さそり座ざ

さそり座ざ（さそりざ、蠍さそり座ざ、Scorpius, Scorpio）は、黄道こうどう十じゅう二に星座せいざの1つ。トレミーの48星座せいざの1つでもある。天あまの川がわ沿そいにある大おおきくて有名ゆうめいな星座せいざである。日本にっぽんでは夏なつの大だい三角さんかくと共ともに夏なつの星座せいざとして親したしまれ、南みなみの空そらに確認かくにんすることができる。天あまの川がわに大おおきなS字じ型がたで横よこたわっており、特徴とくちょう的てきな形かたちをしている。明あかるい星ほしが多おおく、全ぜん天てんでも明あかるい星座せいざの一ひとつである。 αあるふぁ星ほしのアンタレスは全ぜん天てん21の1等とう星ぼしの1つ。

さそり座ざ

Scorpius
さそり座ざの恒星こうせい
属ぞく格かく形かたち	Scorpii
略りゃく符ふ	Sco
発音はつおん	英語えいご発音はつおん: [ˈskɔrpiəs]、属ぞく格かく:/ˈskɔrpiaɪ/
象徴しょうちょう	the Scorpion
概略がいりゃく位置いち：赤あか経けい	16 hrs. 53 min. 15 sec.
概略がいりゃく位置いち：赤あか緯ぬき	-30° 44' 12"
正中せいちゅう	7月がつ20日はつか21時じ
広ひろさ	497平方へいほう度ど （33位い）
バイエル符号ふごう/ フラムスティード番号ばんごう を持もつ恒星こうせい数すう	47
3.0等とうより明あかるい恒星こうせい数すう	12
最さい輝てる星ぼし	アンタレス（αあるふぁ Sco）（0.91等ひとし）
メシエ天体てんたい数かず	4
確定かくてい流星りゅうせい群ぐん	Alpha Scorpiids Omega Scorpiids
隣接りんせつする星座せいざ	いて座ざ へびつかい座ざ てんびん座ざ おおかみ座ざ じょうぎ座ざ さいだん座ざ みなみのかんむり座ざ

主おもな天体てんたい

恒星こうせい

「さそり座ざの恒星こうせいの一覧いちらん」も参照さんしょう

1等とう星ぼしのαあるふぁ星ほし（アンタレス）のほか、δでるた星ほし、εいぷしろん星ほし、θしーた星ほし、κかっぱ星ほし、λらむだ星ほしの5つの2等とう星ほしがある。ヨハン・バイエルがさそり座ざγがんま星ほしとした星ほしは、現在げんざいはてんびん座ざのγがんま星ほしとなっている。

以下いかの星ほしには、国際こくさい天文学てんもんがく連合れんごうの恒星こうせいの命名めいめいに関かんするワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) によって固有こゆう名めいが定さだめられている。

• αあるふぁ星ほし：二に重じゅう星ぼし。A星ほしのアンタレス（Antares）は、全ぜん天てん21の1等とう星ぼしの1つで赤色あかいろ超ちょう巨星きょせい。さそり座ざでは最もっとも明あかるく名なの知しられた恒星こうせいである。星座せいざ絵えではさそりの心臓しんぞう部ぶとして描えがかれる。
• βべーた星ほし：多重たじゅう星ぼし。小型こがた望遠鏡ぼうえんきょうでは、二に重じゅう星ほしに見みえる。Aa星ぼしはアクラブ (Acrab) という固有こゆう名めいを持もつ。
• δでるた星ほし：2等とう星ほし。頭部とうぶに位置いちする。A星ほしはジュバ (Dschubba) という固有こゆう名めいを持もつ。
• εいぷしろん星ほし：2等とう星ほし。ララワグ (Larawag) という固有こゆう名めいを持もつ。
• θしーた星ほし：2等とう星ぼしで二に重じゅう星ぼし。尾お部ぶに位置いちする。A星ほしはサルガス (Sargas) という固有こゆう名めいを持もつ。
• λらむだ星ほし：2等とう星ぼしで多重たじゅう星ぼし。サソリの毒どく針はりの位置いちにある。Aa星ぼしはシャウラ (Shaula) という固有こゆう名めいを持もつ。
• μみゅー星ほし：肉眼にくがんで分離ぶんりできる二に重じゅう星ぼしで、μみゅー¹星ほしはハミディムラ (Xamidimura)、μみゅー²星ほしはピピリマ (Pipirima) という固有こゆう名めいを持もつ
• νにゅー星ほし：多重たじゅう星ぼし。Aa星ぼしはジャッバ (Jabbah) という固有こゆう名めいを持もつ。
• πぱい星ほし：多重たじゅう星ぼし。Aa星ぼしはファン（房ぼう、Fang）という固有こゆう名めいを持もつ。
• ρろー星ほし：多重たじゅう星ぼし。Aa星ぼしはイクリール (Iklil) という固有こゆう名めいを持もつ。
• σしぐま星ほし：連れん星ほし系けいで、Aa星ぼしはアルニヤト (Alniyat)という固有こゆう名めいを持もつ。
• τたう星ほし：A星ほしはパイカウハレ (Paikauhale) という固有こゆう名めいを持もつ。
• υうぷしろん星ほし：レサト (Lesath) という固有こゆう名めいを持もつ。
• G星ほし：中国ちゅうごく・殷いんの時代じだいの伝説でんせつ的てき名めい臣しんの名前なまえに由来ゆらいするフーユェー（傅でん説せつ、Fuyue）という固有こゆう名めいを持もつ。

