文学ぶんがくを愛あいし苦悩くのうする小説しょうせつ家かの行ゆく末すえは？ゴツプロ！版ばん「無頼ぶらいの女房にょうぼう」本日ほんじつ開幕かいまく

「ゴツプロ！ 第だい9回かい公演こうえん『無頼ぶらいの女房にょうぼう』」が、本日ほんじつ6月がつ6日にちに東京とうきょう・本多劇場ほんだげきじょうで開幕かいまくする。これに先駆さきがけ、昨日きのう5日にちにゲネプロが行おこなわれた。

2002年ねんに劇団げきだん道学どうがく先生せんせいで初演しょえんされた「無頼ぶらいの女房にょうぼう」は、2019年ねんに死去しきょした劇団げきだん道学どうがく先生せんせいの中島なかじま淳彦あつひこによる代表だいひょう作さくの1つ。劇団げきだん道学どうがく先生せんせいの青山あおやま勝まさるが演出えんしゅつする今回こんかいのゴツプロ！版はんには、ゴツプロ！メンバーの塚原つかはら大助だいすけ、浜谷はまや康幸やすゆき、佐藤さとう正和まさかず、泉いずみ知とも束たば、渡邊わたなべ聡さとし、44北川きたがわのほか、劇団げきだん道学どうがく先生せんせいのかんのひとみ、浅野あさの令子れいこ、土屋つちや佑たすく壱いち、文学ぶんがく座ざの鹿野かの真央まお、前田まえだ隆成たかなり、劇団げきだんだるま座ざの剣持けんもち直明なおあき、久保くぼ酎吉が出演しゅつえんする。中島なかじまの作品さくひんに多数たすう参加さんかしてきた青山あおやまだが、「無頼ぶらいの女房にょうぼう」を演出えんしゅつするのは今回こんかいが初はじめて。

「無頼ぶらいの女房にょうぼう」で描えがかれるのは、小説しょうせつ家かの坂口さかぐち安吾あんごとその妻つま・三さん千せん代だいをモデルにした塚口つかぐち圭吾けいご・やす代だい夫妻ふさいを軸じくにした物語ものがたり。本多劇場ほんだげきじょうのステージ上じょうには、戦後せんご間あいだもない頃ころに圭吾けいごたちが暮くらしていた、古ふるめかしくも、豪勢ごうせいな木造もくぞうの邸宅ていたくが鎮座ちんざしている。舞台ぶたい下手へたに配置はいちされた玄関げんかんからは塚口つかぐち家かを訪おとずれる人々ひとびとがひっきりなしに出入でいりし、彼かれらは舞台ぶたい中央ちゅうおうのリビングへ来きては、圭吾けいごと彼かれの大だい好物こうぶつである酒さけを飲のみながら会話かいわを交かわす。リビング横よこには2階かいへと続つづく階段かいだんがあり、舞台ぶたい奥おくに設置せっちされた窓まどからはニワトリが住すむ庭にわが見みえる。

酒さけと薬物やくぶつに溺おぼれ、精神せいしんが高揚こうようした圭吾けいごは、ことあるごとに2階かいから庭にわへ飛とび降おり、鼻血はなぢを出だしながらリビングへ戻もどって来くる。その姿すがたを周囲しゅういの人々ひとびとが心配しんぱいそうに見守みまもるというのが、「無頼ぶらいの女房にょうぼう」の劇げき中ちゅうで繰くり返かえされる印象いんしょう的てきなシーンだ。

圭吾けいご役やくの塚原つかはらは、丈たけの長ながい赤あかいはんてんをまとい、丸まるめがねをかけ、文豪ぶんごう然しかとした佇たたずまいで登場とうじょう。傍若無人ぼうじゃくぶじんな振ふる舞まいをしながらも、実じつは繊細せんさいな圭吾けいごの心情しんじょうの揺ゆれ動うごきを、塚原つかはらは表情ひょうじょうの変化へんか一ひとつひとつににじませながら表現ひょうげんした。

浅野あさのが演えんじるやす代だいは、普段ふだんは大だいらかであっけらかんとした性格せいかくの人物じんぶつ。一方いっぽうで重要じゅうような決断けつだんを下くだす際さいには、圭吾けいごをしのぐような破天荒はてんこうさを発揮はっきし、猪突猛進ちょとつもうしんする一いち面めんもある。そんなやす代だいを、浅野あさのはかわいらしく、そして胆力たんりょくのある女性じょせいとして立たち上あげた。

絶妙ぜつみょうなバランスで成なり立たっている塚口つかぐち夫妻ふさいを囲かこむのは、圭吾けいごといがみ合あうニヒルな小説しょうせつ家か・豊臣とよとみ治おさむ（土屋つちや）や、塚口つかぐち家かに集あつまる人々ひとびとの橋渡はしわたし役やくを担になう小説しょうせつ家かの谷たに雄一ゆういち（久保くぼ）といった個性こせい豊ゆたかなキャラクターたち。文学ぶんがくを心しんから敬愛けいあいするが故ゆえに苦悩くのうする圭吾けいごや豊臣とよとみら作家さっか陣じんのセリフには、自身じしんも作家さっかである中島なかじまが心血しんけつを注そそいで執筆しっぴつした思おもいが表あらわれている。そんな、圭吾けいごら作家さっかたちが破滅はめつへ向むかう様子ようすを描えがくシリアスな場面ばめんがありつつ、中島なかじま作品さくひんらしいユーモアたっぷりなシーンも随所ずいしょにちりばめられている。中なかでも佐藤さとう、泉いずみ、渡邊わたなべ扮ふんする圭吾けいごの担当たんとう編集へんしゅう者しゃたちや、かんの演えんじる女中じょちゅうの多喜子たきこらがテンポの良よい会話かいわを繰くり広ひろげ、物語ものがたりを盛もり上あげた。

開幕かいまくに際さいし、ゴツプロ！主宰しゅさいの塚原つかはらは「初演しょえんから22年ねん経たった今いまでも全まったく色褪いろあせない中島なかじま淳彦あつひこさんの傑作けっさくです」「何なにが文学ぶんがくだ！ 物書ものかきなんてみんな変人へんじんだ！となかなか理解りかいし難がたい作家さっかたちの破天荒はてんこうな日常にちじょうを、役者やくしゃたちの熱量ねつりょうとユーモアで、観みるものを笑わらわせます。良よいじゃないかだらしながなくて、良よいじゃないか滑稽こっけいで、一生懸命いっしょうけんめいに生いきる人間にんげん達たちが愛あいおしい。老若男女ろうにゃくなんにょ問とわず楽たのしんで頂いただける作品さくひんとなりました。皆様みなさまのご来場らいじょうを心しんよりお待まちしてます」とコメントした。

上演じょうえん時間じかんは休憩きゅうけいなしの約やく2時じ間あいだ。東京とうきょう公演こうえんは6月がつ16日にちまで行おこなわれ、その後ご、7月がつ6日にちに福岡ふくおか・大牟田おおむた文化ぶんか会館かいかん 小しょうホールで上演じょうえんされる。

ステージナタリーでは、ゴツプロ！版ばん「無頼ぶらいの女房にょうぼう」の特集とくしゅうを展開てんかい中ちゅう。特集とくしゅうでは、ゴツプロ！主宰しゅさいの塚原つかはら、本ほん作さくの演出えんしゅつを手てがける青山あおやま、「無頼ぶらいの女房にょうぼう」に出演しゅつえん経験けいけんのある佐藤さとうB作さくが、中島なかじま作品さくひんの魅力みりょくについて語かたっている。