第だい9回かい手てのひら冷却れいきゃく、シャーベット　甲子園こうしえんの理学りがく療法りょうほう士しが勧すすめる熱中ねっちゅう症しょう対策たいさく

き手きて・大坂おおさか尚子しょうこ2024年ねん6月がつ19日にち 7時じ30分ふん

写真・図版 — 昨夏さくなつの甲子園こうしえんで導入どうにゅうされた5回かい終了しゅうりょう後ごのクーリングタイム。ベンチ裏うらのクーリングスペースにはサーモグラフィーが設置せっちされた=2023年ねん8月がつ、阪神はんしん甲子園こうしえん球場きゅうじょう

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　高校こうこう野球やきゅうで熱中ねっちゅう症しょうをどう予防よぼうするか――。昨夏さくなつの甲子園こうしえんではクーリングタイムが導入どうにゅうされた。理学りがく療法りょうほう士しとして携たずさわってきた大阪電気通信大おおさかでんきつうしんだいの小柳こやなぎ磨みがく毅あつし教授きょうじゅ（62）=理学りがく療法りょうほう学まなぶ=に対策たいさくや課題かだいを聞きいた。

　――熱中ねっちゅう症しょう対策たいさくを重視じゅうしし始はじめたのはいつですか。

　熱ねつけいれんを疑うたがわせる選手せんしゅがたくさん出でて、ゲームが中断ちゅうだんし、ベンチ裏うらで対応たいおうすることが増ふえてきたのは10年ねん近ちかく前まえでしょうか。地方ちほう大会たいかいで熱中ねっちゅう症しょうになっていないか、事前じぜんにアンケートを取とり始はじめたのもそのころです。

　――「手てのひら冷却れいきゃく」も効果こうかがあると話題わだいになりました。

　3年ねんぐらい前まえ、大学だいがく野球やきゅう部ぶに協力きょうりょくしてもらい、（体からだの中心ちゅうしん部ぶの）深部しんぶ体温たいおんを測はかってモニタリングしましたが、体温たいおんを下さげる効果こうかがありました。

　投手とうしゅにとって指先ゆびさきはデリケートな部位ぶいですが、手てのひらを冷ひやすことを推奨すいしょうしています。クーリングタイムでも首くびを冷ひやしています。送風そうふう機きの風ふうに当あたっている間あいだ、冷つめたい飲のみ物ものを持もって、手てのひらを冷却れいきゃくしながら、水分すいぶんを取とることもオススメです。

　――昨年さくねんから、五ご回かい終了しゅうりょう後ごの10分間ふんかんのクーリングタイムが設もうけられました。

　選手せんしゅの熱中ねっちゅう症しょう対策たいさくと健康けんこう管理かんりに集中しゅうちゅうする時間じかんができたのはよかったと思おもいます。新あたらしい試こころみなので、六ろく回かい表ひょうに登板とうばんする投手とうしゅや守まもりにつく野手やしゅを、もう少すこし早はやめにグラウンドに出だした方ほうがいいといった、反省はんせい点てんはありました。クーリングスペースに設置せっちされているサーモグラフィーを選手せんしゅに見みせると、クーリングへの意識いしきが高たかまった感かんじもあります。

　――クーリングタイム導入どうにゅうで変化へんかはありましたか。

　大会たいかい序盤じょばんにクーリングタイム後ごに足あしがつるケースがありました。調しらべていくと、決けっしてクーリングタイムをとったから、そういう症状しょうじょうが増ふえたわけではありませんでした。クーリングタイム中ちゅうのベンチ裏うらで、けいれん症状しょうじょうを訴うったえる選手せんしゅが多おおかったという印象いんしょうもありません。昨年さくねんの熱中ねっちゅう症しょう発生はっせい件数けんすうは、過去かこ数すう年間ねんかんと比くらべると少すくなくなっていました。

　――選手せんしゅの意識いしきは高たかまりましたか。

　格段かくだんに高たかまりました。ベンチ裏うらからのぞくと、「冷却れいきゃくのやつ、貸かしてください」などと言いわれることが増ふえています。指導しどう者しゃの先生せんせいも選手せんしゅもパフォーマンスを落おとさないように、熱中ねっちゅう症しょう対策たいさくは大切たいせつという意識いしきを持もっていると思おもいます。アイススラリー（シャーベット状じょうの飲料いんりょう）を持もち込こんでいるチームも、結構けっこう増ふえてきています。予防よぼう対策たいさくは浸透しんとうしてきていると思おもいます。

