この項目 こうもく では、品質 ひんしつ 係数 けいすう Qについて説明 せつめい しています。Q学習 がくしゅう におけるQ値 ち については「Q学習 がくしゅう 」をご覧 らん ください。
半値 はんね 全幅 ぜんぷく (FWHM)
Q値 ね (英 えい : quality factor )または品質 ひんしつ 係数 けいすう Q は主 おも に振動 しんどう の状態 じょうたい を表 あらわ す無 む 次元 じげん 量 りょう である。弾性 だんせい 波 は の伝播 でんぱ においては、媒質 ばいしつ の吸収 きゅうしゅう によるエネルギーの減少 げんしょう に関係 かんけい する値 ね である。振動 しんどう においては、系 けい に蓄 たくわ えられるエネルギーを、一周 いっしゅう 期 き の間 あいだ に系 けい から散逸 さんいつ するエネルギーで割 わ ったもので、この値 ね が大 おお きいほど振動 しんどう が安定 あんてい であることを意味 いみ する。また、Q値 ち は振幅 しんぷく 増大 ぞうだい 係数 けいすう とされる場合 ばあい もある。これは、共振 きょうしん 周波数 しゅうはすう 近傍 きんぼう での強制 きょうせい 振動 しんどう における最大 さいだい 振幅 しんぷく が静的 せいてき 強制 きょうせい 力 りょく による変位 へんい のQ倍 ばい となることから解釈 かいしゃく される。振動 しんどう 子 こ や電気 でんき 回路 かいろ の場合 ばあい には一般 いっぱん にQ値 ね が高 たか いほうが望 のぞ ましいが、逆 ぎゃく にQ値 ね が高 たか いほど応答 おうとう 性 せい が悪 わる くなり、起動 きどう 時間 じかん が長 なが くなるという面 めん もある。
振動 しんどう する物理 ぶつり 量 りょう の実際 じっさい の振動 しんどう 状態 じょうたい は、周波数 しゅうはすう 軸 じく に展開 てんかい した振動 しんどう 振幅 しんぷく (英 えい : Amplitude )や位相 いそう (英 えい : Phase )のスペクトラム により理解 りかい される。振動 しんどう スペクトラムの共振 きょうしん ピーク近傍 きんぼう の形 かたち はその振動 しんどう 系 けい の振動 しんどう 状態 じょうたい を特徴付 とくちょうづ ける。Q値 ね とは
Q
=
ω おめが
0
ω おめが
2
−
ω おめが
1
{\displaystyle Q={\frac {\omega _{0}}{\omega _{2}-\omega _{1}}}}
で定義 ていぎ される無 む 次元 じげん 数 すう 。ここで、
ω おめが
0
{\displaystyle \omega _{0}}
、
ω おめが
1
{\displaystyle \omega _{1}}
、
ω おめが
2
{\displaystyle \omega _{2}}
はそれぞれ共振 きょうしん ピークでの共振 きょうしん 周波数 しゅうはすう 、共振 きょうしん ピークの左側 ひだりがわ において振動 しんどう エネルギーが共振 きょうしん ピークの半値 はんね となる周波数 しゅうはすう 、共振 きょうしん ピークの右側 みぎがわ において振動 しんどう エネルギーが半値 はんね となる周波数 しゅうはすう である。ここで
ω おめが
2
−
ω おめが
1
{\displaystyle {\omega _{2}-\omega _{1}}}
を半値 はんね 幅 はば と呼 よ ぶ。
Q値 ね の低 ひく い機械 きかい 振動 しんどう 系 けい は振動 しんどう エネルギーの分散 ぶんさん が大 おお きい系 けい である。
Q値 ね の高 たか い構造 こうぞう 物 ぶつ では一旦 いったん 振動 しんどう が開始 かいし されると振動 しんどう が長 なが く続 つづ く。
Q値 ね が低 ひく い素材 そざい は振動 しんどう がすぐに減少 げんしょう する性質 せいしつ がある。これを利用 りよう して防 ぼう 振 ふ 材 ざい 、防音 ぼうおん 材 ざい に用 もち いられる。
RLC直列 ちょくれつ 回路 かいろ
電子 でんし 工学 こうがく の分野 ぶんや でも共振 きょうしん 回路 かいろ の共振 きょうしん のピークの鋭 するど さを表 あらわ す値 ね 「Q」(Quality factor)として一般 いっぱん 的 てき に用 もち いられる。定義 ていぎ は上記 じょうき と同一 どういつ であり、インダクタ とキャパシタ を用 もち いた直列 ちょくれつ 共振 きょうしん 回路 かいろ の場合 ばあい 、
Q
=
1
R
L
C
{\displaystyle Q={\frac {1}{R}}{\sqrt {\frac {L}{C}}}}
