春はるらんまん！中村なかむら米吉よねきち、ゆかりのカワイイ“蝶ちょう”グッズを紹介しょうかい

題字だいじ：中村なかむら米吉よねきち

はかなくも美うつくしく、なにより可愛かわいらしく羽はばたくのが“蝶ちょう”

“春はる”

なんとも心地ここちの良よい響ひびきです。

穏おだやかな日差ひざしに気持きもちいい風ふうが吹ふき、どこかほんわかとした香かおりが漂ただよい始はじめ、パッと咲さき、はかなく散ちる桜さくらが世界せかいを彩いろどる、魅力みりょく的てきな季き節ぶしです。

気候きこう変動へんどうにより、“四季しき”が“二季にき”になりつつある日本にっぽんでは、“春はる”の心地ここち良よさすらも、ほんの一時いちじのはかなさを持もつようになりました。

そんな春はるにはかなくも美うつくしく、なにより可愛かわいらしく羽はばたくのが“蝶ちょう”。
私わたしの歌舞伎かぶき役者やくしゃとしての家紋かもんが「揚羽蝶あげはちょう」ですので、“蝶ちょう”に対たいしては大変たいへんな思おもい入いれがあります。
歌舞伎かぶき役者やくしゃにとって家紋かもんは非常ひじょうに大切たいせつなもので、ありとあらゆるものに使つかうんです。
例たとえば楽屋がくやのれん！

今月こんげつ、父ちちが掛かけているのれんにも大おおきく「揚羽蝶あげはちょう」が染そめ抜ぬかれていますね。
ちなみに、我わが家やの家紋かもんの「揚羽蝶あげはちょう」はよくある形かたちと違ちがって、少すこし丸まるみを帯おびているのが特徴とくちょう。
普通ふつうにインターネットで検索けんさくしたり、家紋かもん帳ちょうなどで見みますと羽はねがもう少すこしとんがってると言いうか、立たっている印象いんしょうの物ものが出でてくるのですが、そちらは播磨屋はりまやでは門弟もんていが使つかう物ものなんだそうです。
曽そ祖父そふのお弟子でしさんだった時蝶ときちょうさんが昔むかし、教おしえてくれました。

さあ、のれんに話はなしを戻もどしましょう。
家紋かもんの周まわりには刺繍ししゅうの蝶々ちょうちょうが飛とんでいます。これは父ちちの長年ながねんの友人ゆうじんでもある京きょう繡作家かの長ちょう艸そうこう敏明としあきさんの手てによるもの。
父ちちの日本にっぽん芸術げいじゅつ院いん賞しょう受賞じゅしょうの記念きねんにいただいたものです。

色いろとりどりの蝶ちょうたちが鮮あざやかで可愛かわいらしい、素敵すてきなのれんです。

こんな風ふうに、家紋かもんそのものだけではなく、そのモチーフとなった物ものを柄えとして愛用あいようすることも多おおいんです。

私わたしが楽屋がくやで化粧けしょうをするときに使つかっている手鏡てかがみもその1つ。

これは巡業じゅんぎょう中ちゅうに金沢かなざわで出逢であい、一目惚ひとめぼれして購入こうにゅうした物もの。
ありがたいことに蝶ちょうのモチーフの物ものは世よの中なかに結構けっこうありますから、見みかけて気きに入いってはつい迎むかえしてしまうのです。

その中なかには遥はるか異国いこくの地ちからお迎むかえした物ものも。
昨年さくねん末まつに家族かぞくでラオスに旅行りょこうをした際さいに夜よる市しで見みかけた石いし細工ざいくの小しょう箱はこ。

同おなじような品物しなものが並ならぶ中なか、たった1つだけ趣おもむきが違ちがうこの箱はこが私わたしを呼よび止とめました。
赤あかというよりは紅色こうしょくとでもいうような、濃こい赤あかに蝶ちょうを大おおきくあしらったこの意匠いしょうは、まるで赤あか姫ひめの着物きものを切きり取とったかのようです。
小ちいさくて、何なにを入いれたものか悩なやんでるところですが、何なにか大切たいせつな小ちいさな物ものを入いれて愛用あいようしたいと思おもっています。

愛用あいようの品しなの中なかには蝶ちょうのブローチも。

蝶ちょうの装飾そうしょく品ひんというと、どうしてもゴテゴテしがちなところ、羽はねを閉とじた蝶ちょうに地ち模様もようのはいった、一見いっけん“蝶ちょう”とは分わからないさりげなさが気きに入いっています。

