「分散ぶんさん投資とうし型がたの投資とうし信託しんたく＝低ていリスク」という“トリック”に騙だまされる人々ひとびと

　銀行ぎんこうや証券しょうけん会社かいしゃで勧すすめられる投資とうし信託しんたくには、分散ぶんさん投資とうしを特徴とくちょうとしている「分散ぶんさん投資とうし型がたファンド」が少すくなくありません。手渡てわたされる商品しょうひん説明せつめいのパンフレットにも、「投資とうし対象たいしょうを分散ぶんさんすることで、リスクを抑おさえます」と強調きょうちょうされています。そして、「日本にっぽん株式かぶしきだけで運用うんようした場合ばあい」と「日本にっぽん株式かぶしき、海外かいがい株式かぶしき、日本にっぽん債券さいけん、海外かいがい債券さいけんの4資産しさんに分散ぶんさん投資とうしをした場合ばあい」の結果けっかがグラフで表示ひょうじされています。日本にっぽん株式かぶしきだけの場合ばあいが上下じょうげに大おおきく動うごいているのに比くらべると、4資産しさんに分散ぶんさんした場合ばあいはなだらかに上昇じょうしょうしています。

　実じつはこの説明せつめい、間違まちがいではないけれど、適切てきせつでもありません。お客きゃくを安心あんしんさせる“トリック”でもあるのです。「結果けっかがグラフではっきりと示しめされているのに、正ただしくないというのか！」と怒おこられてしまいそうですが、比較ひかくしている対象たいしょうに問題もんだいがあります。

分散ぶんさん投資とうしは投資とうし対象たいしょうを分わけること

「分散ぶんさん投資とうしの効果こうか」は、1つのものに絞しぼって集中しゅうちゅう投資とうしをするのではなく、多おおくの投資とうし対象たいしょうに分わけて運用うんようしたほうがリスクは小ちいさくなり、資産しさんが安定あんていするという考かんがえ方かたです。

「この会社かいしゃは、これから大おおきく成長せいちょうしそうだ」ということがわかったとしても、そればかりに資金しきんをつぎ込こんでしまうと、もし予想よそうが外はずれた場合ばあいに取とり返かえしがつきません。予想よそうが外はずれないように、慎重しんちょうに調しらべることは大切たいせつですが、それでも将来しょうらいのことを正確せいかくに予測よそくできるわけではありません。もし不測ふそくの事態じたいが発生はっせいして業績ぎょうせきが急激きゅうげきに悪わるくなったり、不祥事ふしょうじが起おきたりすれば、株価かぶかが暴落ぼうらくして大おおきな損失そんしつを抱かかえてしまう可能かのう性せいがあります。

　そこで、銘柄めいがらを分わけるだけでなく、投資とうし対象たいしょうも日本にっぽん株式かぶしき、海外かいがい株式かぶしき、日本にっぽん債券さいけん、海外かいがい債券さいけんと分わけておけば、1つの会社かいしゃの業績ぎょうせき変動へんどうはもちろん、日本にっぽんの景気けいき悪化あっかなどの影響えいきょうも一定いってい程度ていどまでに抑おさえられます。債券さいけんの上昇じょうしょうや海外かいがい株式かぶしきの上昇じょうしょうなどで日本にっぽん株式かぶしきのマイナスをカバーでき、損失そんしつとなる可能かのう性せいが小ちいさくなる、ということです。「卵たまごは1つのカゴに盛もるな」ということわざは、分散ぶんさん投資とうしの大切たいせつさを表あらわしています。

日本にっぽん債券さいけんに集中しゅうちゅう投資とうしをしたほうがリスクは小ちいさくなる

　実際じっさい、投資とうし信託しんたくのパンフレットに記載きさいされているグラフのように、「日本にっぽん株式かぶしきだけで運用うんようした場合ばあい」と比くらべて、「日本にっぽん株式かぶしき、海外かいがい株式かぶしき、日本にっぽん債券さいけん、海外かいがい債券さいけんの4資産しさんに分散ぶんさん投資とうしをした場合ばあい」は、上下じょうげの変動へんどうが少すくなく、マイナスとなる可能かのう性せいが小ちいさくなっています。それは事実じじつなのですが、その理由りゆうは「分散ぶんさん投資とうしをしたから」ではありません。債券さいけん、特とくにほとんど値動ねうごきのない日本にっぽん債券さいけんを投資とうし対象たいしょうに加くわえたからなのです。4資産しさんのうち、日本にっぽん債券さいけんの割合わりあいを増ふやしていけば、上下じょうげの変動へんどうはさらに小ちいさくなり、日本にっぽん債券さいけんだけにしてしまえば、ほとんど変動へんどうはなくなります（その代かわり、上昇じょうしょうも金利きんり分ぶんだけで、ほとんど横よこ一直線いっちょくせんとなります）。

　資産しさんを分散ぶんさんして投資とうしするよりも、日本にっぽん債券さいけんに集中しゅうちゅう投資とうしをしたほうがリスクは小ちいさくなるのです。これでは「分散ぶんさん投資とうしをするとリスクが低減ていげんする」とは言いえません。