茂木もき欣一きんいち（東京とうきょうスカパラダイスオーケストラ）の耳みみがとろける5曲きょく

楽曲がっきょくのリズムやノリを作つくり出だすうえでの屋台骨やたいぼねとして非常ひじょうに重要じゅうようなドラムだけど、ひと叩はたきで楽曲がっきょくの世界せかい観かんに引ひき込こむイントロや、サビ前まえにアクセントを付つけるフィルインも聴ききどころの1つ。そこで、この連載れんさいではドラマーとして活躍かつやくするミュージシャンに、「この部分ぶぶんのドラムをぜひ聴きいてほしい！」と思おもう曲きょくを教おしえてもらいます。第だい6回かいは、“NO BORDER”をテーマに掲かかげて世界せかい31カ国かこくでの公演こうえんを果はたし、イギリス「Glastonbury Festival」、アメリカ「Coachella Valley Music and Arts Festival」、メキシコ「Vive Latino」などの音楽おんがくフェスにも出演しゅつえんしている東京とうきょうスカパラダイスオーケストラの茂木もき欣一きんいちさんが登場とうじょう。初はじめて衝撃しょうげきを受うけた曲きょくやフィッシュマンズの演奏えんそうに影響えいきょうを与あたえた楽曲がっきょくについて教おしえてもらいました。

構成こうせい / 丸澤まるさわ嘉明よしあき

ドラムフレーズが好すきな曲きょくとその理由りゆう

The Knack「My Sharona」

幼おさない頃ころからラジオでヒットチャートを聴きいてきた僕ぼくにとって、最初さいしょに出会であった衝撃しょうげきのドラムイントロといったら間違まちがいなくこれ！ これは発明はつめいですね。
人々ひとびとに「あっ、あの曲きょくだ」と言いわせるのに1秒びょうもかからない。反復はんぷくするドラムパターンに続つづいてベース、そしてギターが同おなじ譜ふ割わりでリフを弾ひいていく流ながれに、当時とうじ小学校しょうがっこう6年生ねんせいの僕ぼくはワクワク！
5週しゅう連続れんぞく全米ぜんべいNo.1をゲットしたThe Knackのデビュー曲きょく。
この1979年ねんにCheap Trick、Queen、The Policeといった、僕ぼくの心しんを揺ゆさぶる特別とくべつなバンドたちに一気いっきに出会であったことによって教室きょうしつの机つくえを指ゆびドラムで叩はたきまくる日々ひびが始はじまるのでした。

The Who「My Generation」

中学ちゅうがく3年生ねんせいの夏なつに、当時とうじの親友しんゆうである橋本はしもとくんの家いえで初はじめて聴きいたThe Who。
爆発ばくはつ的てき衝動しょうどうが詰つまりまくったこの楽曲がっきょくは、10代前半ぜんはんの僕ぼくの心しんを完璧かんぺきにとらえました。
キース・ムーンのドラミングなくして、この曲きょくがここまで永遠えいえんなものになったであろうか？曲きょくに命いのちを吹ふき込こめむってこういうことだなって感かんじました。のちに映像えいぞうを観みて「ドラム破壊はかいしちゃうのか～！」って、これまたビックリ。
この曲きょくのスタジオ録音ろくおんは、ぜひオリジナル・モノ・バージョンで聴きいてほしい。
大好だいすきなフィルインは1分ふん30秒びょうあたりで繰くり出だされる6連れんのたたみ込こみ。
ん～、これは僕ぼくにとって決定的けっていてき一いち打だだったなあ。

The Wailers「I Shot The Sheriff」

ボブ・マーリーの存在そんざいを教おしえてくれたのは、大学だいがくに入学にゅうがくしてフィッシュマンズを一緒いっしょに結成けっせいすることになった佐藤さとう伸治しんじでした。それまでヒットチャートの音楽おんがくとロックを中心ちゅうしんに聴きいてきた僕ぼくにとってスピーカーから流ながれて来きたサウンドはこれまでとはまったく違ちがった未知みちの匂においでした。
キック、スネア、ハイハット、「えっ、こんな使つかい方かたがあるのか！」。楽曲がっきょくがエンディングに向むかうラスト30秒びょうあたりのドラムとベースのグルーヴのディテールによ～く耳みみをすまそう。
緊張きんちょう感かんに満みちたとんでもなくカッコいいうねりがここにある。
世界せかいは広ひろい、そのことを痛感つうかんした10代の終おわりでした。

