過料かりょう（読よみ）カリョウ

江戸えど時代じだいの刑罰けいばつのうちの一種いっしゅで，比較的ひかくてき軽かるい犯罪はんざいに対たいして科かされた財産ざいさん刑けい。中世ちゅうせいに淵源えんげんをもち，幕府ばくふ法ほう，諸しょ藩はん法ほうにみられ，また村むら法ほう，仲間なかま法ほうなどの民衆みんしゅう法ほうにも制裁せいさいとして存在そんざいした。幕府ばくふ刑法けいほうにおいては，1718年ねん（享とおる保ほ3）以降いこう体系たいけい化かが進すすみ，過料かりょう（3貫かん文ぶんまたは5貫かん文ぶん），重おもき過料かりょう（10貫かん文ぶん），身上しんじょう（しんしよう）に応おうじ過料かりょう（財産ざいさんにしたがって納付のうふ額がくが定さだめられる），小間こま（こま）に応おうじ過料かりょう（家並いえなみに課かし，間口まぐちに応おうじて割わり付つける），村むら高だかに応おうじ過料かりょう（村むらに対たいし，石高こくだかに応おうじて課かする）などに整理せいりされた。いずれも庶民しょみんに対たいする刑罰けいばつとして，賭博とばく罪ざい，隠かくれ売女ばいた（かくしばいじよ）をはじめ各種かくしゅの犯罪はんざいに広ひろく適用てきようされ，また過料かりょうのうえ戸ど〆（とじめ）など二に重じゅうしおきとされることも多おおい。3日間にちかんの納おさめ期限きげんを過すぎると手鎖てじょう（てじよう）で代かえられ，逆ぎゃくに手鎖てじょう刑けいも過料かりょうで代替だいたいしえた。1870年ねん（明治めいじ3）の新しん律りつ綱領こうりょうは律令りつりょうの贖罪しょくざい制度せいどを採用さいようしたが，西洋せいよう法ほうの継受けいじゅによって，今日きょうでは刑罰けいばつとしての罰金ばっきんおよび科料かりょうと，秩序ちつじょ罰ばつ，執行しっこう罰ばつまたは懲戒ちょうかい罰ばつとしての過料かりょうとが分離ぶんりしている。
→過怠かたい（かたい）
執筆しっぴつ者しゃ：加藤かとう 英明ひであき

現行げんこう法ほう

現行げんこう法ほう上じょう，過料かりょうと称しょうされるものはつぎの3種類しゅるいに区別くべつされ，それぞれ性質せいしつを異ことにする。（1）秩序ちつじょ罰ばつとしての過料かりょう　民事みんじ法ほう上じょう，訴訟そしょう法ほう上じょう，行政ぎょうせい法ほう上じょうの義務ぎむ違反いはんについて制裁せいさいとして科かされる金銭きんせん罰ばつであり，罰金ばっきん・科料かりょうのような刑罰けいばつや，道路どうろ交通こうつう法ほうで定さだめる反則はんそく金きんと区別くべつされる（民法みんぽう84条じょう，商法しょうほう22条じょう，住民じゅうみん基本きほん台帳だいちょう法ほう44条じょう等とう）。例外れいがいはあるが，刑罰けいばつを科かすには及およばない程度ていどの単純たんじゅんな義務ぎむ懈怠けたい（けたい）（たとえば届出とどけで義務ぎむを怠おこたるなど）に対たいして科かされる場合ばあいが多おおい。金額きんがくの法定ほうてい最高さいこう限げんはさまざまである。これらの過料かりょうは，他たの法令ほうれいに特別とくべつな規定きていがある場合ばあいを除のぞいて，非ひ訟事件じけん手続てつづき法ほう206条じょう以下いかに定さだめるところにしたがって，裁判所さいばんしょによって科かせられる。地方ちほう公共こうきょう団体だんたいが科かする過料かりょう（地方ちほう自治じち法ほう15条じょう2項こう等とう）は，地方ちほう公共こうきょう団体だんたいの長ちょうが科かし（149条じょう3号ごう），過料かりょうの処分しょぶんに不服ふふくのある者ものには，不服ふふく申立もうしたてや行政ぎょうせい訴訟そしょうが認みとめられる。（2）懲戒ちょうかい罰ばつとしての過料かりょう　一定いっていの職業しょくぎょうにある者ものが職務しょくむ上じょうの義務ぎむに違反いはんした場合ばあいに，制裁せいさいとして科かせられる金銭きんせん罰ばつ（裁判官さいばんかん分限ぶげん法ほう2条じょう，公証こうしょう人じん法ほう80条じょう等とう）。（3）執行しっこう罰ばつとしての過料かりょう　行政ぎょうせい上じょうの義務ぎむの履行りこうを怠おこたっている者ものに対たいして，行政ぎょうせい庁ちょうがその義務ぎむの履行りこうを促うながすために科かする金銭きんせん罰ばつ。行政ぎょうせい上じょうの強制きょうせい執行しっこうの一いち手段しゅだんである。現在げんざいは，砂防さぼう法ほう36条じょうにその唯一ゆいいつの例れいをみる。義務ぎむの履行りこう期限きげんを示しめしてその期限きげんまでに履行りこうしないときは過料かりょうを科かする旨むねを予告よこくする。義務ぎむが履行りこうされるまで反復はんぷくして科かすることができる。
執筆しっぴつ者しゃ：広岡ひろおか 隆たかし