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NDRG1

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
NDRG1
識別子しきべつし
記号きごうNDRG1, CAP43, CMT4D, DRG-1, DRG1, GC4, HMSNL, NDR1, NMSL, PROXY1, RIT42, RTP, TARG1, TDD5, N-myc downstream regulated 1
外部がいぶIDOMIM: 605262 MGI: 1341799 HomoloGene: 55953 GeneCards: NDRG1
遺伝子いでんしの位置いち (ヒト)
8番染色体 (ヒト)
染色せんしょく体たい8番ばん染色せんしょく体たい (ヒト)[1]
8番染色体 (ヒト)
NDRG1遺伝子の位置
NDRG1遺伝子の位置
バンドデータ無なし開始かいし点てん133,237,175 bp[1]
終点しゅうてん133,302,022 bp[1]
遺伝子いでんしの位置いち (マウス)
15番染色体 (マウス)
染色せんしょく体たい15番ばん染色せんしょく体たい (マウス)[2]
15番染色体 (マウス)
NDRG1遺伝子の位置
NDRG1遺伝子の位置
バンドデータ無なし開始かいし点てん66,801,167 bp[2]
終点しゅうてん66,841,489 bp[2]
RNA発現はつげんパターン
さらなる参照さんしょう発現はつげんデータ
遺伝子いでんしオントロジー
分子ぶんし機能きのう• microtubule binding
• cadherin binding
• 血漿けっしょうタンパク結合けつごう
• gamma-tubulin binding
細胞さいぼうの構成こうせい要素ようそ• 細胞さいぼう質しつ
• 中心ちゅうしん体たい
• 膜まく
• microtubule cytoskeleton
• ミエリン鞘さや
• 細胞さいぼう膜まく
• 微小びしょう管かん形成けいせい中心ちゅうしん
• recycling endosome membrane
• perinuclear region of cytoplasm
• 微小びしょう管かん
• エキソソーム
• 細胞さいぼう骨格こっかく
• 細胞さいぼう核かく
• 細胞さいぼう質しつ基質きしつ
• glutamatergic synapse
生物せいぶつ学がく的てきプロセス• mast cell activation
• peripheral nervous system myelin maintenance
• DNA damage response, signal transduction by p53 class mediator
• response to metal ion
• positive regulation of spindle checkpoint
• regulation of cell population proliferation
• cellular response to hypoxia
• negative regulation of cell population proliferation
• regulation of apoptotic process
• シグナル伝達でんたつ
• postsynapse organization
出典しゅってん:Amigo / QuickGO
オルソログ
種たねヒトマウス
Entrez

10397

17988

Ensembl

ENSG00000104419

ENSMUSG00000005125

UniProt

Q92597,E5RIR1

Q62433

RefSeq
(mRNA)
NM_001135242
NM_001258432
NM_001258433
NM_006096
NM_001374844

NM_001374845
NM_001374846
NM_001374847

NM_008681

RefSeq
(タンパク質たんぱくしつ)
NP_001128714
NP_001245361
NP_001245362
NP_006087
NP_001361773

NP_001361774
NP_001361775
NP_001361776

NP_032707

場所ばしょ
(UCSC)		Chr 8: 133.24 – 133.3 MbChr 8: 66.8 – 66.84 Mb
PubMed検索けんさく[3][4]
ウィキデータ
閲覧えつらん/編集へんしゅう ヒト閲覧えつらん/編集へんしゅう マウス

NDRG1（N-myc downstream regulated 1）は、ヒトではNDRG1遺伝子いでんしにコードされるタンパク質たんぱくしつである[5][6][7][8]。

NDRG1は、αあるふぁ/βべーたヒドロラーゼスーパーファミリーに属ぞくするNDRG（N-myc downregulated gene）ファミリーのメンバーであり、ストレス応答おうとう、ホルモン応答おうとう、細胞さいぼう成長せいちょう、分化ぶんかに関与かんよする細胞さいぼう質しつタンパク質たんぱくしつである。NDRG1遺伝子いでんしの変異へんいは、CMT4Dと呼よばれる常つね染色せんしょく体たい劣性れっせい型かたのシャルコー・マリー・トゥース病びょうの原因げんいんとなることが報告ほうこくされている[8]。

NDRG1はエンドソームに局在きょくざいし、小しょう胞のリサイクリングに関与かんよするRAB4A（英語えいご版ばん）のエフェクターであることが報告ほうこくされている[9]。

