眼鏡めがねキャラクター

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
美人びじん」 眼鏡めがねをかけた明治めいじ時代じだい女性じょせい明治めいじ31ねん(1898ねん)、楊洲周延しゅうえん

眼鏡めがねキャラクター(めがねキャラクター)は、眼鏡めがねをかけていることが特徴とくちょうひとつとなっている人物じんぶつをあらわす言葉ことば明確めいかく定義ていぎされた言葉ことばではないが、眼鏡めがね有無うむキャラクター分類ぶんるい基準きじゅんにすることはひろおこなわれている。

概要がいよう[編集へんしゅう]

眼鏡めがねえがかれたもっとふる絵画かいがは、トマッソ・デ・モデナが1352ねんえがいたヒュー・オブ・サン・シェールの肖像しょうぞうである。ヒューの生前せいぜんには眼鏡めがね発明はつめいされていないが、死後しご1世紀せいきってからえがかれたこの肖像しょうぞうでは、尊敬そんけいのしるしとして眼鏡めがねえがれられた。聖者せいじゃ肖像しょうぞう生前せいぜん存在そんざいしていなかったはずの眼鏡めがねえがれる慣行かんこうはそのすう世紀せいきにわたってつづいた。学識がくしき識字しきじ能力のうりょくぬし、あるいは当代とうだい実力じつりょくしゃであることのあかしかんがえられていたのであろう[1]

このように眼鏡めがねふるくから知性ちせい象徴しょうちょうであったが、これを利用りようすると、ファッションであれば眼鏡めがね着用ちゃくようすることで知性ちせいてきなイメージをかもしすことが可能かのうになり、またフィクションの世界せかいではあたまのいい登場とうじょう人物じんぶつ眼鏡めがねをかけさせることで外見がいけん性格せいかく一致いっちさせ、より印象いんしょうつよいキャラクターをつくることが可能かのうになる。

ただし、最近さいきんはファッションせい眼鏡めがねひろわたっているものの、それ以前いぜんはレンズが極端きょくたんあつい「びんそこ眼鏡めがね」(渦巻うずまきをむことでこれをさらに強調きょうちょうする)など、あまりくない眼鏡めがねのほうが認知にんちたかく、眼鏡めがねをかけることをむしろイメージをげるとかんがえるひともいた。その一方いっぽうで、大正たいしょう11ねん随筆ずいひつにも、男性だんせい眼鏡めがねをかけることを「伊達だてかん洒落しゃれゆる[2]」、あるいはロンドンの女性じょせいおおくがかけている鼻眼鏡はなめがねが「却て容色ようしょくしてゆることさへある[3]」という記述きじゅつえ、昭和しょうわ3ねん書籍しょせきによれば、日本にっぽんでは社交しゃこうかい婦人ふじんあいだえん眼鏡めがねがひどく流行りゅうこうして、なかにはのない素通すどおしのものをかけるものもいた[4]

現在げんざいでは、眼鏡めがねキャラクターに一定いっていのファンがいることが認知にんちされている。おおくのフィクションでもこれらのファン(とく異性いせいキャラのファン)を意識いしきしたキャラクターが存在そんざいし、現在げんざいではのジャンルのひとつにげられることもある。

フィクションにおいては、普段ふだん冷静れいせいたもっている登場とうじょう人物じんぶつが、なんらかの拍子ひょうし眼鏡めがねはずれてどこかにってしまうと「メガネメガネ…」と足元あしもとさがしたり[5]眼鏡めがねくもったりどろがついたりのアクシデントでえなくなってしまうとそれぞれにおいてパニックになることがあったり、眼鏡めがねがないとかべ電柱でんちゅうあたまをぶつけたり、精神せいしんてきショックをけて眼鏡めがねれたりといった、現実げんじつではありえないことが古典こてんてきもちいられる。漫才まんざいにおいても、ちた眼鏡めがねさがすのがやすし・きよしちネタであった。

現実げんじつには近視きんしによる裸眼らがん視力しりょく低下ていかは0.02程度ていどそこつので、いくら近視きんしつよくても裸眼らがんである程度ていどえる。力士りきしにも柔道じゅうどうにも近視きんしものはいるが、1メートル程度ていど距離きょりでぶつかりうので不便ふべんではない。それより裸眼らがん視力しりょくがるのは近視きんしほか深刻しんこくびょうあわっている場合ばあいであり、その場合ばあい眼鏡めがねをかけても視力しりょくのぞめない。上述じょうじゅつのやすし・きよしのネタも、ひとしきり眼鏡めがねさがしてせたのち、きよしが「本当ほんとうえてんねやろ」などとみをれるのを合図あいずにやすしがまようことなく眼鏡めがねひろげ、ほんネタにもどるものであった。

