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アルキメデスの原理 - Wikipedia

アルキメデスの原理げんり(アルキメデスのげんり)は、アルキメデス発見はっけんした物理ぶつりがく法則ほうそくである。「流体りゅうたい液体えきたい気体きたいちゅう物体ぶったいは、その物体ぶったいしのけている流体りゅうたい質量しつりょうおよぼす重力じゅうりょくおなおおきさで上向うわむきの浮力ふりょくける」というものである。

概要がいよう

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物体ぶったいける浮力ふりょくおおきさやきは、みずなか物体ぶったい一部いちぶしずめて静止せいしさせた状態じょうたい説明せつめいすることができる。このとき、物体ぶったい周囲しゅういみず物体ぶったいとの境界きょうかいめん各部かくぶたい垂直すいちょくちからおよぼす。この静水せいすいあつ方向ほうこうまでかんがえて上記じょうき境界きょうかいめんについて総和そうわしたものが浮力ふりょくである。アルキメデスの原理げんりは、この浮力ふりょくが、物体ぶったいしずむことによってみずしのけている領域りょういきにおけるみず質量しつりょうおよぼす重力じゅうりょくおなおおきさ、きが上向うわむき(重力じゅうりょくきとせい反対はんたい)とべている。このようになる理由りゆうは、物体ぶったいによりみずしのけられた領域りょういき周囲しゅういみずのつくる水面すいめんよりした位置いちする物体ぶったい体積たいせき)のみをちょうど置換ちかんするみず存在そんざいすると仮定かていすれば理解りかいできる。この仮定かていにおいて、物体ぶったい水面すいめん部分ぶぶん置換ちかんしているみず周囲しゅういみずとをあわせてみたみずは、たいらなひとつの水面すいめん静止せいししたみずである。ここで、周囲しゅういみず上記じょうき境界きょうかいめんおよぼす水圧すいあつは、その水圧すいあつおよぼしている対象たいしょうぶつが、上記じょうき物体ぶったいであるか、上記じょうき仮定かていのように置換ちかんされたみずであるかの区別くべつなく、対応たいおうする境界きょうかいめんかく位置いちでまったく同一どういつである。このため、水圧すいあつおよぼす対象たいしょう上記じょうき物体ぶったいである場合ばあいにおける境界きょうかいめんかく位置いちにおける水圧すいあつは、上記じょうき仮定かてい物体ぶったい水面すいめん部分ぶぶん置換ちかんされたみずだった場合ばあい境界きょうかいめんかく位置いちける水圧すいあつひとしい。上記じょうき仮定かていでは、物体ぶったい水面すいめん部分ぶぶん置換ちかんしているみず周囲しゅういみずささえられて同一どういつ水面すいめんとなっているから、物体ぶったいたいする浮力ふりょく水圧すいあつ総和そうわ)も、しのけているぶんだけのみず質量しつりょうによる重力じゅうりょく見合みあった(う)だけのきとなる。

アルキメデスの原理げんりやこの議論ぎろんは、いずれも、物体ぶったい全体ぜんたいみずしずめる場合ばあいにもてはまり、やはり、物体ぶったい周囲しゅういみずは、物体ぶったいしのけたみず質量しつりょう見合みあぶん浮力ふりょく当該とうがい物体ぶったい上向うわむきに作用さようさせることとなる。

なお、物体ぶったいかるい(みずよりも、平均へいきん密度みつどちいさい)場合ばあい物体ぶったい質量しつりょうしのけられたみず質量しつりょうおなじになった位置いち物体ぶったいしずむのをめる(く)。物体ぶったい質量しつりょうぶん浮力ふりょくられていれば浮力ふりょく質量しつりょうによる重力じゅうりょくとがい、それ以上いじょう物体ぶったいしずまなくなるのである。ぎゃく物体ぶったいおもい(みずよりも、平均へいきん密度みつどおおきい)場合ばあい水中すいちゅう物体ぶったいぼっする。

上述じょうじゅつした関係かんけいつぎ数式すうしき表現ひょうげんすることができる。

  
F : 浮力ふりょく[N], ρろー: みず密度みつど[kg/m3], V : 物体ぶったい水没すいぼつしている部分ぶぶん体積たいせき[m3], g : 重力じゅうりょく加速度かそくど[m/s2]

ここでの浮力ふりょくおおきさは、水中すいちゅうにある物体ぶったい密度みつどには関係かんけいしない。みずよりも物体ぶったい平均へいきん密度みつどちいさい場合ばあいには、物体ぶったいはその一部いちぶ水面すいめんよりうえ突出とっしゅつさせた位置いちとなって、重力じゅうりょく浮力ふりょくはつりあう。すなわち、

   m : 物体ぶったい質量しつりょう[kg]

[ちゅう 1]。このしきより、みず密度みつど ρろー既知きちであれば、水没すいぼつしている部分ぶぶん体積たいせきV測定そくていすることで物体ぶったい質量しつりょうmを、 ρろーV によって算出さんしゅつすることができる。

