矢野やの竜渓りゅうけい（読よみ）ヤノリュウケイ

ジャーナリスト，小説しょうせつ家か，政治せいじ家か。本名ほんな文雄ふみお。大分おおいた県けん出身しゅっしん。慶応義塾けいおうぎじゅく卒業そつぎょう後ご，同どう大阪おおさか分校ぶんこうなどの校長こうちょうを勤つとめ，1876年ねん《郵便ゆうびん報知ほうち新聞しんぶん》に副ふく主筆しゅひつとして入社にゅうしゃした。78年ねん大蔵省おおくらしょうに出仕しゅっししたが，明治めいじ14年ねんの政変せいへんによる大隈おおくま重信しげのぶ下野げやとともに《郵便ゆうびん報知ほうち新聞しんぶん》に戻もどり，社長しゃちょうとなる。改あらため進しん党とうの結成けっせいに参画さんかく，主導しゅどう的てき役割やくわりを果はたし，その幹部かんぶとなった矢野やのは同紙どうしを改あらため進しん党とう機関きかん紙しとし，政府せいふ系けいや自由党じゆうとう系けいの新聞しんぶんと対抗たいこうした論陣ろんじんを張はった。また《経国けいこく美談びだん》などの政治せいじ小説しょうせつを同紙どうしに連載れんさいし，文学ぶんがくを通つうじての民権みんけん思想しそうの民衆みんしゅうへの浸透しんとうを図はかった。84年ねん5月がつから86年ねん9月がつまで渡わたり欧おう。帰国きこく後ご，イギリス新聞しんぶん界かいの見聞けんぶんをもとに同紙どうしの改革かいかくを行おこない，みずからも海外かいがい雄飛ゆうひ譚たん《浮城うきしろ物語ものがたり》を執筆しっぴつ，好評こうひょうを得えた。しかし民権みんけん運動うんどうの衰おとろえにつれて同紙どうしは衰退すいたいし，矢野やのも政界せいかいに望のぞみを断たち，同紙どうしを退しりぞいて90年ねん宮みや内省ないせい式部しきぶ官かんとなる。97年ねん，特命とくめい全権ぜんけん公使こうしとなって，清国きよくにに2年ねん余あまり駐在ちゅうざいした。1902年ねん，階級かいきゅう闘争とうそうを予見よけん・警世けいせいし，社会しゃかい改革かいかくの必要ひつようを説とく《新しん社会しゃかい》を上梓じょうしした。06年ねんには大阪おおさか毎日新聞社まいにちしんぶんしゃの相談役そうだんやくとなり，24年ねんには同社どうしゃ副ふく社長しゃちょうに就任しゅうにんした。
執筆しっぴつ者しゃ：山本やまもと 武利たけとし