The Meters「Cissy Strut」

うおーっ！ なんて歌うたうドラムなんだ。
こんなパターン、一体いったいどうやって生うみ出だしたんだろう？ 20歳さい過すぎの頃ころ、The J.B.'sやThe M.G.'s、そしてSly & the Family Stoneに夢中むちゅうになる中なか、この曲きょくが収録しゅうろくされたThe Metersのベスト盤ばんを、僕ぼくは毎日まいにちのように聴きいていました。リズムがハネたりハネなかったり、アクセントの置おき方かたがユニークだったり。
フィッシュマンズの楽曲がっきょく「あの娘むすめが眠ねむってる」（1991年ねんリリースの「Corduroy's Mood」収録しゅうろく）のドラミングは、このジョー“ジガブー”モデリストの演奏えんそうに大おおきく影響えいきょうを受うけたものです。自分じぶんのドラミングに悩なやんだりするときは、必かならずと言いっていいほど彼かれらの音楽おんがくを聴きいてリフレッシュしています。

カエターノ・ヴェローゾ「Os Passistas」

僕ぼくの最大さいだいの憧あこがれであるブラジルのアーティスト、カエターノ・ヴェローゾ。
彼かれが90年代ねんだいにリリースした「Tropicalia 2」と「Livro」は最高さいこうの芸術げいじゅつ作品さくひん！ 僕ぼくのバイブルです。
この楽曲がっきょくは、さまざまなパーカッションが織おりなすあまりにも美うつくしいアンサンブルに耳みみがとろけます。いつかはこんな響ひびきが生うみ出だされるブラジルに行いきたいと思おもいを募つのらせ、ついに2015年ねん、初はじめてリオの地ちに降おり立たったときの感動かんどうを、僕ぼくはきっと一生いっしょう忘わすれないでしょう。
街まちを颯爽さっそうと歩あるく人ひとたち、広場ひろばでサンバを踊おどる人ひとたち、海岸かいがん沿ぞいに吹ふいてる風かぜの匂におい……それらすべてがこの曲きょくが僕ぼくにもたらしたブラジルのイメージをまったく裏切うらぎらないものだったのです！

自身じしんでドラムフレーズをプレイする際さいに意識いしきしていること

「そのフレーズを口くちずさめるかどうか」というのは常つねに大切たいせつにしています。
シンプルで強つよく、またそのフレーズが楽曲がっきょくに対たいして必然ひつぜん性せいがあるものになっているかどうか。
叩たたいていて快感かいかんかどうか、リスナーとして聴きいていて快感かいかんかどうか。
テンポ設定せっていもメチャメチャ大事だいじですね。
楽曲がっきょくをどれだけ宝物ほうもつにできるかの鍵かぎはドラマーが握にぎってる!!

自身じしんのプレイスタイルに影響えいきょうを与あたえたドラマー

昨年さくねんからMeinl（マイネル）のシンバルを使用しようさせてもらっているのですが、マイネルのTwitterで紹介しょうかいされているドラマーたちの試ためし奏そう動画どうががとても興味深きょうみぶかいです。
その中なかで登場とうじょうするイタリア人じんドラマー、Gianluca Pelleritoの演奏えんそうがもの凄すごい!!
僕ぼくと同おなじオープンハンドのプレイスタイルなんだけど、テクニックもグルーヴも半端はんぱなく異い次元じげんなので、ぜひご覧らんになってみてください。

茂木もき欣一きんいち

1967年ねん生うまれ。大学だいがく在学ざいがく中ちゅうの1987年ねんに佐藤さとう伸治しんじ、小嶋こじま謙介けんすけとフィッシュマンズを結成けっせい。1991年ねんにメジャーデビューを果はたし、「空中くうちゅうキャンプ」「LONG SEASON」「宇宙うちゅう 日本にっぽん 世田谷せたがや」などを発表はっぴょうする。1999年ねんに佐藤さとうが急逝きゅうせいしたためフィッシュマンズの活動かつどうは停止ていしを余儀よぎなくされ、その後ご、2001年ねんに東京とうきょうスカパラダイスオーケストラに正式せいしき加入かにゅう。2005年ねんにフィッシュマンズの活動かつどうを再開さいかいさせたほか、2010年ねんに加藤かとう隆志たかし（東京とうきょうスカパラダイスオーケストラ）、柏原かしわばら譲ゆずる（フィッシュマンズ / Polaris）とともにSo many tearsを結成けっせいしたり、2018年ねんにシシド・カフカ主宰しゅさいでスタートしたリズムプロジェクトel tempoに参加さんかしたりと精力せいりょく的てきに活動かつどうしている。2023年ねん3月がつには原はら広明ひろあき、tatsu（LA-PPISCH）、大森おおもりはじめ（東京とうきょうスカパラダイスオーケストラ）、WAY WAVEとTHE GOOD KIDSを結成けっせいした。
茂木もき欣一きんいち (@kin_drums) / Twitter
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