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MyD88

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
MYD88
PDBに登録とうろくされている構造こうぞう
PDBオルソログ検索けんさく: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧いちらん

2JS7, 2Z5V, 3MOP, 4DOM, 4EO7

識別子しきべつし
記号きごうMYD88, MYD88D, myeloid differentiation primary response 88, innate immune signal transduction adaptor, MYD88 innate immune signal transduction adaptor, IMD68
外部がいぶIDOMIM: 602170 MGI: 108005 HomoloGene: 1849 GeneCards: MYD88
遺伝子いでんし位置いち (ヒト)
3番染色体 (ヒト)
染色せんしょくたい3ばん染色せんしょくたい (ヒト)[1]
3番染色体 (ヒト)
MYD88遺伝子の位置
MYD88遺伝子の位置
バンドデータ開始かいしてん38,138,478 bp[1]
終点しゅうてん38,143,022 bp[1]
遺伝子いでんし位置いち (マウス)
9番染色体 (マウス)
染色せんしょくたい9ばん染色せんしょくたい (マウス)[2]
9番染色体 (マウス)
MYD88遺伝子の位置
MYD88遺伝子の位置
バンドデータ開始かいしてん119,165,000 bp[2]
終点しゅうてん119,170,477 bp[2]
RNA発現はつげんパターン
さらなる参照さんしょう発現はつげんデータ
遺伝子いでんしオントロジー
分子ぶんし機能きのう death receptor binding
血漿けっしょうタンパク結合けつごう
TIR domain binding
identical protein binding
protein self-association
Toll-like receptor binding
細胞さいぼう構成こうせい要素ようそ 細胞さいぼうしつ基質きしつ
細胞さいぼうまく
endosome membrane
細胞さいぼうしつ
細胞さいぼうかく
生物せいぶつがくてきプロセス response to interleukin-1
免疫めんえきけいプロセス
negative regulation of apoptotic process
MyD88-dependent toll-like receptor signaling pathway
toll-like receptor signaling pathway
細胞さいぼう表面ひょうめん受容じゅようたいシグナル伝達でんたつ経路けいろ
cellular response to mechanical stimulus
regulation of inflammatory response
positive regulation of interleukin-6 production
positive regulation of I-kappaB kinase/NF-kappaB signaling
toll-like receptor 9 signaling pathway
positive regulation of interleukin-17 production
炎症えんしょう反応はんのう
3'-UTR-mediated mRNA stabilization
positive regulation of type I interferon production
positive regulation of interleukin-23 production
シグナル伝達でんたつ
defense response to Gram-positive bacterium
positive regulation of NF-kappaB transcription factor activity
アポトーシス
自然しぜん免疫めんえき
type I interferon signaling pathway
positive regulation of gene expression
positive regulation of interleukin-8 production
defense response to bacterium
interleukin-1-mediated signaling pathway
cellular response to oxidised low-density lipoprotein particle stimulus
positive regulation of cytokine production involved in inflammatory response
しょく作用さよう
Toll signaling pathway
出典しゅってん:Amigo / QuickGO
オルソログ
たねヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)
NM_001172566
NM_001172567
NM_001172568
NM_001172569
NM_002468

NM_001365876
NM_001365877
NM_001374787
NM_001374788

NM_010851

RefSeq
(タンパク質たんぱくしつ)
NP_001166037
NP_001166038
NP_001166039
NP_001166040
NP_002459

NP_001352805
NP_001352806
NP_001361716
NP_001361717

NP_034981

場所ばしょ
(UCSC)
Chr 3: 38.14 – 38.14 MbChr 3: 119.17 – 119.17 Mb
PubMed検索けんさく[3][4]
ウィキデータ
閲覧えつらん/編集へんしゅう ヒト閲覧えつらん/編集へんしゅう マウス

MyD88(myeloid differentiation factor 88)はTLRやIL-1ファミリーサイトカイン受容じゅようたい下流かりゅうでシグナルをつたえるアダプタータンパク質たんぱくしつである[5][6][7]

構造こうぞう

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MyD88は3つのドメインからなる[8]。N末端まったんにデスドメイン(54-109)、中間なかま中間ちゅうかんドメイン(110-155)、C末端まったんにT1R(Toll/IL-1 receptor)ドメイン(155-296)がある。T1RドメインはTLRと相互そうご作用さようをする。デスドメインはIRAKs(IL-1 receptor-associated kinases)と相互そうご作用さようしMyddosome形成けいせい関与かんよする。

