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VDAC2

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
VDAC2
識別子しきべつし
記号きごうVDAC2, POR, voltage dependent anion channel 2
外部がいぶIDOMIM: 193245 MGI: 106915 HomoloGene: 37765 GeneCards: VDAC2
遺伝子いでんし位置いち (ヒト)
10番染色体 (ヒト)
染色せんしょくたい10ばん染色せんしょくたい (ヒト)[1]
10番染色体 (ヒト)
VDAC2遺伝子の位置
VDAC2遺伝子の位置
バンドデータ開始かいしてん75,210,154 bp[1]
終点しゅうてん75,231,448 bp[1]
遺伝子いでんし位置いち (マウス)
14番染色体 (マウス)
染色せんしょくたい14ばん染色せんしょくたい (マウス)[2]
14番染色体 (マウス)
VDAC2遺伝子の位置
VDAC2遺伝子の位置
バンドデータ開始かいしてん21,875,306 bp[2]
終点しゅうてん21,895,947 bp[2]
遺伝子いでんしオントロジー
分子ぶんし機能きのう porin activity
ヌクレオチド結合けつごう
voltage-gated anion channel activity
血漿けっしょうタンパク結合けつごう
細胞さいぼう構成こうせい要素ようそ integral component of membrane
まく
シナプスしょう
ミエリンさや
ミトコンドリアがいまく
ミトコンドリア
ミトコンドリアないまく
脂質ししつラフト
mitochondrial nucleoid
エキソソーム
pore complex
細胞さいぼうかく
さきたい
生物せいぶつがくてきプロセス negative regulation of intrinsic apoptotic signaling pathway
イオン輸送ゆそう
まく貫通かんつう輸送ゆそう
negative regulation of protein polymerization
regulation of anion transmembrane transport
アニオン輸送ゆそう
アニオンまく貫通かんつう輸送ゆそう
輸送ゆそう
binding of sperm to zona pellucida
無機むきアニオン輸送ゆそう
出典しゅってん:Amigo / QuickGO
オルソログ
たねヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)
NM_001184783
NM_001184823
NM_003375
NM_001324087
NM_001324088

NM_001324089
NM_001324090
NM_001391963

NM_011695

RefSeq
(タンパク質たんぱくしつ)
NP_001171712
NP_001171752
NP_001311016
NP_001311017
NP_001311018

NP_001311019
NP_003366

NP_035825

場所ばしょ
(UCSC)
Chr 10: 75.21 – 75.23 MbChr 10: 21.88 – 21.9 Mb
PubMed検索けんさく[3][4]
ウィキデータ
閲覧えつらん/編集へんしゅう ヒト閲覧えつらん/編集へんしゅう マウス

VDAC2(voltage dependent anion channel 2)は、ヒトでは10ばん染色せんしょくたい英語えいごばん位置いちするVDAC2遺伝子いでんしによってコードされるタンパク質たんぱくしつである[5][6]。このタンパク質たんぱくしつ電位でんい依存いぞんせいアニオンチャネル(VDAC)であり、のVDACのアイソフォームとたか構造こうぞうてきあい同性どうせいゆうする[7][8][9]。VDACは一般いっぱんてきに、細胞さいぼう代謝たいしゃミトコンドリアかいしたアポトーシス精子せいし形成けいせい関与かんよしている[10][11][12][13]。さらに、VDAC2はしん収縮しゅうしゅくはい循環じゅんかんにも関与かんよしており、心肺しんぱい疾患しっかんへの関与かんよ示唆しさされる[10][11]。また、VDAC2は伝染でんせんせいファブリキウス嚢病(IBD)にたいする免疫めんえき応答おうとう媒介ばいかいする[11]

