IA-64

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IA-64Intel Architecture 64、アイエーろくじゅうよん[1])はインテルヒューレット・パッカードが1994ねん共同きょうどう発表はっぴょうした64ビットマイクロプロセッサ命令めいれいセットアーキテクチャ(ISA)。Itanium採用さいようされた。

特徴とくちょうとしてEPICアーキテクチャ採用さいようし、多数たすうのレジスタをつ。インテルの従来じゅうらい32ビットであるIA-32 (x86) とは、命令めいれいセット互換ごかんせいいが、IA-32のエミュレーションモードをつ。IA-64は当初とうしょはIA-32の後継こうけいともされたが、実際じっさいにはx86を64ビットに拡張かくちょうしたx64普及ふきゅうもあり、特定とくてい用途ようととどまった。2019ねん1がつ、インテルは2021ねんのItaniumの製造せいぞう終了しゅうりょう予定よてい発表はっぴょうし、後継こうけいいため、IA-64は終了しゅうりょうした[2][3]


名称めいしょう[編集へんしゅう]

正式せいしきには「Intel Architecture 64」で、インテルの戦略せんりゃくめんつよ用語ようごである。現在げんざいでは、既存きそんx86ベースの64ビットであるIntel 64などが主流しゅりゅうとなった影響えいきょうか、インテルの資料しりょうでも「IA-64」の用語ようご減少げんしょうし、Itanium 2などの説明せつめいも「EPICアーキテクチャ採用さいようした」など個別こべつ技術ぎじゅつめい使つかわれている。

概要がいよう[編集へんしゅう]

インテル1990年代ねんだいに、x86で32ビットのパーソナルコンピュータ市場いちばでは主流しゅりゅうとなったが、64ビットのサーバ市場いちばはいわゆるRISC陣営じんえいSPARCMIPSPA-RISCPOWERなど)にめられており、また32ビット市場いちばでもAMDCyrixなど互換ごかんプロセッサーメーカーの攻勢こうせいけていた。

インテルRISC陣営じんえいいちしゃであるヒューレット・パッカード (HP)と提携ていけいし、HPのVLIW技術ぎじゅつのち改良かいりょうばんEPICアーキテクチャ)を採用さいようするIA-64共同きょうどう開発かいはつ発表はっぴょうした。このさい従来じゅうらいの32ビットまでのx86アーキテクチャをIA-32び、将来しょうらいてきにはIA-64にえられるとした。またHPはIA-64を自社じしゃPA-RISC(HP-UX稼動かどうCPU)の後継こうけい位置いちづけた。

この提携ていけい目的もくてきは、インテルには上位じょういサーバ市場いちばへの本格ほんかく進出しんしゅつ互換ごかんプロセッサーメーカーのり、さらにはWindows NTでRISC(MIPSAlphaPowerPC)もサポートしたマイクロソフトへの牽制けんせい、またHPには次世代じせだいプロセッサーの開発かいはつ費用ひよう分担ぶんたん事実じじつじょう業界ぎょうかい標準ひょうじゅんへのねらいがあったとわれるが、PC市場いちばのインテル独占どくせん状態じょうたいがサーバ市場いちばにもおよぶとかんがえられ業界ぎょうかい衝撃しょうげきあたえた。またIA-64は既存きそんのIA-32とは互換ごかんせいい(エミュレーションのみ)ことひろ議論ぎろんとなった。

しかしIA-64は、Itanium開発かいはつ遅延ちえん性能せいのうひくさ、結果けっかとしてHP(およびHPと提携ていけいする日本電気にほんでんき日立製作所ひたちせいさくしょ以外いがい採用さいようメーカーのすくなさ、自社じしゃ以外いがいのサポートOSすくなさ、そのあいだ競合きょうごうプロセッサ(SPARCPOWERなど)の性能せいのう向上こうじょうさらにはx86市場いちばの64ビットにはx64(IA-64を批判ひはんしたAMDによるAMD64、およびインテルばん実装じっそうIntel 64)が普及ふきゅうしてしまった。2005ねん9月にはデルがIA-64から撤退てったいした。POWERをIBM2005ねん以降いこうはほとんど採用さいようしていない。

IA-64は現状げんじょうでは、HP(およびHPと提携ていけいする日本電気にほんでんき日立製作所ひたちせいさくしょ)のPA-RISC後継こうけい、およびレジスタかずおおいなどエミュレーションによってことなるアーキテクチャからの移行いこう容易よういこともあり、一部いちぶ停止ていしコンピュータHP Integrity NonStopなど)やOpenVMSメインフレームオフィスコンピュータ富士通ふじつう日本電気にほんでんきBullなど)のえプロセッサが中心ちゅうしんとなっている。