機能きのう

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ヒトのパターン認識にんしき受容じゅようたいにはTLR、NLR、RLR、CLRなどがられ、TLRは10あまりられている。TLRのうちTLR3とTLR4の一部いちぶ以外いがいはMyD88をかいして転写てんしゃ因子いんしNF-κかっぱB活性かっせいさせる。TLR3はMyD88ではなくTRIFというべつアダプタータンパク質たんぱくしつかいしてⅠがたインターフェロン産出さんしゅつかかわる。

MyD88をかいしたシグナルはマクロファージひとしからの炎症えんしょうせいサイトカイン産出さんしゅつ誘導ゆうどう自然しぜん免疫めんえき応答おうとう惹起じゃっきするのにくわえ、じょう細胞さいぼう活性かっせいうなが獲得かくとく免疫めんえき応答おうとう誘導ゆうどうするにも重要じゅうよう役割やくわりたす[9]T細胞さいぼう依存いぞんせい抗原こうげんたいする抗体こうたい産出さんしゅつにおけるMyD88の役割やくわりじょう細胞さいぼう活性かっせいによる獲得かくとく免疫めんえき応答おうとう誘導ゆうどう[10]ならびにB細胞さいぼう活性かっせいによる抗体こうたい産出さんしゅつ増強ぞうきょうがある[11][12]

抗原こうげん提示ていじ細胞さいぼうのMyD88シグナルの活性かっせい抗原こうげん提示ていじ細胞さいぼうによるサイトカイン産出さんしゅつ補助ほじょ刺激しげき分子ぶんし発現はつげん増加ぞうかさせることで、抗原こうげん特異とくいてきT細胞さいぼう活性かっせい誘導ゆうどうする[10]。さらにTLRとうかいしたB細胞さいぼうのMyD88シグナルの活性かっせいはB細胞さいぼうとT細胞さいぼうとの会合かいごううなが[11]、またB細胞さいぼうはい中心ちゅうしんB細胞さいぼうならびに形質けいしつ細胞さいぼうへの分化ぶんか促進そくしんすることがられている[12]。このようにMyD88シグナルは自然しぜん免疫めんえき応答おうとう惹起じゃっきだけではなく、獲得かくとく免疫めんえき応答おうとうならびに抗体こうたいさんせいまさ制御せいぎょしている。

欠損けっそんしょう

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非常ひじょうにまれな疾患しっかんであるがMyD88欠損けっそんしょうという疾患しっかんがある。日本にっぽんからは報告ほうこくがなく海外かいがいから20れい以上いじょう報告ほうこくがある[13]。MyD88欠損けっそんしょうつね染色せんしょくたい劣性れっせい遺伝いでん遺伝いでん形式けいしきをとる自然しぜん免疫めんえき不全ふぜんしょうである。獲得かくとく免疫めんえき未熟みじゅくである乳幼児にゅうようじ化膿かのうせいずいまくえん敗血症はいけつしょう関節かんせつえん骨髄こつづいえん深部しんぶ組織そしき膿瘍のうようなどの重症じゅうしょうな、いわゆるおかせかさねせい細菌さいきん感染かんせんしょうこりやすい。他方たほうえき感染かんせんせいはしだいにかるくなり8さい以降いこう感染かんせんしょう死亡しぼうや14さい以降いこうでの重症じゅうしょう感染かんせんしょうはほとんどないと報告ほうこくされている。治療ちりょうほう学童がくどうまではペニシリンけい抗菌こうきんやくSTごうざい予防よぼう内服ないふく免疫めんえきグロブリン定期ていきてき補充ほじゅう有効ゆうこうかんがえられている。肺炎はいえん球菌きゅうきんワクチン接種せっしゅ重要じゅうようである。

神経しんけい変性へんせい疾患しっかんとのかかわり

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中枢ちゅうすう神経しんけいけいにおける活性かっせいされた自然しぜん免疫めんえきけい神経しんけい変性へんせい疾患しっかんにおいて重要じゅうよう役割やくわりたしている[14][15][16][17][18]のうにおける急性きゅうせい炎症えんしょう病原びょうげんたい細胞さいぼう残骸ざんがい除去じょきょし、組織そしき修復しゅうふくにつながるため、のう保護ほごてきである。しかし神経しんけい変性へんせい疾患しっかんではのうない炎症えんしょう長期ちょうきし、可逆かぎゃくてき神経しんけい細胞さいぼう消失しょうしつにつながることが報告ほうこくされている[19]のう免疫めんえき細胞さいぼうであるミクログリア神経しんけい炎症えんしょう中心ちゅうしんてき細胞さいぼうである。ミクログリアが病原びょうげんたい関連かんれん分子ぶんしパターン内因ないいんせいリガンドを認識にんしきすると、自然しぜん免疫めんえき応答おうとう強力きょうりょく活性かっせいされ、炎症えんしょうせいメディエーターの産出さんしゅつ適応てきおう免疫めんえき活性かっせいこされる。TLRシグナルの活性かっせいがミクログリアを活性かっせいし、神経しんけい細胞さいぼう有害ゆうがい反応はんのうこし神経しんけい変性へんせい疾患しっかん発症はっしょう寄与きよするという証拠しょうこ蓄積ちくせきされている[20][21]とくにTLR2とアダプタータンパク質たんぱくしつのMyD88[5]かいした神経しんけい炎症えんしょう反応はんのう神経しんけい変性へんせい疾患しっかん共通きょうつうするメカニズムという意見いけんもある[22]アルツハイマーびょうパーキンソンびょうすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう系統けいとう萎縮いしゅくしょう脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょう6がた[22]でTLRシグナルの活性かっせい発症はっしょう寄与きよするという報告ほうこくがある[20]

