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プログラム細胞さいぼう死し

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』

プログラム細胞さいぼう死し（プログラムさいぼうし、英えい: Programmed cell death, PCD）は多た細胞さいぼう生物せいぶつにおける不要ふような細胞さいぼうの計画けいかく的てき（予定よてい・プログラムされた）自殺じさつである。組織そしき傷害しょうがいなどで細胞さいぼう死しを起おこす壊死えしと異ことなり、一般いっぱんにはPCDは生物せいぶつの生命せいめいに利益りえきをもたらす調節ちょうせつされたプロセスである。PCDは植物しょくぶつ、動物どうぶつ、一部いちぶの原生げんせい生物せいぶつで正常せいじょうな組織そしき形成けいせいや病原びょうげん体たいなどによる異常いじょうへの対処たいしょとして働はたらく。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

プログラム細胞さいぼう死しは、細胞さいぼう死しを起おこしたときの形態けいたい学がく上じょうの違ちがいから次つぎの3つのタイプに分類ぶんるいされている：

タイプ1細胞さいぼう死し
アポトーシスによるもの。クロマチンが凝縮ぎょうしゅく（核かく濃縮のうしゅく）して細胞さいぼう核かくが断片だんぺん化かする（核かく崩壊ほうかい）という形態けいたい上じょうの特徴とくちょうを示しめす。動物どうぶつにおけるPCDの重要じゅうような一いち形式けいしきである。
タイプ2細胞さいぼう死し
オートファジーを伴ともなう細胞さいぼう死しである。細胞さいぼう質しつ内うちにオートファゴソームと呼よばれる小しょう胞が形成けいせいされるという形態けいたい上じょうの特徴とくちょうを示しめす。細胞さいぼう核かくの萎縮いしゅくが見みられるが、断片だんぺん化かはあまり見みられない[1][2]。
タイプ3細胞さいぼう死し
ネクローシス型かたのプログラム細胞さいぼう死しでネクロトーシス（またはネクロプトーシス）（英語えいご版ばん） と呼よばれる。細胞さいぼう内ない小しょう器官きかんや細胞さいぼう質しつ膜まくの膨化を形態けいたい上じょうの特徴とくちょうとする。
タイプ3細胞さいぼう死しを、リソソームに依存いぞんするかどうかの違ちがいによって3Aと3Bに分類ぶんるいすることもある（Clarkeによる1990年ねんの分類ぶんるい）

植物しょくぶつのPCDはオートファジー性せい細胞さいぼう死しに近ちかいが、植物しょくぶつと原生げんせい生物せいぶつで保存ほぞんされているPCDの共通きょうつう特徴とくちょうもある。

PCDの概念がいねんは1964年ねん（「アポトーシス」の語かたりができる8年ねん前まえ）昆虫こんちゅうの組織そしき発達はったつに関かんして用もちいられた。PCDはアポトーシスより一般いっぱん的てきな広ひろい概念がいねんとして用もちいられた。植物しょくぶつでも「アポトーシス」の語かたりを使つかうことがあるが、これは正確せいかくでない。

植物しょくぶつのPCD[編集へんしゅう]

維管束たば植物しょくぶつではPCDは発達はったつと形態けいたい維持いじにおいて重要じゅうような役割やくわりを担になっている。木部きべ（導管どうかん）は細胞さいぼう壁かべの肥厚ひこうとPCDによって形成けいせいされる。

植物しょくぶつのPCDは動物どうぶつと共通きょうつうした点てん（たとえばDNAの断片だんぺん化か）もあるが、導管どうかん形成けいせいでは液えき胞の崩壊ほうかいが核かくの分解ぶんかいの引金ひきがねとなるという点てんは特殊とくしゅである[3]。一方いっぽうヒマワリの細胞さいぼう質しつ雄ゆう性せい不ふ稔みのるミトコンドリアで、動物どうぶつと同様どうように重要じゅうような役割やくわりを担になうことが示唆しさされている[4]。

また植物しょくぶつではウイルスなどの病原びょうげん体たいを封ふうじ込こめる過程かていとして「過敏かびん感かん細胞さいぼう死し」がよく知しられている。これも液えき胞の崩壊ほうかいによって惹ひき起おこされるが、最近さいきん、反応はんのうの中心ちゅうしんとなる液えき胞のプロテアーゼ（動物どうぶつのカスパーゼ類似るいじの活性かっせいをもつが機能きのうは異ことなると考かんがえられる）が同定どうていされた[5]。

花粉かふんのPCDと自家じか不ふ和合わごう性せい
自家じか不ふ和合わごう性せいは自分じぶん自身じしんの花粉かふんで受精じゅせいできない現象げんしょうである。ヒナゲシの自家じか不ふ和合わごう性せいで雌蕊めしべのタンパク質たんぱくしつが自己じこの花粉かふんに花粉かふん管かん生長せいちょうの阻害そがいとPCDを起おこさせることが示しめされた[6]。

細胞さいぼう性せい粘ねば菌きんにおけるPCD[編集へんしゅう]

細胞さいぼう性せい粘ねば菌きん（原生げんせい生物せいぶつ）のDictyostelium discoideum（英語えいご版ばん） は、はじめはバクテリアを捕食ほしょくする単細胞たんさいぼうアメーバ状じょうだが、餌えさが少すくなくなると合体がったいしてナメクジ状じょうの偽にせ変形へんけい体たいになる。これはさらに茎くきを形成けいせいしその上うえに子こ実体じったいを形成けいせいして胞子ほうしを作つくる。茎くきは一種いっしゅのPCDを経へて死しんだ細胞さいぼうからなるが、このPCDはオートファジー性せい細胞さいぼう死しの性質せいしつ（小しょう胞の形成けいせい、クロマチンの凝縮ぎょうしゅく）を有ゆうする。ただしDNAの断片だんぺん化かは起おこらない。これは植物しょくぶつのPCDに似にている[7]。

引用いんよう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ Schwartz, L.M., S.W. Smith, M.E. Jones, and B.A. Osborne(1993). "Do all programmed cell deaths occur via apoptosis?" PNAS 90(3): 980-984.
  2. ^ Bursch W, Ellinger A, Gerner C, Fröhwein U, Schulte-Hermann R.(2000). "Programmed cell death (PCD). Apoptosis, autophagic PCD, or others?" Ann N Y Acad Sci 926:1-12.
  3. ^ Ito, J. and H. Fukuda(2002). "ZEN1 is a key enzyme in the degradation of nuclear DNA during programmed cell death of tracheary elements" Plant Cell 14: 3201-3211.
  4. ^ Balk, J. and C.J. Leaver(2001). "The PET1-CMS mitochondrial mutation in sunflower is associated with premature programmed cell death and cytochrome c release" Plant Cell 13: 1803-1818.
  5. ^ Hatsugai N, Kuroyanagi M, Yamada K, Meshi T, Tsuda S, Kondo M, Nishimura M, Hara-Nishimura I.(2004) "A plant vacuolar protease, VPE, mediates virus-induced hypersensitive cell death. Science 305: 855-858.
  6. ^ Thomas, S.G., and V.E. Franklin-Tong(2004). "Self-incompatibility triggers programmed cell death in Papaver pollen." Nature 429: 305-309.
  7. ^ Levraud, J.P. et al.(2003) "Dictyostelium cell death : early emergence and demise of highly polarized paddle cells" Journal of Cell Biology 160(7): 1105-1114.

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

医学いがく的てき側面そくめん
死亡しぼう率りつ
超ちょう常つね現象げんしょう
法的ほうてき側面そくめん
その他た
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