PCサーバ

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PCサーバ(ぴーしーサーバ)とは、パーソナルコンピュータ(PC)をベースとしたサーバーのこと。一般いっぱんにはサーバーのなかでは簡易かんいてきてい価格かかくなものがおおいが、サーバー用途ようとけに一部いちぶ機能きのう拡張かくちょうしたものもある。おおくはCPUインテルけいx86けいのプロセッサを使用しようし、IAサーバx86サーバなどともばれる。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

ハードウェア[編集へんしゅう]

基本きほんてき設計せっけい一般いっぱんもちいられているPCとほぼおなじであるが、サーバに必要ひつよう性能せいのう信頼しんらいせい可用性かようせいたかめるために拡張かくちょう改良かいりょうなど、いくつかことなるてんがある[1]信頼しんらいせいなどに悪影響あくえいきょうのない範囲はんい一般いっぱんようPCと共通きょうつう部品ぶひんもちいているが、おおむね上質じょうしつ部品ぶひん採用さいようされる。 2018ねん現在げんざい状況じょうきょう以下いかしめす。

プロセッサ
マイクロプロセッサ (CPU) は、おおくのPCと同様どうようインテルx86るいアーキテクチャ源流げんりゅうとする "x86"系統けいとうばれるものが採用さいようされており、とくにCPU大手おおてべいインテルしゃべいAMDは、それぞれ"Xeon"と"EPYC"という、"x86"のなかでもサーバけに信頼しんらいせいたかめたハイエンドなCPUファミリーを提供ていきょうしており、これらがPCサーバにひろ採用さいようされている。
マザーボード
通常つうじょうのPCが1まいのマザーボードに1個いっこのCPUを搭載とうさいしているのにたいして、一般いっぱんてきなミドル/ハイエンドけサーバようマザーボードは1まいに2や4のCPUを搭載とうさい可能かのうなものがおおい。また、2000年代ねんだい中頃なかごろ以降いこうにCPUがマルチコアしたことで、PCサーバようのマザーボードに搭載とうさい可能かのうなCPUコアすう上限じょうげんすうじゅうほどに上昇じょうしょうした。
普通ふつうのPCに存在そんざいせず、サーバ独特どくとく管理かんり機構きこうがマザーボードじょう実装じっそうされている。「マネジメントコントローラー」や「サービスプロセッサ」などの名称めいしょうばれているこのICは、しゅCPUをふくめたサーバ全体ぜんたい動作どうさについて外部がいぶから遠隔えんかく操作そうさ管理かんりおこなうための独立どくりつしたコンピュータであり、サーバの異常いじょうたいする非常ひじょう操作そうさ平常へいじょう起動きどう停止ていしなどの管理かんり業務ぎょうむ専用せんようネットワーク回線かいせんつうじておこなえるようになっている[2]。この管理かんり機構きこうによって多数たすうのサーバを容易ようい運用うんよう管理かんりできる[3]
メモリ
しゅ記憶きおく装置そうちである半導体はんどうたいメモリには、ECC機能きのうきのDDR4 SDRAM採用さいようされていることがおおい。搭載とうさい容量ようりょうは1GBから32GBまでと、サーバ用途ようと要求ようきゅう能力のうりょくによって比較的ひかくてき多様たようである[2]
拡張かくちょうバス
マザーボードじょうちいさな基板きばん挿入そうにゅうすることで追加ついか機能きのうくわえるための拡張かくちょうバスとして、PCI Express一般いっぱんてき採用さいようされている。サーバ用途ようとによってはおおくの挿入そうにゅうスロットとレーンをつものや、ごく少数しょうすうしかたないもの、まったたないものなど多様たようである。
補助ほじょ記憶きおく装置そうち
基本きほんてきすべてのPCサーバが補助ほじょ記憶きおく装置そうちであるHDD内蔵ないぞうしている。記憶きおく容量ようりょう速度そくど性能せいのうはサーバ用途ようとおおきく左右さゆうされる。一般いっぱんてき傾向けいこうとしては、マルチタスク処理しょり主体しゅたいとなるアプリケーション・サーバやデータベース・サーバなど、ディスクへの断片だんぺんてきこう頻度ひんど要求ようきゅう対応たいおうして高速度こうそくどのアクセス/転送てんそう能力のうりょくがあるSASインターフェースをそなえたこう価格かかく高性能こうせいのうなSASディスクが採用さいようされる傾向けいこうがあり[4]、エントリクラスの汎用はんようサーバやファイルサーバ、Webサーバのような比較的ひかくてき頻度ひんどすくないか、連続れんぞくしたファイルへのアクセスが主体しゅたいとなる用途ようとには、一般いっぱんてきなPCでもひろ採用さいようされている廉価れんかなSATAディスクが採用さいようされている[2]。HDDは電子でんし機器きき部品ぶひんなかでも劣化れっか故障こしょうきる可能かのうせいもっとたかいものの1つであり、コストとのいであるが、RAID(RADI1か5以上いじょう)やホットスペアといった機能きのうにより複数ふくすうのHDDをそなえて並列へいれつ運用うんようすることで冗長じょうちょうせい信頼しんらいせいたかめることがおおい。また、冗長じょうちょう運用うんよう有無うむかかわらず、故障こしょうしたHDDを電源でんげんらずに交換こうかん可能かのうホットスワップ機能きのうそなわっているものがおお[5]
近年きんねん[いつ?]SSD価格かかく低下ていか容量ようりょう増大ぞうだい品質ひんしつ改良かいりょうなどにより、一部いちぶではSSDを搭載とうさい可能かのうなメーカオプションもある[6]
電源でんげん
ローエンドPCサーバをのぞけば、ほとんどの電源でんげんがユニットによって2じゅうや3じゅうといった多重たじゅうされており、HDDと同様どうよう通電つうでん状態じょうたい維持いじしたまま可動かどうちゅうのPCサーバから異常いじょう電源でんげんかつせん挿抜できるようになっているものがおおい。
冷却れいきゃく機構きこう
外部がいぶから導入どうにゅうした冷気れいきたん方向ほうこうながれるよう空冷くうれいファンぐん配置はいちされており、いずれかの動作どうさ異常いじょうにはセンサーが検知けんちできるようになっている。
筐体きょうたい
19インチラックにマウントすることを前提ぜんていとしたラックマウントがたサーバと、一般いっぱんてきなPCとおなじようなケースにおさめられたものが存在そんざいする。

