藤田ふじた俊太郎しゅんたろう演出えんしゅつ「Take Me Out」2025年版ねんばん上演じょうえん、レジェンドチーム＆ルーキーチームの2チームで

藤田ふじた俊太郎しゅんたろうコメント

「Take Me Out」2025年ねん公演こうえんのスタートに寄よせて。

「Take Me Out」は読よむ度たびにいつも新あたらしい価値かち観かんが見みつかり、そして演出えんしゅつする度たびにいつも私わたしに新鮮しんせんな演劇えんげきの美うつくしさを与あたえてくれる戯曲ぎきょくです。これまで2度ど演出えんしゅつを担になってきましたが、また挑戦ちょうせんしたいと常々つねづね願ねがっていたこのせりふ劇げきに向むき合あえる機会きかいをいただけたことを心しんから嬉うれしく思おもっています。しかも、今回こんかいのシーズンは2016年ねん、18年ねんの公演こうえんを共ともに創つくった仲間なかまたちを中心ちゅうしんとするレジェンドチームと全ぜんキャストオーディションにてご一緒いっしょする新しんチームの2チームで創作そうさくするというプロジェクトが始はじまり、2025年ねんの上演じょうえんに向むけて今いまからとても興奮こうふんしています。オーディションは演技えんぎ経験けいけん不問ふもんの一般いっぱん公募こうぼ。たくさんの演技えんぎ者しゃ、表現ひょうげん者しゃに出会であうチャンスを与あたえてくださったシーエイティプロデュースの皆様みなさまには感謝かんしゃしかありません。オーディションに関かんしては、映像えいぞうによる一いち次じ審査しんさは参加さんかしてくださる全員ぜんいん、責任せきにんを持もって全すべて観みさせていただきます。その後ご二に次じ審査しんさは、具体ぐたい的てきに演出えんしゅつプランを伝つたえて、稽古けいこ初旬しょじゅんのようにその場ばにいる参加さんか者しゃ全員ぜんいんでシーン構築こうちくしていくワークショップ形式けいしきでのオーディションを実施じっし致いたします。

これまでこの作品さくひんを通とおして出会であった全すべての方ほう、キャスト、プランナー、スタッフ、カンパニーに心しんからのリスペクトを込こめて、2025年ねんの公演こうえんではこれまで培つちかった演出えんしゅつの核かくとなるものを大事だいじにしながら、真まっ新しんな気持きもちで臨のぞみたいと強つよく思おもっています。全体ぜんたいの規模きぼ感かんも公演こうえんする劇場げきじょうも演出えんしゅつのアプローチも一新いっしんします。キャストお一人ひとりお一人ひとりの個性こせいを大事だいじに、対話たいわを積つみ重かさねて、それぞれの魅力みりょくが溢あふれる2チームを創つくり上あげたいと思おもっています。

今いま思おもうと、初はじめてこの本ほんに出会であった時ときになんと魅力みりょく的てきな言葉ことばの力ちからを持もった物語ものがたりなのだろうと感動かんどうしました。舞台ぶたいは2000年代ねんだい初頭しょとうと思おもわれるアメリカニューヨーク、メジャーリーグのベースボールチーム。ロッカールームやシャワールーム、グラウンドでの登場とうじょう人物じんぶつのやり取とり、様々さまざまな会話かいわによって立たち上あがる主題しゅだいは多岐たきに渡わたります。異ことなる人種じんしゅ間あいだの理解りかいと不ふ寛容かんよう。人ひとと人ひとの心しんの融和ゆうわと、受うけ入いれ合あうことができない差別さべつ。マイノリティとマジョリティ。既成きせい概念がいねんと革新かくしん的てきな考かんがえ方かた。勝かつことと負まけること。正ただしいことと正ただしくないこと。裕福ゆうふくと貧まずしさ。連つれ出だすこと、もしくは追おい出だすこと。身みを守まもることと攻撃こうげきすること。台本だいほんの中なかで“楽園らくえん”という言葉ことばで表現ひょうげんされる野球やきゅうを通とおしたアメリカの現代げんだい社会しゃかいを描えがきながら、作品さくひん全体ぜんたいが喜劇きげき的てきであり悲劇ひげき的てきです。生いきる喜よろこびと、日々ひび何なにかを損そこなうという、失うしなう悲かなしみをも描えがいています。劇げき中ちゅうに“言葉ことばにするのが難むずかしいだけかな”というせりふがありますが、言葉ことばを尽つくしてそれでもまだ語かたり尽つくせない野球やきゅうの感動かんどうが演劇えんげきと交錯こうさくすることで、新あたらしい感情かんじょうの表現ひょうげんを生うみ出だしています。　