　――冷ひやしすぎて危あぶないことはありませんか。

　生理学せいりがくが専せん門もんの先生せんせいにも聞きいてみましたが、はっきりとそういう根拠こんきょは無ないとのこと。クールダウン後ご、ゲームに戻もどる前まえに余裕よゆうをもって準備じゅんびをすることが大事だいじだと思おもいます。

　――いつから高校こうこう野球やきゅうに関かかわっていますか。

　1993年ねんに始はじまった出場しゅつじょう校こう投手とうしゅの「肩かた・ひじ検査けんさ」を手伝てつだい、95年ねんから正式せいしきに関かかわるようになりました。もともとは傷害しょうがいの予防よぼうや対応たいおうがメインでした。昨今さっこんの夏なつの大会たいかいは熱中ねっちゅう症しょうの対策たいさくがかなりのウェートを占しめています。

　――これまでで最もっとも重おもい症状しょうじょうは。

　意識いしきを消失しょうしつした選手せんしゅは経験けいけんしたことはありませんが、症状しょうじょうが重おもい選手せんしゅは必かならず医師いしに診察しんさつしてもらうようにしています。医療いりょう機関きかんに搬送はんそうして処置しょちを受うけた後のち、選手せんしゅの様子ようすを見みて宿舎しゅくしゃに帰かえした事例じれいは何なん回かいかありました。

　診察しんさつを受うける選手せんしゅは減へったとはいえ、毎年まいとし一いち定数ていすうは出でます。対策たいさくを講こうじても、熱中ねっちゅう症しょうは起おこるものという前提ぜんていで、重症じゅうしょう化かの予防よぼうや早はやい処置しょち、救急きゅうきゅう要請ようせいができる体制たいせいを常つねに取とらないといけません。

　――猛暑もうしょの中なかでスポーツをする際さい、気きをつけるべき点てんは。

　こまめな水分すいぶん摂取せっしゅです。現状げんじょうのエビデンスで一番いちばん効果こうか的てきなものは、スラリー状じょう（シャーベット状じょう）のものをこまめに摂取せっしゅするといった方法ほうほうと考かんがえています。昨年さくねんのクーリングタイムでも奨励しょうれいしました。できれば回数かいすうを増ふやして、試合しあい中ちゅうも序盤じょばんの二に、三さん回かい、後半こうはんの七なな、八はち回かいにも、ベンチやベンチ裏うらで摂取せっしゅできるように準備じゅんびしようという話はなしになっています。

　――体からだを鍛きたえていても熱中ねっちゅう症しょうは起おきますか。

　（暑あつさに体からだが慣なれる）「暑熱しょねつ順化じゅんか」という生理せいり現象げんしょうがあります。しかし普段ふだんの練習れんしゅうである程度ていど慣なれていても、常つねに練習れんしゅうしているから大丈夫だいじょうぶだという過信かしんは良よくありません。

　甲子園こうしえんでは、熱中ねっちゅう症しょうの症状しょうじょうが出でる選手せんしゅは初戦しょせんの比率ひりつが高たかい。睡眠すいみん不足ふそくのほか、精神せいしん的てきな緊張きんちょうなどの影響えいきょうも考かんがえられます。

　――学校がっこうでもできる工夫くふうは。

　アイススラリーは、家庭かてい用ようのミキサーでも作つくれます。スポーツドリンクを凍こおらせたものをシャーベット状じょうにして水筒すいとうに入いれておく。ゲーム中ちゅうに定期ていき的てきに摂取せっしゅすることはチームでできると思おもいます。

　――地方ちほう大会たいかいでもベンチ裏うらに扇風機せんぷうきを設置せっちするなど、対策たいさくは進すすんでいます。

　春季しゅんき大会たいかいや夏なつの地方ちほう大会たいかいからやってほしいことがあります。冷つめたいものを摂取せっしゅすると、おなかを壊こわす選手せんしゅもいます。シャーベット状じょうの飲料いんりょうを今いまから少すこしずつ試ためしておくことを薦すすめます。おなかを壊こわす選手せんしゅは常温じょうおんのスポーツドリンクを摂取せっしゅし、大丈夫だいじょうぶな選手せんしゅは少すこしずつシャーベット状じょうのものでこまめに補おぎなえ水みずする習慣しゅうかんをつける。夏なつに向むけて、今いまからできる予防よぼう対策たいさくになります。