ソフトウェア[編集へんしゅう]

稼働かどうさせるオペレーティングシステムは、1980年代ねんだいにはNetWareOS/2 LAN Server、OpenServerなどが有力ゆうりょくであったが、1990年代ねんだい後半こうはんからはWindows NT ServerにはじまるWindows NTけいのサーバけバージョンであるWindows Serverシリーズ、あるいはPC-UNIXでもあるLinuxFreeBSDなどをサーバようにカスタマイズしたディストリビューションが主流しゅりゅうとなっている。

信頼しんらいせい[編集へんしゅう]

メインフレームUNIXサーバなどと比較ひかくすると信頼しんらいせいひくい。しかし多数たすうのベンダーが参入さんにゅう競争きょうそうはげしく、信頼しんらいせい向上こうじょうしつつある。UNIXサーバがになだい企業きぎょう基幹きかんシステムの一部いちぶ中堅ちゅうけん企業きぎょう中核ちゅうかくサーバとして使用しようできる。

価格かかく[編集へんしゅう]

サーバとしてはてい価格かかくである。日本にっぽんでの価格かかく大型おおがたが300まんえん以上いじょう最小さいしょうがたが50まんえん未満みまんである[7]。2009年度ねんど出荷しゅっか台数だいすうは、やく32まんだい(JEITA調しらべ)[8]からやく50まんだい[9]やく1わりブレードサーバである(JEITA調しらべ)[10]保守ほしゅ契約けいやく前提ぜんていに24あいだ・365にちのオンサイト保守ほしゅ現地げんち修理しゅうり)が用意よういされている場合ばあいがある。

出荷しゅっか金額きんがくベースの構成こうせい比率ひりつ[11]
1998年度ねんど 2002年度ねんど 2007年度ねんど
メインフレーム 51% 38% 25%
UNIXサーバ 25% 41% 33%
IAサーバ 9% 15% 38%
独自どくじOSサーバほか 15% 7% 4%
全体ぜんたい出荷しゅっか金額きんがく 1ちょう4710おくえん 9867おくえん 6701おくえん

日本にっぽん市場いちばでのシェア(2008ねん4がつ - 2009ねん3がつ出荷しゅっか金額きんがくベース、JEITA参加さんかふくむ)は以下いかとお[12]