漫画まんが表現ひょうげんにおける描写びょうしゃ[編集へんしゅう]

眼鏡めがね装着そうちゃくによってキャラクターの外観がいかんおおきくえることなく、個性こせい表現ひょうげんするための漫画まんがてきデフォルメ描写びょうしゃとして、にかかる部分ぶぶん省略しょうりゃくする、あるいはぎゃくナイロールフレーム(アンダーリム)や鼻眼鏡はなめがねもちいられることがあり、キャラクターのひとみ印象いんしょうもの素直すなおつたわる。そのため、ひとみおおきくえが美少女びしょうじょけい絵柄えがら)においてはこの表現ひょうげんもちいられることがしばしばある(また、場合ばあいによってはあえてかさねたまま省略しょうりゃくせずにえがかれる場合ばあいもある)。また、キャラクターの造形ぞうけいもしくは絵柄えがら前述ぜんじゅつ美少女びしょうじょけいふくむ)によっては普通ふつう眼鏡めがねをかけさせることが困難こんなんな(あるいは、かけさせると不格好ぶかっこうとなる)ため、それを回避かいひするためにこの表現ひょうげんもちいることもある。

呼称こしょう[編集へんしゅう]

女性じょせいキャラにたいしては「メガネっむすめ」「メガネ女子じょし」、男性だんせいキャラにたいしては「メガネくん」「メガネ男子だんし」というかたがある。とくに「メガネ男子だんし」は女性じょせい男性だんせい眼鏡めがねキャラに使つか呼称こしょうとして有名ゆうめいであり、女性じょせいけに男性だんせい眼鏡めがねキャラを特集とくしゅうしたほんのタイトルにもなっている。

男女だんじょ共通きょうつうのものとしては「メガネっ」があるが、おな発音はつおんである「メガネっむすめ」が存在そんざいする影響えいきょうで、男性だんせいたいしてこの呼称こしょう使つか機会きかいすくない。

「メガネっ」、「メガネっむすめ」の呼称こしょう起源きげんかんする明確めいかく資料しりょう存在そんざいしないため、正確せいかく成立せいりつ時期じき不明ふめいである。現在げんざい確認かくにん可能かのうなものでは漫画まんがDr.スランプ』の作品さくひんないすで主人公しゅじんこうのりまきアラレたいしてこの呼称こしょう使用しようされている。

評価ひょうか[編集へんしゅう]

先述せんじゅつのとおり、眼鏡めがねキャラクターには眼鏡めがねをかけることで知的ちてきさがアップしているもの、ぎゃくにドジせい野暮やぼったさ、おたくせい強調きょうちょうさせているものが存在そんざいする。

眼鏡めがねキャラクターに魅力みりょくかんじる理由りゆうについては、専門せんもんひとによってことなった考察こうさつをしており、定見ていけんがない。黒石くろいしおう作家さっか石黒いしぐろ直樹なおきペンネーム)は、いわゆるドジッのぞおおくの知性ちせいてき女性じょせい眼鏡めがねキャラクターについて、相手あいて威圧いあつかんあたえる・相手あいてより優位ゆういであることを眼鏡めがねをかけることであんしめしていると指摘してきしている。一方いっぽう心理しんり学者がくしゃ香山かやまリカは、男性だんせい眼鏡めがねキャラクターに女性じょせいファンがいることについて、眼鏡めがねをかける=視力しりょくわるさというハンディキャップを背負せおっているという感覚かんかく一般いっぱんてきにあることを指摘してきし、安心あんしんかん信頼しんらいかんまれていると考察こうさつしている。心理しんり学者がくしゃ内藤ないとうよしみじんは、フィクションの世界せかいでは眼鏡めがねをかけたキャラクターが相対そうたいてきには希少きしょうであるために、希少きしょうせいたかいものにかれる人間にんげん心理しんり眼鏡めがねキャラクターを魅力みりょくてきせているのではないかと考察こうさつしている[6]