構造こうぞう

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ヒトのVDACの3つのアイソフォームは、とく立体りったい構造こうぞう観点かんてんから高度こうど保存ほぞんされている。VDACははばひろβべーたバレル構造こうぞう形成けいせいし、その内側うちがわではN末端まったんざんもとがポアを部分ぶぶんてきじている。VDAC2の配列はいれつシステインざんもとんでジスルフィド結合けつごう形成けいせい可能かのうであり、このことはβべーたバレルの柔軟じゅうなんせい影響えいきょうあたえている。また、VDAC2にはミトコンドリア標的ひょうてき配列はいれつふくまれており、タンパク質たんぱくしつはミトコンドリアのそとまく移行いこうする[14]。VDAC2はの2つのアイソフォームと比較ひかくして、11ざんもとながいN末端まったんゆうする[9]

機能きのう

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VDAC2はミトコンドリアポリンファミリーにぞくし、のVDACと同様どうよう生物せいぶつがくてき機能きのうつとかんがえられている。一般いっぱんてきにVDACは、ATPてい分子ぶんしイオンや代謝たいしゃ産物さんぶつのミトコンドリアがいまくえる輸送ゆそうおこなうことで細胞さいぼうのエネルギー代謝たいしゃ関与かんよしている[10][11]哺乳類ほにゅうるい心筋しんきん細胞さいぼうでは、VDAC2はしん収縮しゅうしゅくのためにミトコンドリアへのカルシウムイオンの輸送ゆそう促進そくしんする[10]

さらに、VDACはミトコンドリア透過とうかせい遷移せんいあな英語えいごばん(MPTP)の一部いちぶ形成けいせいし、それによってシトクロムc放出ほうしゅつ促進そくしんしてアポトーシスをもたらす[10][15]。VDACはBcl-2ファミリータンパク質たんぱくしつやキナーゼなどのアポトーシス促進そくしんまたはこうアポトーシスタンパクしつ相互そうご作用さようすることが観察かんさつされており、MPTPとは独立どくりつしてアポトーシスに寄与きよしている可能かのうせいもある[11][13][15]とくに、VDAC2はミトコンドリアをかいしたアポトーシスがおこなわれている細胞さいぼう保護ほごする効果こうかしめされており、さらには老化ろうかたいする保護ほご効果こうかゆうする可能かのうせいがある[16][17]

VDACは精子せいし形成けいせい精子せいし成熟せいじゅく運動うんどうせい受精じゅせいとも関連付かんれんづけられている[13]。VDACのすべてのアイソフォームは遍在へんざいてき発現はつげんしているが、VDAC2はおも精子せいしのouter dense fiber(ODF)に存在そんざいし、そこで精子せいしむち適切てきせつてと維持いじ促進そくしんしているとかんがえらえている[18][19]。また、VDAC2は精子せいしさきたいまく(acrosomal membrane)にも局在きょくざいし、そこでまくえるカルシウムイオンの輸送ゆそう媒介ばいかいしているとかんがえられている[20]

臨床りんしょうてき意義いぎ

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VDAC2は、ミトコンドリアがいまくアデニンヌクレオチドの通過つうか関与かんよする、ミトコンドリアまくチャネルのグループにぞくする。これらのチャネルは、ヘキソキナーゼグリセロールキナーゼ英語えいごばんのミトコンドリア結合けつごう部位ぶいとしても機能きのうする。VDACはアポトーシスシグナルの伝達でんたつ酸化さんかストレスに重要じゅうようであり、とくにミトコンドリアをかいした細胞さいぼう経路けいろ心筋しんきん細胞さいぼうのアポトーシスシグナルへの関与かんよ重要じゅうようである[21]プログラム細胞さいぼうは、後生ごしょう動物どうぶつにとって必要ひつよう不可欠ふかけつ遺伝いでんてき生化学せいかがくてき経路けいろであり、その経路けいろ完全かんぜんせい正常せいじょうはい発生はっせい正常せいじょう組織そしき恒常こうじょうせい維持いじ必要ひつようである。アポトーシスは必要ひつよう不可欠ふかけつ細胞さいぼう経路けいろたがいに密接みっせつ関連かんれんしていることがしめされている。こうした細胞さいぼう経路けいろ重要じゅうよう制御せいぎょてんあきらかになったことで、基本きほんてき生物せいぶつがく重要じゅうよう知見ちけんられただけでなく、疾患しっかんたいするあらたな治療ちりょうほうのための合理ごうりてき標的ひょうてきももたらされた。正常せいじょうはい発生はっせい過程かてい心臓しんぞう発作ほっさ脳卒中のうそっちゅうさいきょさい灌流障害しょうがいなどの細胞さいぼう損傷そんしょう、あるいはがん発生はっせい進行しんこう過程かていにおいて、アポトーシスをこした細胞さいぼうは、細胞さいぼう収縮しゅうしゅく細胞さいぼうまくのブレブの形成けいせいかく凝縮ぎょうしゅくDNAかく断片だんぺんなどの構造こうぞうてき変化へんかこす。その細胞さいぼうアポトーシス小体こていへと断片だんぺんし、しょく細胞さいぼうによってすみやかに除去じょきょされることで、炎症えんしょう応答おうとうふせがれる[22]