この他ほか、以下いかの星ほしがある。

• ζぜーた星ほし：ζぜーた¹星ほし（グラフィアス、Graffias）とζぜーた²星ほしの見みかけの二に重じゅう星ぼし。
• κかっぱ星ほし：2等とう星ほし。ギルタブとも呼よばれる。
• ξくしー星ほし：グラフィアス (Graffias) とも呼よばれる。
• ωおめが星ほし：ジャバト・アル・アクラブ (Jabhat al Acrab) とも呼よばれる。肉眼にくがんで分離ぶんりできる二に重じゅう星ぼし。
• AH星ほし：アンタレスと同おなじく赤色あかいろ超ちょう巨星きょせい。アンタレスより光度こうどは大おおきいが、アンタレスより遠距離えんきょりにあるため双眼鏡そうがんきょうを用もちいないと観みることが出来できない。
• AI星ほし：おうし座ざRV型がた変光星へんこうせい。
• OGLE-2005-BLG-390L：惑星わくせいが1つ発見はっけんされている天体てんたい。赤色あかいろ矮星かコンパクト星ぼしのいずれかと思おもわれるが正体しょうたいは不明ふめい。

星団せいだん・星雲せいうん・銀河ぎんが

さそり座ざは天てんの川上かわかみにあるため、多おおくの星団せいだんを含ふくむ。

• M6(the Butterfly Cluster)：散開さんかい星団せいだん。
• M7（the Ptolemy Cluster）：散開さんかい星団せいだん。
• NGC 6124：散開さんかい星団せいだん。
• NGC 6231：散開さんかい星団せいだん。
• M4：球状きゅうじょう星団せいだん。
• M80：球状きゅうじょう星団せいだん。
• NGC 6302：惑星わくせい状じょう星雲せいうん。

その他た

• IGR J17091-3624：既知きちで最もっとも小ちいさな質量しつりょう（3太陽たいよう質量しつりょう）を持もつ可能かのう性せいのあるブラックホール。

由来ゆらいと歴史れきし

古代こだいメソポタミアでは古ふるくからS字じを描えがく星ほしの並ならびをサソリに見立みたてていたと考かんがえられており、紀元前きげんぜん500年ねん頃ごろに制作せいさくされたとされる粘土ねんど板ばん文書ぶんしょ『ムル・アピン』には、現在げんざいのさそり座ざの原型げんけいとなるサソリやサソリの尾おのアステリズムが見みられる。

古ふるくは現在げんざいのてんびん座ざの星ほし々もさそり座ざに含ふくまれており、てんびん座ざαあるふぁ星ほし、βべーた星ほし、γがんま星ほしの固有こゆう名めいに見みられる「爪つめ」を意味いみする言葉ことばにその名残なごりを見みることができる。

