LIBOR

LIBOR (ライボー、London Interbank Offered Rate) とは、ロンドンの銀行ぎんこう間あいだ取引とりひきで資金しきんの貸かし手てから提示ていじされる金利きんりのことで、ロンドン銀行ぎんこう間あいだ取引とりひき金利きんりとも呼よばれる。多おおくのユーロ債さいにおける参照さんしょう金利きんりとして用もちいられる。不正ふせい操作そうさ事件じけんにより、米あめりかドルの大半たいはんが2023年ねん6月がつ末まつで、それ以外いがいの通貨つうかは2021年ねん12月がつ末まつを持もって公表こうひょう停止ていしになった。

概要がいよう

仕組しくみ

一般いっぱん的てきには、指定していされた複数ふくすうの有力ゆうりょく銀行ぎんこう（※リファレンスバンクまたはパネル行ぎょうと呼よばれる）から報告ほうこくされた毎まい営業えいぎょう日び11:00時じ点てんのレートを指さす。この集計しゅうけい・発表はっぴょうはかつては英国えいこく銀行ぎんこう協会きょうかい（BBA）が実施じっしし、「BBA LIBOR」と呼よばれていた。2012年ねんの不正ふせい操作そうさ事件じけんをきっかけに、BBAからインターコンチネンタル取引とりひき所しょ（ICE）に集計しゅうけい・発表はっぴょう等とうの運営うんえいが移管いかんされ、「ICE LIBOR」として公表こうひょうされている。

一ひとつの指標しひょうとして

資金しきん調達ちょうたつコストの基準きじゅんとして用もちいられ、特とくに6か月げつ物ぶつは短期たんき金利きんりの指標しひょうとして使つかわれることが多おおい。調達ちょうたつコストの割高わりだか/割安わりやすもLIBORとの比較ひかくで表現ひょうげんされることが多おおい。例たとえば、LIBORと同どう水準すいじゅんで社債しゃさい等とうが発行はっこうされた場合ばあいには「LIBORフラット（ライボー・フラット）」或あるいは単たんに「Lフラット（エル・フラット）」と表現ひょうげんされる。また、特とくに信用しんよう力りょくの高たかい企業きぎょうでは、LIBORよりも低ひくい水準すいじゅんで資金しきん調達ちょうたつを行おこなうことができ、その場合ばあい「サブLIBOR（サブ・ライボー）」と云いわれる。

沿革えんかく等とう

LIBOR はいわゆるセカンダリー・バンキングの資金しきん調達ちょうたつに使つかわれていたが、当時とうじのギリシア人じん銀行ぎんこう家かミノス（Minos Zombanakis）による考案こうあんといわれる。ユーロ債さいへの適用てきよう例れいとしては、1970年ねんのエネル債さいと1984年ねんのナショナル・ウエストミンスター債さいが知しられている。1990年代ねんだい、香港ほんこんおよび東京とうきょう市場いちばは金融きんゆう危機ききの時期じきを除のぞいてLIBOR に同調どうちょうした。危機ききのときでさえSIBORは、リスク・プレミアムにあえぐ周辺しゅうへんの東南とうなんアジア各かく市場いちばと異ことなって、LIBORをなぞるように動うごいていた。

不正ふせい操作そうさと公表こうひょう停止ていし

不正ふせい操作そうさについて詳細しょうさいは記事きじ内ない #不正ふせい操作そうさ を参照さんしょう

2010年代ねんだい前半ぜんはんに、リファレンスバンクの一部いちぶによる、不正ふせいなLIBORの値ねの操作そうさが行おこなわれたのではないかという疑惑ぎわくが持もち上あがり、2012年ねんに顕在けんざい化か。公的こうてき機関きかんによる処分しょぶん等とうがなされた。

上記じょうき不正ふせい操作そうさを踏ふまえた改革かいかくの途上とじょうであった2017年ねん7月がつ27日にちに、英国えいこく金融きんゆう行動こうどう監視かんし機構きこう長官ちょうかんのアンドリュー・ジョン・ベイリーが、2021年ねん末まつ以降いこうはリファレンスバンク（パネル行ぎょう）に（LIBORを公表こうひょうするための）レートの呈示ていじを強制きょうせいしないこととする意向いこうを表明ひょうめいした。ここでの「〜を強制きょうせいしない」は「パネル行ぎょうから抜ぬけてもいい」ということを意味いみする。結果けっかとして2021年ねん末まつ以降いこうはパネル行ぎょう脱退だったいが続出ぞくしゅつし、それによりLIBORの信頼しんらい性せいが低下ていか（※信頼しんらい性せいはリファレンスバンクの多おおさに依拠いきょするところも大おおきいことから）、最終さいしゅう的てきには、公表こうひょう停止ていしとなった。これを指さして「（2021年ねんの）LIBOR廃止はいし」などと呼よばれることがある。