と表 あらわ せる。これはインダクタンス L を大 おお きくしてキャパシタンス C を小 ちい さく、直列 ちょくれつ 抵抗 ていこう R を少 すく なくするほど Q が大 おお きくなることを示 しめ す。このため、選択 せんたく 度 ど を稼 かせ ぐ必要 ひつよう がある共振 きょうしん 回路 かいろ においては、インダクションコイルの線 せん 径 みち を太 ふと くして抵抗 ていこう 値 ち を押 お さえ、大 だい 径 みち ・粗 そ ピッチで巻 ま いて分布 ぶんぷ 容量 ようりょう を減 へ らすなどの工夫 くふう をする。
また、角 かく 振動 しんどう 数 すう は、
ω おめが
=
1
L
C
{\displaystyle \omega ={\sqrt {\frac {1}{LC}}}}
を用 もち いることで、
Q
=
ω おめが
L
R
=
1
ω おめが
C
R
{\displaystyle Q={\frac {\omega {}L}{R}}={\frac {1}{\omega {}CR}}}
と表 あらわ せる。
また、水晶 すいしょう 振動 しんどう 子 こ はLC共振 きょうしん 回路 かいろ に比 くら べて Q が大 おお きいため、正確 せいかく で安定 あんてい した発振 はっしん 回路 かいろ 向 む けの共振 きょうしん 回路 かいろ として一般 いっぱん に用 もち いられる。水晶 すいしょう 自体 じたい が数 すう 百 ひゃく 万 まん に達 たっ する高 たか いQ値 ね を持 も っているため、それを利用 りよう した回路 かいろ では、数 すう 千 せん から数 すう 万 まん が達成 たっせい できる。一般 いっぱん 的 てき なLC共振 きょうしん 器 き のQは数 すう 十 じゅう 程度 ていど で、周波数 しゅうはすう が高 たか いほどQ値 ち は下 さ がる。
RLC並列 へいれつ 回路 かいろ
並列 へいれつ 回路 かいろ の場合 ばあい は
Q
=
R
C
L
{\displaystyle Q={R}{\sqrt {\frac {C}{L}}}}
となる[1] 。
1自由 じゆう 度 ど のばね-質量 しつりょう 系 けい において、Q値 ち は機械 きかい 的 てき 抵抗 ていこう を用 もち いて表現 ひょうげん できる。
Q
=
M
K
R
{\displaystyle Q={\frac {\sqrt {MK}}{R}}}
ここで M は質量 しつりょう , K は弾性 だんせい 率 りつ で R は機械 きかい 的 てき 抵抗 ていこう である。
ばね-質量 しつりょう 系 けい の角 かく 振動 しんどう 数 すう を用 もち いて、
ω おめが
=
K
M
{\displaystyle \omega ={\sqrt {\frac {K}{M}}}}
また、別 べつ の表現 ひょうげん をすれば、
Q
=
ω おめが
M
R
{\displaystyle Q={\frac {\omega {}M}{R}}}
と導出 どうしゅつ できる。
Qは減衰 げんすい 定数 ていすう
ζ ぜーた
{\displaystyle \zeta }
、損失 そんしつ 率 りつ
η いーた
{\displaystyle \eta }
を用 もち いて、
Q
=
1
2
ζ ぜーた
=
1
η いーた
{\displaystyle Q={\frac {1}{2\zeta }}={\frac {1}{\eta }}}
と表 あらわ される。
ここで、周期 しゅうき 的 てき に外力 がいりょく が作用 さよう する強制 きょうせい 振動 しんどう を考 かんが える。
d
2
x
d
t
2
+
2
ζ ぜーた
ω おめが
n
d
x
d
t
+
ω おめが
n
x
=
−
F
0
k
ω おめが
n
2
cos
ω おめが
t
{\displaystyle {d^{2}x \over dt^{2}}+2\zeta \omega _{n}{dx \over dt}+\omega _{n}x=-{F_{0} \over k}\omega _{n}^{2}\cos \omega t}
この解 かい は、
x
=
A
cos
ω おめが
t
+
B
sin
ω おめが
t
{\displaystyle x=A\cos \omega t+B\sin \omega t}
となるから、 sin成分 せいぶん とcos成分 せいぶん のそれぞれの係数 けいすう を比較 ひかく することにより連立 れんりつ 方程式 ほうていしき を立 た てて解 と くと、
x
=
F
0
k
1
{
1
−
(
ω おめが
ω おめが
n
)
2
}
2
+
(
2
ζ ぜーた
ω おめが
ω おめが
n
)
2
[
{
1
−
(
ω おめが
ω おめが
n
)
2
}
cos
ω おめが
t
+