NDRG1は胚はい発生はっせいやその後ごの発生はっせい過程かてい、細胞さいぼう成長せいちょう、分化ぶんか、脂質ししつ生せい合成ごうせい、ミエリン形成けいせい、免疫めんえき、DNA修復しゅうふく、細胞さいぼう接着せっちゃくやその他たの機能きのうに関与かんよしている[10]。NDRG1は細胞さいぼう質しつ、核かく、ミトコンドリアにそれぞれ47.8%、26.1%、8.7%ずつ局在きょくざいしている。DNA損傷そんしょうに応答おうとうしてNDRG1は細胞さいぼう質しつから核かくへ移行いこうし、そこで細胞さいぼう成長せいちょうの阻害そがいやDNA修復しゅうふく機構きこうの促進そくしんを行おこなっている可能かのう性せいがある。NDRG1はストレス応答おうとう遺伝子いでんしもしくは転写てんしゃ因子いんしとして作用さようしている可能かのう性せいが示唆しさされている[10]。

遺伝子いでんし

[編集へんしゅう]

ヒトでは、NDRG1遺伝子いでんしは8番ばん染色せんしょく体たい（英語えいご版ばん）の長ちょう腕うで（8q24.22）に位置いちしている。この遺伝子いでんしからは、394アミノ酸あみのさんのタンパク質たんぱくしつをコードする約やく3.0 kbのmRNAが産さん生むされる。NDRG1はNDRGファミリーに属ぞくする。NDRGファミリーにはNDRG1、NDRG2（英語えいご版ばん）、NDRG3、NDRG4（英語えいご版ばん）の4つのメンバーが存在そんざいし、互たがいに53–64%の相あい同性どうせいを示しめす。NDRG1は他たのメンバーとは異ことなり、C末端まったん領域りょういきに3つのタンデムなリピート配列はいれつ（GTRSRSHTSE）が存在そんざいする[11][12]。

NDRG1の発現はつげんは、低てい酸素さんそ依存いぞん的てきそして非ひ依存いぞん的てきな形かたちでの調節ちょうせつを受うけている。低てい酸素さんそ条件下じょうけんかでは、酸素さんそセンサーであるHIF-1αあるふぁが細胞さいぼう質しつから核かくへ移行いこうし、そこでHIF-1βべーたと結合けつごうしてHIF-1複ふく合体がったいを形成けいせいする。この複ふく合体がったいは転写てんしゃ因子いんしとして機能きのうし、低てい酸素さんそ関連かんれん遺伝子いでんしのプロモーター領域りょういきの低てい酸素さんそ応答おうとうエレメント（hypoxia response element; HRE）に結合けつごうする。こうしたHIF-1標的ひょうてき遺伝子いでんしの1つがNDRG1である[13]。また、重金属じゅうきんぞく（ニッケル、コバルト、鉄てつ）も低てい酸素さんそ状態じょうたいを模倣もほうすることでNDRG1をアップレギュレーションする。N-mycやc-mycはNDRG1に対たいして反対はんたいの作用さようを及およぼし、その発現はつげんを転写てんしゃレベルで抑制よくせいする。この効果こうかはプロモーター活性かっせいの低下ていかによる、間接かんせつ的てきなものである[10]。

がんにおける役割やくわり

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NDRG1は鉄てつによる調節ちょうせつを受うける、成長せいちょうと転移てんいに対たいする強力きょうりょくな抑制よくせい因子いんしであり、前立腺ぜんりつせんがん、膵臓すいぞうがん、乳にゅうがん、結腸けっちょうがんなどいくつかの腫瘍しゅようにおいて、がんのプログレッションと負まけの相関そうかんがみられる。NDRG1の顕著けんちょな抗こう腫瘍しゅよう活性かっせいは、細胞さいぼうの増殖ぞうしょく、遊ゆう走はし、浸潤しんじゅんそして血管けっかん新生しんせいの低下ていかと関係かんけいしている。NDRG1の分子ぶんし的てき機能きのうは、がん細胞さいぼうの増殖ぞうしょく、浸潤しんじゅん、血管けっかん新生しんせい、遊ゆう走はしを調節ちょうせつする多数たすうのシグナル伝達でんたつ経路けいろに影響えいきょうを及およぼす。具体ぐたい的てきには、NDRG1は発はつがん性せい因子いんしであるRAS、c-Src、PI3K、WNT、ROCK1（英語えいご版ばん）/pMLC2、NF-κかっぱB経路けいろを阻害そがいし、一方いっぽうでPTEN、E-カドヘリン、SMAD4など重要じゅうようながん抑制よくせい因子いんしの発現はつげんを促進そくしんする。またNDRG1は、アドヘレンスジャンクションを形成けいせいして細胞さいぼう接着せっちゃくを促進そくしんするE-カドヘリンやβべーた-カテニンに対たいする作用さようを介かいして、転移てんい開始かいしの重要じゅうよう段階だんかいである上皮じょうひ間あいだ葉は転換てんかんを阻害そがいする[14]。