以下いかのスケジュールで公表こうひょう停止ていしになった。

• 2021年ねん12月がつ末まつ - 日本円にほんえん、英いぎりすポンド、ユーロ、スイスフランの全すべて。米あめりかドルの1週間しゅうかん物ぶつ、2か月げつ物ぶつ。
• 2023年ねん6月がつ末まつ - 米べいドルの翌日よくじつ物ぶつ、1か月げつ物ぶつ、3か月げつ物ぶつ、6か月げつ物ぶつ、12か月げつ物ぶつ。（当初とうしょは全すべて2021年ねん末まつで公表こうひょう停止ていし予定よていだった）

公表こうひょう停止ていし後ご

LIBORの事実じじつ上じょうの消滅しょうめつによる金融きんゆう業界ぎょうかいへの影響えいきょうは大おおきく、例たとえば日本にっぽんでは、円えんLIBORの事実じじつ上じょうの消滅しょうめつにあたって生しょうじる課題かだい等とうの検討けんとうを行おこなうため、日本銀行にっぽんぎんこうが事務じむ局きょくを務つとめる「日本円にほんえん金利きんり指標しひょうに関かんする検討けんとう委員いいん会かい」が2018年ねん8月がつに設立せつりつされ、協議きょうぎが行おこなわれてきた。その結果けっかとして、無む担保たんぽコール翌日よくじつ物ぶつ金利きんり(TONA)が日本円にほんえんの代替だいたい指標しひょうとなるリスクフリートとして特定とくていされた。2021年ねん7月がつ以降いこう、原則げんそくとしてLIBORを参照さんしょうする金利きんりスワップ取引とりひきは停止ていしされ、TONAを参照さんしょうとするスワップ(つまりオーバーナイト・インデックス・スワップ)に移行いこうしている。グローバルスタンダードのデリバティブマスター契約けいやくISDAは、後こう決きめ複利ふくりのTONAをフォールバックレートとして指定していしている他ほか、日本銀行にっぽんぎんこうもTONAファーストとして、後継こうけい指標しひょうの第だい一いち候補こうほは後ご決きめ複利ふくりのTONAとしている。

不正ふせい操作そうさ

摘発てきはつされた銀行ぎんこう群ぐんは会員かいいん銀行ぎんこうであることが多おおい。会員かいいん銀行ぎんこうリストは en:Libor で確認かくにんされたい。

欧米おうべい当局とうきょくの猛攻もうこう

2008年ねん5月がつ29日にち、ウォールストリートジャーナルはLIBORについて「実勢じっせいよりも低ひくく見みえるように数値すうちが操作そうさされている」と報ほうじた。

2011年ねん7月がつ、フィナンシャル・タイムズは「LIBOR、TIBORの不正ふせい操作そうさ疑惑ぎわくに関かんしてアメリカ、イギリス、欧州おうしゅう（EU）、日本にっぽんの金融きんゆう規制きせい当局とうきょくが捜査そうさに着手ちゃくしゅした」と報ほうじた。

2012年ねん2月がつ3日にち、スイスの連邦れんぽう競争きょうそう委員いいん会かい（日本にっぽんにおける公正こうせい取引とりひき委員いいん会かいに相当そうとう）が不正ふせい操作そうさ疑惑ぎわくの捜査そうさのため、日米にちべい欧おうの金融きんゆう大手おおて12行ぎょうの調査ちょうさを開始かいし。4月、LIBORはイングランド銀行いんぐらんどぎんこうの監督かんとくを受うけるようになった。8月、英国えいこく政府せいふが10の改革かいかく案あんを示しめした。

2013年ねん10月がつ29日にち、ラボバンクがLIBORをふくむ国際こくさい的てきな指標しひょう金利きんりの不正ふせい操作そうさに関かかわったとして、オランダ当局とうきょくは同行どうこうへ7億おく7400万まんユーロの制裁せいさい金きんを課かした。

12月4日にち、欧州おうしゅう委員いいん会かいは同様どうようの不正ふせい操作そうさについて、複数ふくすうのメガバンクがカルテルを実施じっししたとして合計ごうけいで約やく17億おく１千せん万まんユーロの制裁せいさい金きんを科かした。制裁せいさいの対象たいしょうは、ドイツ銀行ぎんこう、ソシエテ・ジェネラル、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド、JPモルガン、シティバンク、UBSである。バークレイズとUBSは内部ないぶ告発こくはつを評価ひょうかされて制裁せいさいを免除めんじょされた。不正ふせい操作そうさに関かんする調査ちょうさはHSBCにも及およんだ。