会計士かいけいしである「メイソン」がこのチームを外側そとがわからの観みた語かたり部べとなり、スポーツの魅力みりょくを清々すがすがしい言葉ことばに宿やどして響ひびかせ、その中心ちゅうしんにいるファイブツールプレイヤーと称しょうされる大だいスター選手せんしゅ、黒人こくじんと白人はくじんのミックスである「ダレン」と愛あいを交歓こうかんします。もう一人ひとりの語かたり部べである「キッピー」が選手せんしゅ代表だいひょうとしてチームを内側うちがわから語かたる視点してんを持もつことでこの作品さくひんが独自どくじの魅力みりょくを持もつことになります。白人はくじんの「トッディ」が実じつに人間にんげんらしくこの状況じょうきょうに反応はんのうし堂々どうどうと自己じこ主張しゅちょうし、アメリカ南部なんぶ出身しゅっしんの天才てんさい投手とうしゅ「シェーン」の言動げんどうが仲間なかまたちに修復しゅうふくすることができないひびを入いれ、ムードメーカーであるキャッチャーの「ジェイソン」がチームの不和ふわを正ただそうとする役割やくわりを持もちます。中南米ちゅうなんべい出身しゅっしんの「マルティネス」の佇たたずまいと強烈きょうれつな個性こせいが場ばに開放かいほう感かんや彩いろどりをもたらし、「ロドリゲス」の持もつ陽気ようきさ、アメリカ出身しゅっしんではない者ものの事象じしょうへの対峙たいじが舞台ぶたいに深ふかみをもたらします。日本人にっぽんじんメジャーリーガーのパイオニアのような存在そんざいの「カワバタ」の苦悩くのうがリアリティを持もち、監督かんとくの「スキッパー」が全すべての騒動そうどうを見守みまもり、発言はつげんには大おおきな影響えいきょう力りょくがあります。ライバルチームで黒人こくじんの実力じつりょく選手せんしゅである「デイビー」の死し、かつてのダレンとの深ふかい友情ゆうじょうを想おもい、観客かんきゃくは胸むねを痛いためることになります。

劇げきは、“ここではないどこかへ連つれ出だしてくれる存在そんざい”を支柱しちゅうとしながら、終幕しゅうまくに向むかいます。幕切まくぎれは、様々さまざまな解釈かいしゃくをすることができます。私わたしは、“人ひとは互たがいを称となえあい生いきている”という人間にんげん讃歌さんかを描えがいているのではないかと感かんじ、演出えんしゅつ家かとしての愛あいをラストシーンに込こめたいと思おもっています。アメリカにおける2025年ねんの“今いま”を鑑かんがみながら、この作品さくひんを通とおしてどのような演劇えんげきを創つくることができるのか、カンパニー一丸いちがんとなって挑戦ちょうせんし、追おい求もとめていきたいと思おもっています。「Take Me Out」2025年ねんシーズンに向むけての全ぜんキャストオーディション、たくさんの方ほうの応募おうぼを心しんからお待まちしております。

舞台ぶたい「Take Me Out」

2025年ねん5月がつ～6月がつ
東京とうきょう都と 有楽町ゆうらくちょうよみうりホール
※地方ちほう公演こうえんあり。

作さく：リチャード・グリーンバーグ
翻訳ほんやく：小川おがわ絵梨子えりこ
演出えんしゅつ：藤田ふじた俊太郎しゅんたろう