いイメージの眼鏡めがねキャラクターの概念がいねん登場とうじょうしたのはけっして最近さいきんではない。P・G・ウッドハウスは1930ねんにまとめた小説しょうせつよう眼鏡めがね着用ちゃくよう基準きじゅんともいうべきもので、眼鏡めがね種類しゅるいごとにそれをかける人物じんぶつ列挙れっきょしているが、当時とうじでいうスペクタルズ、現在げんざいでいう一山ひとやまをかけるもの筆頭ひっとうによき伯父おじ鼻眼鏡はなめがねをかける筆頭ひっとう善良ぜんりょう教師きょうし単眼たんがんきょうをかける筆頭ひっとう善良ぜんりょう公爵こうしゃくと、おおくの種類しゅるい善良ぜんりょう人物じんぶつ筆頭ひっとうげていた。鼻眼鏡はなめがね単眼たんがんきょうについては、悪人あくにんはたぶんこれをかけないともべている[7]日本にっぽんでも、記事きじ冒頭ぼうとうかかげたように眼鏡めがねをかけた女性じょせいしん美人びじんとする浮世絵うきよええがかれている。手塚てづか治虫おさむスター・システムさい古参こさんであるはなまる博士はかせおおくの役柄やくがらかた眼鏡めがねをかけているが、もっぱら善人ぜんにんえんじた「スター」である[8]。フィクションでは眼鏡めがねをかけている姿すがたかり姿すがたとし、眼鏡めがねはずすともと人物じんぶつもどるなどという演出えんしゅつ存在そんざいした。スーパーマン一般人いっぱんじんとして能力のうりょくおさえているあいだ眼鏡めがねをかけており、映画えいが漫画まんがでは「眼鏡めがねはずすと素顔すがお美人びじんである」という演出えんしゅつ定番ていばんひとつであった。アイザック・アシモフが『アシモフの科学かがくエッセイ』ちゅうでこのことを“ハリウッドで使つかふるされたネタだ” “知性ちせい象徴しょうちょうである眼鏡めがねてることを美化びかするのは、無学むがく礼賛らいさんする愚劣ぐれつきわまりない行為こうい”と批判ひはんしていることから「眼鏡めがねはずすと美人びじん」という演出えんしゅつがこの当時とうじすでに使つかわれていたとかる。現在げんざいはそのような演出えんしゅつはまれであり、眼鏡めがねをかけているときこそが素顔すがおとするかんがかたさえ存在そんざいする。しかし、眼鏡めがねをかけているひと野暮やぼったい、というイメージはいまだおおくのひとたれている。

日本にっぽん国外こくがいでの事情じじょう[編集へんしゅう]

日本にっぽん国外こくがいでのフィクションに登場とうじょうする日本人にっぽんじんおおくは眼鏡めがねをかけているとされる。日本人にっぽんじん=眼鏡めがねというイメージはふるくからあり、ビゴー風刺ふうしなどにも眼鏡めがねをかけた日本人にっぽんじんることができる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ リチャード・コーソン (1999). メガネの文化ぶんか. 八坂やさか書房しょぼう. p. 22-23 
  2. ^ 坂口さかぐち二郎じろう (大正たいしょう11). 欧米おうべいさんじゅう. 下出しもいで書店しょてん. p. 93. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/964465 
  3. ^ 坂口さかぐち二郎じろう (大正たいしょう11). 欧米おうべいさんじゅう. 下出しもいで書店しょてん. p. 95. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/964465 
  4. ^ 石津いしづひろし (昭和しょうわ3). めがねをかけるひとのために. 山本やまもと書房しょぼう. p. 89. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1051049 
  5. ^ ドラえもんだい11かん「とりよせバッグ」
  6. ^ ペンダコ (2012ねん1がつ22にち). 心理しんりがくのプロが分析ぶんせき! アニメで八重歯やえばやメガネ女子じょし人気にんき理由りゆう. マイナビニュース (マイナビ). http://news.mynavi.jp/c_cobs/jijinews/trend/2012/01/post_727pt1.html 2012ねん3がつ19にち閲覧えつらん 
  7. ^ リチャード・コーソン (1999). メガネの文化ぶんか. 八坂やさか書房しょぼう. p. 252 
  8. ^ はなまる博士はかせ”. 2018ねん2がつ14にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 少年しょうねんサンデー特別とくべつ編集へんしゅうプロジェクトへん へん『コナンドリル : オフィシャル・ブック』小学館しょうがくかん、2003ねんISBN 4-09-179402-5 
  • ハイブライトへん へん『メガネ男子だんしアスペクト、2005ねんISBN 4-7572-1174-0 
  • 黒石くろいしおきな彼女かのじょのレンズにうつりたい眼鏡めがねむすめだい百科ひゃっか二見ふたみ書房しょぼう二見ふたみブルーベリーシリーズ〉、2005ねんISBN 4-576-05155-5 
  • 友利ともりのぼるかい日本人にっぽんじんはなぜくろブチまるメガネなのか』ごま書房しょぼう、2006ねんISBN 4-341-01885-X 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]