受身うけみをとる英国えいこくと関係かんけい者しゃ

2015年ねん8月がつ3日にち、トム・ヘイズが一連いちれんの不正ふせい操作そうさをめぐり個人こじんで初はつの有罪ゆうざい判決はんけつを受うけた。

2016年ねん5月がつ25日にち、米べい商品しょうひん先物さきもの取引とりひき委員いいん会かいがシティグループに合計ごうけい4億おく2500万まんドルの罰金ばっきんを課かすと発表はっぴょうした。この2日にち前まえには、ニューヨークの第だい2巡回じゅんかい区く連邦れんぽう控訴こうそ裁判所さいばんしょでシティ他た、バンカメ、JPモルガンなどメガバンク16行ぎょうに対たいして、LIBOR不正ふせい操作そうさによる反はんトラスト法ほう訴訟そしょうが受理じゅりされている。翌よく6月がつにイギリスの欧州おうしゅう連合れんごう離脱りだつが実現じつげんする事態じたいとなった。12月、スイス公取委こうとりいがバークレイズを皮切かわきりとした4年ねんにわたる調査ちょうさを経へてJPモルガンを筆頭ひっとうに彼かれら金利きんりカルテルへ罰金ばっきんをい渡いわたした。ブリュッセル当局とうきょくも、HSBC、JPモルガン、クレディ・アグリコルに対たいし、5年ねんの調査ちょうさを経へて罰金ばっきんを課かした。これら三さん行ぎょうは2014年ねん5月がつから欧州おうしゅう委員いいん会かいから法令ほうれい違反いはんを通告つうこくされていた。

こうした不祥事ふしょうじの連続れんぞくをうけて、16兆ちょうドル規模きぼの米国べいこく債さい市場いちばにおける不正ふせい操作そうさにアメリカ司法省しほうしょうがメスを入いれようとしている。ドナルド・トランプ大統領だいとうりょうには試練しれんとなる。関係かんけい者しゃ筋すじによると、2017年ねん5月がつ上旬じょうじゅん、UBS、BNPパリバ、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド、モルガン・スタンレーは、捜査そうさが2年ねん前まえから続つづいていることの分わかる召喚しょうかん状じょうを受うけ取とった。

種類しゅるい

2021年ねん12月がつ末まつの公表こうひょう停止ていし前まえの段階だんかいでは、5通貨つうか、7期間きかん、あわせて35種類しゅるいの金利きんりが毎まい営業えいぎょう日び公表こうひょうされていた。

概要がいようでふれた2012年ねん～2013年ねんの改革かいかくにより、通貨つうかと期間きかんが大幅おおはばに削減さくげんされた。

通貨つうか

英いぎりすポンドと4外貨がいかのユーロカレンシーが対象たいしょう

• USD（ユーロ米あめりかドル）
• GBP（スターリング・ポンド）
• JPY（ユーロ円えん）
• EUR（ユーロユーロ）
• CHF（ユーロスイス・フラン）

2013年ねんに廃止はいしされた公表こうひょう対象たいしょう通貨つうか

• CADきゃど（ユーロカナダ・ドル）
• AUD（ユーロオーストラリア・ドル）
• NZD（ユーロニュージーランド・ドル）
• DKK（ユーロデンマーク・クローネ）
• SEK（ユーロスウェーデン・クローナ）

期間きかん

• 1日にち：USD、EUR、GBP、CADきゃどはオーバー・ナイト（O/N）、その他た通貨つうかはスポット・ネクスト（s/n)
• 1週間しゅうかん
• 1ヶ月かげつ
• 2ヶ月かげつ
• 3ヶ月かげつ
• 6ヶ月かげつ
• 12ヶ月かげつ

2013年ねんに廃止はいしされた公表こうひょう対象たいしょう期間きかん

• 2週間しゅうかん
• 4、5、7、8、9、10、11ヶ月かげつ

参考さんこう文献ぶんけん

• デイヴィッド エンリッチ『スパイダー・ネットワーク　金融きんゆう史しに残のこる詐欺さぎ事件じけん――LIBORスキャンダルの全ぜん内幕うちまく』 （ハーパーコリンズ・ノンフィクション）

関連かんれん

• TIBOR、Euribor、SIBOR、HIBOR
• 金利きんりスワップ
• LIBORマーケットモデル

外部がいぶリンク

• ICE LIBOR