歴史れきし[編集へんしゅう]

  • 1994ねん インテルとHPがIA-64の共同きょうどう開発かいはつ発表はっぴょう
  • 1999ねん インテルとHPがIA-64の詳細しょうさい発表はっぴょう
  • 2001ねん Itaniumリリース

アーキテクチャ[編集へんしゅう]

レジスタ[編集へんしゅう]

IA-64アーキテクチャは、128ほんの64ビット整数せいすうレジスタ (r0 - r127) と128ほんの82ビット浮動ふどう小数点しょうすうてんレジスタ (f0 - f127) という非常ひじょうおおくのレジスタを定義ていぎしている。

整数せいすうレジスタ[編集へんしゅう]

128ほんの64ビット整数せいすうレジスタ (r0 - r127) のうち汎用はんようレジスタとしてはr0 - r31の32ほん使つかわれる(r0はゼロレジスタで、すとつねに0をかえし、むと例外れいがい発生はっせいする)。 のこりの96ほん (r32 - r127) はレジスタスタックエンジン (Register Stack Engine; RSE) を使つかったレジスタローテーションという手法しゅほう管理かんりされ、プロシージャあいだ名前なまえ変更へんこうされる可能かのうせいがある。これはおおくのRISCプロセッサにられるレジスタ・ウィンドウ洗練せんれんさせたもので、AMD Am29000のオーバーラップウィンドウサイズを変更へんこう可能かのうなレジスタ・ウィンドウとの類似るいじせい指摘してきされるが、IA-64ではプレディケーションとわせることで、ループを自動的じどうてき展開てんかいして実行じっこうすることができる。

命令めいれいセット[編集へんしゅう]

ほんアーキテクチャはマルチメディア演算えんざん浮動ふどう小数点しょうすうてん演算えんざんかんする命令めいれい用意よういしている。

典型てんけいてきなVLIWではロング命令めいれいワードのかくサブ命令めいれい位置いち特定とくてい機能きのうユニットに対応たいおうしているが、Itaniumではサブ命令めいれい配置はいちについていくつかのわせ(バンドル)を用意よういしていて、そのなかにはシリアル実行じっこうモードとパラレル実行じっこうモードのバランスをとるものもある。バンドルのエンコーディングには将来しょうらいのIA-64の拡張かくちょうのためにきがある。くわえて、Itaniumは個別こべつ設定せってい可能かのうなプリディケートレジスタ(predicate register)をっており、かく命令めいれいについて実行じっこう出力しゅつりょくするかかを決定けっていできる。

Itaniumは、起動きどうした時点じてんではいくつかの命令めいれい実行じっこう機能きのう動作どうさしないようになっている。ブートストラップが実行じっこうされるとまずExtensible Firmware Interface (EFI) がロードされ、追加ついか命令めいれいがチップないのメモリに格納かくのうされる。つづいてプロセッサモード(64ビットか32ビットか)やのブート設定せっていおこなわれる。この設計せっけいによりItaniumシステムはEFIプログラムの内容ないようによってことなった機能きのう展開てんかいできる。

IA-32サポート[編集へんしゅう]

IA-32をサポートするため、Itanium特殊とくしゅなジャンプ命令めいれいで32ビットモードに移行いこうする。IA-32命令めいれいはItaniumのかく機能きのうユニットで実行じっこうされる。しかし、ItaniumはEPICスタイルの命令めいれい高速こうそく実行じっこうするよう設計せっけいされているため、アウト・オブ・オーダー実行じっこう機能きのうっておらず、IA-32コードの実行じっこうはIA-64モードと比較ひかくしてもPentiumけいプロセッサと比較ひかくしても非常ひじょう性能せいのうてき不利ふりである。たとえば、Itaniumの機能きのうユニットは通常つうじょうALUでの計算けいさん副作用ふくさようのため整数せいすうフラグを自動的じどうてきには生成せいせいしないし、境界きょうかいととのっていないメモリロードを複数ふくすうつづけておこなうようにはできていない。LinuxWindowsうえ動作どうさするIA-32ソフトウェアエミュレータがあるが、ハードウェアがIA-32モードで実行じっこうするよりもエミュレータで実行じっこうしたほうやく50%高性能こうせいのうである。

Windowsエミュレータはマイクロソフトから、LinuxエミュレータはノベルのようなLinuxベンダーから入手にゅうしゅ可能かのうである。Itanium 2のMontecitoからはハードウエアデコーダは削除さくじょされ、Extensible Firmware Interface (EFI) でIA-32エミュレータがロードされるようになった。

採用さいよう[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]