-23.69693641714,eq=ICRS,rs=2&-out.orig=o. 
  5. ^ a b c d e Arentsen, A. et al. (2019). “Binarity among CEMP-no stars: an indication of multiple formation pathways?”. Astronomy & Astrophysics (EDP Sciences) 621: A108. arXiv:1811.01975. Bibcode2019A&A...621A.108A. doi:10.1051/0004-6361/201834146. ISSN 0004-6361. 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v “すばる望遠鏡ぼうえんきょうもっとじゅう元素げんそすくないほし発見はっけんだいいち世代せだいぼし元素げんそ合成ごうせいせまる~”. すばる望遠鏡ぼうえんきょう. (2005ねん4がつ13にち). https://subarutelescope.org/old/Pressrelease/2005/04/13/j_index.html 2021ねん3がつ17にち閲覧えつらん 
  7. ^ a b 小宮こみやゆう (2015). 宇宙うちゅう黎明れいめいきた化石かせきごくちょう金属きんぞく欠乏けつぼうぼし遍歴へんれきをたどる”. 天文てんもん月報げっぽう 108 (8): 511-520. ISSN 0374-2466. https://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2015_108_08/108_511.pdf. 
  8. ^ Iwamoto, Nobuyuki; Umeda, Hideyuki; Tominaga, Nozomu; Nomoto, Ken'ichi; Maeda, Keiichi (2005-07-15). “The First Chemical Enrichment in the Universe and the Formation of Hyper Metal-Poor Stars”. Science (American Association for the Advancement of Science (AAAS)) 309 (5733): 451-453. arXiv:astro-ph/0505524. Bibcode2005Sci...309..451I. doi:10.1126/science.1112997. ISSN 0036-8075. 
  9. ^ a b c Frebel, Anna et al. (2008). “HE 1327-2326, an Unevolved Star with [Fe/H]<-5.0. II. New 3D-1D Corrected Abundances from a Very Large Telescope UVES Spectrum”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 684 (1): 588-602. arXiv:0805.3341. Bibcode2008ApJ...684..588F. doi:10.1086/590327. ISSN 0004-637X. 
  10. ^ a b Frebel, Anna et al. (2006-01-24). “The Oxygen Abundance of HE 1327-2326”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 638 (1): L17-L20. arXiv:astro-ph/0512543. Bibcode2006ApJ...638L..17F. doi:10.1086/500592. ISSN 0004-637X. 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]

座標ざひょう: 星図 13h 30m 05.951s, −23° 41′ 49.72″