VDAC2タンパク質たんぱくしつは、きょプレコンディショニング英語えいごばんなど、きょさい灌流障害しょうがいたいするしん保護ほごへの関与かんよ示唆しさされている[23]活性かっせい酸素さんそしゅ(ROS)の大量たいりょう放出ほうしゅつ細胞さいぼう損傷そんしょうこすことがられているが、致死ちしてき短期間たんきかんきょしょうじるミトコンドリアからの中等ちゅうとう放出ほうしゅつきょプレコンディショニングのシグナル伝達でんたつ経路けいろにおける重要じゅうようなトリガーの役割やくわりたし、細胞さいぼう損傷そんしょう軽減けいげんをもたらす。VDAC2はこのROS放出ほうしゅつさいのミトコンドリア細胞さいぼう経路けいろのシグナル伝達でんたつ重要じゅうよう役割やくわりたし、アポトーシスシグナルと細胞さいぼう調節ちょうせつしていることが観察かんさつされている。

また、VDAC2ははい血管けっかん内皮ないひにおける内皮ないひがた一酸化いっさんか窒素ちっそ合成ごうせい酵素こうそ(eNOS)の主要しゅよう調節ちょうせつ因子いんしとしての役割やくわりつため、新生児しんせいじ罹患りかん死亡しぼうおおくをめる新生児しんせいじ遷延せんえんせいはいだか血圧けつあつしょう英語えいごばん(PPHN)と関連付かんれんづけられている。eNOSは生理せいりてき刺激しげき応答おうとうしたNOS活性かっせい調節ちょうせつになっており、はいへの適切てきせつ血液けつえき循環じゅんかんのためのNOさんせい維持いじ重要じゅうよう役割やくわりたしているとかんがえられている。このように、VDAC2ははい循環じゅんかんふか関係かんけいしており、はいだか血圧けつあつしょうなどの疾患しっかん治療ちりょうのための標的ひょうてきとなる可能かのうせいがある[11]

VDAC2はIBDウイルスに感染かんせんした細胞さいぼう検出けんしゅつしてアポトーシスを誘導ゆうどうするとかんがえられているように、免疫めんえき機能きのう関与かんよしている可能かのうせいがある。IBDウイルスはヒトにおけるHIVに相当そうとうする鳥類ちょうるいのウイルスで、鳥類ちょうるい免疫めんえきけい機能きのう低下ていかさせ、リンパ器官きかん致命ちめいてき損傷そんしょうあたえる場合ばあいもある。この過程かていかんする研究けんきゅうからは、VDAC2がウイルスタンパク質たんぱくしつV5と相互そうご作用さようして細胞さいぼう媒介ばいかいすることがしめされている[13]

相互そうご作用さよう

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VDAC2はつぎげる因子いんし相互そうご作用さようすることがしめされている。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000165637 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000021771 - Ensembl, May 2017
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関連かんれん文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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