神話しんわ

この星座せいざに伝つたわるギリシア神話しんわは、いて座ざ、オリオン座ざも参照さんしょう

『ウラニアの鏡かがみ』に描えがかれたさそり座ざ

古代こだいギリシアの偽にせエラトステネースやアラートスの伝つたえるところでは、英雄えいゆうオーリーオーンをその毒どく針はりで死しに至いたらしめたサソリが星座せいざとなったものとされている。女神めがみアルテミスは、彼女かのじょを強姦ごうかんしようとしたオーリーオーンに対たいしてサソリを遣つかわして毒どく針はりで殺ころさせたという。ただし偽にせエラトステネースは、オーリーオーンの項目こうもくでは「どんな野獣やじゅうでも倒たおすことができる」とい放いはなったオーリーオーンに怒おこった女神めがみガイアが放はなったサソリ」としている。このサソリの住処すみかをアラートスやエラトステネースはキオス島とうとしているが、ヒュギーヌスは（またエラトステネースも一貫いっかんせずオーリーオーンの項目こうもくでは）クレタ島とうと言いっている。今いまでもオリオンはサソリを恐おそれて、東ひがしの空そらからさそり座ざが現あらわれるとオリオン座ざは西にしの地平線ちへいせんに逃にげ隠かくれ、さそり座ざが西にしの地平線ちへいせんに沈しずむとオリオン座ざは安心あんしんして東ひがしの空そらへ昇のぼってくるという。

帝政ていせいローマ期きの詩人しじんオウィディウスは、アポロンの息子むすこパエトーンが天てんをかける太陽たいようの馬車ばしゃを強引ごういんに運転うんてんした際さい、黄道こうどう近ちかくにたむろして馬うまを驚おどろかせたサソリであるとしている。

中国人ちゅうごくじんは青あお龍りゅうにたとえた。この想像そうぞう上じょうの生物せいぶつは、強力きょうりょくだが慈悲じひ深ふかく、天てんに現あらわれることによって春はるを予告よこくする。星ほしとの対応たいおうはさそり座ざのサソリとほぼ同おなじであり、頭部とうぶに房ぼう宿やど、心臓しんぞう部ぶに心こころ宿やど、尾お部ぶに尾お宿やどの3星宿せいしゅくを置おいたが、青あお龍りゅうの二に本ほんのツノの一ひとつはうしかい座ざのアークトゥルス（大角おおすみ星ほし）、もう一ひとつはおとめ座ざのスピカ（角すみ宿やど）まで延のびるとされた。ベトナム星座せいざでは、房ぼう宿やど（さそり座ざπぱい星ほしなどからなる）を冠かんむりに見立みたてて、心こころ宿やど（アンタレスなどからなる）を丸まるい背中せなかに見立みたてて、この二に宿しゅくをあわせて神かみ農みのり（Thần Nông）と呼よび、社稷しゃしょくの神かみ（穀物こくもつ神しん）として尊崇そんすうした。

ニュージーランドに伝つたわるマオリ神話しんわでは、マウイがニュージーランドの北島きたじまを釣つり上あげた際さいに使つかった釣つり針ばりが天てんに引ひっ掛かかったものとされている。

呼称こしょうと方言ほうげん

理科りか年表ねんぴょうでは、1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）刊行かんこうの第だい1冊さつから1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）刊行かんこうの第だい19冊さつまでは「蝎」、戦後せんごの1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）刊行かんこうの第だい20冊さつ以降いこうは「蠍さそり」の漢字かんじ表記ひょうきを充あてている。

日本にっぽんでは、さそり座ざのS字じカーブを漁師りょうしの釣つり針ばりに見立みたてた地方ちほう名めいが複数ふくすうの地域ちいきで伝つたわっている。また、アンタレスを挟はさむσしぐま星ほしとτたう星ほし、さそりの尾おであるλらむだ星ほしとνにゅー星ほしの組くみ合あわせに対応たいおうする地方ちほう名めいも存在そんざいする。

「さそり座ざの方言ほうげん」も参照さんしょう

参考さんこう文献ぶんけん

• 野尻のじり抱影ほうえい『星座せいざの話はなし』偕成社かいせいしゃ、1977年ねん。ISBN 4037230100。 NCID BB30525977。 
• 近藤こんどう二郎じろう『わかってきた星座せいざ神話しんわの起源きげん - 古代こだいメソポタミアの星座せいざ』誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ、2010年ねん。ISBN 978-4-416-21024-6。 

外部がいぶリンク

• さそり座ざ 夏なつの星座せいざ - Yahoo!きっず図鑑ずかん