八重歯やえば

八重歯やえば（やえば）とは、歯牙しがが叢生そうせい（そうせい）した状態じょうたいのこと。特とくに上顎じょうがく犬歯けんしの低位ていい唇くちびる側がわ転位てんいを指さす通俗つうぞく的てき表現ひょうげん。「押歯」「添歯」「鬼歯おにば」ともいう。

顎骨がっこつの劣れつ成長せいちょうや乳歯にゅうしの脱落だつらく遅延ちえんなどによって生しょうじる現象げんしょうであり、永久歯えいきゅうしが正常せいじょうに萌出もえでするためのスペースが確保かくほできない場合ばあいに発生はっせいする。また、先天的せんてんてきな歯は冠かんむり幅はばや骨格こっかくによっても左右さゆうされる。

歴史れきしと語源ごげん

磨すり製せい石せき剣けんの刃先はさき

刃は（やいば）を由来ゆらいとする。八重山やえやま（やいま）と同おなじく、古代こだいでは八はち重じゅう【やえ／やゑ】を【やい／やゐ】と発音はつおんしていた。古代こだいの剣けん（銅剣どうけんや石いし剣けん）は芯しんが厚あつみを帯おび、切きっ先さきは先端せんたんが尖とがり諸刃もろはになっている。この形状けいじょうが八重歯やえばと酷似こくじしていたため。また先端せんたんが尖とがっているため糸いとを噛かみ切きるのに都合つごうがよく、糸切いときり歯ばとも呼よばれる。

古事記こじきによると、市辺いちのべ押磐皇子おうじは八重歯やえばで歯はの先端せんたんが3つに割われていたことから「市辺いちのべ之の忍しのべ歯は王おう」とも呼よばれた。

叢生そうせい

叢生そうせい（そうせい）とは、歯はが大おおきく顎あごが小ちいさいなど歯はの大おおきさと顎あごの大おおきさのアンバランスにより、歯はが顎あごの正ただしい位置いちに収おさまりきらなくなり歯はが重かさなったり、ズレたりと歯並はならびがガタガタになった状態じょうたい。一般いっぱんに乱杭らんぐい歯ぱ（らんぐいば、らんくいば）と呼よばれることが多おおい。逆ぎゃくに歯はが小ちいさいなど歯並はならびに隙間すきまのある場合ばあいは空隙くうげき（くうげき）という。

印象いんしょうとキャラクターイメージ

欧米おうべいではドラキュラの牙きばに見みえるなど、悪わるいイメージがあり嫌きらわれている。

反面はんめん日本にっぽんでは、笑顔えがおのアクセントとして魅力みりょくの一種いっしゅとされ、八重歯やえばをかわいいというのは日本にっぽんだけだと言いわれる。古ふるくより八重歯やえばの芸能人げいのうじんが多数たすう存在そんざいし、特とくに高たかい知名度ちめいどとしては、石野いしの真子しんじや河合かわい奈保子なほこが知しられている。

漫画まんがやアニメーションでも多数たすう存在そんざいしたが、特とくに近年きんねんはソーシャルゲームなどマニア向むけのゲーム・アニメの普及ふきゅうに伴ともない、八重歯やえばを持もつキャラクターが、オッドアイ（虹彩こうさい異色いしょく症しょう）と共ともに増加ぞうかの傾向けいこうにある。描えがき方かたとしては、口くちを開あけると三角さんかくの歯はだけが見みえる（牙きばと差別さべつ化かするため一ひとつだけ見みせるパターンが多おおい）と言いうのが基本きほんだが、2010年代ねんだい後半こうはんからは、口元くちもとの横線おうせん自体じたいに三角さんかくの歪ゆがみがあるという、一見いっけん口こうそのものが歪いがんでいる様ように見みえる様ように簡略かんりゃく化かされた作風さくふうが流行りゅうこうしている。発祥はっしょうは不明ふめいだが、作品さくひんの大だいヒットで知名度ちめいどの高たかいキャラとしては、『ゆるキャン△』の犬山いぬやまあおいなどが知しられる。なお、サメの歯はのように全すべてがとがった歯はである、通称つうしょう「ギザ歯ぱ」とは区別くべつされる。

関連かんれん項目こうもく

• 歯は列れつ矯正きょうせい
• 永久歯えいきゅうし/乳歯にゅうし
• セメント質しつ/象牙ぞうげ質しつ/エナメル質しつ/歯髄しずい/歯肉はにく/歯肉はにく溝みぞ/歯髄しずい/歯槽しそう骨こつ/歯根しこん/歯根しこん膜まく/骨ほね
• 出でっ歯ぱ
• 歯学しがく/医学いがく
• 牙きば