ご紹介しょうかいしたように、家紋かもんである、という1つの理由りゆうから私わたしと蝶ちょうは切きっても切きれない関係かんけい性せいを築きずいています。
その縁えんは本当ほんとうに古ふるく、初舞台はつぶたいすぐの小学生しょうがくせいの頃ころから。
舞台ぶたいで華はなやかな蝶ちょうを演えんじたのです。

「鏡かがみ獅子じし」の胡蝶こちょうとかではなく、怪獣かいじゅう“モスラ”（笑）。
小学校しょうがっこうの「劇げきの会かい」で勤つとめた思おもい出でのお役やくです。
カップラーメンをウルトラマンに薦すすめて、3分ふん待またせてやっつける……。

という、とても大切たいせつなお役やくでした。

ぜひ再演さいえんしたいと思おもいます。
お楽たのしみに！（笑）

プロフィール

中村なかむら米吉よねきち（ナカムラヨネキチ）

1993年ねん、東京とうきょう都と生うまれ。播磨屋はりまや。中村なかむら歌六かろくの長男ちょうなん。2000年ねんに中村なかむら米吉よねきちの名なを襲名しゅうめいして初はつ舞台ぶたい。2011年ねんから女方おざかたを志こころざし、「鬼おに一いち法眼ほうげん三さん略りゃく巻まき 菊きく畑はたけ」で皆みな鶴づる姫ひめ、「与あずか話はなし情じょう浮名うきな横よこ櫛くし」でお富とみ、「松浦まつうらの太鼓たいこ」でお縫ぬえ、「仮名かめい手本てほん忠臣蔵ちゅうしんぐら 七なな段だん目め」で遊女ゆうじょお軽けい、「絵本えもと太ふとし功こう記き」で初はつ菊きくなどを勤つとめる。またアメリカ・ラスベガスで行おこなわれた歌舞伎かぶき興行こうぎょうでは、2015年ねんに「鯉こいつかみ」小しょう桜さくら姫ひめ役やく、2016年ねんに新作しんさく歌舞伎かぶき「獅子王ししおう」白しろ縫ぬい姫ひめ役やくで出演しゅつえん。2015年ねんには「鳴神なるかみ」の雲くもの絶間たえま姫ひめ役やくの演技えんぎで十じゅう三さん夜会やかい奨励しょうれい賞しょう、2021年ねんには第だい42回かい松尾まつお芸能げいのう賞しょうで新人しんじん賞しょうを受賞じゅしょうした。2022年ねん7月がつに上演じょうえんされた「風ふうの谷たにのナウシカ 上じょうの巻まき ―白しろき魔女まじょの戦記せんき―」、2022年ねん12月から昨年さくねん1月がつにかけて上演じょうえんされた「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務つとめ、昨年さくねん3・4月がつに上演じょうえんされた「新作しんさく歌舞伎かぶき ファイナルファンタジーX」、今年ことし2・3月がつに行おこなわれたスーパー歌舞伎かぶき「三さん代だい猿之助えんのすけ四よん十じゅう八はち撰せんの内うち『ヤマトタケル』」東京とうきょう公演こうえんでは、それぞれヒロイン役やくを勤つとめた。5月には歌舞伎座かぶきざ「團だん菊きく祭さい五ご月がつ大だい歌舞伎かぶき」夜よるの部ぶ「『伽羅きゃら先代せんだい萩はぎ』御殿ごてん」で沖おきの井い、6月がつには歌舞伎座かぶきざ「六ろく月がつ大だい歌舞伎かぶき」昼ひるの部ぶ「上うえ州しゅう土産みやげ百ひゃく両りょう首くび」で宇兵衛うへえ娘むすめおそで、「『義経よしつね千本せんぼん桜さくら』所作事しょさごと 時鳥ほととぎす花はな有里あり」で白拍子しらびょうし園原そのはら、夜よるの部ぶ「『南総里見八犬伝なんそうさとみはっけんでん』円えん塚山つかやまの場ば」で犬塚いぬづか信乃しのを勤つとめる。また10月がつには「ヤマトタケル」福岡ふくおか公演こうえんに出演しゅつえんし、兄あに橘たちばな姫ひめ / 弟おとうと橘たちばな姫ひめ、みやず姫ひめを中村なかむら壱太郎かずたろうと回かい替かわりで演えんじる。