流離さすらう（読よみ）サスラウ

1. [ 1 ] 〘 自動詞じどうし ワ行くだり五ご（ハ四よん） 〙 ( 中世ちゅうせいには「さずらふ」とも )
   1. ① 身みを寄よせる所ところも定さだまった目的もくてきもなく、あちこちさまよい歩あるく。漂泊ひょうはくする。放浪ほうろうする。さまよう。さそらう。
      1. [初出しょしゅつの実例じつれい]「根ねの国くに、底そこの国くにに坐まします速はやさすらひめといふ神かみ、持もち佐須さす良りょう比ひ(サスラヒ)失うしなひてむ」(出典しゅってん：延喜えんぎ式しき（927）祝詞のりと)
      2. 「足あしなへの御ご病やまいにて、天てんの岩舟いわふねにて、漂泊ひょうはく(サスラ)ひ給きゅうへど」(出典しゅってん：歌舞伎かぶき・傾城けいせい飛馬ひうま始はじめ（1789）三さん段だん)
   2. ② 流罪るざい、左遷させんなどにあって、遠とおく離はなれた土地とちに行いく。島流しまながしになる。
      1. [初出しょしゅつの実例じつれい]「謫 サズラフ 謫居たっきょ(タクキョ)也」(出典しゅってん：いろは字じ（1559）)
      2. 「われ過か(あやまち)なくて左遷させん(サスラフ)こと、彼かれ(かの)妬婦が奸計かんけいによれりとしりながら」(出典しゅってん：読本とくほん・新しん累るい解脱げだつ物語ものがたり（1807）四よん)
   3. ③ 気持きもちなどが離はなれる。また、気持きもちなどが定さだまらない。
      1. [初出しょしゅつの実例じつれい]「上下じょうげの心しんを離はなれ(サスラフ)賤妾愚ぐ忠ちゅうなりとも能のうく強敵きょうてきを敗はい(やぶ)らむ」(出典しゅってん：大だい唐から西域せいいき記き長ちょう寛ひろし元年がんねん点てん（1163）七なな)
2. [ 2 ] 〘 自動詞じどうし ハ行ぎょう下か二に段だん活用かつよう 〙 ( 室町むろまち時代じだい頃ごろからヤ行ぎょうにも活用かつようした )
   1. ① [ 一いち ]①に同おなじ。
      1. [初出しょしゅつの実例じつれい]「百姓ひゃくしょう、流離りゅうり(サスラヘ)ぬ」(出典しゅってん：日本書紀にほんしょき（720）崇たかし神かみ六ろく年ねん（寛文ひろふみ版ばん訓くん）)
      2. 「頼たのみ来らい(こ)し我わが心しんにも捨すてられて世よにさすらふる身みを厭いやふかな〈藤原家隆ふじわらのいえたか〉」(出典しゅってん：玉たま葉は和歌集わかしゅう（1312）雑ざつ五ご・二に五ご一いち九きゅう)
   2. ② [ 一いち ]②に同おなじ。

流離さすらうの語ご誌し

( 1 )[ 一いち ]②の挙例きょれいの「いろは字じ」のほか、「日にち葡辞書しょ」に「サスラエ、ユル、エタ、または、sazuraye(サズラエ)」とあるように、中世ちゅうせいには第だい二に音節おんせつが濁音だくおんの語形ごけいも見みられた。
( 2 )活用かつように関かんしては、古ふるくから四よん段だんと下した二に段だんが拮抗きっこうしていたが、中世ちゅうせい以降いこうは四よん段だんが日常にちじょう口頭こうとう語ご的てき、下した二に段だんが雅語がご的てきといった位相いそうの違ちがいも見みられる。近代きんだい以降いこうは四よん段だん活用かつようが優勢ゆうせいとなった。
( 3 )「和わ英語えいご林りん集成しゅうせい（初版しょはん）」には「Saszraye, ru, ta サスラヘル」と下した一いち段だん活用かつようがあげてあり、文書ぶんしょ語ごまたは廃すたれた語かたりを表あらわす記号きごうが付ふされている。

1. ( 「さすらう（流離りゅうり）」の変化へんかした語かたり )
2. [ 1 ] 〘 自動詞じどうし ハ行ぎょう四よん段だん活用かつよう 〙 あちこちさまよい歩あるく。漂泊ひょうはくする。さすらう。
   1. [初出しょしゅつの実例じつれい]「一いちの書しょ先さき有あり。俳佪(サソラフ)こと帳ちょう望もちす」(出典しゅってん：石山寺いしやまでら本大もとだい唐から西域せいいき記き院政いんせい期き点てん（1164‐90頃ごろ）八はち)
3. [ 2 ] 〘 自動詞じどうし ハ行ぎょう下か二に段だん活用かつよう 〙 [ 一いち ]に同おなじ。
   1. [初出しょしゅつの実例じつれい]「よにいふ甲斐かいなくなり、さそらへん時ときにを」(出典しゅってん：宇津うつ保たもつ物語ものがたり（970‐999頃ごろ）楼ろう上下じょうげ)