そうやく

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COPD

MyD88をターゲットとした薬物やくぶつCOPD治療ちりょうやくとして注目ちゅうもくされている[23]

COVID-19

MyD88をターゲットとした薬物やくぶつインターフェロン応答おうとう異常いじょう[24]のあるCOVID-19治療ちりょうやくとして注目ちゅうもくされている[23]

全身ぜんしんせいエリテマトーデス

MyD88は全身ぜんしんせいエリテマトーデス治療ちりょう標的ひょうてきとしても注目ちゅうもくされている[25]とくにMyD88をノックアウトしたSLEモデルマウスはループスじんえん発症はっしょうせず、寿命じゅみょう延長えんちょうしたという報告ほうこくがある[26]

多発たはつせい硬化こうかしょう

多発たはつせい硬化こうかしょうにおいてMyD88はT細胞さいぼう、B細胞さいぼう血液けつえきのう関門かんもんじょう細胞さいぼう、マクロファージやミクログリア病態びょうたい形成けいせいかかわる[27][28]。MyD88ノックアウトマウスはEAE発症はっしょう完全かんぜん抑制よくせいする効果こうかがある[29]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000172936 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000032508 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ a b Cell. 2006 Feb 24;124(4):783-801. PMID 16497588
  6. ^ Cell. 2010 Mar 19;140(6):805-20. PMID 20303872
  7. ^ Immunity. 2013 Dec 12;39(6):1003-18. PMID 24332029
  8. ^ Mol Cell. 1998 Aug;2(2):253-8. PMID 9734363
  9. ^ Brain Sci. 2021 Oct 20;11(11):1373. PMID 34827372
  10. ^ a b Immunity. 2004 Nov;21(5):733-41. PMID 15539158
  11. ^ a b Nature. 2005 Nov 17;438(7066):364-8. PMID 16292312
  12. ^ a b J Exp Med. 2007 Dec 24;204(13):3095-101. PMID 18039950
  13. ^ Medicine (Baltimore). 2010 Nov;89(6):403-425. PMID 21057262
  14. ^ Semin Immunol. 1999 Apr;11(2):125-37. PMID 10329499
  15. ^ Front Pharmacol. 2011 Dec 2;2:77. PMID 22144960
  16. ^ Nat Neurosci. 2012 Jul 26;15(8):1096-101. PMID 22837040
  17. ^ Nat Rev Immunol. 2012 Sep;12(9):623-35. PMID 22903150
  18. ^ Kathmandu Univ Med J (KUMJ). 2013 Jan-Mar;11(41):102-7. PMID 23774427
  19. ^ J Neurochem. 2009 Mar;108(6):1343-59. PMID 19154336
  20. ^ a b Rev Neurosci. 2015;26(4):407-14. PMID 25870959
  21. ^ J Neuroimmunol. 2019 Jul 15;332:16-30. PMID 30928868
  22. ^ a b Hum Mol Genet. 2015 Sep 1;24(17):4780-91. PMID 26034136
  23. ^ a b Immunol Res. 2021 Apr;69(2):117-128. PMID 33834387
  24. ^ Cell Host Microbe. 2021 Jul 14 29(7) 1052-1062. PMID 34022154
  25. ^ Acta Pharmacol Sin. 2015 Dec;36(12):1395-407. PMID 26592511
  26. ^ Arthritis Rheum. 2007 May;56(5):1618-28. PMID 17469144
  27. ^ Front Mol Neurosci. 2020 Jan 10;12:314. PMID 31998072
  28. ^ Front Cell Infect Microbiol. 2012 Aug 24;2:112. PMID 22937527
  29. ^ J Clin Invest. 2006 Feb;116(2):456-64. PMID 16440059

参考さんこう文献ぶんけん

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