Noism0×金森かなもり穣みのるとNoism1×森もり優貴ゆうき、2つの新作しんさく公演こうえんが登場とうじょう

金森かなもり穣みのるコメント

雅楽ががくで創作そうさくする。人生じんせい初はつである。
ロームシアター京都きょうとからの委嘱いしょくで始はじまったこの企画きかくは、伶楽舎しゃとの共演きょうえんが前提ぜんてい、すなわち雅楽ががくで創作そうさくすることが前提ぜんていであった。
早速さっそくネットサーフィンを始はじめ、伶楽舎しゃのCDを買かい求もとめた。右みぎ方かたと左ひだり方かた、現代げんだい作曲さっきょく家かによる新作しんさくまで聞きいてみたけれど、どうもインスピレーションが湧わかない。ここで言いうインスピレーションとは、自みずからの裡うらに新あらたな萌芽ほうがを感かんじないということ。どんな曲きょくであれ、振付ふりつけすることはできる。それでも芸術げいじゅつ的てき感光かんこうを欠かいた仕事しごととしての共演きょうえんほど失礼しつれいなことはないし……なんて思おもっていたら、武満たけみつ徹とおるさんの「秋庭あきば歌うた一いち具ぐ」に出会であった。
邦楽ほうがくの元祖がんそである雅楽ががくで創作そうさくすることとは、邦楽ほうがくとは何なにか、この国くにの伝統でんとうとは何なにかと向むき合あうことである。それは明治めいじ以降いこう、瞬またたく間まに西洋せいよう化かしたこの国くにの源流げんりゅうを、一いち度外どがい（西洋せいよう）に出でることによって捉とらえ直なおした、偉大いだいなる先人せんじんたちと向むき合あうことでもある。勿論もちろん、その捉とらえ直なおし方ほうは人ひとによって異ことなるし、その違ちがいこそが芸術げいじゅつ的てき方法ほうほう論ろん（作風さくふう）の違ちがいに顕あらわれている。
中なかでも武満たけみつ徹とおるさんと雅楽ががくの親和しんわ性せいは、私わたしの拙つたない教養きょうようでも見出みだせるほどに顕著けんちょだと思おもう。放はなたれる音おと（瞬間しゅんかん）そのものよりも、その残滓ざんし、残響ざんきょう、残ざん影かげにこそ、音楽おんがくのなんたるかが宿やどることを感得かんとくさせてくれる音楽おんがく。そんな音楽おんがくを生うみ出だす武満たけみつさんの精神せいしんが雅楽ががくの響ひびきに共鳴きょうめいしなかったはずはない。それを確信かくしんさせてくれる音楽おんがく。それが「秋庭あきば歌うた一いち具ぐ」だと思おもう。
雅楽ががくというこの国くにの伝統でんとうを、武満たけみつ徹とおるというこの国くにの近代きんだい（偉大いだいな芸術げいじゅつ家か）を通とおして、現代げんだいの舞踊ぶよう家かの身体しんたいに召喚しょうかんすること。それは移うつりゆく時代じだいの中なかでも変かわらないものを捉とらえること。消きえゆく過程かていで聞きこえてくる響ひびき、見みえなくなってから浮うかび上あがる影かげ、その残響ざんきょう / 残ざん影かげに身体しんたいを澄すませること。舞踊ぶようと音楽おんがくいう刹那せつななる芸術げいじゅつの真髄しんずい、その真価しんかが、そこにこそ宿やどるのだと思おもうから。
それが本ほん作品さくひんの主題しゅだいである。

森もり優貴ゆうきコメント

世よの中なかが一変いっぺんし、新あたらしい生活せいかつ様式ようしきを探さぐりながら嘘うその様ような日常にちじょうを過すごすなかでの、昨年さくねんに続つづいて2度目どめのNoismでの新作しんさく。今回こんかいは、自分じぶんの中なかで少すこし「外はずしてみる」ことに取とり組くんでみるという課題かだいを、前期ぜんきリハーサルを終おえた10月25日にちに自分じぶん自身じしんに課かした。
何なにをどう「外はずす」のか？
何なにかしらの「裏切うらぎり」が見みえてくるのか？ 必かならずしも閉とじなければならない円えんは無ない。必かならずしも始点してんから順序じゅんじょをたどることもなければ、終点しゅうてんに辿たどり着つく必要ひつようもない。
あるのは集あつまる「場所ばしょ」だけ。
その先さきも、その前まえもない。
あるのはそこに作つくった「部屋へや」での架空かくう。あるのは様々さまざまな人達ひとたちが「部屋へや」の中なかに出入でいりするだけの時間じかん。
皆みな「誰だれか」を演えんじ、「誰だれか」が囚とらわれ、そして「誰だれか」は解放かいほうを求もとめ、「誰だれか」が見送みおくり、「誰だれか」は残のこる。
Das Zimmer（ダスツィマー）はドイツ語ごで「部屋へや」という意味いみ。
そこに集あつまり、目的もくてきのない虚構きょこうあるいは架空かくうを作つくっては、その虚構きょこうあるいは架空かくうを演えんじて捨すてる。嘘うそでも真実しんじつでも、どちらかではない「狭間はざま」。
「狭間はざま」で捨すて、止とめ、そこに残のこる。

「Duplex Noism0 / Noism1」

2021年ねん1月がつ22日にち（金きむ）～2月がつ11日にち（木き・祝しゅく）
新潟にいがた県けん りゅーとぴあ 新潟にいがた市民しみん芸術げいじゅつ文化ぶんか会館かいかん スタジオB

2021年ねん2月がつ25日にち（木き）～28日にち（日ひ）
埼玉さいたま県けん 彩いろどりの国こくさいたま芸術げいじゅつ劇場げきじょう 小しょうホール

「残ざん影かげの庭にわ―Traces Garden」

演出えんしゅつ振付ふりつけ：金森かなもり穣みのる
音楽おんがく：武満たけみつ徹とおる「秋庭あきば歌うた一いち具ぐ」より（伶楽舎しゃによる演奏えんそう音源おんげんを使用しよう）
出演しゅつえん：Noism0

「Das Zimmer」

演出えんしゅつ振付ふりつけ：森もり優貴ゆうき
音楽おんがく：S.ラフマニノフ、F.ショパン
出演しゅつえん：Noism1