DNA修復しゅうふくと加か齢よわいに対たいする機能きのう

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NDRG1の分子ぶんしレベルでの機能きのうの1つとして、DNA修復しゅうふくタンパク質たんぱくしつの1つであるメチルトランスフェラーゼ、MGMTに結合けつごうして安定あんてい化かを行おこなう[15]。NDRG1の高こう発現はつげんによって、MGMTの安定あんてい性せいと活性かっせいは促進そくしんされる。マウスで寿命じゅみょう伸長しんちょうを示しめす3つの系統けいとう（Snell、GHKRO、PAPPA-KO）では、NDRG1とMGMTのタンパク質たんぱくしつ発現はつげんが2倍ばいから3倍ばいに増加ぞうかしていることが示しめされており、これらのマウス系統けいとうにおけるMGMTを介かいしたDNA修復しゅうふく経路けいろの増大ぞうだいと老化ろうか過程かていの遅おくれとの関連かんれんが強つよく示唆しさされている[16]。

免疫めんえき系けいにおける役割やくわり

[編集へんしゅう]

NDRG1はアレルギーやアナフィラキシーにも重要じゅうような役割やくわりを果はたしている。マスト細胞さいぼうでは、成熟せいじゅく過程かていでNDRG1がアップレギュレーションされて迅速じんそくな脱だつ顆粒かりゅうを補助ほじょしており、さまざまな刺激しげきに応答おうとうしたエキソサイトーシスの亢進こうしんがもたらされる[17]。また、NDRG1はEGR2（英語えいご版ばん）によって誘導ゆうどうされるT細胞さいぼうのアネルギー因子いんしであり、共きょう刺激しげきが存在そんざいしない場合ばあいにアップレギュレーションされ、T細胞さいぼう受容じゅよう体たいとCD28（英語えいご版ばん）シグナルの共きょう刺激しげきによる、その後ごのT細胞さいぼうの再さい活性かっせい化かを阻害そがいする[18]。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000104419 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000005125 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ “A novel gene which is up-regulated during colon epithelial cell differentiation and down-regulated in colorectal neoplasms”. Laboratory Investigation; A Journal of Technical Methods and Pathology 77 (1): 85?92. (July 1997). PMID 9251681. 
  6. ^ “Homocysteine-respondent genes in vascular endothelial cells identified by differential display analysis. GRP78/BiP and novel genes”. The Journal of Biological Chemistry 271 (47): 29659?65. (November 1996). doi:10.1074/jbc.271.47.29659. PMID 8939898. 
  7. ^ “Human differentiation-related gene NDRG1 is a Myc downstream-regulated gene that is repressed by Myc on the core promoter region”. Gene 417 (1?2): 5?12. (July 2008). doi:10.1016/j.gene.2008.03.002. PMID 18455888. 
  8. ^ a b “Entrez Gene: NDRG1 N-myc downstream regulated gene 1”. 2023年ねん9月がつ2日にち閲覧えつらん。
  9. ^ Heisenberg, Carl-Philipp, ed (September 2007). “The N-Myc down regulated Gene1 (NDRG1) Is a Rab4a effector involved in vesicular recycling of E-cadherin”. PLOS ONE 2 (9): e844. Bibcode: 2007PLoSO...2..844K. doi:10.1371/journal.pone.0000844. PMC 1952073. PMID 17786215. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1952073/.  オープンアクセス
  10. ^ a b c “Molecular functions of the iron-regulated metastasis suppressor, NDRG1, and its potential as a molecular target for cancer therapy”. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Reviews on Cancer 1845 (1): 1?19. (January 2014). doi:10.1016/j.bbcan.2013.11.002. PMID 24269900. 
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  16. ^ “mTOR regulates the expression of DNA damage response enzymes in long-lived Snell dwarf, GHRKO, and PAPPA-KO mice”. Aging Cell 16 (1): 52?60. (February 2017). doi:10.1111/acel.12525. PMC 5242303. PMID 27618784. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5242303/. 
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  18. ^ “Ndrg1 is a T-cell clonal anergy factor negatively regulated by CD28 costimulation and interleukin-2”. Nature Communications 6 (1): 8698. (October 2015). Bibcode: 2015NatCo...6.8698O. doi:10.1038/ncomms9698. PMC 4846325. PMID 26507712. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4846325/. 

関連かんれん文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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