政府せいふ、国民こくみんの目めを欺あざむき「税ぜいをかすめ取とる」憲法けんぽう違反いはん行為こうい…人々ひとびとのお金かねが目減めべり、国くには利益りえき

2月がつ5日にちに行おこなわれた国家こっか戦略せんりゃく特別とくべつ区域くいき諮問しもん会議かいぎ（「首相しゅしょう官邸かんてい　HP」より）

　1000兆ちょう円えんを超こす日本にっぽん政府せいふの膨大ぼうだいな借金しゃっきん（大だい部分ぶぶんは国債こくさい）がニュースで報ほうじられるたびに、一部いちぶのエコノミストや経済けいざい学者がくしゃは「危機きき感かんを煽あおりすぎ」「増税ぞうぜいをもくろむ財務省ざいむしょうの意図いとを感かんじる」などと批判ひはんする。

　彼かれらによれば、政府せいふの借金しゃっきんの負担ふたんは、増税ぞうぜい以外いがいのある方法ほうほうによって軽かるくすることが可能かのうだという。それは「インフレ税ぜい」である。

　仕組しくみはこうだ。政府せいふはお金かねを発行はっこうする特権とっけんを持もっているから、お金かねを大量たいりょうに発行はっこうして国債こくさいの利子りしや元本がんぽんの返済へんさいに充あてればよい。

　ただし、お金かねを大量たいりょうに発行はっこうすれば、他たの条件じょうけんが同おなじなら物価ぶっかは上昇じょうしょうする。これは国民こくみんが保有ほゆうするお金かねの価値かちが、実質じっしつ目減めべりすることを意味いみする。同おなじ額がくのお金かねで買かえる物ものが少すくなくなってしまうからだ。

　国民こくみんからみれば、インフレ（物価ぶっか上昇じょうしょう）によって、税金ぜいきんを取とられたのと実質じっしつ同おなじことになる。だからインフレ税ぜいと呼よぶのである。

　実じつはこのインフレ税ぜい、すでに始はじまっている。中央ちゅうおう銀行ぎんこうである日本銀行にっぽんぎんこうが金融きんゆう緩和かんわ政策せいさくの一環いっかんとして、民間みんかん金融きんゆう機関きかんを通とおして年間ねんかん80兆ちょう円えん規模きぼの国債こくさいを買かい入いれているからである。

　日銀にちぎんは自分じぶんでお金かねを発行はっこうでき、お金かねに利子りしを払はらう必要ひつようはないから、資金しきん調達ちょうたつのコストはゼロだ。一方いっぽう、国債こくさいには利子りしがつくから、それがまるまる利益りえきになる。日銀にちぎんはこの利益りえきを「国庫こっこ納付のうふ金きん」として政府せいふに納おさめている。

　日銀にちぎんは政府せいふと別べつ組織そしきになってはいるが、結局けっきょくは政府せいふの一部いちぶである。だから全体ぜんたいでみれば、政府せいふはお金かねを発行はっこうすることにより、濡ぬれ手てで粟あわで国債こくさい利子りし分ぶんの利益りえきを手てに入いれたことになる。この利益りえきがインフレ税ぜいであり、通貨つうか発行はっこう益えき（シニョリッジ）とも呼よばれる。

　インフレ税ぜいで国債こくさいの利払りばらいは相殺そうさいされて実質じっしつゼロになるから、少すくなくとも短期たんきでは一部いちぶエコノミストの言いうとおり、普通ふつうの増税ぞうぜいに頼たよらず借金しゃっきんの負担ふたんを軽かるくできる。

　たとえば元もと財務ざいむ官僚かんりょうでエコノミストの髙橋洋一よういち氏しは「短期間たんきかんでの猛烈もうれつなインフレは困こまるが、それを生活せいかつに支障ししょうがないマイルドインフレに直なおせば、財政ざいせい再建さいけんができる」とインフレ税ぜいを推奨すいしょうする。お金かねを刷するだけで済すむのだから、やらない手てはないと賛同さんどうする人ひとも少すくなくない。

租税そぜい法律ほうりつ主義しゅぎをないがしろ

　しかし、インフレ税ぜいは重大じゅうだいな問題もんだいをはらんでいる。

　国民こくみんから税金ぜいきんを取とる場合ばあいは、議会ぎかいの制定せいていした法律ほうりつに基もとづかなければならない。これを「租税そぜい法律ほうりつ主義しゅぎ」という。税金ぜいきんは国民こくみんに対たいして直接ちょくせつ負担ふたんを求もとめるものだから、必かならず国民こくみんの同意どういを得えなければならないという原則げんそくである。古ふるくは13世紀せいき英国えいこくのマグナ・カルタ（大だい憲章けんしょう）に遡さかのぼる、近代きんだい国家こっかの根幹こんかんをなす憲法けんぽう原理げんりである。