なお、上述じょうじゅつした説明せつめい法則ほうそくでは、流体りゅうたい性質せいしつ密度みつど(のみ)をつうじて反映はんえいされており、流体りゅうたい種類しゅるい液体えきたい気体きたいかなど)はわれない。物体ぶったい形状けいじょう材質ざいしつにも無関係むかんけいである。たとえばねつ気球ききゅうは、加熱かねつすることで密度みつどひくくした空気くうきが、密度みつどたかいままの周囲しゅうい大気たいきたいしてしめ浮力ふりょく利用りようする。みず物体ぶったいふねなど)では、密度みつどたか塩水えんすい場合ばあいには、真水まみず場合ばあいくらべ、体積たいせきあたりの浮力ふりょくおおきくなり、水面すいめん体積たいせき変化へんかする(みず物体ぶったいでの浮力ふりょく物体ぶったい質量しつりょうおよぼす重力じゅうりょくうため、物体ぶったい全体ぜんたいへの浮力ふりょく自体じたいはいずれも質量しつりょうによる重力じゅうりょく一致いっちしたままである)。

こおりけると水面すいめん上昇じょうしょうするか?
みずこおりいていて[ちゅう 2]そのこおりけていく場合ばあいけたこおり質量しつりょうΔでるたm とすると、みず体積たいせきΔでるたVみず = Δでるたm/ρろーみず だけ増加ぞうかする。一方いっぽうこおり水没すいぼつしている部分ぶぶん体積たいせき減少げんしょうりょうΔでるたVこおり とすると、うえしきから、
ρろーみずΔでるたVこおり g = Δでるたmg
となるため、こおり水没すいぼつ体積たいせきΔでるたVこおり = Δでるたm/ρろーみず だけ減少げんしょうする。よって、みず体積たいせき増加ぞうかぶん ΔでるたVみずこおり水没すいぼつ体積たいせき減少げんしょうぶん ΔでるたVこおりひとしくなり、こおりけても水位すいい変化へんかしない。

法則ほうそく発見はっけん

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アルキメデスの原理げんり

この法則ほうそく発見はっけんについての故事こじのこっている。

当時とうじギリシアじん植民しょくみん都市としであったシラクサ僭主せんしゅヒエロン2せいかね細工ざいくきむ(きん)をわたし、純金じゅんきん王冠おうかんつくらせた。ところが、きむ細工ざいくかねぶつをしておうからあずかったかね一部いちぶぬすんだ、といううわさひろまった。そこで、ヒエロンはアルキメデスに、王冠おうかんこわさずにぶつがしてあるかどうか調しらべるようにめいじた。アルキメデスはこまてたが、ある風呂ふろはいったところ、みず湯船ゆぶねからあふれるのをて、その瞬間しゅんかんアルキメデスの原理げんりのヒントを発見はっけんしたとわれる。

このとき浴場よくじょうからたアルキメデスは「ヘウレーカ(まれ: ΕΥΡΗΚΑ)、Eureka、ヘウレーカ」(かったぞ)とさけびながらはだかはしっていったという[ちゅう 3]

アルキメデスは、王冠おうかんおな質量しつりょう金塊きんかい用意よういし、これと王冠おうかん天秤棒てんびんぼうるしてバランスがれることを確認かくにんしたのちに、天秤棒てんびんぼうるしたまま両方りょうほうともみずった容器ようきれた。空気くうきなかでは天秤棒てんびんぼうは、てこの原理げんりによりバランスがたもたれている。てこの原理げんり水中すいちゅうでもわらないので、もし金塊きんかい体積たいせき王冠おうかん体積たいせきおなじであれば、つまり金塊きんかい密度みつど王冠おうかん密度みつどおなじであれば、両方りょうほう水中すいちゅうしずめても、天秤棒てんびんぼうのバランスはたもたれるはずである。

しかし、実際じっさいには水中すいちゅうでのバランスがくずれたために、王冠おうかん金塊きんかい密度みつどちがうということが判明はんめいし、きむ細工ざいく不正ふせいあきらかになった[1]。これがアルキメデスの発見はっけんした浮力ふりょく原理げんりである。かね細工ざいくつたえられていないが、その死刑しけいになったとつたえられる。

アルキメデスとその学者がくしゃたちは、この法則ほうそく自然しぜん科学かがくてき法則ほうそくであるとは気付きづかず、数学すうがくてき原理げんりであるとかんがえた。

アルキメデスが発見はっけんした原理げんり浮力ふりょく原理げんりだが、王冠おうかんのエピソードによって、物質ぶっしつによる密度みつどちがいを説明せつめいするさいいにされる場合ばあいがある。

欧州おうしゅう学校がっこうでは、アルキメデスの原理げんりにより、物体ぶったい体積たいせきはか実験じっけんおこなときにEureka can(displacement can、ユリーカかん)という側面そくめん上部じょうぶなな下向したむきの排水はいすいかんが1ついた器具きぐをよく使用しようする。排水はいすいかん位置いち以上いじょうみずれてながるのをってから、排水はいすいかんしたメスシリンダー設置せっちして、排水はいすいりょう測定そくていする。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 空気くうきちゅうている部分ぶぶん浮力ふりょく無視むししていることに注意ちゅうい
  2. ^ こおりほう密度みつどちいさく、温度おんどによってもことなるがρろーこおり = 920 kg/m3みずρろーみず = 1000 kg/m3 程度ていどであり、かなりのがあることがかっている。
  3. ^ もっとも、当時とうじ古代こだいギリシアでは人間にんげんはだか運動うんどうするのが普通ふつうで、はだかそとはしったり公衆こうしゅう面前めんぜんはだかになったりしても特段とくだんめずらしいことではなかった。

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ The Golden Crown (Introduction)” (英語えいご). New York University. 2012ねん4がつ12にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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