日本電気にほんでんき 24.8%
日本にっぽんHP 19.7%
富士通ふじつう 19%
DELL 14.1%
日本にっぽんIBM 11.9%
その 10.6%

種類しゅるい[編集へんしゅう]

x86サーバ[編集へんしゅう]

x86けいIA-32けい)のCPUとアーキテクチャを採用さいようしたサーバでは、現在げんざいではx86を64ビット拡張かくちょうしたx64(AMD64およびIntel 64)が主流しゅりゅうである。主要しゅようメーカーのおも製品せいひんには以下いかがある。

IA-64サーバ[編集へんしゅう]

インテル独自どくじ64ビットアーキテクチャであるIA-64けいのCPU(Itanium)を搭載とうさいしたサーバである。広義こうぎの「PCサーバ」では、IA-64サーバをふく場合ばあいがある。当初とうしょはインテルけいCPUを採用さいようしたサーバとしては高性能こうせいのう高信頼こうしんらいせいこう価格かかくなハイエンドサーバであったが、現在げんざいでは上述じょうじゅつのx64(AMD64およびIntel 64)の性能せいのう向上こうじょうして市場いちば主流しゅりゅうとなったため、IA-64サーバはニッチ市場いちばすすんだ。またインテルも2006ねんIntel 64命名めいめいは「IA-64」の名称めいしょう使用しようっている。主要しゅようメーカーのおも製品せいひんには以下いかがある。

参照さんしょう出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 通常つうじょう一般いっぱんてきなPCがそなえるがPCサーバでははぶかれている機能きのうに、音声おんせい出力しゅつりょくがある。また、映像えいぞう出力しゅつりょくやUSBについてもはぶかれている機種きしゅがあり、これらでは、映像えいぞう出力しゅつりょくやキーボードやマウスをもちいるためには、増設ぞうせつカードを別途べっと購入こうにゅうする必要ひつようがある。
  2. ^ a b c サーバーを特徴付とくちょうづけるハードウェアのいろいろ - ASCIIjp
  3. ^ このサーバ専用せんよう管理かんり機構きこうそなわる以前いぜんのPCサーバは一般いっぱんてきなPCにちか構成こうせいであり、設定せっていなどの管理かんりは1だいごとにシリアルポート経由けいゆしてキーボード/ディスプレイをそなえたVT100のようなビデオ表示ひょうじ端末たんまつ接続せつぞくして運用うんようする必要ひつようがあった。
  4. ^ SASディスクはインターフェースのちがいをしめすが、じつ製品せいひんではたか回転かいてんすうやコントローラの高機能こうきのう経年けいねん劣化れっか低減ていげんなどの高性能こうせいのう高信頼こうしんらいせい長寿ちょうじゅいのちはかられており、とくにアクセス性能せいのうもとめるものでは「3.5インチがた」とばれる外形がいけいのまま、内部ないぶ磁気じき記録きろく円盤えんばん(プラッタ)を2.5インチへ縮小しゅくしょうしてこう回転かいてんした製品せいひんがある。このようにSASディスクは、記憶きおく容量ようりょうおおきなものはあまり存在そんざいしない。
  5. ^ 安価あんかなローエンドのPCサーバでも単純たんじゅんなRAID構成こうせい当初とうしょから、またはオプションでれるようになっている。
  6. ^ HPしゃれい
  7. ^ JEITA (2009ねん). “価格かかくたいべつ出荷しゅっか台数だいすう金額きんがく平成へいせい20年度ねんど”. 2010ねん1がつ11にち閲覧えつらん
  8. ^ 国内こくないシェア・トップ5のうちDELLと日本にっぽんHPは自主じしゅ統計とうけい参加さんかであり、ふくまれていない。
  9. ^ CIO (2009ねん8がつ24にち). “【IDC Japan予測よそく国内こくないx86サーバ市場いちば、2009ねん前年ぜんねんつづきマイナス成長せいちょうへ――年間ねんかん出荷しゅっか台数だいすうが50まんだい”. 2010ねん1がつ11にち閲覧えつらん
  10. ^ JEITA (2009ねん). “平成へいせい20年度ねんど だい4四半期しはんき・20年度ねんどそう出荷しゅっか”. 2010ねん1がつ11にち閲覧えつらん
  11. ^ JEITA. “コンピュータおよび関連かんれん装置そうちとう出荷しゅっか統計とうけい”. 2009ねん11がつ10日とおか閲覧えつらん
  12. ^ ノークリサーチ (2009ねん6がつ9にち). “08/09年度ねんど PCサーバ国内こくない出荷しゅっか調査ちょうさ報告ほうこく”. 2010ねん1がつ11にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]