2
ζ ぜーた
ω おめが
ω おめが
n
sin
ω おめが
t
]
{\displaystyle x={F_{0} \over k}{1 \over {\left\{{1-\left({\omega \over \omega _{n}}\right)^{2}}\right\}^{2}+\left({2\zeta {\omega \over \omega _{n}}}\right)^{2}}}\left[\left\{{1-\left({\omega \over \omega _{n}}\right)^{2}}\right\}\cos \omega t+2\zeta {\omega \over \omega _{n}}\sin \omega t\right]}
このとき、共振 きょうしん 周波数 しゅうはすう :
ω おめが
=
ω おめが
n
{\displaystyle \omega =\omega _{n}}
における振動 しんどう を考 かんが えると
x
(
ω おめが
n
)
=
F
0
k
1
2
ζ ぜーた
sin
ω おめが
t
{\displaystyle x(\omega _{n})={F_{0} \over k}{1 \over {2\zeta }}\sin \omega t}
したがって、
x
(
ω おめが
n
)
=
F
0
k
Q
sin
ω おめが
t
{\displaystyle x(\omega _{n})={F_{0} \over k}Q\sin \omega t}
なお、静的 せいてき 荷重 かじゅう 時 じ の変位 へんい x0 は、
x
0
=
F
0
k
{\displaystyle x_{0}={F_{0} \over k}}
となるから、共振 きょうしん 周波数 しゅうはすう での振幅 しんぷく との比 ひ は、
x
(
ω おめが
n
)
x
0
=
Q
{\displaystyle {x(\omega _{n}) \over x_{0}}=Q}
したがって、共振 きょうしん 周波数 しゅうはすう において、振動 しんどう 振幅 しんぷく は静的 せいてき 荷重 かじゅう 時 じ のQ倍 ばい に増大 ぞうだい する。
光学 こうがく 的 てき には、空洞 くうどう 共振 きょうしん 器 き のQ値 ち は以下 いか の式 しき で求 もと められる。
Q
=
2
π ぱい
ν にゅー
E
P
{\displaystyle Q={\frac {2\pi \nu {\mathcal {E}}}{P}}}
ここで
ν にゅー
{\displaystyle \nu }
は共振 きょうしん 周波数 しゅうはすう 、
E
{\displaystyle {\mathcal {E}}}
はキャビティに蓄 たくわ えられるエネルギー、
P
=
−
d
E
d
t
{\displaystyle P=-{\frac {dE}{dt}}}
は散逸 さんいつ 率 りつ である。光学 こうがく 的 てき Q値 ち は、共振 きょうしん 周波数 しゅうはすう をその共振 きょうしん 器 き の半価 はんか 幅 はば で割 わ ったものに等 ひと しい。キャビティ内 ない の光子 こうし の寿命 じゅみょう は、このQ値 ち に比例 ひれい する。 レーザー の技術 ぎじゅつ の一 ひと つとして、キャビティのQ値 ね を切 き り替 か えることによって、高 こう 出力 しゅつりょく を得 え ることができる。この技術 ぎじゅつ はQスイッチ と呼 よ ばれている。
メスバウアー効果 こうか による共鳴 きょうめい 現象 げんしょう のQ値 ち は数 すう ギガに達 たっ する。
誘電 ゆうでん 体 たい 材料 ざいりょう においてtanδ でるた の逆数 ぎゃくすう として定義 ていぎ される。一般 いっぱん 的 てき には、誘電 ゆうでん 率 りつ の高 たか い材料 ざいりょう ほどQ値 ね が低 ひく く、周波数 しゅうはすう の上昇 じょうしょう に伴 ともな って低下 ていか する。したがって、Q値 ち ではなく、周波数 しゅうはすう との積 せき であるfQ積 せき の値 ね を用 もち いて、材料 ざいりょう の良否 りょうひ を判断 はんだん することが多 おお い。
^ 第 だい 一級陸上特殊無線技士無線工学試験 JZ10A
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Q値 ね に
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T. Ohira, "What in the world is Q ," IEEE Microwave Magazine, vol.17, no.6, pp.42-49, June 2016. ISSN 1527-3342.